シナプス後藤です。
新規事業を検討する際、「新規事業の狙い目はどこか?」すなわち、「どの事業領域に参入したらよいか?」で迷われるシーンをよく見かけます。
我々はこれを「領域選択」と呼んでいますが、領域選択を考えるうえで考えるべき視点を記載します。新規事業検討のアイデア出しや頭の整理にご活用いただければ嬉しいです。
「これしかない」ということではないのですが、比較的成功確率の高い事業アイデアを見つけやすい視点ですので、何から考えるのか迷った場合には使える視点ですね。
1.既存事業の周辺から探す
2.シーズから探す
3.社会の変化点を探す
1.既存事業の周辺から探す
新規事業は既存事業からの染み出しを狙っていくほうが成功確率は高くなります。その理由は、顧客の実態やニーズを理解しやすかったりリーチしやすかったりすることと、技術などシーズを活用しやすいからです。すなわち、既存の強みやリソースが事業に生かせる領域である可能性が高いということですね。
では、どういうアプローチが良いのでしょうか?
私が考える方法を2つほど紹介します。
①顧客の要望のなぜを考える
②意外な受注データを見つける
①顧客の要望のなぜを考える
もっともオーソドックスな既存事業を起点とした新たな事業機会の発見方法です。
既存のお客様が自社の製品・サービスをご利用の際に「こういうものが欲しい」「こういう機能が欲しい」とおっしゃってくださいます。これらの具体的な要望に対して「なぜそれが欲しいのか?」を明らかにすることによってそのニーズが見えてきます。
BtoB型のビジネスで良く起こることですが、お客様から「こういうものが欲しい」と営業が聞いたとしても自社に売り物がなければ営業は他社品を紹介するにとどめるか、「できない」と回答していることがほとんどでしょう。その情報が本社に上がってくる可能性も少ないです。
ただ、お客様の「これが欲しい」をそのまま提供するだけでは新たなビジネスにはなりません。お客様が欲しいと言っているものがお客様が求めているものではないことが往々にしてあるからです。したがって、なぜそれが欲しいのか?を明らかにして、本質的なニーズを探りたいところです。
②意外な受注データを見つける
聞いた話ですが、以前「配管を掃除するロボット」を作っているメーカーがありました。そこにある日銭湯から依頼があったようです。銭湯でももちろん給湯用の配管はあるのでしょうが、サイズが合わないので問い合わせをしてみました。すると、給湯用配管ではなく、「煙突の掃除」を何とかしたかったのだそうです。
なぜこの人が、この企業が購入しているのか、という意外な受注データが発見できるケースがあります。既存事業の視点からは売上の比重が小さいのでほぼ無視されるデータですが、それを詳細に確認することによって、より大きな市場を発見できることがあります。
これらは、まだ顧客の課題が解決されていないまさに「狙い目」の領域になります。
2.シーズから探す
自社のシーズを考えたとき、まだ可能性のある領域はないか?を考えるアプローチです。
特にメーカーの場合、自社の技術の棚卸からスタートするケースもあります。
シーズからスタートする場合の課題は、「そこに確かに市場が存在する」ことが担保されないことです。したがって、この技術がどのようなニーズを満たすのか、を考えるアプローチが必要になります。
まず、考えたいのは「どのシーズに着目するか?」ですね。例えば、複数の技術が存在する場合、その中でも筋の良しあしがあります。事業開発の視点では特許の存在等、模倣困難性が高いのは勿論のこと、「ベーシックな技術で様々なアプリケーションが想定される」「機能に発展性がある」などが該当します。これらの技術を抽出することで成功の確度は上がっていきます。
また、技術からニーズを考えるのは難しいので、その前に「機能」を考えてみるとよいでしょう。これらの機能がどのような市場のニーズを満たすのか、を考えることによって、ビジネスチャンスを発見できる可能性があります。
シーズ起点だと、「事業の芽がない」という結論に陥ることもありますが、一方で、事業化の際に実現しやすい、競争優位性を構築しやすいということも特徴として存在します。
3.社会の変化点を探す
市場が変化する、市場が成長する、というのは新たな事業が生まれる大きなチャンスであることが多いです。
事業成功の要因の多くは「成長市場であった」ということになるケースも多いですし、いくつかのベンチャーキャピタルは「投資する領域として成長市場である〇〇に決めている」とも聞きます。また、もともと大きな市場の場合には、何らかの変化点があると競争のルールが変わり参入チャンスができます。
2021年現在だと、Covid-19の影響によって、「働き方に関する市場変化」「在宅ワークに関連する市場の成長」等が想定されます。これらはすでに動き出している市場ですが、もし仮に2019年の段階でこの市場が想定で来ていて市場に参入できていれば大きな事業の成長ができたわけです。実際、Web会議システムを提供するZoomはこのタイミングでかなり売上を拡大しました。
上記以外の視点としてもいくつかのフレームワークは利用できます。
新規事業を考えるためのフレームワーク・・・成長マトリクス
https://cyber-synapse.com/business_development/column/idea-screening/flamework_for_new_business_development_1.html
新規事業アイデアのためのフレームワーク:PEST分析
https://cyber-synapse.com/business_development/column/idea-screening/newbusiness_idiation_flamework_pest_analisys.html
経営の大家であるピータードラッガーは、「イノベーションと企業家精神」で下記の7つがイノベーションのきっかけとして使える、と書かれています。
(上から順に可能性が高い)
・予期せぬことの生起
・ギャップの存在
・ニーズの存在
・産業構造の変化
・人口構造の変化
・認識の変化
・新しい知識の出現
これらも使える視点でしょう。
ドラッガーに学ぶ新規事業アイデアのフレームワーク
https://cyber-synapse.com/business_development/column/idea-screening/newbusiness_ideation_20200410.html
良いアイデアが見つからない時や何から手を付けたらよいかわからない時にはご活用ください。