新規事業でマーケティングを活用するために

新規事業の成功にはマーケティングが不可欠です。 一方で、多くの方が様々な「マーケティング」を思い浮かべますので、5つのポイントで記載します。 ①まずは「マーケティング戦略」を ②マーケティングリサーチはフェーズによってやり方が変わる ③デジタルマーケティングはスモールスタートができる手段 ④マーケティングコミュニケーションの全体像を考える ⑤結局はお客様理解に尽きる

新規事業の成功にはマーケティングが不可欠です。売上を上げることによって新規事業の多くの課題がクリアできる、というのがその理由です。

一方で、「マーケティングが必要」と言われても多くの方が様々な「マーケティング」を思い浮かべますので、それぞれ整理して記載します。

  • 1.まずは「マーケティング戦略」を
  • 2.マーケティングリサーチはフェーズによってやり方が変わる
  • 3.デジタルマーケティングはスモールスタートができる手段
  • 4.マーケティングコミュニケーションの全体像を考える
  • 5.結局はお客様理解に尽きる

各論に入る前に、マーケティングとは何か、ということを改めて整理しておきましょう。
マーケティングは、売上を拡大し利益を獲得するための考え方や手法のことを指します。
シナプスでは、「顧客ニーズへの適合と競争優位を構築する活動」と定義をしています。
一般的には売れる仕組みづくり、と言ったり、価値を創り伝え届ける、と言ったりしますね。
狭義には市場調査やプロモーション、WebやSNSなどによる拡販活動をイメージされる方もいらっしゃいますが、かなり幅広い理論体系です。

我々コンサルタントは、新規事業の様々なタイミングでお声がけ頂き支援をさせていただきます。その中に「マーケティング」も含まれます(当社の強みでもあります)が、お客様が「マーケティングを支援してほしい」とおっしゃるときには上記のどの部分に支援が必要なのか、を見極めて適切な提案をしています。
お客様自身が必要なものを誤認されているケースもありますので、それも踏まえて状況を整理していくのもコンサルタントの仕事です。


さて、これらを踏まえたうえで個々にご説明します。

1.まずは「マーケティング戦略」を

マーケティング戦略の意思決定ポイントは、ターゲティングとポジショニングです。
すなわち、
・お客様は誰なのか?
・何を訴求するのか?
を明確にすることです。

新規事業の初期段階では、ターゲットも製品も決まっていないところからのスタートになりますので、「誰のどのようなニーズに対して価値提供するか?」が重要な意思決定ポイントになります。事業開発でよく使われるビジネスモデルキャンバスやリーンキャンバスでも顧客の課題、顧客セグメント、提供価値、等は初期段階の重要要素として取り上げられています。ただし、初期段階ではターゲットもポジショニングも仮説に過ぎないので、複数の可能性のあるターゲット像を持っておくとよいかと思います。

一方で、ある程度事業が進んでいく、売上で言えば数百万円~数千万円となってくると、徐々に「購入していただけるお客様」が見えてきます。また誰が買っているかだけでなく「なぜ買っているか」も見えてきます。このあたりで初めて具体的なターゲット像や競合他社にはないポジショニングのポイントが見えてきます。

なお、ポジショニングについては、「すでに世の中にある製品・サービス」を取り扱う場合と「世の中に全くない製品・サービス」を取り扱う場合で若干進め方が変わります。すでに世の中にある製品・サービスを取り扱う事業の場合は、既存の製品・サービスに対してのポジショニングが基本となります。世の中に全くない製品・サービスの場合は代替品、すなわち、今お客様が課題解消に使っているものに対してのポジショニングになるでしょう。
あくまでもポジショニングとは「お客様の頭の中のイメージを作り上げる」ことにありますので、お客様が持っているイメージを知っておく必要があります。

2.マーケティングリサーチはフェーズによってやり方が変わる

マーケティングリサーチ(主に市場調査)は、何事もわからないだらけの新規事業ではかなり有効な手段です。
一方で、何でもかんでもアンケートに頼ったり、お金で解決しよう、というスタンスは間違いで、フェーズによって課題が変わり進め方も相当変わります。
それぞれ記載します。

※シナプスのサービスを確認したい方は下記をご覧ください。

新規事業開発のためのマーケティングリサーチ

2-1.領域選択では二次データをフル活用しよう

新規事業開発室が推進する「なんでもいいから新規事業を立ち上げろ」というミッションの場合は、最初に領域選択、すなわち「どこの領域で新規事業を立ち上げるべきか?」を検討するフェーズがあります。ここでは市場規模やそれぞれの業界の変化、潮流などを見ながらの意思決定が必要になります。
 したがって、業界ごとの市場規模や課題がまとまった「〇〇業界レポート」などを積極的に利用するのをお勧めしています。独自に調査をかけるのはダメとは言いませんが、このタイミングでは費用対効果が合わないことがほとんどです。

2-2.初期の事業企画ではインタビューに次ぐインタビューを

事業企画、すなわち「誰にどんな価値をどんな方法で」提供するかを考える、決めるためにはとにかく顧客インタビューをお勧めします。(シナプスではこの活動を『VOC』と呼んでいます。)
お客様のことはわからない。状況によっては全くわからないことも当たり前のようにあります。そのため、とにかくいろいろな方にインタビューして自分たちが考えた仮説を検証していく作業が必要です。
このタイミングでアンケートをやりたがる方も多いですが、アンケートはざっくり全体像はわかりますがニーズやお客様の理解には全くつながりません。とにかくお客様を理解するために「インタビューに次ぐインタビュー」をお勧めします。

