アンケートの作り方を詳しく解説。調査票の良い例・悪い例とは? シナプスビジネスナレッジ

市場調査ってどうやってやればよいですか?

当社はマーケティングコンサルティングと研修を提供しておりますが、コンサルタント、あるいは講師としてお客様とかかわっているとよく質問されます。

市場調査の中で最もイメージされやすい手法がアンケート調査です。近年、インターネット利用者が増えたことでインターネットアンケート調査が主流になってきていますので、利用されていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?

一方で、慣れていない方が実施すると意味のある結果が得られなかったり、ひどいケースになると「間違った結論に導く」ケースも出てきてしまいます。 そこで、アンケートの作り方について、考え方をご説明します。

アンケート方法について知ろう

アンケート調査には様々な手法があります。ここでは代表的な手法をご紹介します。

主なアンケートの例

近年利用される主なアンケート手法としては

  • アンケート用紙を利用したもの
  • Webブラウザによるアンケートフォームを利用したもの
  • LINEなどのアプリによるアンケート

があります。

アンケート用紙での回答

アンケート用紙を利用したものは、インターネットができる前から用いられる最も簡易的な手法です。 回答者数の質と量にこだわろうとすると郵送コストや集計コストなどがかかりますが、誰もが簡易的に始められる簡単な手法です。

国が実施している国勢調査は、未だに紙による調査ですね。 もっと簡易的なところでいえば、例えば、クリニックの問診票もマーケティング調査目的ではありませんが、一つのアンケート用紙による手法です。最近、Web問診票を活用するクリニックも出てきておりますが、紙だと誰でも簡易的に作れることがメリットです。

また、国勢調査がいまだに紙を用いている理由は「インターネットを使えない方の情報も取りたい」という理由が大きいのではと想像しています。日本の識字率はほぼ100%なのと、郵便網が日本全土に広がっていて、紙を用いた郵送調査は全員に届けることが可能なので回答さえ得られれば、今も有効な方法です。

Webブラウザによるアンケートフォームを利用したもの

近年大幅に増えてきているのがWebブラウザによるアンケートフォームを利用したものです。 インターネット調査を取り扱う調査会社に依頼するものもあれば、最近はGoogle FormsやMicrosoft Formsなど、無料(もしくは他のライセンスにバンドルされているので無料のに近い形で使える)のものも広まっています。 これらの特徴は広く、安価に回答を得られることでしょう。インターネット普及率の高まりによって、紙による郵送・集計コストをかけずに調査できる点が多くの方に支持されています。

LINEなどアプリでの回答

ここ数年で急速に増えているのがLINEをはじめとしたスマートフォンアプリによるアンケート手法でしょう。スマートフォンでもWebアンケートは利用できますがスマートフォン普及率が9割を超えている現在では様々なアプリを利用したものも増えてきています。

特徴は「そのアプリの利用者に届けられる」ことでしょう。インターネットアンケートは「わざわざメーラーやWebブラウザを立ち上げないと回答できない」のにたいして、例えばLINEは比較的アプリを立ち上げるハードルが低く回答しやすいのが特徴です。同様にTwitterのようなSNSや、自社が運営しているアプリ(ゲームなども含む)でもアンケートがとられています。

アンケートの標準的な作成手順

アンケートの作成は外部に依頼するか、自分で作るか、によっても大きく進め方が変わります。外部に依頼する場合は、企画・設計~分析まで依頼するのか、調査実施部分だけの依頼になるのかによっても進め方が変わります。
一方で、自分で作る場合には、紙をベースとするか、Webアンケートにするかによって進め方が変わります。

外部に依頼する(代行業者に頼む)

予算が確保できる場合や自社では調査のスキルやリソースがない場合には外部委託が重要な選択肢になります。
専門調査会社に依頼するケースもあれば、最近は副業も含めたフリーランスに必要な部分だけ依頼するケースも増えてきているようです。

メリットは専門の調査スキルを持っている会社・人に依頼することによってより精度の高い調査結果を得られる、ひいてはより精度の高い意思決定ができることです。また、調査業務は手間がかかりますので、リソースがない場合にも重要な選択肢でしょう。

