営業のイノベーション7:営業プロセスの設計書

「営業の革新」をテーマに、営業のマネジメントモデルを考えるシリーズコラム。今回は、「営業プロセス」を具体的にどう設計するのか、進行ステップ、各ステップの最終目的、Key行動、KPIといった要素ごとにポイントをお伝えします。

前記事にて「営業プロセス」をハイパフォーマーの研究から設計し、それを組織で共有することで、ロー&ミドルパフォーマーの底上げを図ることを提案しました。

そこで、今回は具体的な営業プロセスモデルの構成要素について考えてみます。

基本構成は次のとおりです。

  1. 大まかな営業プロセスステップ
  2. 各ステップの最終目的
  3. 各ステップにおけるKey行動
  4. KPI

営業プロセスステップ

まず、大まかな営業プロセスがどのようなステップで進行するかを考えます。簡単なモデル例を示すなら、

  1. アプローチ準備
  2. 一次訪問
  3. 企画書作成・提案
  4. クロージング

といった流れとなります。そして、それらをさらに細分化して、具体的なプロセスを描きます。

1.アプローチ準備

  • インバウンド対応
  • クライアント基礎理解
  • 資料準備

2.一次訪問

  • 自社(製品)紹介
  • ヒアリング
  • 情報提供
  • とりまとめ
  • フォローアップ

3.企画書作成・提案

  • 情報整理・共有
  • クライアント課題特定
  • ソリューション立案
  • ドキュメント化
  • レビュー

4.クロージング

クライアント状況確認 取引条件(価格等)交渉 契約締結

これらは、ハイパフォーマーの行動分析から、項目抽出をすると良いでしょう。

各ステップの最終目的

それぞれのステップにて、最終的に実現したい目的を明らかにします。例えば、次の構造が考えられるでしょう。

1.アプローチ準備  - インバウンド対応

(目的1) 問合せクライアントの状況(検討レベル、要望等)の理解

(目的2) 初回アポイントの取り付け

といった具合です。意外と漫然と行動しているセールスも多いので、まずはこういった基礎的なことから形式知化することが求められます。

各ステップにおけるKey行動

ここが最も重要なポイントでしょう。ハイパフォーマーの行動特性をじっくり研究し、業績差が生まれる行動(レバレッジポイント)を明らかにするステップです。

分析としては、ハイパフォーマーとロー&ミドルの行動ギャップを明らかにします。ハイパフォーマーに見る共通点など、成果につながる行動要因を統合し、理想的なセールス行動を記述していきます。

分析の切り口としては、例えば、次の3つが挙げられるでしょう。

  • 必須行動(必ずルーチンとして行う行動):事前準備、ヒアリング項目、アピールする訴求点など
  • 状況対応行動(こんな時には、こう行動するといった行動パターン):価格交渉時の対応、ネガティブ反応時の対応など
  • 判断基準(判断業務の場合、何を判断のモノサシとしているか?):訪問優先順位の判断、企画方針の判断など

また、ロー&ミドルパフォーマーの行動を修正することが必要となるので、逆の視点として、以下あたりを検討し、このパートに記述することも必要となる場合があります。

  • 一般に出来ていない行動ポイント
  • 障害要因(出来ない理由)
  • 行動を可能に知る要因(障害原因排除)

サポートツールの制作

上記のKey行動が明確に示されたとしても、それを円滑に進めることは、ローパフォーマーにとっては意外とハードルが高いものです。

そこで、それをサポートするためのツールを制作しておくとよいでしょう。

例えば、高品質のヒアリングを実施するための「ヒアリングシート」。これは、ハイパフォーマーがヒアリング時に確認する項目をしっかり網羅したもの。誰しもが、このヒアリングシートをもとにしてインタビューすれば、ある一定以上のヒアリング品質が保てるようになるはずです。

その他、標準企画書や販促資料など、様々なツールが考えられます。

KPI

そして、最後にKPI(Key Performance Index)を定めます。

KPIとは、それぞれのステップでどのような指標を目標とすべきか?という定量的目標指標のことです。各セールスは、示されたKPIを実現することを常に念頭に置いて活動することになります。定量的に示せない部分もありますが、ここではあくまで目標として定量指標に落とし込んでおくことをお勧めします。

例えば、

1.アプローチ準備
  - インバウンド対応

(目的1) 問合せクライアントの状況(検討レベル、要望等)の理解
(目的2) 初回アポイントの取り付け

(KPI)アポイント率80%(アポ件数/インバウンド)

こういった設計書を作成し、現場のセールスに成功モデルを「可視化」して示すことは、強い営業を目指す組織としての責任だと思うのです。

株式会社シナプス 代表取締役 家弓正彦



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