2-3.プロダクト開発やUI/UX設計は顧客レビューをしたい

顧客の課題が理解できた、さて次はプロダクトだ、となった場合にもやはりインタビューを繰り返します。今度は製品イメージ図やモックアップ、プロトタイプを持ってお客様に使っていただきレビューを頂くのです。これもアンケート等よりは、目の前で使っていただいて感想を頂く、あるいは使っているところを見て不具合を見つけるほうがより多くの知見を得ることができます。

2-4.事業計画によって投資を獲得するなら定量調査を

事業計画を社内で提案する、という場合にはかなり精度の高い分析が求められるケースがあります。特に、製造業などで製造ラインを作らなければならない、あるいは、プロモーションコスト含めて何千万円も投資が必要な場合、等ですね。実際に立ち上げた場合でも簡単に辞められる性質の事業であれば調査費をかけるよりはスタートしたほうが良いケースもありますが、リスクが大きい場合には調査検証が必要になります。
ここでは調査会社やプロのリサーチャーなど、調査を専門としている方の支援を得るほうが望ましいでしょう。

2-5.「販売」も立派な仮説検証

新規事業の場合、「調査」という手段を取らなくても、実際に販売活動を行うことによって仮説が検証できます。もっと言えば、調査のような疑似的な検証よりはダイレクトに「売れた」「売れなかった」という方が信ぴょう性も高いので、リスクがそれほど高くなければとにかく早く売り出してしまうことをお勧めします。
 近年では、クラウドファンディングがとてもやりやすくなっていますので、まずはクラウドファンディングによって受容性を図り、よければローンチ、というスタンスを取られるケースも増えてきました。これも疑似的ではあるものの実際にお金を集めているという点で通常の調査よりは精度が高いものと思われます。

2-6.競争優位性構築のための調査

事業が立ち上がりしばらくすると、「競争優位性をどのように作り出すか?」が重要な論点になってきます。
調査には、「市場調査」「顧客調査」「競合調査」「技術調査」等様々なテーマがあります。特に、強力な競合が存在していたり、ポジショニングが重要な事業では競合調査も積極的に行うことも選択肢かと思います。

3.デジタルマーケティングはスモールスタートができる手段

「マーケティング」という単語で、近年イメージされやすいのはデジタルを利用したプロモーション手法でしょう。Webマーケティング、SNSマーケティング等がこれにあたります。また、メルマガ等もこの一部ですね。
 既存メディアを活用したマス広告に比較してデジタルマーケティングは、スモールスタートができる点で新規事業向きの手法とも言えるでしょう。特に、ECやSaaS等、最初から「デジタルで販売する」ことをイメージした事業案だと、デジタルマーケティングを使わない手はありません。
 もちろん、真面目に実施しようと思うと、Webサイト構築、SEO、Web広告、SNSでのフォロワー獲得、キャンペーン用の動画・コンテンツ制作等かなりコストがかかります。一方でデジタルの良いところは、自分でやろうと思えばほぼキャッシュアウトなしで全て出来てしまいます。広告費もキーワード広告やSNS広告は数万円程度に費用を絞っての活用もできるため、とにかく始めやすい、というのがメリットです。
 時間があればすべて自分で始めるのも選択肢ですが、得意な方を招き入れたり、企業内新規事業の場合は「社内でデジタルマーケティングをやっている部署」の(公式・非公式の)支援を得ることでもそれなりに効果が出ます。

 新規事業の立ち上げが見えてきたら、デジタルマーケティングは必須の手段と思っておくのが妥当かと思います。

※シナプスのデジタルマーケティング支援サービスは下記をご覧ください

マーケティング・コンサルティング:デジタルマーケティング

4.マーケティングコミュニケーションの全体像を考える

 デジタル手法はやりやすいものの、伝統的なアナログ系の施策も一定の効果が期待できます。例えば、ポスティングは印刷費とポスティング費用はかかりますが、店舗型のビジネスのように「地域を限定したビジネス」では意外と費用対効果を高くすることもできます。
 これらも含めて、マーケティングコミュニケーションの全体像、すなわち、「ターゲットに知っていただき価値を理解していただき購入していただくための一連の流れ」を構築する必要があります。近年、「カスタマージャーニー」という名前で知れ渡っていますが、お客様の購買行動を支援する全体の流れを設計したいところです。
 この中に具体的な手段としてデジタル手法やポスティング、キャンペーン等が存在しています。事業が大きくなってきたら、あるいは最初から大きな事業を狙っていく場合にはテレビ広告等伝統的メディアも活用したプロモーションの検討も必要になるでしょう。

5.結局はお客様理解に尽きる

マーケティングがなぜ必要か?
 いろいろな手法を記載しましたが、結局のところ、お客様を理解し、お客様が真に必要とするものを提供する、それが事業成功のカギになります。マーケティングとはその一連の流れを作るための理論体系であり手法です。
 従い、「マーケティング」という耳障りの良い言葉に流されることなく、それぞれの事業に必要な「お客様の理解」を進めていくことが重要かと思います。


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