一方でデメリットは、「調査すること」が目的化してしまい良い意思決定につながらなかったり、スキルのない会社・人に誤って依頼してしまい有効な調査にならないケースもあります。
外部に依頼する場合には信頼できる会社・人に依頼することともに、調査企画は自社で行うようにすることをお勧めしています。あくまでも調査は手段だからです。

紙:WordやExcelで作る

紙のアンケートを行う場合、WordやExcelなどで作成することが多くなります。

作成後のレイアウト調整のやりやすさから、私はWordでの作成をお勧めしていますが、ExcelやPowerpoint好きな方は、それらを活用してもよいでしょう。

また、WordやExcelは後述するWebアンケート作成前にイメージを作るのにも向いています。実際、前述の外部委託の際には、Excelでアンケートのたたき台を作り調査会社など外部委託先と調査票案のすり合わせを行うことも多々あります。

Webアンケート:Googleフォームなどの無料ツールを使う

近年、増えてきている手法で、自前でアンケート回収まで行う場合には便利な手法の一つでしょう。利用しやすいのは無料で誰でも登録できるGoogle Forms、Microsoft Formsでしょう。

これらのメリットは、作成後に自動的にWebアンケート形式で配信できるほか、回答の回収や簡易的な集計などもできることです。

アンケート調査の進め方

アンケート調査はどのように進めたらよいでしょうか?
アンケート調査を行う場合に、多くの方がしてしまう間違いは「いきなりアンケート設問を作る」ことです。アンケート設問を作るとイメージしやすくなりますが、往々にして調査のための調査を行ってしまいがちです。

アンケート調査の進め方は下記の手順に従います。

  1. アンケート計画の作成
  2. 仮説の構築
  3. 対象者の設計
  4. アンケート調査票の設計
  5. アンケートフォームの作成
  6. アンケートの実施
  7. アンケート結果の集計と分析

1.アンケート計画の作成(目的、対象者、調査方法などの設定)

アンケートを行うのであれば、必ずその目的が存在するはずです。
マーケティング調査の場合、前提条件として「マーケティング課題」があります。例えば、ターゲットセグメントが見えていない、訴求ポイントが決まらない、顧客とのタッチポイントが明確でない、などです。
これらを明らかにし、何らかの意思決定をするためにアンケートを行うことが多いでしょう。

また、アンケートの目的がサンプリングや販売の一環というケースもあります。あるいは、サービス開始前の状況確認、例えばクリニックの問診票や、サービス提供後の状況確認、例えば満足度アンケートなどもありますね。

まずはビジネス上の目的を設定し、それに適したアンケートを企画します。計画については、おおむね次に挙げる5W1Hで考えておくとよいでしょう。

 Why:目的は何か?
 Who:誰にアンケートを取るか?
 What:何を聞くか?
 Where:どこでアンケートを取るか?
 When:いつアンケートを取るか?
 How:どのような手法を使うのか?

ここではアンケートについて解説していますが、調査手法としてアンケートが適さないケースもあります。
例えば、「ニーズを理解したい」「このソリューションの課題を知りたい」などは新商品開発やスタートアップなどでよく出る課題ですが、これらはアンケートよりもインタビューのほうが具体的な掘り下げができるので適切なことがほとんどです。

アンケートは手軽な手法ではありますが、「アンケートで知りたいことがわかるのか?」を意識するとよいでしょう。

2.仮説の構築(Web上の口コミや現場の声などをもとに仮説を立てる)

調査設計において最も重要なのは「仮説の構築」です。すなわち、「多分、こうなっているだろう」という想定をしておくことです。

ターゲットを明らかにしたい、ということであれば、その仮説を持っておきたいところです。例えば、「ダイエット」に対するフィットネスサービスを考えているとしましょう。とするとターゲットはざっくり考えると「ダイエットしたい人」になりますが、もう少し具体的に「どんな目的で、今の体型をどのくらいの体型に変えたくて、どんなライフスタイルで、どういう属性の人なのか?」程度の内容は複数イメージしておきたいところです。

