デジタルマーケティングを強化する企業は増加しています。デジタルマーケティングに詳しい人材の採用に力を入れたり、研修を通して人材育成を強化したりする企業も増えてきました。
本記事では、マーケティングの業務において資格を取得する際に注意すべきことを確認したうえで、デジタルマーケティングに役立つおすすめの無料資格5つを厳選して紹介します。
ビジネスでデジタルマーケティング人材を育成したい企業担当者の方は、後述するように資格取得が遠回りになることもあります。そのため、課題に合わせてカスタマイズした研修をおすすめしています。シナプスでは企業の課題解決に繋がるようカスタマイズしたデジタルマーケティング研修を行っていますので、まずはお気軽にご相談ください。
デジタルマーケティングの資格取得で注意すべきこと
デジタル領域に限らずマーケティングの仕事をするうえでは、資格は必須のものではありません。資格を取得しても、実務で成果が出せる保証はないのです。資格はあくまでも、専門的・体系的な知識を身につけていることを客観的に証明するためのものです。
企業でマーケティング人材を育成するには資格取得が遠回りになるケースもある
ビジネスでマーケティングの成果を出せるようにすることが資格取得の目的である場合、資格の勉強に時間を使うことがむしろ遠回りになってしまうこともあり得ます。ここではデジタルマーケティングの資格取得でよく見られる傾向を2つ挙げて解説します。
傾向1:実務であまり使わない知識まで学ぶためにも時間がとられる
- よく見られる次のようなケースで考えてみます。
- 特定領域の資格を取得するためには、知識を1,000個覚える必要がある
- その領域のハイパフォーマーが実務で活用する知識は実際には300個ほどしかなかった
この場合、ハイパフォーマーがあまり使わない700個の知識を追加で覚える時間をかけて資格を取得するのは組織にとっては遠回りになってしまいます。よく使う300個程度の知識を研修で身につけた方が、効率よくビジネスの成果につなげられるわけです。
傾向2:覚えた知識の活用を目的化してしまう
覚えた知識は、あくまで問題・課題解決のための手段です。実務では、ある目的のもとで問題や課題を特定し、原因を明らかにしたうえで、解決に適した知識を選択したり組み合わせたりして、知識を手段として使っていくものです。
細かい知識を身につけて詳しくなると、ときどき「この知識を使って何ができるか」という発想で、知識の活用を目的化して打ち手を考えようとする人が出てくる傾向があります。「問題・課題を解決するためにどの知識を使えばいいか」という観点と逆の発想に陥りがちです。資格によって体系的な知識を身につけたら、その知識をやみくもに使おうとするのではなく、問題・課題解決に適した知識を選んで活用していく発想が求められます。
企業がデジタルマーケティング人材を育成するにはどうすればいいか?
まれに「デジタルマーケティングの資格は意味がない」といわれることもあります。これは実務であまり使わない知識まで学ぶために時間をとられたり、覚えた知識の活用を目的化してしまったりする傾向が見られることが要因と考えられます。
では、企業がマーケティング部門のデジタルマーケティングスキルを強化し、成果を出せるようにするにはどうすればいいでしょうか?もっとも効率のいい方法は、ビジネスの課題に合わせてカスタマイズしたコンテンツで社内研修を行うことです。
ビジネス課題に合わせてカスタマイズしたデジタルマーケティング研修を提供しているシナプスでは、貴社の課題をヒアリングしたうえで最適な研修を実施します。少しでも気になる方は、お気軽にご相談ください。
デジタルマーケティングの資格取得が適している人
資格を取得する際に注意すべきことはあるものの、デジタルマーケティングの資格を取得したほうがいい人もいます。3パターン紹介します。
1.未経験からデジタルマーケティングの仕事をはじめたい人
デジタルマーケティングの仕事をしたことがなく、これからデジタルマーケティングの仕事をしていきたいという人には、キャリアチェンジの一歩として資格取得が有効なケースがあります。
資格の学習をとおしてデジタルマーケティングの特性や仕事内容をある程度理解でき、就職・転職や部署異動の希望を出す際にもアピールできます。特に広告代理店への就職・転職を希望する方は、デジタルメディアについての理解が重視されるため、大手デジタルメディアが提供している認定資格を取得しておくとよいでしょう。
