新規事業に向いている人はこんな人!7つの特徴とスキルを解説

新規事業責任者必読!新規事業に向いている人材の特徴とは?新規事業を任せられる人に共通する7つの特徴をご紹介します。

更新日:2024年7月23日


新規事業コンサルタント後藤匡史

新規事業に向いている人はどのような人なのでしょうか。

シナプスは新規事業に対するコンサルティングをサービスとして提供していますが、よく聞かれる質問の一つが「新規事業を検討したいんだがどういう社員をアサインすべきか?」問題です。

この記事では、様々な案件に関わったり、あるいは新規事業を立ち上げた方と数多く会話をする中で考えを深めてきた「新規事業に向いている人はこういう人材だろう」という私なりの新規事業人材に関する仮説をご紹介いたします。

新規事業と既存事業との違い

「新規事業に向いている人材」を考えるうえで、既存事業と何が同じで何が違うのか、について説明します。

まず、ご理解いただきたいのは、新規事業は「既存事業が存在する企業内での新しい事業の取り組み」であることです。当たり前ではあるのですが、既存事業推進に必要な要素は新規事業でも基本的に必要とされ、加えて、事業開発の要素が入ってくるということです。

既存事業、特に会社の中で柱となるような事業は「仕組みがうまく出来上がっている」ことが大きな特徴です。この「出来上がっている仕組み」をうまく使うことができれば、極論を言えば、誰しもがそれなりに成果を出すことができます。言いかえれば、「出来上がってくる仕組みをうまく使い、さらには改善する」ことが既存事業成功の基本的な要件となります。

一方で、新規事業は「(会社の中に)これまでになかったものを立ち上げる」試みです。従って、会社の中のリソースは上手く活用しながらも、これまでになかったものをうまく立ち上げる、ここに「既存事業にはない要件」が入ってきます。

新規事業と既存事業との違いを踏まえて、新規事業人材に必要な7つの要素について考えてみたいと思います。

新規事業に向いている人にみられる7つの特徴

これから、新規事業に向いている人に見られる7つの特徴をご紹介しますが、大きく前半三つ(①②③)と後半四つ(④⑤⑥⑦)に分かれます。前半三つは極論を言えば、ベースとしてこれを持っていて欲しい、無ければしんどい。後半四つは、あった方が望ましいが、最悪今はなくてもあとから身につけることはできるという性質のものです。

  • ①カオスな状態に耐えられる
  • ②自分で問題を設定し解決ができる
  • ③社内調整ができる
  • ④領域の知識をもっている
  • ⑤戦略ロジックをたてられる
  • ⑥計数感覚がある
  • ⑦発想力がある

①カオスな状態に耐えられる

まず最初に挙げておきたいのが「カオスな状態でも大丈夫な人」です。

新規事業はだいたい物事がまともに進みません。新規事業開発では、事業が立ち上がりある一定の利益が確保できるまで、ずーーーーっとカオスであるといっても過言ではないでしょう。その状態でも楽しめるタイプの方だと新規事業に向いています。

一方で、「何事もきっちりとやりたい人」にとって、新規事業で起こる状態はストレスでしかありません。例えば、世の中には「必要な書類を角を整えてホチキス止めし、参加者の机にきっちりと並べる人」もいます。そういうことができる方も企業全体としてはもちろん必要なのですが、その手の折り目の正しい仕事をやりたい方には新規事業は向いていません。きれいに印刷とかいらないから顧客インタビュー行ってこい、とかいうカオスな状態に耐えられるかどうか、これが一つのポイントでしょう。

自分で問題を設定し解決ができる

ある大手メディア企業で新規事業のマネジメントをされている方が、新規事業人材に関して次のような発言をされていました。

「新規事業ができる人は自分に任されたことをちゃんと進められる人。だから、若手でもとにかく『自分で考えてこれをやってみて』と無茶振りしてその状況を見てるんですよね。」

その方が確認されたかったのは、無茶振りされた状況でも自分で問題を設定して解決ができるかどうか、ということです。

新規事業とは、というよりも事業というものは、そもそも、顧客が抱えている問題を解決し、それに対して対価を頂く、という営みです。特に新規事業は、(その会社では)まだ誰も解決できていない、新たなお客様が抱えている問題を発見、あるいは設定してその問題解決に取り組む、ということでもあります。

また、新規事業では、推進の仕組みが整っていない分、これまでに出会っていない種類の問題が山のように出てきます。ところが、目の前で起こっている問題が本当に「解決すべき問題なのか?」は実は判断が難しいところですし、本当に解決すべき問題だったとしても、次々に起きる問題の山を解決し続けなければならないわけです。

では、適切に問題を設定し解決するために何が必要か?ここでは仮説構築、行動、検証、の3つのスキルを挙げておきましょう。

仮説構築

新規事業ではわからないこと、明らかになっていないことが山積みです。例えば、コロナ前に「テレワークが当たり前になる時代」をだれが想像したでしょうか?しかし、Zoomのようなプレイヤーがその前から「オンラインミーティング」のソリューションに取り組んでいたがゆえに、我々は比較的スムーズに在宅ワークを進められたわけです。どういう未来が来るのか?お客様はどのような困り事があるのか?その困り事にはどのようなソリューションが当てはまるのか?どういうビジネスモデルだと儲かるのか?等、これらすべて最初は仮説です。