クリニックの問診票は、事前に医師が確認したい項目≒よくある疾患を切り分けるための項目が書かれています。例えば、熱はあるか、痛い箇所はあるか、その他気になる不調はあるか、など。医師は最終的に「診断」をゴールとしますが、どれだけ早く的確な診断に至れるか、のためにアンケートを取ります。そのために「こういう回答が含まれていれば、〇〇の疾患を疑う」という仮説を事前に立てておくわけです。

3.対象者の設計

対象者は目的に合わせて選定し、必要な方へアンケートを依頼します。サービス満足度調査であればサービス利用者に限定されるでしょう。顧客ニーズ調査であれば、そのサービスのターゲットセグメントがアンケート調査の対象になります。
時間とコストがいくらでもあれば「全数調査」が理想ですが、多くの場合、標本調査といって何らかの割合で抜き出して調査をすることになります。一部を抜き出した調査の対象は「標本」と呼ばれ、標本は実際の比率に合わせて無作為に抽出することが一般的です。

対象者は、調査会社が持っている「パネル」を利用するケースもありますし、自社顧客を設定することも可能です。いずれにしても目的に合わせて適切な対象者を選ぶ必要があります。

4.アンケート調査票の設計

いよいよアンケート調査票の設計を行います。

設問の順番は、「答えやすいもの」から聞いていき徐々に難しいものになるようにするのが一般的です。また、対象者がイメージしやすい順番にしておくことをお勧めします。

例えば、ある飲食店のランチの満足度を測定したい場合、「①ランチで外食するか?」→「②ある飲食店を使っているか?」→「③その飲食店で何を食べているか?」→「④その飲食店の評価は?」という順番だと自然に答えられます。
逆に「④その飲食店の評価は?」から聞いてしまうと、使っていないからわからない、というようなことが起きてしまいます。

設問の順番の注意点は「前の設問が後ろの設問に影響を与えやすい」ことです。典型的には、ブランド調査の一環で純粋想起(なんの情報もなしにそのブランドを思い出せるか?)を確認したい場合に、気をつける必要があります。
例えば、「シナプス」というブランドを思い出せるかどうかを確認する場合、「マーケティング・コンサルティング会社で知っている企業名をご記載ください」という設問で確認することになります。ところが、この設問の前に「Q:次のマーケテイング・コンサルティング会社 シナプスを利用したことがありますか?」という設問があると、「シナプス」の想起率は相当に高くなってしまいます。理由はその前の設問でその名を見せてしまっているからです。

設問はわかりやすい日本語(もしくは回答者に合わせた言語)で、なるべく選択式の設問を設定します。選択式とは、設問の選択肢を提示して回答してもらうもので、次のような形式を指します。

Q:あなたは○○のサービスを使いたいと思いますか?
1.はい  2.いいえ  3.どちらともいえない

Q:〇〇サービスについてあてはまるものをお答えください。(いくつでも)
1.見た目が良い  2.使いやすい  3.価格が安い  4.機能がよい  5.その他  6.該当するものがない

選択式は回答回収後の集計が簡単にできるメリットがある反面、選択式を作れないなど仮説の精度が低いケースも多く、よい調査にならないこともあります。

一方で、自由記述を使いたいケースもあるでしょう。自由記述とは、次のようなものです。

Q:〇〇のサービスを使う理由を教えてください。
【          】

5.アンケートフォームの作成

アンケートフォームは調査票設計に合わせて作成します。Google FormsでもMicrosoft Formsでも、他の商用ツールでも基本的な動作は設定できるようになっています。

シングルアンサー(一つだけ選択できる選択肢付き質問)用のラジオボタンやマルチアンサー(複数選択できる選択肢付き質問)用のチェックボックス、自由記述用のテキストボックスなどを使い分けて作成します。

注意点としては、「前の質問で〇〇を回答した人だけ」というロジックを入れ込む場合、ページ遷移で設定する必要があります。

6.アンケートの実施(依頼と回答の回収)

アンケートは、決めた対象者に対して依頼し、回答してもらう必要があります。
アンケートの依頼は、調査会社に委託をしている場合を除き、多くの場合、メールでのご連絡が基本になります。理由はURLを送付したいからですね。
紙で案内する場合には、QRコードを一緒に印刷してURLに誘導しましょう。