2.広告代理店でデジタルメディアの専門性を高めたい人
広告代理店ではメディア企業と密に連携しながら業務をすすめる必要があるため、GoogleをはじめMeta、Yahoo!、LINE、X(旧Twitter)をはじめとするメディアの専門知識を持っておくことが重要です。メディア企業が提供する認定資格を取得と、そのメディアについて詳しい知識を身につけていることを客観的に証明できます。
広告代理店の従業員のうち一定数が認定資格を取得していると、メディア企業から「認定代理店」として認められる制度もあります。認定されると、広告代理店としての信頼も得られるため、メディア企業の認定資格取得を推奨する広告代理店もあります。
3.デジタルマーケティングを体系的に学びたい人
現在デジタルマーケティングの業務を行っている人の多くは、新たな知識が必要になったらその都度調べながら遂行していくことがほとんどだと思われます。都度調べながらの業務でも、数年経験するとデジタルマーケティングについてかなり詳しくなれるものです。一方で、業務で身につけた知識が特定領域に偏っていたり、断片的だったりということも少なくありません。
デジタルマーケティングの全体像を理解しておくことで、より効率の良い解決策を考案できるようになる可能性もあります。知識を体系的に身につけ、全体像をとらえられるようになるには資格取得が適しています。
無料で取得できるデジタルマーケティング資格一覧
デジタルマーケティングの全体像を学べる資格
・Googleデジタルワークショップ
データの計測・分析について学べる資格
・Google アナリティクス個人認定資格(GAIQ)
デジタル広告・SNSについて学べる資格
・Google広告認定資格
・Yahoo!広告認定資格(Yahoo!広告キャンパス)
・LINE認定資格(LINE Green Badge)
番外編の2資格
・Meta(旧Facebook)認定資格(Meta Blueprint)
学習プログラムは無料ですが、受験は有料です。また、認定試験では日本語に対応していないコースもあるため、事前の確認が必要です。
・Twitter(現X)認定資格(Twitter Flight School)
学習プログラムが最新のものになっていないものもありますが、現在でも役立つ内容であり、無料で提供されているため紹介させていただきます。
それぞれの資格について、以降、詳しく解説します。
Googleデジタルワークショップ
Googleデジタルワークショップは、学習プログラム、認定試験ともに無料で提供されています。
学習コンテンツは幅広い分野で構成されており、デジタルマーケティングの全体像を初歩から体系的に学ぶのに適した資格といえます。コンテンツのなかでも「デジタルマーケティングの基礎」コースは、オンライン広告における技術的標準規格の策定などを行う米国IAB(Interactive
Advertising Bureau)公認コースのため、国際的にも通用する資格です。
Google アナリティクス個人認定資格(GAIQ)
Google アナリティクス個人認定資格(GAIQ)は、学習プログラム、認定試験ともに無料で提供されています。
デジタルマーケティングでデータの計測および分析ツールとして最もよく使われているのがGoogleアナリティクスです。Google
アナリティクス個人認定資格は、Googleアナリティクスの基礎的な知識とスキルを認定する資格です。GAIQ(Google Analytics Individual
Qualification)ともよばれます。レベルは初級~中級に分かれており、学習コンテンツを活用することで、初心者でも独学で取得できるようになっています。
Google広告認定資格
Google広告認定資格は、学習プログラム、認定試験ともに無料で提供されています。
デジタル広告のなかでもよく利用されるGoogle広告の専門知識を認定する資格です。Google広告には、リスティング広告(検索広告)のほかにもディスプレイ広告(画像広告)、動画広告、ショッピング広告、アプリ広告などがあり、これらを体系的に学びます。
学習コンテンツのレベルは初級~中級に分かれているため、初心者から独学で取得可能な資格です。
Yahoo!広告認定資格(Yahoo!広告キャンパス)
Yahoo!広告認定資格(Yahoo!広告キャンパス)は、学習プログラム、認定試験ともに無料で提供されています。
