前回の「セールストークのフレームワーク『FABE理論』」では、初回訪問の目的の1つ、「自社製品に対する認知、理解、関心の獲得」について、FABE理論を使って説明しました。
さて、今回は二つめの目的となる「顧客ニーズの探索」について考えてみます。
そもそも、顧客ニーズとは何か?これは、以前の記事「顧客インサイト!顧客の本質的ニーズとは何か?」にて簡単に触れています。
顧客ニーズとは
ニーズとは、満たされていない現状と理想的なあるべき姿とのギャップである。
そんな定義ができるのではないかと思います。
現状「この部屋はムチャクチャ暑い」(不快な状態)
理想「涼しい空間で快適に過ごしたい」(満たされた状態)
この間にある大きなギャップを埋めたいと思う欲求がニーズなんですね。
で、重要なのは、ここから、、、
その涼しくて快適な状態になるために、顧客は何を欲するか?通常なら、「エアコン」、「扇風機」、「ウチワ」、「冷たい飲み物」、、、などを「欲しい!」と思うのではないでしょうか?
で、顧客は、「エアコンのスイッチを入れて!」とか「扇風機ないの?」とか、「ウチワでいいから頂戴!」などと口にするはずです。
それを聞いた営業は、「ん?このお客さんは、エアコンにニーズを持っているんだな?」と、その言葉をオウム返しにしてしまうだけかもしれません。
それじゃ、ダメなんですよね。
あくまで、エアコン、扇風機、ウチワは、ギャップを埋めるための手段に過ぎないわけですね。お客さんとしては、エアコンだろうと、扇風機だろうと、涼しい環境になれば、何でも構わないはずです。
営業は、お客さんの言葉を鵜呑みにしてはならないのです。このあたりも別コラム「ソリューション営業って何だ ~インタビュースキルについて」をご参照ください。
基本的には、彼らのニーズが原点となっているはずです。
顧客インタビュー|顧客ニーズを明らかにするための手段
上で紹介したコラムでも「インタビュー」について触れていますが、ここでは、もう少し詳細をご紹介しましょう。
ソリューションセールスの場合、重要なのは顧客の課題を明確にすることです。しかし、営業が初回訪問において、いきなり「御社の課題は何ですか?」なんて聞いても、通常まともな答えは返ってきません。
「そんなことは、オマエが考えろ!」なんて言われそうです。
(再掲)
ニーズとは、満たされていない現状と理想的なあるべき姿とのギャップである。
あらためて、この文章を踏まえると、顧客のニーズ≒顧客の課題を理解するための重要なポイントは、
- まず現状はどうなっているか?(現状把握)
- 今後、どうなりたいのか?(目標把握)
の2つであることがわかります。
こう考えると、ヒアリングは、この2つをしっかり把握・理解することを目的としてなされるべきといえるでしょう。
現状については、自社ソリューションに関連する「現場の実務」「その成果」「問題点」など、できるだけ客観事実情報を把握することが必要です。事実情報は、比較的聞きやすい内容だと思います。
一方で、目標や方針などは、その担当者のバイアスなどがかかりやすく、個人的見解となってしまう可能性が低くありません。それだけに、目標把握は、少し難易度が高いと言えるでしょう。
- 「今年度の経営方針は?」
- 「今後の投資はどんなところに注力する計画ですか?」
- 「現在は、どのような目標を掲げていますか?」
など、様々な切り口から聞いてみましょう。
逆に、こちらから「この業界では、●●が注目されていると伺いましたが、そこに積極投資する方針はないのでしょうか?」なんて、示唆を与える投げ掛けをするのも有効でしょうね。
そういう意味では、顧客の業界についてはしっかり情報収集し勉強しておきたいところです。
ソリューション提案企画
「現状」と「理想」が見えてきたら、そのギャップを明らかにし、それを解消するソリューションを提案することになります。
しかし、一般に顧客の課題はひとつとは限りません。いや、むしろ企業の課題はいくつも山積しているのが普通だと思うのです。
そこで、営業としては、最も有利に戦える「課題」を対象として、ソリューション提案を企画することになるでしょう。まずは、カギとなる課題を選別することが求められるわけです。
そのための判断基準としては、
「顧客にとっての重要度」 × 「自社の強み」
というマトリクスで、評価すると良いですね。
顧客にとっては、非常に重要でなんとかしたいと強いニーズを持っていること。そして、自社にとっては、実績やノウハウもあり、最も競争優位を描きやすいこと。
こんなビジネスチャンスをしっかりと見極めて、的確な提案を行うことが営業の最大のミッションだと思うのです。
株式会社シナプス 代表取締役 家弓正彦