ドラッガーに学ぶ新規事業アイデアのフレームワーク

シナプス後藤です。

イノベーションを起こす、すなわち、今までに無い新しいビジネスを作る、と考えた時に、よく問題になるのは、「どうやってビジネスアイデアを思いつくのか?」です。

多くの場合、優れたビジネスアイデアが基点となってビジネス化されています。アイデア自体はダメだが他のところで何とかなった、というのはなかなかお目にかかれません。 そうすると、「じゃあ、アイデア発想力のある人が必要なのか?それを天才と言うのではないのか?」という議論になります。

  • ある日、アイデアが天から降ってきて思いついた。
  • 私の天才的なひらめきによってこのアイデアを思いついた。

等など。

この点について、ドラッガーさんは「イノベーションと企業家精神」の中でとても共感できる事を書いています。

  • 「企業家たる者は、いかにもろもろの成功物語に心惹かれようとも、単なるアイデアによるイノベーションに手をつけるべきではない。」
  • 「再現性が低く、教えることも学ぶことも出来ない。天才になる方法は教えられない。」

上述の本は、この2文を読むだけでも買う価値があると思います(他にも素晴らしいことがたくさん書かれています)が、ここから言えるのは、ビジネスとしてある一定の成功を担保するためには、「アイデア勝負」や「天才に期待」と言うのは無理がある、という事です。 これは、世の中に様々ある発想法を否定するものではありませんし、天才がいるのであればそれに越した事はありません。が、我々凡人はただ発想法だけで勝負をするには新規事業を作り出すのはリスクが高すぎる、ということなのです。

「イノベーションと企業家精神」の7つのフレーム

ドラッガーさんはアイデアを考えるフレームワークとして次の7つを提案しています。

  1. 予期せぬことの生起
  2. ギャップの存在
  3. ニーズの存在
  4. 産業構造の変化
  5. 人口構造の変化
  6. 認識の変化
  7. 新しい知識の出現

1.予期せぬことの生起

予期せぬこと、つまり、意外なことが起こっているということは何かのチャンスがある、という考え方です。 ドラッガーさんは、予期せぬ成功と失敗を探せ、と言っています。どういうことか?

例えば、私は、「意外な請求書を探しましょう」という提案を良くします。特にBtoB型の大きなメーカーになると、「なんだかよくわからないけど、想定外の会社が当社の製品を購入している」というようなことがあります。取引額が小さいので通常見逃されるのですが、掘ってみると意外なチャンスが存在しているというケースです。

2.ギャップの存在

ギャップがあるということはそこに何かのチャンスがある、という考え方です。 ドラッガーさんは、業績ギャップ、認識ギャップ、価値観ギャップ、プロセスギャップの四つがあると言っています。

例えば、認識ギャップの代表例が、「業界の常識は世の中の非常識」というパターンです。例えば、いまだに捺印が常識の業態もたくさんありますが、世の中の常識が徐々に変わってきており、いずれは変化するでしょう。

3.ニーズの存在

ニーズは、シナプスが最も重要視する新規事業の核となるものです。 漠然とした「ニーズっぽいもの」ではなく、具体的にお客様が、消費者が、生活者が、困っていることを明確にする必要があるでしょう。

シナプスでは、コンサルティングプロセスとして、「VOC」の活用を提唱しています。


4.産業構造の変化

産業構造は、今様々な業界でデジタル化やグローバル化の影響により変化しつつあります。

2020/04月現在でいえば、新型コロナウイルスによる感染症の影響でオンライン化が一気に進み、産業そのものが大きく変わる兆しもあります。 これらの変化があらたなビジネスチャンスになるでしょう。

5.人口構造の変化

日本は少子高齢化です。したがって、今は高齢者向けのビジネスが注目されていますし、例えば、介護関連ビジネスは大きな動きが想定されます。 人口構造は、最終市場のボリュームに直結するため、この構造変化を捉えることは重要です。

最近、私が感じるのは、今の10代はデジタルが当たり前になっている、ということです。今の40代以上は、パソコン、あるいはゲーム機からデジタル化されていくわけですが、今の10代は物心ついたときからスマートフォンがあったわけです。 こういう世代が増えてくる、ということも構造変化につながるでしょう。

6.認識の変化

社会の認識が変わってくると、そこにはビジネスチャンスが存在します。

例えば、クラウドファンディングは東日本大地震以降、急速に拡大しました。それは、「社会をよくすることにお金を使う」という価値観が大きく芽生えたからです。 また、昨今、ジェンダーに関わるトラブルが特にマスメディアでは増えていますが、これも世の中のコンセンサスとして、「ジェンダーによって人は差別されるべきではない」という流れになってきているからです。

こういう社会のコンセンサスを捉えることも重要でしょう。

7.新しい知識の出現

主にIT、ICT領域の進化、つまりデジタル化は世の中を大きく変化させました。 また、行動経済学が整理されると、経営やマーケティング、組織運営などのやり方も大きく変わってきています。

これらの新しい知識が世の中の変化につながる、ということですね。

アイデアのフレームワークを使う

上記の7つの視点は、アイデアを発見するための一つの切り口です。 大きく、前半四つは、3C分析等、業界環境分析をしっかり行う事によって見えてきます。 後半の3つは、マクロ環境の分析、PEST分析を行う事によって見えてきます。

これらの一般的に知られているフレームワークを使いながら、「アイデアを探す」という視点で見てみると、新たなジャンプの種が見えてくるでしょう。


アイデア抽出、スクリーニングのコラム

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