新規事業プロジェクトにおけるコンサルタントの選び方

自社だけでは新規事業プロジェクトがうまく回らない。。。新規事業プロジェクトの成果をあげるために外部の支援が必要な場合に、自社に合った新規事業コンサルタントをどう選べばよいのか、考え方をご提示します。

更新日:2024年2月20日

新規事業を支援するコンサルティング会社、個人のコンサルタントは多岐にわたります(当社もそのなかの一社です)。

様々なコンサルティング会社やコンサルタントを選ぶうえで、何を意識したらよいのか、悩んでしまいますよね。一般には、次のようなことが評価ポイントになるでしょう。

  • 「新規事業が出来そうな提案か」
  • 「コストが予算に合うか」
  • 「自社の風土、カラーに合ったコンサルタントか」
  • 「期待するリソースを提供してもらえるか」

この記事では、新規事業プロジェクトの成果をあげるために外部の支援が必要な場合に、自社に合った新規事業コンサルタントをどう選べばよいのか、考え方をご提示します。

自社の新規事業プロジェクトの課題はどこにあるのか

新規事業コンサルタントの支援を検討するなら必ずやっておきたいのは、「自社の新規事業プロジェクトの課題がどこにあるか」を明確にすることです。課題を提示してコンサルティング会社、コンサルタントからの提案やアドバイスを受けることによって自社にマッチしているかがよりわかりやすくなるからです。


新規事業コンサルタント・後藤匡史

たまに当社への依頼でも「とにかく新規事業を立ち上げたいから何とかしてくれ」というような、いわゆる「丸投げ」スタンスでお話を頂くケースもあります。

過去のコンサルティング経験からこの状況からのスタートだと悲しいかな、うまくいかないことが分かっております。ですので、お客様からの依頼に対して提案前のかなり初期段階で課題は何かを確認するようにしています。お客様によっては考えたこともない方もいらっしゃいますが、次に説明する「課題のありか」を提示するとお客様自身での整理にもなりますし、コンサルティングプロジェクトの成功確率もぐっと上がっていきます。

「新規事業」と一言で言っても様々なステージがあります。シナプスでは、ざっくり次に掲げる5つのステージに切り分けて考えています。

  1. 領域選択:どの領域で新規事業を立ち上げたいのか?新規事業全体の戦略組み立て
  2. アイデア出し:イノベーティブなアイデアや自社の強みを生かしたアイデアなど、新規事業のスタート地点となるアイデア出し
  3. 事業企画:アイデアを「事業」の形にする事業企画
  4. 事業計画:自社で事業立ち上げの承認を取るための事業計画
  5. 立ち上げ:新規事業のローンチ、拡大

自社の新規事業プロジェクトは今どの段階にあるのかを確認したうえで、それぞれの工程でうまく行っていない、あるいは、新しく取り組む場合には「何が分からないのか」をいったん考えて頂くことをお勧めしています。

新規事業がうまく行かない理由は様々ありますが、コンサルティングを活用する意義が大きいのは、次のようなケースでしょう。

進め方が分からない

新規事業プロセスの全体像を理解しているコンサルタントや、それぞれのフェーズでの体験があるコンサルタントは、お客様に対して「この状況で何が起こるか」を説明できます。新規事業を進めるうえでの水先案内人として役に立つケースが多いでしょう。当社でもこの理由でご依頼いただくことがかなり多いです。

リソースが足りない

新規事業を立ち上げる際に「人材が潤沢にいる」というケースは稀です。多くの場合、既存の仕事との兼任でリソースが取りにくい、だったり、専任人材はいるがリソースが全く足らず闇残業によるハードワークに支えられているだったり、リソースが足りないので必要な活動が十分にできない、だったりです。

コンサルタントに一緒に手足を動かしてもらい活動の一部を担ってもらうのも選択肢でしょう。シナプスではこの手の案件はあまり得意ではありません(フルアサインをしないので)が、調査など一部を丸ごと対応することは依頼されることがあります。また、パートナーコンサルタントをご紹介してフルアサインさせていただくこともあります。

業界情報が分からない

特にBtoB型のビジネスや規制産業に多いのですが、「業界の文脈」を知らないとビジネスとして成立しないことが多々あります。典型的には医療関連業界です。医療関連業界でビジネスをしようと思うと、例えば日本国内でのビジネスの場合、「診療報酬点数」や「健康保険」の位置付けの理解は必須です。医療の枠を出たヘルスケアであっても、薬機法の関連で「広告メッセージで言ってはいけないこと」が多々あったりしますので、業界の最低限の知識がないとビジネスの可能性すら考えられないケースもあります。

多くの場合、ここまでの基本的な情報は調べればわかるのですが、「業界の暗黙ルール」や「キーパーソン」等、知っておくことでビジネスが有利に進められることは多々あり、BtoB型ビジネスや規制産業はその特徴が顕著です。

