新規事業開発の初期段階では、「企画書」が必要になります。 これは、新規事業の検討を進めていくうえで、「こんなことを考えているから検討させてください」というためのもので、この段階では、予算というよりも主に、「自分の時間工数を新規事業に使わせてくれ」」ということになる事が多い印象です。 とはいえ、まったく予算がないと簡単な検証すらままならないことも多いので、出来れば、いくばくかの予算は獲得しておきたいものですね。
では、このタイミングでは企画書に何が書れていればよいのでしょうか?
新規事業開発の企画書に記載したい事
企画書とは、何かを始めるときに関与者に「これならやってよい」と思わせるための資料です。
新規事業開発の場合は、お金の出し手(多くの場合、経営陣)に「これをぜひ進めて欲しい」と言わせるためのものです。
したがって、主に下記の内容が必要になるでしょう。
なぜやるのか?
新規事業の目的や狙い、「この新規事業」が自社にとってどのような意味があるのかを書きましょう。 人は、「なぜ?」に動かされます。大前提として何のためにやっているのか、を明確にしないとそのあとのWhat、Howだけでは人は動きません。
当然ながら、この事業を推進することで何が得られるのかも記載しておきたいところです。
事業テーマ:何をやるのか?
事業テーマの記載には様々なレベル感があります。後述しますが、本項では事業検討の比較的初期段階で必要になるレベル感として記載しています。 どの段階でも明らかにしておきたいのは、
- 誰に
- どんな価値を
- どんな方法で
という点です。 誰に、とはターゲット顧客です。「シニア」とか「若者」というようなざっくりしたものではなく、シニアでも現在65歳程度でアクティブな行動をしていて、一方で健康に対して〇〇のスタンスを持っている、など具体的に定義したいところです。
どんな価値を、とは、顧客に対する提供価値のことで、このビジネスによってお客様が何を得られるのか、を記載します。これを記載するためには、お客様のニーズ(困り事や課題など)を明確につかんでいる、あるいは少なくとも確からしい仮説を持っている必要があります。
どんな方法で、とは、製品やサービス、提供方法、ビジネスモデルなどを指します。製造業の場合は、具体的な製品イメージが描かれていると誰にとってもわかりやすい企画書になるでしょうし、ここが具体化されていないと企画書を受け取る側も判断しにくくなります。
いくらかかるのか?
企画書の目的は、「これをやらせてほしい、ひいては〇〇が必要になる」ということを相手に納得し、提供していただくことです。したがって、費用であればいくらかかるのか、リソースであれば何がどのくらい必要なのか、期間であれば、いつまで必要なのか、を記載しましょう。
リスクや課題は何か?
事業のリスクや課題になる事です。新規事業の場合には、大きく二つの観点を考慮しておく必要があり、一つはこの新規事業を立ち上げるにあたっての課題やリスク、そしてもう一つは既存事業に対する影響です。
前者は「現時点で分かっている超えるべきハードル」と「現時点では分かっていないが明らかにすべきこと」、および、「事業失敗につながる事象」を明確にしておきたいところです。多くの方が、事業の魅力を伝えたいがゆえにネガティブな情報をあえて書かないことを選択しますが、意思決定する側もバカではないので考えればわかることが多いです。ですので、先回りして、「こういうことがありそうです」ということを伝えることが安心感につながるでしょう。
もう一つは、既存事業に対する影響で、例えば、この事業をスタートすると既存事業の売上を一部奪うことになる、とか、あるいは、既存事業のリソースを使う必要がある、というようなことです。たまに出会うケースとして、「何かあった場合に既存事業のブランド棄損につながるからやめて欲しい」というものがあります。例えば、消費財を取り扱う企業の場合、新規事業で不祥事があれば、既存事業に対してマイナスの影響を与えることが少なくありません。これらのことも事前に考慮しておきたいものです。
今後の方針は?
少なくとも、短期的な行動計画と中長期的な進め方について提示したいところです。
すなわち、「これを認めて頂けるなら、明日から〇〇をやります」というものです。
新規事業開発における企画書の位置づけ
「企画書」の言葉の定義は幅広く、どのレベルで書くべきか、で悩むことも多いでしょう。 新規事業の場合、大きく3つのフェーズがあります。 最初は、事業のアイデアを出す段階です。上述の「テーマ」を設定するところ、そこからさまざまな検証、調整をし、事業として成立できるかどうかを検討するところ、そしてフィージビリティスタディを経て実際に事業をスタートさせるところです。 一般に、テーマの実施判断はかなりライトですが、事業の実施判断はかなり慎重になります。したがって、テーマ設定の段階で描かれる企画書と、フィージビリティスタディに入る前段階の企画書ではその深さが異なります。(一般には後者は「事業計画書」と呼ばれます)
よって、企画書、の意味するところは前者のライトなレベル感のものを想定しています。