販売価格の決め方-どう顧客価値を正しく計算し価格設定するか

あなたは自分なりの商品価格設定ロジックを持っていますか?」

販売価格設定は、重要な意思決定でありながら、「勘に頼った価格設定」「コストに一定利益を載せるだけの価格設定」が行われています。価格設定の基本は、顧客価値を正しく計算することです。特にBtoBでは経済合理性で購買判断がされます。

今回は、「販売価格の決め方-どう顧客価値を正しく計算し価格設定するか」として顧客思考の価格設定法について解説します。


1. なぜ価格設定で、顧客価値を正しく計算しする必要があるか


1-1.価格設定はコストが下限、顧客価値が上限

価格設定で考慮すべき主な要因は3つです。


  1. カスタマーバリュー(顧客価値)
  2. 製造コスト
  3. 競争環境

利益確保するには、製造コストを上回る価格設定が必要です。
価格>製造コスト(価格下限)

一方、顧客価値(カスタマーバリュー)は価格設定に置ける上限値です。
顧客価値(価格上限)>価格


1-2.BtoB企業では、経済合理性が基準


企業目的は「世の中の人を幸せにする」「世界から病気をなくす」と言っ理念を持った企業もいるでしょう。しかし、これらの理念を実現するためにも、利益を上げることが不可欠です。

営利企業である限り、経済合理性を基準に企業価値を上げることが必要です。つまり「継続的に利益を上げること」が重要な企業目的です。

1-3.稟議書にロジカルに顧客価値を説明できる価格設定

企業の購買行動においても、購入可否を判断するのは1人1人の人間です。そのため、必ずしも経済合理的ではない判断も購買意思決定に影響します。

しかし、企業は経済合理性基づく判断を強制させる仕組みを持っています。それが、社内稟議システムです。

稟議書には、必ず自社にとって経済合理性の説明を記載します。そのため、稟議書にロジカルに顧客価値を説明できる価格設定が必要になります。

2. どう顧客価値を正しく計算し価格設定するか-算出事例

特にBtoB商品の価格設定は、顧客価値をできるだけ定量化します。

2-0. 同じ状況でも価格設定方法は様々

ここで、販売価格設定の具体例として「営業効率化のためにタブレット端末を導入したい。」という事例を考えます。

例えば、以下の3つの価格計算ロジックが考えられます。

  • 自社コストに標準利益を乗せて価格設定
  • 自社製品導入による、コスト削減効果から顧客価値計算
  • 自社製品導入による、利益創出効果から顧客価値計算

2-1. ①自社コストに標準利益を乗せて価格設定


自社コストに決まった標準利益を乗せて価格設定します。例えば、コストが1台当り5、000円、標準利益がコストの20%とします。

商品価格設定=コスト+利益 = 5,000円+1,000円 = 6,000円


2-2. ②コスト削減効果から顧客価値計算


例えば、営業が日報を書くために毎日会社に戻るための30分を無駄にしていると仮定します。タブレット端末導入により、営業1人当たりの時間が30分×20営業日=10時間の削減。営業担当の時給が2,000円とすると、毎月20,000円のコスト削減効果=顧客価値が生まれます。

顧客価値 = コスト削減額 = 2,000円+10時間 = 20,000円

2-3. ③利益創出効果から顧客価値計算

例えば、タブレット導入により毎月の営業担当の顧客訪問が5件増えると仮定します。訪問受注率は20%で、5件訪問すると1件受注できます。販売商品価格が20万円で、粗利が20%とすると、40,000円となります。タブレット端末導入により、毎月営業1人当たりの40,000円の利益創出=40,000円の顧客価値が生まれます。

顧客価値 = 利益創出額 = 訪問件数5件 = 受注件数1件 
= 20万円×20% = 40,000円


2-4.顧客価値比較まとめ


同じ状況設定ですが、3パターンで金額は大きく分かれました。

例えば、「コスト削減の顧客価値は20、000円/月」なので価格設定は18、000円/月。利益創出の顧客価値は40、000円/月」なので価格設定は36,000円/月、といった計算が可能でしょう。一方、コスト+標準利益で計算すると価格設定は6、000円/月です。

この場合「コスト+標準利益」で販売価格を決めると、本来得られるはずの利益を逃すことになります。一方、顧客価値を論理的に算出し納得させられれば、顧客は元のコストより遙かに高い価格設定でも購入するでしょう。

このように顧客価値を正しく計算することで儲かる価格設定が可能となります。

まとめ

  • 価格設定は顧客価値計算から
  • 顧客価値計算を納得させれば利益率の高い価格設定も可能
  • BtoBでは、稟議でロジカルに顧客価値を説明できなければならない
  • BtoCでも、顧客価値は重要だが得られる価値は個人ごとに大きく変わる


参考情報

1.マーケティングフレームワーク実践ビジネスナレッジコラム


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