【調査結果】企業の研修担当者に聞いた社員教育のよくある悩みとその解決策

「社員教育・公開セミナー」をテーマに、2022年10月に実施した研修企画担当者を対象にしたアンケート調査の結果概要。159名の方にご協力頂きました。

シナプスでは、「社員教育・公開セミナー」をテーマに、2022年10月にアンケート調査を実施し、159名の方にご協力頂きました。結果概要を報告いたします。

社内教育・研修について

社員教育・研修の実施方法

社員教育・研修の実施方法は内製化がトップ。次いで外部講師や通信教育を利用されています。

  • 社内研修・教育の実施方法は、「内製化している」が6割を超える。次いで、「外部講師を招いて実施している」と続く
  • 「通信教育を取り入れている」も4割近く、「研修は実施していない/わからない」が最も低い回答率

社内教育における課題

社内教育における課題は、「内製化」と「社員のモチベーション・満足度」に関わるものが多数を占めています。

  • 内製化への課題意識が高く、「社内での研修コンテンツ作成に手間がかかる」「社内講師を育成するのが難しい」が回答多数
  • 「社員のモチベーションが低い」「社員の満足度が低い」の回答率も高く、社内教育にネガティブな傾向が見られる


外部講座の利用について

自己啓発制度/受講支援制度の導入

自己啓発制度、公開セミナー受講支援制度のいずれか、または両方を導入している企業は5割程度です。「どちらも導入していない/わからない」の回答率が過半数を占めています。


制度の課題

自己啓発制度(カフェテリアプラン)、公開セミナーにおける課題は、ずばり「社員の満足度・活用率」の低さにあるようです。

  • 自己啓発制度、公開セミナーにおける課題は、「社員の活用率が低い」、「社員の満足度が低い」が多数
  • 次いで、「現場で役立っている実感がない」も4割弱

関心があるテーマ

自社で導入すべきと考える教育項目は、「論理的思考力」がトップです。「マーケティング戦略」「営業力」「マネジメント力」「人材育成力」と続きます。



社員教育活性化のカギは・・・

社員教育活性化のカギは、「研修参加の必要性」を生み出すこと

社内研修、公開セミナーのいずれにおいても、課題として注目度が高いのは、「社員のモチベーションが低い」、「社員の満足度が低い」「社員の活用率が低い」など、社員教育に対するネガティブな姿勢です。

考えられる原因は様々ありますが、端的に言えば、「研修の必要性を感じられない」という言葉に集約されます。受講者自身が研修の必要性を感じられなければ、モチベーションが上がらないのは当然といえるでしょう。

では、なぜ研修の必要性を感じられないのか?ここではその要因を次の三つに絞って考えます。

  • 目的が肚落ちしていない
  • 一方的なインプット型の研修
  • 現場成果に直結しない

目的が肚落ちしていない

「この忙しい時に研修なんて面倒なことを…」
「会社から行けと言われたから仕方ないか…」

人材育成に関わっていれば、よく耳にする言葉ではないでしょうか。

この言葉の背景にあるものは何か?それは「やらされ意識」ではないでしょうか。

人が「やらされ意識」になるのは、行動の目的(何のために行うのか)が見えない時。つまり、「やらされ意識」を生み出す大きな原因は、受講者自身が研修の目的(何のために参加するのか)を肚落ちできないまま、「参加させられている」という状態になっていること。

これではモチベーションの向上は望めないでしょう。

このような事態を回避するためには、受講企業も研修運営企業もこれまでとは意識を変えて取り組む必要があります。

企業において研修を企画する方々は、日頃から市場環境の変化や、業務の実態に常にアンテナを立て、
「自社の課題は何か?」
「多くの社員が抱える悩みは何か?」
を可能な限り詳細に把握しておく必要があります。

そのうえで、研修実施企業と協力し、「目的をどこに設定するか?」「どのような教育が必要なのか?(なぜ、それが必要だといえるのか?)」などについて、本気で検討して企画をたてる必要があります。

