シナプス後藤です。
以前、ふと、「頭で文章を読みが得たがらtextにしてくれるツールなりデバイスがあると良いな」と思い、ネットで呟いてみました。 その時の周囲の反応が興味深かったので書いてみます。 (内容は意味が変わらないように編集しています。)
- 「ニーズがあるのか?」
- 「キーボードや紙と鉛筆で良いのでは?」
- 「勝手に文章にされたら、あんなことやこんなことも、赤裸々に文章にされてしまうのでは?」
これらは、新しいことを考える時によく出てくる疑問や意見です。
1.は、ニーズそのものですね。(2)は、「既存のありもので良いのでは?」という代替品の提示です。(3)は、それが出来た時の問題点についての指摘です。 ここでは出てきませんでしたが、もう一つ、「そんなもの技術的に不可能だろう」というのも良く出ます。
どれももっともな指摘なのですが、それぞれ対処が違いますので、それぞれ考えてみましょう。
大きく、新商品等イノベーティブなものに対する反応は4パターンあります。
[1] それを必要としている人がいるのか?金を出すのか?
[2] 既存のものでは満足できない点は何か?
[3] その商品が成功するための顧客側のハードルはないか?
[4] 実現可能なのか?
[1]
それを必要としている人がいるのか?金を出すのか?
最もケアすべき指摘は[1]のニーズです。イノベーティブな商品は、一見して分からないことも多く、「本当に使う人がいるのか?」を想定するのは難しいものです。特に、既存商品を使っていて課題を「感じない」人や、そもそも困っていない人にとってみればどうでも良いものです。また、行動習慣や文化などを変えるものも同様ですね。何が良いのか一見して分かりません。だから、こういった指摘は出やすいものです。
ところが、一方では、技術や商品から考えてしまうと、顧客ニーズを置き去りにしてしまうケースもあります。
従って、[1]のような指摘が出た場合には、
- (i)この商品が出た時に具体的に買う人、喜ぶ人がイメージできているだろうか?
- (ii)その人と同じニーズを持っている人はたくさんいるのだろうか?
- (iii)イメージできているなら、指摘している人は、ニーズを持っているだろうか?
を考えて下さい。もし、(i)が無いなら正しい指摘ですので、考え直した方が良いでしょう。それが自分が欲しい、でも構いませんが、具体的に誰か一人でも欲しがっている人をイメージできなければ、その商品が売れる可能性は極めて低いでしょう。
次に考えるべきは、(i)のような人がどの程度いるか、でしょう。本質的ニーズのレベルを考えた時にそれほど多くの人が想定できないのであれば、売れにしても大した売上は期待できないでしょう。
その上で、(iii)を考えた時、もし相手が本質的にニーズを理解できないのであれば、無視した方が良いでしょう。本質的には理解できるのだとすれば、彼が欲しいと思うためには何が必要か、を考えてみると、今後の施策を考える上でのヒントになるのではないでしょうか。
[2]
既存のものでは満足できない点は何か?
次に考えるべきは、[2]です。
代替品に対するスタンスも根っこは[1]と同じですが、この指摘が出ると言う事は、新しいモノの価値が聞いた人には分からない、という事になります。特に、誰も使ったことない、考えたことが無いようなものだと、何が良いのかすら理解できないことになります。
この質問への対処も、上記の(i)、(ii)、(iii)と同じと考えて頂くと良いでしょう。
(iii)については、代替品と比較する場合は特に、早めに模型のようなものを作り試して貰う、という方法が効果的なようです。これはデザインシンキングという手法で取り入れられているやり方でもありますね。
[3]
その商品が成功するための顧客側のハードルはないか?
三つ目[3]は顧客のハードルですね。
特に、新しいものの場合、ほとんどの人はイメージが出来ないので、ネガティブな面に目が行きます。ニーズはあるのですが、それを入れることの問題点が気になってしまうのです。例えば、最近、LINEが子供のいじめの温床になっている、という話も聞きますが、これもその一つですね。「LINEを使うといじめが助長されるのではないか?」と。
これらの、導入すると問題点になることは考える上でとても重要ですが、これらの問題点そのものは新商品をやらない理由にはならないでしょう。むしろ、その問題点を予め検討しておくことで、より導入されやすくなります。
概して、モノが売れる時の、「欲しいと思う理由」と「買わない理由」は別だったりします。買わない理由の代表例がお金が無い、というものです。私は良くニーズとバリア、という言い方をしますが、買わない理由はニーズが無いのではなくニーズを満たすために阻むバリアがある、という事です。
これを勘違いすると本来やめなくても良い新商品を中止してしまう事になりかねませんが、ここでやりたいのは、その問題点をどうやってクリアするか、という検討です。
[4] 実現可能なのか?
最後[4]が実現可能性です。
多くの場合、技術的な実現可能性が問われるでしょう。どこでもドアは作れるのか、タイムマシンは作れるのか、という議論です。
技術的な実現可能性は、現在の技術から考えて難しいかどうか、というよりも、「科学的、論理的に可能な事なのか?」を考えるのが良いのでは、と思います。技術的な課題は往々にして科学者や開発者たちが解決してしまうものです。
一方で、特にベンチャーのようなリソースが限られるプレイヤーだと、開発期間が余りにも長いものは先にキャッシュが尽きてしまうので結果的に実現できないのと同じことです。大企業でも経営がそこまで待つことが出来なければ同様でしょう。
と言っても、ニーズが存在する限りは必ずチャンスはありますので、「出来ないからやめろ」というのではなく、「ではどうしたら出来るようになるのか?」を考える方がよほど建設的に思います。
結局、否定的な意見にどう対処すべきなのか?
新しいチャレンジをしようと思った時に、否定的な意見が多く出れば出るほど、それがイノベーティブである証拠にもなります。ですので、否定的な意見の量はむしろ喜ぶべきことですが、その質がいったいどのようなものなのか、検証してみる必要があります。
もっとも注意すべき点は、[1]ニーズの存在、です。自分自身がそこに確証を持てるのかどうか、が重要になります。
他の否定的な意見も重要なケースがありますが、一つの見極めとして、「その人の意見は聞くに値するのか?」を考えましょう。つまり、「その人はターゲットなのか?」ということです。