新規事業コンサルティングの依頼の一つのパターンとして「この業界の〇〇を紹介してほしい」「この業界の〇〇について教えて欲しい」というケースがあります。シナプスでは、「〇〇を紹介する」ということはご提供しておりませんが、特に個人でコンサルタントとして活躍される方の一部に「この業界のネットワークがあるので」というタイプはいらっしゃいますね。

なお、近年、スポットコンサル(ビザスクさんやユーザベースさんなど)のサービスがかなり市民権を得ており、業界外の方でもスポットコンサルを利用することによって短期的にキャッチアップができるようになっています。

組織風土が新規事業に合わない

新規事業は、多くの場合、既存事業のルールとは大きく異なる仕事の進め方が必要です。その結果として、既存事業側や周辺の社員から「善意で邪魔される」ケースが出てきます。(たとえば、「そんなやり方はうまく行かない」というアドバイスの形をとった批判等もあります。)

その場合の対処として大きく二つのアプローチがあります。一つは、新規事業の制度を作ることであり、もう一つは組織風土改革ですね。一つ目の制度設計は、新規事業開発の制度設計や組織作りに経験が豊富なコンサルティング会社が適しています。ステージゲート法等を導入することもあるし、いわゆる「出島」の設計が必要なケースもあります。

また、二つ目の方は特に安定的大企業の場合、組織風土が保守的になることも多く、組織改革、風土改革的なアプローチが必要になるケースもあります。この場合は、いわゆる新規事業コンサルタントよりも組織開発を得意とするコンサルタントの方がうまく行くケースも多いです。

経営の意思決定がない/合わない/遅れる

コンサルタントが活躍しやすいことの一つは、「社員では言いにくい正論を言う」ことです。経営者や上長は「部下の言うこと」をそのままでは受け入れにくいものです。柔軟な経営者、上司ももちろんいらっしゃいますが、プライドが受け付けない方もいらっしゃいますし、感情的なモノが無くても、そのまま受け入れることによって周りに示しがつかない(組織的なトラブルにつながりやすい)ということで配慮をされるケースもあります。

特に、上述の領域選択において、経営の意思は不可欠です。経営者に意思決定を迫り、必要なタイミングでの意思決定を迫ること、これもベテランのコンサルタントだからできることでもあります。

新規事業開発プロジェクトの形態はどのようなものか

新規事業を進めるにあたってはいくつかの選択肢があります。最近流行りの手法なども含めると下記のようなケースがあります。

  • ① 新規事業開発室で自社主体で進める
  • ② 既存事業との兼任でプロジェクトで進める
  • ③ アイデアコンテストを主軸に進める
  • ④ 外部とのコラボレーション、特にスタートアップとの協業で進める
  • ⑤ M&Aを主軸に進める

① 新規事業開発室で自社主体で進める/② 既存事業との兼任でプロジェクトで進める

上記の①、②はよく見られる新規事業の形態です。新規事業開発室が主体的に動かれている場合、社員のリソースはそれなりにあることも多く、コンサルタントに期待するのは「社員だけではできないこと」が多いです。例えば、新たなメソドロジーで実施したい、等がそれにあたります。

新規事業の進め方は一様ではなく、コンサルティング会社ごと、コンサルタント毎に得意なやり方がありますので、いくつか試してみるのも良いと思います。特に、ある程度事業領域が見えている(領域選択が終わっている)段階の場合、ざっくり次の4領域で進め方が異なる印象があります。


領域で異なる新規事業の進め方

事業の重さとは、ざっくり言うと「立ち上げにかかるコストと撤退障壁の大きさ」で測ります。

重い事業とは例えば重厚長大型の事業等で設備投資コストが多大であったり、参入障壁が極めて高いもの、また、撤退障壁が大きい、例えば、命に関わる薬のように一度提供を始めると社会的責任のもと簡単には止められない、というようなものもあるでしょう。

逆に軽い事業とは始めるのも簡単、止めるのも簡単というもので、典型的にはゲームアプリのようなものですね。

また、toC、toBは、いわずもがな、toC:個人向けのビジネス、toB:法人向けのビジネスです。BtoC型のビジネスは、多くの方が「自分自身で課題をイメージできる」ことが多いのが特徴です。また、個人で支払えるということから単価が相対的に安くなる傾向があります。すなわち、特にスケールビジネスを目指す場合、かなり多くの方に買っていただかないといけない、というビジネスです。

一方、BtoB型のビジネスは領域にもよりますが、概ね「業界の状況がよくわからない」ということが起こりえます。例えば、皆さんは半導体の製造プロセスの課題は分かりますか?あるいは、発電所の発電効率に関する課題は分かりますか?BtoB型のビジネスは業界内に入らないとわからないケースも多く、参入ハードルが高い一方で全体的に高単価型のビジネスになりやすいのが特徴です。

事業の重さと対象顧客で新規事業を整理したものを例示すると、次表のようになります。



toB toC
軽い事業 人材サービスなど。
立ち上げるのが簡単で、お客様にとって撤退したとしても凄く困るわけではない、という性質のものです。
ゲームアプリ事業など。
立ち上げるのが簡単で、お客様にとって必須ではないため撤退も簡単、というものです。
重い事業 重厚長大型の事業モデル。
原子力発電向けの設備などが相当します。
自動車製造など。
製造にかなりの手間がかかり、品質基準、安全基準等が影響するものです。

