シナプス海老原です。

子育てマニアの海老原「子育てに学ぶ人材育成方法:スモールステップの原理とは」について解説します。

「スモールステップの原理」はご存じでしょうか?企業の人材育成担当者はもちろん、部下育成など人材育成に携わる方には、ぜひ知っていただきたい学習理論です。

「スモールステップの原理」を上手に人材育成に応用すれば、劇的に上達することも多いのです。


1.人材育成方法を知る:スモールステップの原理とは


1-1.スモールステップの原理とは


スモールステップの原理とは、人材育成方法に関する重要な理論の一つで、「学習内容を小さな単位に分割(スモールステップ)して、小刻みに教えたほうが教育効果が高い」という学習理論です。

スモールステップの原理(ウィキペディアより)
難しい内容を学習させる場合、学習内容を小さな単位に分割し、易しい内容から少しずつ小刻みに難しくしていくべきとする考え方。学習促進には、誤反応より正反応を起こさせることが重要で、動機づけを低下させる誤反応は、なるべく少なくする。

スモールステップの原理は、教育担当者から部下育成が必要な方、など人材育成にかかわる方なら、基礎原則として覚えておくべき理論・人材育成原理です。


1-2.スモールステップの原理が人材育成に有効な理由


スモールステップの原理でモチベーション向上

スモールステップの原理での人材育成のメリットは、モチベーションが維持しやすいことです。スモールステップの原理を使いこなせば、モチベーション維持できるどころか、「モチベーション向上」につながります。

スモールステップの原理で「できた喜び」をたくさん感じさせる

人間は、「できない」ことが続くとモチベーションが下がります。スモールステップの原理で段階的に難易度をあげて「できる」ことを繰り返すことにより、モチベーションの維持が可能です。

すなわち、スモールステップで「できない」より「できる」をたくさん体験させることで学習モチベーションが高まっていきます。これは、子供で顕著ですが、大人の人材育成方法でも同じです。

まず、好きになる、モチベーションを維持・向上することが教育の大前提です。「できた!」→「やろう」→「できた!」→「またやろう」学習サイクルが早く回せるのがスモールステップの原理の魅力です。

2.人材育成方法実践事例:スモールステップの原理で子育て

2-0.キャッチボールの練習すらできない幼児

あるとき、私は子供と公園でキャッチボールをしました。女の子なのですが、「これが驚くほどできません。」いくらゆっくり投げても、触ることすらできない、ボールを投げた方向にピクリとも動かないありさまでした。

うまい・へたというレベルではなく、キャッチボールとして成立していませんでした。いくらやっても練習にすらならなそうです。

2-1.スモールステップの原理で分析:幼児のキャッチボールの難しさとは

しばらくボールを投げてみましたが、できるようになる気配が全くありません。そこで、観察したところ、「投げたボールが目でおえていない」「そもそもボールを追うことをしようとしてない」ことがわかりました。

非常にゆっくりボールを投げて、相当簡単にしたつもりでしたが、相手の能力に合わせて、もっと細かくステップを分解する必要がありそうです。スモールステップの原理を使うのです。

3次元の動きを追うのは、幼児にはスモールステップではなかった

ここで、私が考えたのは、「彼女は3次元の動きを目でとらえるのが、まだ難しいのではないか?」ということでした。

幼児(特に女子)の空間把握能力は、かなり低いといわれています。では、空間把握ではなく平面把握にしたらどうか?3次元から2次元にしたらどうか?と考えました。

2-2.スモールステップの原理で相手にあった次の行動を考える

スモールステップ分解:3次元の動きから2次元の動きへ


ボールを投げるのではなく転がす

「空間把握能力ではなく平面把握能力」「3次元から2次元」にスモールステップを刻んだ具体的な行動を考えてみました。

つまり、ボールを投げる(3次元の動き)のをやめて、ボールを転がす(2次元)ことにしました。


スモールステップ分解した上で、相手に合わせて一段下のステップで練習


2次元ならキャッチできた

「ボールを転がす」ことにより、キャッチボールからステップを1段落とします。

あとで、気づいたことですが、球技などで必要とされる能力の一つ、空間把握能力は、一般に女性の方が低い場合が多いのです。

3次元から2次元にすると、ボールが拾えるようになりました。(写真)

