「あなたは、稟議書決裁をとることに苦労してませんか?」「稟議書の書き方のコツを知っていますか?」
「最短決裁時間」「ほぼ100%確実に」かつ「低労力で」稟議書決裁をとるための5つのコツを教えます。「稟議書の種類に応じた書き方」「決裁者のクセを掴む方法」など実務現場で磨いた稟議書テクニックです。
稟議書とは
稟議書の定義
稟議書とは、「会社のお金を使う」「契約締結をする」際に、会社内で承認を行うための書類です。「起案者」が作成し、規定された権限に基づき、起案者の上司や関係者が「決裁承認」します。
なお、厳密には異なりますが、実質的に「稟議書は、決裁書・起案書と同じもの」と考えて良いでしょう。
稟議書・決裁書の書き方の基本
稟議書・決裁書の書き方の基本は、「書くべき項目」です。下記5つの項目が網羅されている必要があります。
- 稟議書決裁案件の実行目的
- 稟議書決裁案件にかかわる金額(支出または収入がある場合)
- 稟議書で決裁承認してほしい契約内容(契約書締結が必要な場合)
- 稟議書決裁案件が実行された場合の予想されるリターン
- 稟議書決裁案件の実行に当たって予想されるリスク
100人以上の商品企画者の稟議書を見てきましたが、テクニック・コツ以前に「初歩的な稟議書・決裁書の基本項目の記載モレ」で却下になるケースが多いようです。
稟議書例文
具体的な、稟議書例文を見てみましょう。構成や文言の書き方などの注意点は、過去の実在の稟議書を、ほぼ再現しています。稟議書例文を通して、基本5項目の書き方を確認してください。
【タイトル】●●サービスの設備増強に関する追加設備の購入について
■1.目的・概要
●●サービス設備稼働率が、XX%となっており、設備増強の必要がある。
ついては、「2」記載の設備購入について承認お願いします。
なお、現在A社に7月導入希望で、サービス契約の内諾をいただいており、本稟議の設備購入は早急に進める必要があります。
■2.今回の購入設備
1)●●に関する設備増強
製品A:一式
製品B:13式
※その他詳細については、添付1のF社見積ファイルを参照ください。
2)購入金額
XXX,XXX,XXX円
※2017年度予算残額、YYY,YYY,YYY円
詳細は、添付ファイル2の「2017年度予算管理票」を参照ください。
3)購入予定会社
I社
※2017年計画時のコンペにて、最低価格であり継続購入。
なお、年初計画時の検討資料については、添付3「2017年度購入設備シミュレーション結果」を参照ください。
■4.収支計画
今回の設備購入および売上を勘案した収支計画は添付4「2017年収支計画(2017年5月10日版)の通りです。
なお、2017年度収支計画および設備投資予算計画については、2017年4月2日付けの決済番号XXXX-XXの稟議を参照ください。
■5.その他補足事項
今回購入設備は、決裁番号XXXX-YYと同じ製品であり、すでに2017年2月より、J社にてサービス稼働中です。
■6.本稟議に関連する契約
本設備投資に当たり、添付4の「●●に関する保守サービス契約書」の締結が必要となります。
なお、本契約書は、決裁番号XXXX-YYでの設備購入時と同一であり、契約内容は、法務確認済みです。
どの稟議書・決裁書を効率化すべきか
決裁数が多い「計画内」稟議書の書き方を集中改善
稟議書の労力削減のためには「一番本数が最も多く改善効果が高いテゴリ」で、起案から決裁までを省力化・高速化します。それは「計画内稟議」です。
多くの企業で「予算金額」「予算内容」とも「年初計画内」の稟議書決裁の割合が一番多いものです。
「計画内」と「計画外」の稟議書は決裁者のスタンスが異なる
「年初計画内」は、稟議書決裁者の承認スタンスが、「計画外案件と異なる」ため効率化が容易です。
定義上「計画内の稟議書は、予め年初に予算計画承認済み」です。よって、決裁者の稟議書確認スタンスは「当初計画予算の金額と執行内容が、年初計画通りか確認するだけ」になります。この決裁者のスタンスの違いに着目し、効率化を実現します。
