- アカウント営業の基本とその重要性
- アカウント企業選定の戦略
- アカウント営業を上手に進めるためのポイント
- アカウント営業の代表的な業務内容
- アカウント営業を進めるための必要スキル
アカウント営業の基本とその重要性
アカウント営業とは何か?一般的な営業の違いは?
アカウント営業とは、顧客との長期的な関係構築を通じて、持続的な収益を確保するための営業活動を指します。単なる商品やサービス紹介・販売にとどまらず、顧客のビジネスニーズを深く理解し最適なソリューションを提供することを目的としています。一般的な営業との最大の違いは、単発的な売上よりも顧客との長期的な関係性と信頼関係の構築に重点を置く点にあります。
アカウント営業のプロセスは、迅速な売上を求める短期志向の営業とは異なり、長期的なビジョンを持ちながら顧客の成長と共に自社の発展を目指すものとなります。このため、アカウント営業の担当者には、高い洞察力と柔軟性により、顧客との信頼関係を強化し競合他社との差別化を図ることが求められます。
さらには、アカウント営業は、顧客との密接なコミュニケーションを通じて双方にとって有益な関係を構築することが重要です。これには、顧客の課題を理解し、それに対応するための戦略を練り上げ、具体的な行動計画を策定する力が必要となります。顧客のニーズを先回りして捉え、プロアクティブに提案を行うことで、信頼を更に深めることが可能です。
顧客深耕のためのアカウント営業の意義
顧客深耕とは、既存の顧客関係をさらに深め新たなビジネスチャンスを創出することを指します。アカウント営業は、顧客深耕を進める主導的役割を担います。
営業という仕事は、新規顧客の獲得を目的とする「新規営業」と既存顧客の維持を目的とする「既存営業」に分けられます。新規営業は、一般に「1対5の法則」の法則として知られているように、新規顧客の獲得は、既存顧客のリピート獲得の5倍ものコストがかかるとされます。このことは、効率よく収益を拡大するために既存顧客の維持が重要であるということを示しています。
(戦略コンサルティング会社のベイン&カンパニーによる『顧客ロイヤルティの経営』では、「リピート率(顧客維持率)を5%改善すると、企業の利益は25%~95%ほど改善される」という調査・研究結果が紹介されています。)
既存維持率を上げるには、商品・サービスの提供品質の維持・向上という「守」の活動をベースとして、横展開やクロスセル、アップセルといった「攻」の営業活動が欠かせません。そのため、アカウント営業には、顧客との対話を重ね、顧客の経営課題や業界動向を把握し、それに基づいた提案を行う、といった能動的な営業活動を通じて顧客の信頼を得ることが求められるのです。
顧客のニーズを予測し、先回りした提案を行うことで、顧客のビジョン実現を支援し、結果として継続的なビジネスチャンスを生み出すことができるのです。顧客の声に耳を傾け、ニーズに応えるだけでなく、新たな価値を提供することが、信頼関係を一段と強固にします。
アカウント企業選定の戦略
自社のビジョンからのアプローチ(定性的なアプローチ)
アカウント企業を選定する際には、自社のビジョンや目標から逆算して考えることをお勧めします。自社が目指す方向性に合致する企業を選ぶことで、共通のゴールに向かって協働することができます。
このアプローチにより、長期的な価値提供が可能となり、双方にとって有益な関係を築くことができます。また、このプロセスは単なる顧客数の拡大を超え、質の高い顧客との関係を重視するものであり、結果として、営業活動全体の効率化と質の向上に寄与します。
さらに、この戦略は、顧客との価値観やビジョンの共有を促進し、より深いレベルでのパートナーシップを形成するための重要な基盤となります。継続的な価値の提供を通じて、顧客との信頼をさらに強固なものにし、持続的な関係を築くための礎となります。
自社のKGI(目標数値)からのアプローチ(定量的なアプローチ)
これまで述べてきたように、アカウント営業には深く顧客を理解することが求められます。そのためには、アカウント企業のビジネス分析や組織分析、業務分析(後述いたします)など、相当な労力を要する作業を実施する必要があります。担当顧客企業すべてに対してそのようなことができればよいでしょうが、時間は限られており、現実的な考え方とはいえません。
そこで戦略的にアカウント企業を選ぶ必要が生じるのですが、そのための視点として、「自社のビジョンと合致すること」に加えて、「自社のKGI(目標数値)達成へのインパクト」を意識しておきたいところです。