まだ、投げたボールのキャッチはできませんが、少なくとも次のステップに進んだのは間違いありません。そして、3次元は、次のスモールステップで教えればよいのです。


補足:スモールステップの原理のメリット「楽しむ」


また、ここでもう一つ重要なのは、転がしたボールをとることを楽しんでいること。つまり、高いモチベーションでトレーニングを行っていることです。


3.人材育成方法実践:スモールステップの原理での部下教育


子育てで学んだ人材育成の基本、スモールステップの原理は、大人の人材育成にも十分使えます。

以前の職場で「打ち合わせで寝る後輩はどうしたら寝なくなるか?」をスモールステップ原則により解決した事例を解説します。

3-1.スモールステップの原理での人材育成事例:打ち合わせで寝る部下


以前の職場の後輩は、打ち合わせで寝ることがよくありました。ここまでは、よくあることですが、「彼は、人数が5名程度の顧客先との打ち合わせでも寝ていました。」つわものですね。

当然何度か怒られたわけですが、いくら注意しても直りません。普通に考えれば、明らかに「やる気がない」ですね。


あなたが彼の人材育成担当、あなたの部下だったら、どうしますか?


「怒る?」すでにやりました。「毎回注意する?」それもやりました。結局ここでたどりついたやり方は、スモールステップの原理を応用することでした。実際に彼は、しばらくして打合せで寝ることは一切なくなったのです。


3-2.スモールステップの原理での人材育成事例:なぜ彼はで眠くなるのか分析


なかなか直らないので、彼がなぜ寝てしまうのかスモールステップの原理で考えました。

私が出した結論は、打ち合わせ中に「ヒマだから」です。

新しく入社した彼は、打ち合わせ中の役割がなくヒマでした。打ち合わせで役割がない場合、興味のない打ち合わせや講演で居眠りしてしまうのが誰もが経験することです。

3-3.スモールステップの原理での人材育成事例:小さな役割


そこで私は、彼に1つの役割を与えることにしました。彼に与えた使命はすごく単純です。つまり、「どんなことでもよいので、打ち合わせ中に1つだけ顧客に質問すること」でした。

たったこれだけの指示で、彼は寝なくなりました。なぜなら、質問するには、顧客の話を聞く必要があります。なにより、彼には「役割」ができたのです。

それ以来、彼はどんどん質問回数も増加していき、打ち合わせで寝ることはなくなりました。


4.スモールステップ原理活用プロセス:子育ても大人の人材育成も同じ


4-1.は簡単そうに見えて本人には高いハードルを見つける


幼児:3次元の空間把握はハードルが高すぎて学習にならない


キャッチボールをすること=「3次元で目で追いキャッチすることは、4歳女子にはハードルが高すぎた。


新人の部下:1時間集中力を保つのは意外に高いハードルだった


スモールステップの原理での部下教育事例分析「どうして寝なくなったのか」。

「ねるな!」と、指示・命令しても相手はできない。
(「やる気がない」のではなく「できない」と考える)


4-2. スモールステップの原理で実行可能な小さな階段に分解し、1つ1つクリア


キャッチボール:スモールステップで1つずつ「できる」を経験させる

キャッチボールの原理を分析したうえで、細かく能力としてのステップを分解。具体的な学習行動ステップに落として1つ1つクリアした。(スモールステップの原理)


  1. 空間把握能力が高くないためキャッチボールは目で追うことすらできない。
  2. 相手に合わせた次のスモールステップを考案。平面(2次元)で、目で追わせることにした。
  3. 次のスモールステップとして、目で追うだけでなく、「目で追ってつかむ」ことを繰り返す。
  4. 次のスモールステップは空間把握能力向上、つまり「3次元の物体を目で追えること」と想像される(しかし、2次元でつかむことが、しっかりできるまで、今のステップを楽しんでいる限りは、あえて次のステップには進まない)


打合せで寝ない:スモールステップで分解しキー行動を提示


打合せ中の1時間程度起き続けるためには、役割が必要です。1つ質問するという小さな役割をわかりやすい行動指針として与え、相手の話に興味を持つことをスモールステップでクリアした。

※実際は、1回目は質問できなかったが「質問しようとして」いました。3回目ぐらいから実際に1個質問するようになり、その後、2個3個と質問回数が増えていきました。


5.スモールステップの原理での人材育成方法のポイント


5-1.スモールステップの原理の人材育成 ①課題を相手に合わせ細かく分解

スモールステップ原理を人材育成に応用するための一つのキモはステップを細かく分解することです。

スモールステップ原理で教えることに慣れていない方は、まずは、「そこまでやるの?」というぐらい、細かく段階を分解してみてください。目安は、いつもの3倍です。

5-2.スモールステップの原理の人材育成 ②相手に合った具体的行動を提示

スモールステップの原理を使った人材育成において、「難しいが重要なポイントが『相手に合わせた』という部分です。」

できないところ、つまづくところは、相手によって異なります。そのときの相手にあった、ほどよいスモールステップを考えましょう。

5-3.スモールステップの原理の人材育成 ④一度に一つのステップ「だけ」に集中

人材育成でよくある間違いが「教えすぎ」です

つまり、教えすぎは、相手に消化不良を起こさせてしまう場合も多く、かえって相手を混乱させてしまう場合もあります。急がば回れ。スモールステップ原則では、一度に指摘するポイントは、多くて3つ、できれば一つにしぼります。そして、単に理解するだけでなく身に付くレベルまで、フィードバックを繰り返しましょう。