- 年初計画外の決裁者スタンス:ゼロベースで審議する(厳しいチェック)
- 年初計画内の決裁者スタンス:計画通りに進んでいるか確認だけ(緩いチェック)
毎年100本決裁をとり続けた稟議書の書き方5つのコツ
「計画通り」を強調
「今回の稟議書が、決裁者自身が承認済みの年初計画予算通りであることを強調すること」が、稟議書の書き方のコツです。
決裁者は忙しいものです。決裁者に「あなたが承認した予算計画通りに進んでいます。よって、この稟議書は承認して安心です」と、一目でわかるように記載します
プラスよりマイナスをケア
決裁者の稟議書チェックで、年初計画通りなら、売上の上振れなどの「プラス要素」はほぼノーチェックです。一方、「マイナス要素」「リスクファクター」は、厳しくチェックされます。
決裁者に指摘されそうな「マイナス要素」や「リスクファクター」は、解決済み、または許容範囲内であることを稟議書内で根拠付きで示します。
計画内案件の比率を上げる
「年初計画内稟議書」の割合を増やすよう意識的に努力していました。
例えば、ITサービス事業を担当していましたが、購入すべき機器が、半年ぐらいで次々後継機に変わります。そのため、年初予算計画時に、稟議時に購入機器が、当初計画時の予定と多少ブレがあっても問題ないよう、様々なテクニックを駆使して年初予算計画を作ります。例えば、購入機器の詳細をあえて指定せず、「●●シリーズ」などと記載しておきます。
また、年初計画では、担当役員など重要な決済者とは、「ここは、ブレる可能性がありますが、大目に見てください」と事前に握っておくなどのテクニックも使いました。
健全な根回し
「稟議書差し戻し」で承認が1回分遅れたらアウト。顧客にサービス納品できなくなるスピード感の事業を回していました。そこで、確実に一発で稟議書決裁承認をとるコツが「健全な根回し」です。
「根回し」といっても簡単な工夫でOKです。「稟議書を書いた直後に、キーマンとなる決裁承認者と30秒程度会話する」というテクニックを使っていました。
例えば、「A社案件の稟議書を申請しました。条件はいつもと同じです。お客様がすぐ導入したいそうですので、早めに決裁承認お願いします。」と口頭で伝えます。この簡単な根回しをするだけで、決済者は「ああ、この稟議書、シナプスがいっていた件だな。事前に聞いていたとおりだな。」と認識され、稟議書が決裁承認される確率もスピードも上がります。
(上級編)決裁者のクセを掴む
稟議書決裁者のクセを掴み、稟議書の書き方を工夫し、省力化を実現していました。決裁者も人間。合理的に判断しようとしますが、個人のクセがあります。
それでは、「どうやって決裁者のクセを掴むか」。答えは「似た種類の稟議書決裁のたびに、少しずつ記載内容を変更し『実験』して確かめること」です。
例えば、同じ設備の再購入の際に、稟議書のある項目を削除したり、購入設備の書き方を変えてみます。この実験で「この承認者は、どこを重点的にチェックしいてるか。逆に、チェックしないところはどこか」を把握します。そして、承認される稟議書の書き方の最低ラインを見極めます。
決裁者の最低承認ラインを把握すれば、「必要なことだけ記載し、最低限の労力で稟議作成」できます。
まとめ
「稟議書の書き方のコツ」があれば、稟議書の起案から決裁までのスピードが早くなります。結果、事業実行スピードも早くなります。特に、不確実性の高い新規事業では事業実行スピードが成否を左右します。つまり、稟議書の書き方のコツの有無が事業成否にも影響します。
また、事業推進者は、社内政治を極め、効率的に低労力で稟議書決裁をとるコツを身につけ、顧客・競合など「外向きの仕事」に浮いたリソースを投資するのです。
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