売上・販売計画をたてる場合、①リピートなどの成り行き数値に②既存顧客の成長分、③目標との差分を新規獲得分として、積み上げ式で計画するのが一般的でしょう。この②既存顧客の成長分は、既存顧客の潜在的な取引拡大の可能性(=ポテンシャル)であり、そもそもの顧客企業のビジネス規模や成長性、自社商材の現状シェアなどを踏まえて、どの程度の拡販余地があるかを推定し見込み額を計上します。
相当の労力(つまり、コストですね)を特定のアカウント企業に投資するのであれば、相応のリターンを期待したいもの。また、数値が明確にならなければ、攻略プランもぼんやりしたものになってしまいがちです。二重の意味で目標数値の視点をもって戦略アカウント企業を絞り込みたいですね。
アカウント営業を上手に進めるためのポイント
顧客企業のビジネス分析を行う
顧客企業を深く理解するためには、その顧客企業=戦略アカウント企業のビジネス分析が不可欠です。顧客の業界動向や競合他社の動きを調査し、次に顧客の財務データや組織構造を分析します。これは、顧客企業の立場で3C分析を行うことと同義で、これらの分析により、顧客が直面する課題を的確に把握し、適切なソリューションを提案するための基盤を築くことができます。
また、こうした分析は、顧客だけでなく自社の営業戦略の最適化にも繋がり、結果として、より効率的で効果的な営業活動を実現するための重要なステップとなります。アカウント営業を推進している企業では、多くの場合、戦略アカウント企業として複数事業を有する大企業、エンタープライズ企業をおいています。そのため、現場の営業の方にとってこれらの分析は大局的過ぎて目標達成に役立たない、無用の長物という烙印をおされがちです。ですが、このステップを省いてしまうと、顧客企業の投資方針、今後どこに投資をするのか(予算がつくのか)、という目線が抜けてしまうため、ターゲットとすべき部門や組織を見誤ることにつながります。
さらに、顧客のビジネス目標に対する理解を深めることで、より具体的でターゲットを絞った提案を行うことが可能となり、顧客のビジョン達成を支援します。分析の結果を活用して、顧客の課題に対する的確なソリューションを提供し、信頼関係を一段と強化することが可能です。
顧客企業を事業、業務、ソリューションの3レイヤーで理解する
最適なソリューションを提案するためには、顧客企業を「事業」、「業務」、「ソリューション」の3レイヤーで分析することが有効です。
事業レベルでは顧客のビジネスモデルや市場ポジションから事業課題を抽出し、業務レベルでビジネスプロセスやオペレーション上の解決すべき課題を把握します。そのうえで課題解決のための最適なソリューションを特定・提案することで、顧客にとって価値のある営業活動を実現します。
この3レイヤーによる課題整理は、自社のソリューションありきの提案の枠を超えた、顧客組織の本質的な課題に対して的確なアプローチを行うための基盤となります。さらに言うと、このフレームで整理することによって「顧客の期待を超える」提案が可能となり、結果として、競合との差別化、顧客との信頼関係深化につながると考えられます。
顧客企業の意思決定構造を明らかにする
効果的な営業を進めるためには、顧客企業の意思決定プロセスやキーパーソンを明らかにすることが重要です。訪問やインタビューを通じて、組織内の権限構造や影響力のある人物を特定し、その人々との関係を築くことが、営業活動の成功に繋がります。
このプロセスは単なる情報収集を超え、顧客の組織文化や価値観を理解するための重要な機会です。これにより、顧客企業のニーズに合致した提案を行うことが可能となり、結果として、顧客満足度の向上に寄与します。
さらに、意思決定者との関係構築は、顧客に対する信頼性を高め、営業活動全体の効果を最大化するための鍵となります。関係構築のプロセスを通じて、顧客のニーズを先取りし、最適な提案を行うことで、信頼をさらに深めることが可能です。
アカウント営業の代表的な業務内容
一般的に営業活動は、プランニング、関係性構築、提案、交渉、クロージングというフェーズで構成されています。アカウント営業は長期目線での活動になりますので、特に、プランニングと関係性構築に関する活動についてこの記事では記述しておきます。
戦略アカウントプランの立案