「できるまで」ではなく、「身に付くまで」が基本です。

5-4.スモールステップの原理の人材育成 ④「やる気がない」は教育の放棄

人材育成では、教える側は、まずは相手のやる気のせいにしない姿勢が必要です。

これは、教える側が「優秀な人」「やる気がある人」ほど、「あいつは、やる気がない!」で済ませてしまう傾向があります。本当にあなたのできることはないのでしょうか。

出来ない理由を相手のやる気に求めるのは教育の放棄

私は、このような叱責、「できない理由を相手のやる気に求めるのは、教育の放棄」だと考えています。「やる気がない」のはなく、「能力的にできない」と考えて、具体的にできる方法を指導するのが教育者の役割です。そのとき、人材育成に役立つ学習理論が、スモールステップ原則です。

デキる上司は、部下に自分のスキル基準を当てはめがちなので注意

部下育成で、よく見る失敗が部下に自分のハードル基準を当てはめてしまうことです。

上司になる方というのは、部下に比べ、能力もやる気も高い方でしょう。その自分の基準を部下に当てはめてしまう方が多いのです。この傾向は、実はいわゆる「デキる上司」であるほど高くなります。自分が自然にできてしまうので、「部下がなぜできなのはわからない」「できない理由に思い至らない」方も多いようです。

このため「お前はやる気がない」という能力ではなく意識の問題にフォーカスしがちです。あなたは自分の基準を部下に押しつけていませんか。

まとめ-スモールステップはスキルと意識教育に有効

「スモールステップの原理を使った人材育成」についてまとめました。いかがでしたでしょうか?スモールステップの原理は子育てでは必須の技術ですが、実は大人の人材育成でも使えます。というより、使ったほうが良いのです。

人材育成には大きく3つのジャンルがあります。スモールステップの原理が有効なジャンルはどこでしょうか。

  • 知識教育
  • スキル教育
  • 意識教育

1.スモールステップの原理はスキル教育に効果的

日本社会では、過去知識教育が重視されて来ました。しかし、特に大人の人材育成、企業研修においてはスキル教育、しかも実践的なスキル教育が重視される傾向が年々高まっています。

スキル教育では知識教育と違い、実際にやってみる経験を積み重ねることが必須です。そのとき、有効な人材育成方法がスモールステップの原理です。

スキルで伸び悩んでいる人材には、スモールステップの原理を応用してあなたが助けてあげてください。

2.スモールステップの原理は意識教育にも効果的

スモールステップの原理がスキル教育に効果的というのは、わかりやすいと思いますが、実は、意識教育にも有効です。

むしろ状況によっては、スモールステップの原理こそ、意識教育、意識変革に必須といえるでしょう。

大人も子供も人は、「できる」とうれしいものです。
「できた!」という感覚、成長実感を得られれば意識が変わります。そして、スモールステップの階段をうまく上り続ければ、人の意識は「意識改革」というレベルまで変わっていきます。


参考情報

1.海老原一司のシナプスビジネスナレッジコラム

1974年生まれ。早稲田大学理工学部修士課程をへて1999年日本テレコム株式会社入社。IT業界を中心に大企業・ベンチャーなどの事業会社で クラウドサービスなどの10年間以上のプロダクトマネージャ経験を持つ、BtoB事業の新規事業立ち上げ、事業成長のスペシャリスト。プロマネとして新サービスを3年で100倍の売上にした経験を持つ。

2014年シナプス入社。BtoBマーケティングプログラム責任者。
立教大学経営学部講師
グロービス経営大学院(MBA)

ロジカルシンキングを使った人材育成コラムシリーズ

2.スモールステップの原理を活用したロジカルシンキング講座

ロジカルシンキング講座(平日夜間オープン講座)

詳細は、「ロジカルシンキング講座(全3回)-論理思考力個別トレーニング」をご覧ください。

ロジカルシンキング研修(講師派遣型企業研修)

詳細は、『ロジカルシンキング研修-個人別添削で論理思考力トレーニング』をご覧ください。


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