依頼文は次のような内容をお勧めしています。

【〇〇についてのアンケートご協力のお願い:〇〇の方へ】

私は現在〇〇で、〇〇を行っておりまして、より良いサービスを提供するためにアンケートをお願いしています。

〇〇についてのアンケートです。
〇〇の方にご回答を頂きたいです。(〇〇以外の方は申し訳ありませんがご回答不要です)
回答時間はおよそ〇分です。

アンケート結果はご本人が分からないような形で統計データとして使わせていただく可能性があります。
また、アンケートをご回答いただいた中で気になった方には詳細にご質問させて頂きたいので個別にご連絡差し上げる可能性があります。

お忙しい中恐縮ですがよろしくお願いします

〇〇株式会社 〇〇

回答期限については、一般に期間が長ければ長いほど回答される可能性が高まりますので、おおむね2週間程度を設定しておくとよいでしょう。
対象者は回答を忘れたり、めんどくさがるケースも多々ありますので、何度かプッシュする方法を持っておくと回答率は高まります。

回答者は善意で回答いただくことが多いので、どのような回答内容であっても回答してくださったことに対して、お礼を申し上げるのを基本スタンスとしておきましょう。

7.アンケート結果の集計と分析

最後にアンケート結果の集計と分析を行います。
アンケートの計画段階で「何を意思決定したいのか?」を決めているはずです。意思決定したいことに対して調査結果がどうだったのか、が検証できれば一義的にはアンケートは成功です。言い換えれば、意思決定ができる情報が取れなければアンケートは失敗ともいえるでしょう。

アンケートの集計は単純集計とクロス集計があります。
単純集計は個々の設問に対する回答をまとめるもので、円グラフや棒グラフで整理することが多いです。


これらに対してさらに詳細を見る場合にはクロス集計を行います。クロス集計とは他の設問選択肢とのかけ合わせで結果を比較するもので、例えば、年代と満足度、や、利用頻度とサービスの特徴理解などで、違いがあるかを確認します。
Excelで分析する場合は、Pivotテーブル機能を使うのが一般的でしょうし、調査ツールのいくつかにはクロス集計ができる機能が含まれているケースもあります。

さらに複雑な分析をしたい場合には、多変量解析なども選択肢でしょう。例えば、コレスポンデンス分析や重回帰分析、クラスタリングなどによってより深い分析も可能になります。
ただし、これらの分析を行う場合は、企画や調査設計の段階で分析イメージを持っていないと、データが分析に使えないケースも出ますのでご注意ください。

調査票の作り方のポイント

調査票を作っていくうえでポイントになる箇所を簡単にご紹介します。

仮説を検証する設問にする

調査の目的は仮説検証です。したがって、各設問を集計・分析すると「仮説が検証できる」必要があります。
ところが、アンケートを行う、という段になると、「あれも聞きたい」「これも聞きたい」という聞きたいことが往々にして増えてきます。アンケート担当者は仮説の検証に使おうと思っても、周囲に聞くと「こんなことも聞いてみてはどうか?」というアドバイスを頂いたりしてしまいます。
それらを取り入れるのであれば、「それを聞くことによってどんな意思決定をしたいのか?」「どういう回答が期待されるのか?」もセットで確認するとよいでしょう。

回答率を高める工夫をする

調査は適切な対象者が十分な数回答していただけることで高い精度の仮説検証になります。
そのため、回答率を高める工夫が必要になります。

まずもっとも簡単な方法は「インセンティブ」を作ることです。
大手の調査会社が調査を行う場合には、調査対象者に対してインセンティブとして、ポイントやお金を渡すことが往々にしてあります。また、サンプリング調査の場合は魅力的なサンプルを渡すことで対象者を増やす、というような仕掛けを行うケースもあります。

次に心がけるべきは「誰に回答してほしいか?」を明確にすることです。
調査のプロでない方がアンケートを作るとよく見られることですが、「なんのための調査か?」「誰に回答してほしいのか?」がわかりにくいケースがあります。

さらには、記載した内容がどう使われるのかも気になるところです。例えば、多くの方が嫌がるのは「個人情報を書いたら営業を受けた」「変なリスト業者に渡された」というようなことです。
こうしたことから、アンケート依頼をする場合には次の点についてあらかじめお知らせしておくとよいでしょう。

