限界CPAとは?「CPA」「目標CPA」との違いやLTVとの関係、計算式について解説

限界CPAについて詳しく解説。限界CPAの考え方、CPAと目標CPAの違い、計算式について、デジタル領域を中心にマーケティング業務16年目のプロフェッショナルが詳説します。

更新日:2023年11月8日


橋向講師

マーケティング活動を行っていて、「CPAと限界CPA、目標CPAの違いがよくわからない…」という方も多いと思います。

限界CPAとは、コストをかけて集客を最大限に強化する際に、ビジネスとして赤字にならない範囲の、許容できる上限CPAのことです。

いくら集客に力を入れていても、赤字になるのは避けたいものです。CPAがいくらになると赤字になる可能性が高まるのか、いくらまでなら許容できるCPAなのか、その基準をあらかじめ計算して把握しておくと、安心して全力で集客ができます。マーケティング活動をスムーズに進めることができるのです。

本記事では、「限界CPA」の考え方や計算式、「CPA」「目標CPA」との違いについて詳しく解説していきます。

「限界CPA」「CPA」をはじめ、マーケティングにおけるKPIについてどう設定すればいいかわからないという方のために、株式会社シナプスでは研修やコンサルティングを行っています。ビジネスの課題に合わせてカスタマイズした研修・コンサルティングを提供していますので、少しでも気になる方は、お気軽にご相談ください。

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限界CPAとは?

限界CPAについて理解するために、まずCPAについて確認しておきましょう。

CPAとは、Cost Per Action/Acquisitionの略で、日本語では「顧客獲得単価」と訳されます。マーケティング上の成果を1件獲得するためにかかった広告費を管理するための指標です。

マーケティング上の成果としては例えば、「問合せ」「申込み」「資料請求」などがあります。これらマーケティング上の成果をコンバージョン(CV)と呼ぶこともあります。CPAはマーケティングのKPIとしてよく使われる指標です。

では、限界CPAはどのような指標でしょうか?

限界CPAとは、コストをかけて集客を最大限に強化する際に、ビジネスとして赤字にならない範囲の、許容できる上限CPAのことです。つまり、限界CPAを超えた状態で集客を行うと「赤字になる可能性が高い」と判断でき、CPAを改善しなければいけません。

逆に限界CPAを下回った状態で集客ができていれば、「赤字になる可能性は低く、利益を確保できる」あるいは「集客にもっと力を入れてもよい」と判断できるわけです。

限界CPAと「CPA」「目標CPA」との違い

限界CPAと、CPA、目標CPAはどう違うのでしょうか?また、それぞれどのように使い分けるのでしょうか?

「限界CPA」はこれまで解説してきたとおり、マーケティング活動を行っていてビジネスが赤字になるか利益を生み出せるかを判断するための基準となる指標です。

CPAとは?

「CPA」は、マーケティング活動を実行している際の、一定期間のCPA実績を表すことが多くなっています。広告費を使って集客を行った際の実績、結果としてのCPAです。

CPAの計算式は、【CPA = 広告費 ÷ CV】で求められます。

目標CPAとは?

「目標CPA」は、マーケティング活動をおこなう際に目標とするCPAの金額です。限界CPAの金額から、手元に残しておきたい利益を差し引いて求めます。

広告を運用しながら集客をおこなう際に、マーケティング上の成果1件あたりの確保したい利益を考慮することで、利益を生み出しながらCVを増やすことができます。仮に「利益は確保できなくてもいいから赤字にならない範囲で最大限集客を強化したい」という場合には、【目標CPA = 限界CPA】となります。

限界CPAの計算式

限界CPAを算出する計算式は複数あります。指標は同じ「限界CPA」ですが、それぞれ考え方が異なるため、複数理解して状況に合わせて使い分けられるのが理想です。また、ビジネスモデルによっては「顧客獲得単価」をCPAとCPOに分けて管理することもあり、この点でも限界CPAの考え方が変わってきます。

CPAは、「問い合わせ」「(セミナー等の)申込み」「資料請求」といった、まだ売上につながらない成果をCVとしたときの獲得単価です。一方でCPOは、「契約」「購入」など売上につながる成果をCVとしたときの獲得単価です。CPAとCPOを分けて管理している場合は、限界CPAを算出する際、CPAで管理する成果地点からCPOで管理する成果地点への遷移率(成約率)を使って算出します。

次から限界CPAを求める具体的な計算式と、その考え方を見ていきましょう。

CPAとCPOを区別する必要がない場合

指標としてCPOを使わずにCPAのみを管理します。限界CPAは次の計算式で求められます。

① 限界CPA = 年間顧客単価 × 粗利率

年間顧客単価が30万円、粗利率が15%の場合、限界CPAは45,000円です。

多くの書籍やWeb上のコンテンツでは、「限界CPA」の計算式としてこちらを解説しているものが多いようです。ただ、この計算式では、粗利率を用いるため、赤字にならない限界点を正確に算出することができません。粗利には、本来はコストである広告宣伝費や人件費なども含むからです。

② 限界CPA = 売上単価 - 原価 - 経費

売上単価が10万円、原価が4万円、経費が3万円の場合、限界CPAは3万円です。

この計算式は、①の式よりも赤字にならない限界点を正確に算出することができます。一方で、経費に該当するものとしていろいろなものがあるため、ひとつずつ把握していくのに手間がかかるというデメリットもあります。