一般的に、新規事業は「軽いビジネス」をベースにしているものが多いです。PDCAを高速回転し、多産多死型のモデルですね。これらのやり方をそのまま当てはめると「重い事業×toB」はうまく運用できません。なぜなら、生むことそのものがとても大変でしかも一回生んでしまうとつぶしにくいからです。

コンサルタントの得意領域としても、過去の経験によって得意・不得意が異なりますので、そのあたりの確認をされるのも良いかもしれません。なお、当社は比較的toB型の事業の実績が多く、「重い事業×toB」のご支援も可能です。

③ アイデアコンテストを主軸に進める

アイデアコンテストを主軸に新規事業を進めている企業も多いようです。アイデアコンテストでは、全体設計をはじめ、個別に「アイデアが集まらない際にどうしたら良いか?」「コンテストの評価基準をどう決めるか?」「採択案をどう取り扱うべきか?」など気になることが多々表出してきますので、経験あるコンサルタントの支援を得るとよいでしょう。

全体の座組ができている場合にはコンサルタントの役割は「壁打ち」がメインになりますので、コンサルタントの得意とする「事業領域」を意識してアサインするのも選択肢かと思います。

④ 外部とのコラボレーション、特にスタートアップとの協業で進める/⑤ M&Aを主軸に進める

④のスタートアップとの協業、いわゆるアクセラレーターや、⑤のM&Aをベースとしたものについては、それぞれ得意とする専門プレイヤーがいます。

最初から「アクセラレーター」「M&A」と決め打ちするのはトラブルのもとになりますが、新規事業の大きな戦略を決めたうえで、具体論として実施する場合にはかなり強力なプロジェクトの一つになる可能性が高いです。

新規事業コンサルにどこまで期待するか?

最終的にはコンサルタントに何を期待したいのか、それによって選ぶコンサルタントも変わります。大きな論点としては、次の4点が挙げられるでしょう。

  • ① 新規事業コンサルの関わり方のスタイルが、丸投げか、伴走か、アドバイスか
  • ② 新規事業プロジェクトの全体か、一部か
  • ③ 新規事業プロジェクトの進め方の知見か、業界知見か
  • ④ 新規事業プロジェクトのメインの目的が「事業」か、「人材」か、「組織」か

① 新規事業コンサルの関わり方のスタイルが、丸投げか、伴走か、アドバイスか

新規事業コンサルタントへの期待として、「〇〇の事業計画を作るところまですべてやって欲しい」という丸投げのケースもあれば、「自分たちで立ち上げたいが伴走してほしい」というケースや「この部分だけアドバイスしてほしい」というケースなど、クライアントの要望によってコンサルの関与度合いは異なります。

アドバイスを期待する場合、多くが「壁打ちだけお願いしたい」という依頼です。当社の場合は、新規事業は「中の人」が関わらないとうまくいかない、という想いがあり、丸投げスタイルは基本お請けしておりません(調査など一部分だけをまるごとお請けするケースはあります)が、大手コンサルティングファームなどではすべて引き受けられるケースもあるようです。また、「自分たちが独り立ちできるように伴走してほしい」というケースもあり、コンサルタントにどのようにかかわって欲しいかの目安になります。

② 新規事業プロジェクトの全体か、一部か

戦略~戦術~実行、アイデア出し~立ち上げまで、すべての工程に関わって欲しい、というケースもあれば、「ニーズ調査だけ」「PoCだけ」等の一部分だけを期待されるケースもあります。

一般に全体が見えていたほうがコンサルタントしては本質の部分から支援できるため、動きやすいことが多いです。とはいえ、予算制約の観点や、自社で出来る範囲を勘案して「ここだけお願いします」というのも良い選択肢です。前に述べたとおり、自社の新規事業推進の課題を明確にすると、どこを切り出すかが考えられるようになり、投資対効果を最大化することができます。

自社が出来ない部分だけお願いしたいのか、全体を支援してほしいのか、は重要な視点です。

③ 新規事業プロジェクトの進め方の知見か、業界知見か

コンサルタントに期待するのが、「新規事業の進め方」の知見なのか、特定市場や業界、技術領域等の業界知見なのか、によって必要とするコンサルタントは異なります。業界知見を期待するのであれば、「その業界〇十年」というようなシニアコンサルタントの方が適していますし、スポットコンサルなどで期待できる部分でもあります。

シナプスの新規事業コンサルティングの特長

シナプスの新規事業コンサルティングの特長は大きく3つ。

  1. 伴走型支援によって事業開発だけでなく人材育成も兼ねられること
  2. 戦略ロジックによる成功確率と社内外関係者説得力の向上が図れること
  3. VOCメソッドの活用によって解像度高く顧客ニーズを捉えられること



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