デジタル広告でよく利用されるYahoo!広告の専門知識を認定する資格です。学習コンテンツのレベルは初級~中級で、認定資格もこれに合わせて「ベーシック」「アドバンスト」の2段階に分かれています。アドバンストは広告の種類別に「ヤフー広告
検索広告 アドバンスト」「ヤフー広告 ディスプレイ広告 アドバンスト」の2つに分かれます。つまり認定資格は全体で3種類です。基礎から段階的に学習できるため、初心者も独学で学習できる資格です。
LINE認定資格(LINE Green Badge)
LINE認定資格(LINE Green Badge)は、学習プログラム、認定試験ともに無料で提供されています。
SNS施策でよく利用されるLINE公式アカウントと、デジタル広告でよく活用されるLINE広告の専門的な知識を認定する資格です。レベルは初級~中級で、認定資格はレベル別に「Basic」「Advanced」に分かれています。分野は「LINE公式アカウント」「LINE広告」の2つに分かれるため、資格は全体で4種類です。初心者でも段階的に学ぶことができるため、独学でも取得できる資格です。
Meta(旧Facebook)認定資格(Meta Blueprint)
Meta認定資格(Meta Blueprint)は、学習プログラムは無料ですが、認定試験は有料で提供されている資格です。また、認定試験のなかには日本語対応していないものもあるため、事前確認が必要です。
Meta認定資格(Meta
Blueprint)は、Facebook、InstagramなどMeta社の各サービスについて、専門知識を認定する資格です。レベルは初級~上級まであり、初心者から独学で上級レベルの知識が身につく資格になっています。
コースの範囲も幅広く、「デジタルマーケティング」「マーケティングサイエンス」「クリエイティブ戦略」「メディアプランニング」「メディアバイイング」「コミュニティマネージャ」「Meta
Sparkクリエイター」に分かれています。興味のある分野を選んで知識を深めることが可能です。
Twitter(現X)認定資格(Twitter Flight School)
Twitter認定資格(Twitter Flight School)は、学習プログラム、認定試験ともに無料で提供されています。
Twitterアカウントと広告の運用についての専門知識を認定する資格です。レベルは初級~上級となっており、初心者から独学で学べます。ただ、TwitterからXに変更されるなど仕様変更に対してTwitter Flight
School内の学習コンテンツがどこまで対応されるかはわかりませんので注意が必要です。
まとめ
デジタルマーケティング人材の育成に力を入れる企業や、キャリアのためにデジタルマーケティングを学ぼうというビジネスパーソンもますます増えてきました。
資格取得にあたっては、大手のデジタルメディアが無料で学習コンテンツを提供しています。グローバルメディアは海外でも通用する資格のため、これからデジタルマーケティングについて学ぼうと考えている方にはおすすめです。
ただ、企業がデジタルマーケティング人材を育成していく場合、従業員に資格を取得してもらうのは遠回りになる可能性もあります。資格取得に向けて体系的に知識を身につけようとすると、現場の実務であまり活用しない知識まで学ばなくてはいけなくなるからです。
そこで、デジタルマーケティング人材を育成したい企業には、課題に合わせてカスタマイズしたデジタルマーケティング研修の活用が適しているといえます。シナプスでは、企業の課題に合わせてコンテンツをカスタマイズしたデジタルマーケティング研修を提供しています。お気軽にご相談ください。
この記事のライターは・・・
デジタル領域を中心にマーケティング業務16年目。広告代理店と事業会社の両面で、スタートアップから中小企業、ナショナルクライアント、多国籍企業まで幅広くマーケティング業務を行う。多角的なマーケティング手法の中から、ビジネスモデルや事業規模、予算規模に応じて適切な打ち手を組み合わせて考案し、実行までできることが強み。
<略歴>
2008年 株式会社アイレップ入社、SEOグループディレクター
2012年 株式会社CyberZ(サイバーエージェントグループ)入社、運用型広告コンサルタント、動画サービス新規事業立ち上げ参画
2015年 グループエム・ジャパン株式会社(WPPグループ)入社、シニアプランナー、ソーシャルメディアリード
2018年~ 事業会社2社でマーケティング責任者
2022年 株式会社アガルート入社