CPAとCPOを区別する場合

CPAとCPOを区別するビジネスでは、限界CPAを次の計算式で求めます。

①’ 限界CPA = 年間顧客単価 × 粗利率 × 成約率

年間顧客単価が30万円、粗利率が15%、成約率が25%の場合、限界CPAは11,250円となります。そして、この場合の限界CPOは、年間顧客単価×粗利率=45,000円です。

最初に問い合わせ1件あたり11,250円で獲得し、その後に問い合わせから契約までつながる顧客数が25%になるため、契約1件あたりの獲得単価は45,000円になります。

②’ 限界CPA =(売上単価 - 原価 - 経費)× 成約率

売上単価が10万円、原価が4万円、経費が3万円、成約率が30%の場合、限界CPAは9,000円です。そして、この場合の限界CPOは、売上単価-原価-経費=3万円です。

最初に問い合わせ1件あたり9,000円で獲得し、その後に問い合わせから契約までつながる顧客数が30%になるため、契約1件あたりの獲得単価は3万円になります。

限界CPAとLTVとの関係

限界CPAを算出する際にはLTVとの関係に着目することがあります。ただし、LTVの定義や考え方も複数あるため、注意が必要です。複数あるLTVの定義のうち、限界CPAとの関係では次の定義と計算式を用いることが多くなっています。

LTV = 年間顧客単価 = 年間売上 ÷ 年間取引顧客数

これは最も簡略的なLTVの定義、計算式です。このLTV(年間顧客単価)を用いた限界CPAは、先述の①, ①’が該当しました。

  • ① 限界CPA = 年間顧客単価 × 粗利率
  • ①´ 限界CPA = 年間顧客単価 × 粗利率 × 成約率

①は、CPOを管理しなくてもいい場合の限界CPAの計算式、①’はCPOまで管理する場合の限界CPAの計算式です。

限界CPAを基準にした「目標CPA」の計算式と注意すべきポイント

限界CPAの金額でCVを獲得していても、利益を伸ばしづらい状態が続きます。利益を確保しながら集客するためには、限界CPAだけでなく目標CPAを設定する必要があります。

目標CPAは次のように算出して設定します。

  • 目標CPA = 限界CPA - 確保したい利益
  • 例)限界CPAが4万円で、残したい利益が1万円の場合、目標CPAは3万円です。

ここで注意したいのは、Web広告以外での集客も行っているケースです。Web広告とそのクリック先のページ(LP:ランディングページ)だけで集客している場合には、Web広告で運用する際の目標CPAもそのまま3万円になります。

ただ、SEOなどにも力を入れているケースでは、広告費を使わずに獲得できるCVもあります。Web広告以外のCVも考慮して目標CPAを設定し、マーケティング活動全体の実績CPAを管理・運用していく必要があります。

また、目標CPAを厳しく設定しすぎるとCV数が大幅に減ってしまう点にも注意が必要です。というのも、CPAだけを改善しようとすると広告の配信量が減ってしまう傾向があるからです。その結果、CPAは改善してもCV数が減ってしまうケースがあります。CV数が減ると売上も伸びづらくなるという点を踏まえて目標CPAを設定するとよいでしょう。

別の観点から、ビジネスモデルとの兼ね合いも確認する必要があります。サブスクリプション型や、単品リピート通販のようなビジネスモデルでは、「赤字を出してでもCVを増やし、継続率を高めることで利益を伸ばす」という考え方もあります。目標CPAや限界CPAは、ビジネスモデルや経営方針によっても扱い方が変わることもあります。

まとめ:「限界CPA」を確認してマーケティング活動の精度を上げる

マーケティング業務を行ってきた人の中には、CPAは馴染みがあったものの、限界CPAや目標CPAをどう設定すればいいかわからない方も多いと思います。広告宣伝費の予算を決める際に、「売上の○%」という基準で決めている企業も多いと耳にします。

限界CPAを確認すると、マーケティングにおける損益分岐点を確認することができます。この基準がわかれば、デジタル上のマーケティングだけでなく、オフラインの広告も含めてマーケティング活動全体の評価が正確にできるようになります。

マーケティング活動の精度を上げるために、ぜひこの指標を利用してみてください。

「限界CPA」「CPA」をはじめ、マーケティングにおけるKPIについてどう設定すればいいかわからないという方のために、株式会社シナプスでは研修やコンサルティングを行っています。ビジネスの課題に合わせてカスタマイズした研修・コンサルティングを提供していますので、少しでも気になる方は、お気軽にご相談ください。

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この記事のライター


橋向隆広(株式会社アガルート マーケティング統括)

デジタル領域を中心にマーケティング業務16年目。広告代理店と事業会社の両面で、スタートアップから中小企業、ナショナルクライアント、多国籍企業まで幅広くマーケティング業務を行う。多角的なマーケティング手法の中から、ビジネスモデルや事業規模、予算規模に応じて適切な打ち手を組み合わせて考案し、実行までできることが強み。

<略歴>
2008年 株式会社アイレップ入社、SEOグループディレクター
2012年 株式会社CyberZ(サイバーエージェントグループ)入社、運用型広告コンサルタント、動画サービス新規事業立ち上げ参画
2015年 グループエム・ジャパン株式会社(WPPグループ)入社、シニアプランナー、ソーシャルメディアリード
2018年~ 事業会社2社でマーケティング責任者
2022年 株式会社アガルート入社


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