顧客との関係を深めるためには、段階的なアプローチが必要です。初期段階では、顧客のニーズを把握するための情報収集を行い、中期段階で信頼関係を構築、最終段階で新たなビジネスチャンスを創出します。このプロセスを通じて、持続的な顧客関係を築くことが可能です。さらに、この段階的な関係構築は、顧客の期待に応え続けるための重要な戦略であり、顧客との対話を通じて継続的なフィードバックを得ることで、営業活動をさらに洗練させることができます。
こうした戦略アカウントへの段階的アプローチを可視化・共有するために、アカウント営業を推進している企業の多くでは、アカウントプランを立案しています。
アカウントプランは長期的な関係構築をどのように進めていくか、具体的にいつ、だれが何のために何を行うか、が明示された計画を指します。関係構築の各段階での目標を明確にし計画的にアプローチを行うことで、顧客との信頼関係を一層強固なものとし、新たなビジネス機会を開拓することが可能になります。
最適ソリューション提供に向けた顧客との対話
重要アカウントであれば、電話やメールでの連絡や定期訪問などで顧客と接点をもたれていることでしょう。
定期的な顧客との対話は、単なる御用聞きにとどまるものではなく、顧客のビジネス状況を分析し課題を定義したり、課題解決に向けたアプローチを模索したり、ビジネスの成功を目指した共創活動でありたいものです。
そのためには、個々の顧客接点の目的を明確にし、情報収集や仮説構築などの事前準備を行う必要があります。
このようなプロセスのデザインは、営業担当者のスキル向上にも寄与し、顧客との関係をより豊かにするための鍵となります。訪問の際には、顧客の課題を深掘りし、顧客の期待を超える提案を実現するための準備を徹底することが重要です。訪問後には、フィードバックを得て次回の訪問に生かすことで、関係構築をさらに強化することができます。
アカウント営業を進めるための必要スキル
成功するアカウント営業担当者の特徴
アカウント営業に限らず、営業担当に求められるスキルは高次化が進んでいる、と言われています。それは、商材による差別化が難しくなってきていることと併せて、顧客企業側の情報収集力がデジタル技術の浸透により相当に高まりソリューションについての認知・理解が進んだ結果として営業担当者の主業務であった自社商材の紹介はそれほど必要とされなくなってきていることと同義です。そのため、顧客の現状の問題を整理・分析し、種々の課題を洗い出したうえで重点課題を特定しながら、ソリューション提供を進める、というコンサルティング型の営業が志向されるようになってきています。
アカウント営業の定義(顧客課題の解決による長期的な関係構築を通じて持続的な収益を確保するための営業活動)を踏まえると、アカウント営業担当者には、次に述べる3つのスキルを高次のレベルで複合的に発揮することが求められるのです。
顧客視点に立ったコミュニケーション能力
成功するアカウント営業担当者は、単に話が上手なだけでなく、顧客の真のニーズを的確に引き出す高いコミュニケーション能力を持っています。
具体的には、顧客との会話において常にオープンクエスチョンを活用し、顧客の課題や潜在的ニーズを自然に引き出します。また、相手の発言の背景や感情に注意を払い、共感を示しながら相手が安心して話せる環境を作ります。その結果、顧客との深い信頼関係が築け、表面的な課題だけでなく本質的な課題に対するソリューションを提供することができます。
主体的かつ能動的な課題発見力と提案力
成功するアカウント営業担当者は、待ちの姿勢ではなく、自ら顧客の課題を発見し解決策を積極的に提案する主体性を持っています。
たとえば、顧客からの依頼がなくても、顧客の事業や市場環境の変化をいち早く察知し、タイムリーかつ的確な提案を行います。また、顧客自身が気づいていない潜在的なニーズに対しても、データ分析や業界トレンドを活用しながら、積極的に解決策を提示します。
こうしたプロアクティブな姿勢が、顧客満足度の向上と継続的な売上拡大につながります。
柔軟で迅速な問題解決能力
アカウント営業担当者として成功するには、トラブルや予想外の状況に迅速かつ柔軟に対応する能力が不可欠です。
具体的には、顧客の問題発生時に冷静に状況を把握し、迅速に関係部署や専門家を巻き込み、最適な解決策を検討・実施します。また、過去の経験や知識だけに頼らず、常に新しい情報を吸収し、柔軟な発想で顧客に合ったソリューションを提案できることも重要です。
この能力があることで、顧客から高い信頼を得られ、継続的な取引関係が強化されます。
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