営業のイノベーション6:営業プロセスをデザインする

「営業の革新」をテーマに、営業のマネジメントモデルを考えるシリーズコラム。今回は、顧客の「購買プロセス」に対応するための最適な「営業プロセス」とはどのようなものか、どうすれば強い営業組織が作られるのか、について考えます。

前回は顧客の購買プロセス、そしてDMUなどについてお話ししましたが、今回は、その「購買プロセス」に的確に対応する「営業プロセス」の設計について考えてみました。

最適な営業プロセスとは?

難しい課題です。

何をもって「最適」とするかは、それぞれのセールスパーソンの個性や取り扱っている商材によって、かなり異なると思うのです。

だからこそ、「あるべき営業」については、深く研究がなされず、「企業によって異なる」とか「営業によって異なる」とされてきたのではないでしょうか?

確かに売れる営業にも様々なタイプがいます。各企業、各営業組織、各営業パーソンによって、目指すべき「営業プロセス」を独自に考えなければならないのでしょうか?

それでは、なかなか「営業のイノベーション」はできなさそうです。

強い組織を創るために

強い営業組織を創るためには、2つのアプローチがあると思うのです。

  • ボトム~ミドルセールスの底上げ
  • 組織内トップセールスをさらに磨きあげる

後者のトップセールスのエリート化は、なかなか難しいかもしれません。この課題は、もう少し研究をした後に、コラムで披露させていただきます。

ということで、ここでは「ボトム~ミドルセールスの底上げ」について語ってみたいと思います。

ボトムは、なぜボトムなのか?

まず、ボトムのセールスパーソンがなぜ成果が上がらないのか?を考える必要がありますね。理由はいくつか考えられると思います。

  1. そもそも基礎スキルが足りない
  2. 営業として為すべきことを分かっていない
  3. あまりにモチベーションが低い
  4. 周辺業務の生産性が悪く、真の営業活動に専念できない

1のスキルとは、マナーや商品知識など、いわゆる「テクニカルスキル」に類するものです。これは、Off-JTなどを通じて、しっかり学ぶ必要があります。しかし、逆にいえばある程度勉強し、経験を積めば、最低レベルはクリアできるようになるでしょう。

3は、個人個人の動機付け要因を明らかにする必要がありますね。キャッシュか?ビジョンか?環境か?これは、重要なファクターですが、どちらかというと組織論の領域にお任せしたいと思います。

営業は、報告書や見積書は発注書、社内資料など、様々な「真の営業活動」以外の間接業務をもこなさなければなりません。これが、4のネックですね。とはいえ、営業も組織の一員ですから、仕方のないことです。

マーケティング視点から最も改善余地が大きいと思われるのは、2 営業として為すべきことを分かっていないではないかと思うのです。

パフォーマンスを上げるために、、、

ベテランのハイパフォーマーの営業は、「この状況では、こんなアクションをとるべきだ!」という成功パターンをたくさん持っているのだと思います。

しかし、難しいのは、ハイパフォーマーは論理的に意識して実行に移しているとは限らないこと、です。むしろ、職人芸のように「自然な立ち振る舞い」として、最高の営業プロセスを無意識のうちに実行していることすらあります。

いわば「暗黙知化」してしまっているんですね。そして、それをうまくヒトに伝えることもできない。しかも部下指導も慣れていない、、、そんなケースが多いように感じます。

なぜなら、トップ営業は「営業が好き」で、決して「部下育成」や「マニュアルづくり」が好きなわけでも得意なわけでもないからです。

そこで、強い営業組織をつくるための「プロジェクト型組織」によってトップ営業マンの暗黙知を「形式知化」して、それを組織に浸透させる。そんな活動によって、効率的に営業のイノベーションを推進できるのではないでしょうか?

ステップとしては、

  1. ハイパフォーマーのインタビュー
  2. 営業成功のエッセンス抽出
  3. 営業プロセスのステップ作成
  4. 各ステップでの成功行動パターンを形式知化
  5. 成功モデルのマニュアル化
  6. 研修などによる組織へのインストール

概ねこんなプロセスを通じて、組織的な営業のイノベーションが求められると思うのです。

次回は、もう少し噛み砕いて、どのような内容を「成功モデル」として形式知化しなければならないかを考えてみます。

株式会社シナプス 代表取締役 家弓正彦



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