Kolb(コルブ)の経験学習モデル
組織学習のモデルとして「Kolb(コルブ)の経験学習モデル」が有名です。次の4つの学習プロセスを循環して学習が深まっていくという考え方です。
1.具体的経験
当たり前のことではありますが、学習のためには、まず経験を積むことが必要とされています。
ということで、まずは行動に起こしてみる!ということ。
あまりに単純ですが、学習には必要なプロセスです。このシリーズコラムのモデルにあてはめるなら、「営業のイノベーション8:営業プロセスのマネジメント」で述べたような「社内テレアポコンテスト」といったゲーム仕立ての組織内のインナープロモーションで、メンバーに行動を起こさせることも必要です。
それに加えて、マネジャーが「具体的にこんな事やってみたら?」などとうまく行動を促すサポートがなされると、なおいいですね。
2.観察と振り返り
そして、行動を振り返る機会が必要です。実際に起こした行動から、成果を上げるために有効だと思われる要素を考えます。
このプロセスでは、マネジャーの役割が大きいですね。経験の浅いセールスパーソンだと、ひとりで成功の法則を考えるのは困難ですから、是非、マネジャーが対話を通じてうまく成功パターンを理解させるとよいでしょう。
そのためには、マネジャーによる1対1のコミュニケーション、コーチングなどをきめ細かく実施することが有効だと思われます。
ここで問われるのが、マネジャーのコーチングスキルです。企業としては、マネジャーに部下にコーチングすることを明確なミッションとして示し、スキル向上を意識づける必要があると思われます。
3.抽象的概念化
そして、経験で学んだことを、汎用的なモデルに抽象化します。つまり、A君が行った成功パターンを、他のメンバーも使えるように、モデルとして可視化、形式知化するわけですね。
その成功のノウハウは、マニュアルという姿になるかもしれないし、成功事例というドキュメントになるかもしれません。ここで重要なのは、個人のナレッジが組織共有されるところにあります。
共有のしくみとしては、営業ミーティング、マニュアル、社内報など、様々な手法があると思いますが、ここは組織カルチャーに馴染みやすいやり方を選んで、しっかり組織に浸透させる努力が必要です。
場合によっては、このプロセスをプロジェクトチーム化して、成功モデルを構築することも有効でしょう。
一般にトップセールスの成功事例をもとにしてモデル化を図ることが有効ですが、トップセールスは意外と自分のノウハウを可視化したり、ヒトに論理的に伝えることが苦手であったりします。
そこを客観的な立場でベストプラクティスとして分析し汎用的なモデルにするのは、論理力に優れたスタッフや外部コンサルタントを活用するのも一手ではないかと思うのです。
4.積極的な実践
そこで、組織学習したナレッジは、即実行に移してみる、そのトライアルが「積極的な実践」のプロセスです。
ここでもインナープロモーションの活動は大切ですね。せっかく共有されたナレッジも、実行されなければ意味がありません。
Kolb(コルブ)の経験学習モデルによれば、これらの4つのプロセスのサイクルを回すことで、組織は「営業プロセスのナレッジ」を学習するはずです。おそらくトップセールス以外の営業、特に経験の浅いセールスパーソンには、高い学習効果が見込まれるものと思います。
そんな「型」を覚えて、そこから自分の個性を生かしたオリジナルモデルを見出していくことで、ハイパフォーマーへ進化していくことでしょう。
これはまさに、能楽を確立した世阿弥の教えで「守破離」。つまり、まずは基本型を忠実に守り、やがてそれを破って応用する、さらに、最初の型から離れ、己のスタイルを確立していく。そんなセールスの進化を見届けたいものです。
株式会社シナプス 代表取締役 家弓正彦