それができてこそ、受講者が納得できる「研修の目的(何のために行うのか)」を提示することが可能になります。

「この研修は例年行っているから今年も…」という事務的な対応では、受講者の「やらされ意識」が消えることはないでしょう。

一方的なインプット型の研修

研修に対するモチベーションが上がらないもう一つの要因としては、講義形式のような一方的なインプットに終始してしまうケースが考えられます。

言うまでもなく、近年の情報技術分野における発展は目覚ましく、それに伴ってeラーニングやMOOCなど、自分のペースで手軽に学べる学習コンテンツの高度化と充実化が進んでいます。にもかかわらず、講義形式の一方的なインプット型研修を実施すれば、「集合研修でやる必要があるのか?」と感じてしまうのは当然の成り行きとも言えるでしょう。

つまり今後の研修には、学習コンテンツではカバーできない、研修ならではの付加価値がより一層求められるということ。

研修企画にあたっては、研修で行う意味は何か?(「現場で活かせる力を磨く、トレーニングの場としての研修」、「互いに気づきや学びを与え合い、相乗効果の発揮によって成果を出す研修」など)を考え続けなければなりません。単なる座学の場になってしまえば、研修参加の必要性に疑問を持つ社員は今後益々増えていきかねません。

現場成果に直結しない

最後に、今回のアンケート結果で注目すべき点として、「現場で役立っている実感がない」への回答率が高いことがあげられます。

回答率の高さを考えると、今回の回答者以外にも同様の考えをもつ人の割合は一定数存在すると考えられます。「研修は業務では使えない」という印象をもてば、これもまたモチベーション低下の大きな要因に成りえます。

考えられる原因は、研修実施後の支援が不足していることです。残念ではありますが、研修受講後、学習した内容を即座に、かつ継続的に実践できる人は少数であり、多くの受講者が「受けっぱなし」で終わっているのが現状です。これでは研修が業務成果につながらないのも当然といえるでしょう。

このような事態を回避するには、研修運営企業と研修受講(または受講者を派遣した)企業の連携が不可欠です。

研修運営企業は、終了後にフィードバックを出し、研修受講企業はそのフィードバックをベースに、その後の受講者の成長を継続的に支援する。このような事後のフォローが社員の成長には不可欠です。

「教育は外部に任せているから…」では、社員の成長にはつながりません。

内製化を成功させるには社内講師育成が不可欠

あらためて、アンケート結果で着目したいのは、次の2点です。

  • 社内教育を内製化している企業が多数を占めている
  • 内製化の問題意識は「社内での研修コンテンツの作成に手間がかかる」、「社内講師を育成するのが難しい」

また、内製化しているコンテンツについては、業務に必要な社内の手続き・ルールなど、外部委託が難しい個社固有のテーマに関するものが多いことが推察されます。

これらをあわせ考えると、社員育成に対する意識は高いものの、研修コンテンツの作成や、社内講師の育成に難航している企業が多数存在しているように思われます。とはいえ、質の高いコンテンツ作成や、社内講師の育成には一定のノウハウが必要とされ、簡単にできるものではありません。

前項に記載の通り、一方的に業務内容や知識を詰め込むだけのインプット型研修はもはや不要になりつつあります。社員から必要とされる、価値の高い研修の提供が求められる今だからこそ、企画・設計、資料作成、実施まで全てを担える講師の育成に着手されることをお勧めします。



この記事のライターは・・・


コンサルタント・熱田健太郎

大学卒業後、システムエンジニアとして金融業、エンタメ業界など複数の業界で開発に従事し、要件定義、設計段階から一連のフェーズを担当。

その後、株式会社ジェック入社。コンサルタントとしてIT業界、製造業、建設業など幅広い分野において人と組織の変革に従事。研修では、管理職から若手までそれぞれの課題を抽出し、そのお客様ならではの企画・担当を行う。

コンサルティングでは、理念浸透、営業部門変革などのプロジェクトに参画し、変革の伴走支援を行う。

2022年、株式会社シナプス入社。これまでの講師、コンサルティングの経験を活かし、誰もが自分らしく活躍するための支援を行う。


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