  • なんのための調査か?
  • どのような方に回答してほしいのか?(あるいは誰は回答しなくてよいのか?)
  • 記入された内容はどう使われるのか?
  • 目安となる回答時間

回答しやすい工夫をする(心理面)

設問も回答しやすいものとしにくいものがあります。心理的に回答しにくいものは「人に言いたくないもの」です。
例えば、「あなたの年収はいくらですか?」と聞かれた場合、もし記名式だったり、対面でのインタビューだったりすると回答したくないでしょう。

心理的に回答しにくいものが設問として出てくるとどうするか?
多くの場合、「適当に答える」か、最悪の場合、その段階で回答を中断します。そうならないためにも、心理的に回答しやすいものにしたいものです。

心理的な回答しやすさを高めるには、まず個人を特定しないように配慮する必要があります。
また、直接聞くと心理的な抵抗があるものでも、いくつかの設問に分けると回答しやすくなるケースがあります。例えば、年収を直接聞くと回答は得られにくいですが、「製造業」「総合職」「管理職」「入社20年」ということがわかれば、ある程度の年収範囲の想定は可能な場合もあります。
このように直接聞かずに済むものについては、別の設問で明らかにするのも良いでしょう。

回答しやすい工夫をする(入力面)

回答しやすさはフォームの設計にも表れます。回答しにくいアンケートが出てくると、心理的な回答のしにくさ同様、「適当に答える」か、最悪の場合、その段階で回答を中断します。

まず、設問のわかりやすさは回答のしやすさに大きく影響します。そのため、簡潔な日本語で主語述語を明確にします。
また、回答の選択肢も複雑でないもののほうが良いでしょう。
選択肢が数多くある、例えば20個以上あると探すのが大変で適当に済ませてしまうことがあります。

回答のしやすいアンケートは、おおむね「シンプル」に作られています。
シンプルとは、

  • 日本語がわかりやすい
  • 難しい言葉や漢字、英語を使わない
  • 設問数が少ない
  • 設問選択肢が少ない
  • 「考えないと回答できない」質問がない

等です。

調査票作成における4つの注意点

調査票を作成する際に間違いやすいミスとして4つのポイントを記載します。

選択肢の作り方

選択肢の作り方の注意点は二つあります。すなわち、もれなくダブりなく、ということと、選択肢のレベルを合わせる、ということです。

以下、よくない例を記載します。

Q:あなたがランチに食べたいものはどれですか?(いくつでも)
1. 鶏肉料理 2.豚肉料理 3.牛肉料理 4.魚料理 5.野菜料理 6.ごはん(お米) 7. パン 8.おにぎり

この例の問題点は大きく二つ、①もれなくダブりなくに反していることと、②選択肢のレベルがバラバラ、というところです。

まず、①のもれなくダブりなくに反している、について。もれで考えると、麺やスイーツなども選択肢に挙げられているべきです。ダブりでいえば、「ごはん」と「おにぎり」はダブっているでしょう。

②の選択肢のレベルがバラバラ、に関しては、例えば、肉料理は鶏肉、豚肉、牛肉、と分けられているのに対して、魚料理、野菜料理は一つだけになっています。こうなると、「肉料理を食べたい人」が鶏肉、豚肉、牛肉に分散されるだけでなく、選択肢として肉料理が多いので、相対的に魚料理や野菜料理よりも肉料理のほうに票が集まることが多くなります。

これらのことを防ぐために、例えば次のような選択肢を考えましょう。

Q:あなたがランチに食べたいおかずはどれですか?(いくつでも)
1.肉料理 2.魚料理 3.野菜料理 4.その他

なお、もれなくダブりない状況を作るために、「その他」はよく使われますが、「その他」に多くの方が票を入れないよう、他の選択肢を充実させるようにしましょう。

バイアスの発生を減らす

アンケートには様々なバイアス(偏り)がかかります。典型的なものは設問によるコントロールや、前の設問の影響を受けることです。
次は、設問の文言でバイアスがかかる例です。

