「技術縛り」の事業開発・・・技術起点で事業開発を考えるための4つのポイント

シナプス後藤です。

先日、T-CEPという、大阪発の取り組みにお声がけいただいて、末席ながら講師として担当させていただきました。 私は、ニーズの集め方について講義をさせて頂き、また、メンバーにアドバイスをさせて頂く立場で参加しましたが、プロセスも発表会も非常に興味深いものでした。

このプロジェクトは、大学発の技術をスタート地点として事業開発を考える、という取り組みです。あくまでも人材育成を軸足としたプログラムなのと、基本、企業から派遣されるメンバーによる取り組みなので、事業化される可能性は低いと思いますが、とはいえ、大学の方々は本気で事業化したいと考えていらっしゃるのでうまく進んでくれるといいなー、と思った次第です。

さて、このプロジェクトは、「技術縛り」です。

新規事業開発では「〇〇を前提として」というものがいくつかありますが、技術縛りはその中でもなかなか縛りの条件が厳しいタイプの一つです。というのは、その技術の筋が悪いと事業化が難しい(そもそも、その技術になぜ投資したのか?というような議論ですが)ですし、技術起点だとどうしてもいわゆる「技術バカ」(つまり、技術の議論ばかりして、市場やビジネスモデルの議論に至らない)になってしまう可能性が高い。 私自身、コンサルタントとして新規事業に関わっていて「この技術は少なくとも現在考えられる範囲では掘るべき種はない」という結論を何度も見ました。(市場領域も固定されている場合がほとんどですが。)

一方で、今回はどの発表も良いプランだったと思っていますが、なぜよかったのか、ひいては技術起点での事業開発のポイントを少し記載してみます。

技術の筋

まず、大前提として技術の筋の良さ、は必要です。特許の存在等、模倣困難性が高いのは勿論のこと、「ベーシックな技術で様々なアプリケーションが想定される」「機能に発展性がある」などがその条件なのではないかと思います。
今回は、プロジェクトスタート時点で事務局の方々が相当考えて選択されていらっしゃったようです。スタート地点として良い技術があった、ということが成功のポイントの一つに数えられるでしょう。

良い領域

私は「領域選択」と呼んでいますが、どの領域でプランを作るか、この領域の選び方によって大きなビジネスや小さなビジネスが出来上がります。例えば、「医療」「物流」等の領域は市場が大きく課題も多くスケールビジネスを描く上では筋が良いと思います。 「医療」「物流」の中でも何に取り組むか、ということも大事で、医療の場合は今は診断・予防に向かっていますのでそちらのブレイクスルーのアイデアが出来れば、希少疾患の治療を考えるよりもよほど良いです。

勿論、希少疾患の治療はとても重要で、製薬メーカーや医療機器メーカーには是非取り組んでほしいものではありますが、スタートアップにおいては、小資本からスケールアップするビジネスを考えることが重要、という意味合いです。

VOC

VOC:Voice Of Customer、つまり顧客の声を丹念にどれだけ拾えるか、ということも重要です。今回、私が偉そうにも「講師」としてお声がけ頂いたのはこの領域の支援なのですが、顧客の声をどれだけ丹念に拾えるか、そして技術drivenの場合は、可能であれば技術が分かっている研究者が顧客と対話が出来ればベストです。
今回は「たくさん顧客の声を拾ってこい」という事務局の指令の元、愚直にメンバーが活動されたのがとても良かったと思います。

何を提供するか?

ビジネスモデルに関連するところですが、技術供与なのか、材料・部品メーカーなのか、完成品メーカーなのか、あるいはサービス提供者なのか。技術が核にあったとして、市場でどの位置を占めるのかは、最終的なビジネスの在り方に大きく影響を与えます(当たり前ですが)。
ここは個人的にはもう少しビジネスモデルを考えても良かったかなぁ、とそれぞれのプランを見ていて思ったところです。バリューチェーンをどう作るか、というところは技術が良いだけに重要だろうなと思った次第です。

さいごに

技術起点の事業開発の4つのポイントを書きました。

  1. 技術の筋
  2. 領域選択
  3. VOC
  4. 何を提供するか?

の4つが重要です。

とはいえ、審査に関わった多くの方がおっしゃっていて私もそう思いますが、事業開発に真に必要なのは情熱の部分、「想い」であり「Why?」です。なぜ自分はそれをやりたいのか、なぜそれが社会に必要なのか、技術が良くても本人の情熱が無ければ動かない。

勿論、通常の事業開発で重要なステップ(Custmer Problem Fitや、MVP、PoC等の考え方やプロセス)は当たり前に重要ですが、特に気になったところを書きました。

ご参考:T-CEP(Technology Commercialization & Entrepreneurship Program)とは

「革新的な知を富に変える」イノベーション創出のための人材育成プログラムとして、関西の大学にある技術を集め、事業開発につなげる取り組みです。
2020年で2期目だそうですが、ご興味がある方はご覧ください。(今後も継続・改善して進められるのではと思います。)



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