新規事業アイデア創出のためのおすすめフレームワーク

新規事業開発をおこなう際にはまずアイデア・テーマだしを行います。シナプスの新規事業開発コンサルティングでは、アイデア出しフレームワークのひとつとして「アンゾフの成長マトリクス」の活用を推奨しています。既存市場において新製品を検討するのか、既存製品を新市場開拓して提供するのか、或いはその染み出しや飛び地を検討するのか。まずこのフレームワークを使って新規事業のアイデアを検討してみると良いでしょう。

新規事業のアイデア出し、テーマ出しがうまくいかない、という話をよく聞きます。とにかく考えまくり、悩みまくるのも良いのですが、フレームワークを使うと効率的に考えられます。この記事では、新規事業コンサルタントのおすすめフレームワークをご紹介いたします。

一番使われるのは、アンゾフの成長マトリクスでしょう。縦軸に市場、横軸に製品を取り、既存・新規のそれぞれを考えるものです。



市場浸透

既存事業が担当しているのが、既存市場、既存製品を拡大し市場浸透させることです。日本の多くの大企業はこの市場浸透、つまり、日本市場における現在柱となっている製品の拡大が難しい、というのが新規事業に向かわせる理由になっています。

新市場開拓

基本的な考え方は今の製品を他の市場に持っていく、というものです。例えば、今まで消費者に販売してた製品を材料として企業向けにも販売する、あるいは、飛行機で利用していた部品を自動車向けに展開する、というものが挙げられます。新市場開拓では、新たな顧客層への販売になるので、市場調査が欠かせません。これを新規事業としてやる場合には、VOC(顧客の声)をいかに集められるかが勝負になるでしょう。

また、意外と「既存製品」と言いながら、新市場に持っていくためには多少の変更が必要になるので、改めて顧客に適したものを考える必要があります。

新製品開発

既存市場の顧客に新たな製品を買っていただくために、新たに製品を開発します。いわゆる「クロスセル」(既存の他の製品を買っていただく)と考え方は同じですが、ここでは新たに開発をすることを前提としています。開発となっていますが、他社から調達できるのであれば、それももちろん選択肢になります。

新製品開発は、大きく二つの意味合いがあります。一つは、「既存顧客の既存のニーズの延長線上」であり、もう一つは、「既存顧客の新たなニーズの充足」です。

前者は、例えば、現在は様々な電子製品や自動車などにもリチウムイオン電池が積まれています。電池の容量増強や小型化は、業界全体として極めて重要なテーマであり、既存の技術を超えた(例えば、リチウムイオンではない他の化合物を利用するなど)手法で製品開発に成功すれば莫大な利益を生むことは間違いないでしょう。

一方で後者がまさに新規事業開発として求められているところでしょう。今までの顧客が気付いていなかった新たなニーズを発見しその課題を解決する、というものです。こちらも改めてお客様を理解するVOCが重要になるでしょう。

多角化

多角化は、全くの飛び地で勝負するものです。代表例が、富士フイルムが成功させた化粧品事業「アスタリフト」です。今までの顧客層(というよりニーズ)でもなく、フィルムとは全く異なる化粧品という製品を用いて事業拡大しましたが、その実、背景には、技術要素によるシナジーがありました。

一般的に「新規事業」と言われると、この多角化のことを指すことが多いのですが、一方で成功確率も低いので注意が必要です。

「新規事業」とはいえ、目的はあくまでも新たな売上の拡大です。新規事業開発室のような新規事業をやるために生まれた組織のミッションとしては、「既存のやらないところ」という足かせがはめられることも多いですが、そうでなければ、成功確率の高いところで勝負すべきでしょう。

私はこれを、「染み出し領域」と呼んでいます。多くの企業が既存事業(既存市場・既存製品)から少しずつ市場を拡大したり、製品を拡大したりして染み出してきたわけです。

新規事業アイデア創出のためのオススメフレームワーク:アンゾフの成長マトリクスのアレンジ

アンゾフの成長マトリクスの亜流になりますが、特に技術を強みとするメーカーの場合、製品の代わりに「技術」を使うことが多いです。上述の富士フイルムの事例でいえば、製品として見ると多角化ですが、技術として見るとフイルムに使われているコラーゲンが化粧品成分としても使えるので技術シナジーがあったわけです。
技術の得意領域を見いだせれば、意外と飛び地にならないケースも見出せます。



新技術、といった場合も、「自社にとって新技術」なのか、「世の中にとって新技術なのか」によっても難易度が変わります。もちろん、世界初の技術はそれだけで優位性がありますが、その分実現難易度も高い。一方で、世の中にある技術をM&Aや新規採用、あるいは自助努力によって社内に取り入れることによって新たな事業テーマとすることも可能でしょう。

私がコンサルタントとして気を付けている点の一つとして、「ビジネスモデル」も挙げられます。例えば、営業シーンで「物売りからソリューション提案へ」という話は様々なところで言われていますが、今まで同じものをたくさん売って成果を上げてきた方がいきなりソリューション(顧客の課題を解決する)をやれ、と言われても難しかったりします。また、製造業としてやってきたプレイヤーがいきなりサービス業を始めるのも大変です。

ビジネスモデルを変えるのか、変えないのか、ということも実は大きなジャンプにつながるケースが多いです。そういう意味では、昨今の「サブスクリプションモデル」(定額課金型のサービスモデル)へのシフトは、各社に対してかなりの変化を求めているのではないかと想像している次第です。

新規事業アイデア創出のためのおすすめフレームワーク:ライター


後藤 匡史(ごとう まさふみ)

株式会社シナプス 常務取締役 コンサルタント

10年以上のマーケティング・コンサルタントの経験を有し、化粧品、外食、エンターテイメント、メディア、サービス、精密機器、電子機器、電気部品、医療機器、農業など数多くの領域を支援してきた。多くの企業が陥る「顧客不在の戦略立案・実行」に対して提言し、真のニーズを中心とした組織へと生まれ変わらせることをミッションとして、数多くの企業を変貌させてきた実績を持つ。研修では、マーケティング研修のほか、問題解決スキル研修やファシリテーション研修での実績が豊富で、「すぐに使えるビジネスの実践的なスキル」を伝える講師として評判が高い。SMBCコンサルティング セミナー講師。
1973年生まれ、2007年シナプス入社、2008年取締役就任、2021年より現職。2021年よりアグリテックスタートアップのテラスマイル株式会社の非常勤取締役を兼任。


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