Q:スーツの金額は年収の1.5%が妥当と言われますが、あなたはいくらのスーツを買いたいと思いますか?
1.1万円以下 2.1万円以上3万円未満 3.3万円以上5万円未満 4.5万円以上10万円未満 5.10万円以上 6.わからない

この設問は最初の「スーツの金額は年収の1.5%が妥当と言われますが」という文言がなくても成立します。しかし、この文をつけることによってご自身の年収に見合った金額をつけなければならない、という意識が働いてしまいます。
このように設問に「余計な説明」を入れてしまうと回答をミスリードしてしまいます。

また、上述しましたが、設問の順番によっても回答は変わります。

Q1:あなたは電力消費量をなるべく減らすことに賛成しますか?
1.賛成 2.どちらかといえば賛成 3.どちらともいえない 4.どちらかといえば反対 5.反対

Q2:あなたは夏にエアコンを使いたいと思いますか?
1.積極的に使いたい 2.控えめに使いたい 3.どちらともいえない 4.我慢できるなら使いたくない 5.全く使いたくない

このアンケートはQ2だけでも成立しますが、Q1を先に確認すると「電力消費量を減らさなければならない」という気持ちが強くなる方が多く、結果的にQ2の回答が「使いたくない」方によるはずです。

これらのバイアスがかからないように「余計な文言はつけない」「設問の順番に気を付ける」必要があるでしょう。

回答者の属性と結果の因果関係を意識する

これは、結果の分析の際に気を付けるべき点ですが、回答者によって回答の位置づけが変わるので注意が必要です。
例えば、次のようなアンケートを取ったとしましょう。

Q1:あなたはA商品を利用していますか
1.いつも利用している 2.たまに利用している 3.利用していない

Q2:あなたはA商品が好きですか?
1.好き 2.どちらともいえない 3.きらい

この結果はどうなるでしょうか?もしQ1の回答が1が多ければQ2も1が多くなるはずです。逆にQ1の回答に3が多ければ2か3が多いでしょう。
つまり、回答者の状況によって結論が変わってしまうということです。

そのため、なるべくアンケート対象者の属性の割合は市場に合わせること、そして、属性が偏った場合には回答も偏る可能性が高いことを理解しておく必要があります。

個人情報保護対策を適切に行う

近年、個人情報保護の考え方がより厳しくなってきています。また、バイアスや回答のしやすさを考えても、アンケートは無記名にした方が無難でしょう。

さはさりながら、どうしても記名式にしたい、あるいは、メールアドレスなどの連絡先を取得したい場合には、回答結果は個人情報として取り扱う、ということを肝に銘じておくべきでしょう。
具体的には、結果は一般公開されないように、Google FormsやMicrosoft Formsの設定を再度チェックしたり、集計のためのデータは機密情報として管理する、ということです。

どのようなアンケートでも回答者にとってはある意味で「自分をさらす」情報になりますので、慎重に取り扱って下さい。

以上、アンケート調査を行う際の進め方や注意点についてご説明しました。
アンケートはわからないことが多ければやらないよりはやった方が良いです。ただし、やり方を間違えると無意味な結果、あるいは間違った結果に導いてしまうこともありますので、注意をしてください。

※注意:各社の製品・サービス名は各社の登録商標です。

この記事のライター


コンサルティング事業責任者 後藤匡史

株式会社シナプス 常務取締役 コンサルタント。

10年以上のマーケティング・コンサルティングの経験を有する。化粧品、外食、エンターテイメント、メディア、サービス、精密機器、電子機器、電気部品、医療機器、農業など数多くの領域を支援してきた。

多くの企業が陥る「顧客不在の戦略立案・実行」に対して提言。真のニーズを中心とした組織へと生まれ変わらせることをミッションとして、数多くの企業を変貌させてきた実績を持つ。

研修では、マーケティング研修のほか、問題解決スキル研修やファシリテーション研修での実績が豊富で、「すぐに使えるビジネスの実践的なスキル」を伝える講師として評判が高い。SMBCコンサルティング セミナー講師。

1973年生まれ、2007年シナプス入社、2008年取締役就任、2021年より現職。2021年よりアグリテックスタートアップのテラスマイル株式会社の非常勤取締役を兼任。


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