この仮説の精度が高ければ高いほど、筋が良いほど、新規事業の成功確率は上がっていくでしょう。

行動

仮説を検証するためには行動力が欠かせません。お客様にインタビューに行く、社内調整をする、モノを作る、とにかくやってみる、動いてみる、ということが最も仮説検証では重要になってきます。特に新規事業の場合、仮説が立ちにくいいわゆる「解像度が低い状態」が続きますので、それをいかに行動力でカバーするかがポイントになります。

検証

単に行動すればよい、ということではなく、行動した結果、仮説がどう検証されたのか、仮説がどう変わったのか、もポイントです。事業開発においては行動したらそれを振り返って「何が正しく、何が間違っているのか?」「次に何をしなければならないのか?」を明らかにしていく必要があります。そのために常に仮説→行動→検証のサイクルを回していきたいものです。

③社内調整ができる

三つめは社内調整ができることです。これは新規事業に関わる全ての人が備えていなければいけない、というわけではなく、チームで、あるいは組織で誰かが担えればそれでよいケースも多々あります。(そのため、新規事業開発室長、のようなマネジャーの方が社内調整に奔走するケースも多々見られます。)

なぜこれが必要か?「新規事業」というからには当然既存事業があります。起業・スタートアップと異なり圧倒的に有利な点が、既存事業が存在していることなのです。このリソースを利用するからこそ、新規事業が成功する可能性が高まります。言い換えれば、どれだけ社内のリソースを活用できるかが突破口になることも多く、社内調整は新規事業の必須スキルとなります。

これら三つの要件、①カオスな状態でも大丈夫、②自分で問題設定し問題解決できる、③社内調整ができる、は新規事業に携わる人に求められるものです。これらは後から身につけることも可能で、新規事業をやりまくっていればいつしか身につくことでしょう。そうは言っても、時間とリソースが限られる中、これらの要件が揃わない状態で取り組むより、もともと身についている方に任せる方が成果が上がりやすいのは自明です。そのため、まずこの三つを基本の要件としておくことをお勧めしています。

④領域の知識がある

続いて挙げたいのは領域の知識です。ざっくり言えば、その事業の「顧客や市場に関する知識」と「製品・サービスや技術に関する知識」です。

例えば、女性向けの化粧品ビジネスを立ち上げるとしましょう。その場合、まずはお客様の知識として、女性の美に対する関心や普段の化粧品の使い方などを当然知っておきたいです。(一般に多くの男性は自分では化粧をしないのでよく知らないことがほとんどですが、その状態では顧客の課題が分かりません。)

また、肌に対する有効成分が何かというような技術特性等や、可能であれば、薬機法のような規制や一般的な収益構造(粗利を何%に設定するのが妥当か、等)も知っておきたいところです。

これらは勉強すればわかるのですが、最初から知っているとその分だけ楽にビジネスが進められます。

特にBtoB型のビジネスは門外漢にはさっぱり事情が分からないことが多いです。例えば、半導体メーカーに半導体製造のソリューションを提供したい、と思っても、その作り方や課題が何か、を具体的に理解するのはとても大変です。最初から業界の中にいればすぐにわかることも、外からは分からないことも多いのです。

新規事業開発の初期段階、アイデア出しの段階では領域が固定されていないこともありますので、「何の知識が必要か?」は分からないことも多いですが、ある程度事業方針が決まってきた段階では身につけておきたいものです。

⑤戦略ロジックをたてられる

事業環境を分析し、戦略を組み立て、施策を実行する。いわゆる、経営戦略やマーケティングのフレームワーク、あるいは、それを用いた戦略構築と実行は、事業立ち上げの段階で求められます。

成功確率が上がる、という点でも重要なのですが、社内でプランを通すためには、分かりやすい戦略ロジックが必要になります。新規事業の提案を説明する相手が新規事業に慣れていればよいのですが、往々にして新規事業の提案をあまり受けたことのない方もいらっしゃいます。その場合には、「売れるか、勝てるか、儲かるか、出来るか」をロジックをもって説明しきることが必要になることもあるでしょう。

近年、新規事業やスタートアップ向けの理論やフレームワークが整理されてきているので、それらも使いこなせるとさらに良いですね。

⑥係数感覚がある

係数感覚は、一般的には売上、コスト、利益の数字を意識できることを言います。新規事業開発においては、それだけでなく数字をKPIで押さえることも重要です。

起業家の要件を整理したエフェクチュエーション(サラス・サラスバシー教授)には行動要件の一つとして「許容可能な損失の原則」というものがあります。これは「どこまでの損失は許容できるか」で物事を判断しましょう、という考え方で、失敗の許容量を定量的に理解しておいてそこまでは突き進む、という感覚を持っているのも一つのポイントでしょう。

⑦発想力がある

新規事業には様々なアイデアが求められます。突拍子もないアイデアが実は新規事業アイデアのキーポイントになるケースもあります。私はよく新規事業開発に取り組む際にはSF(Science Fiction)を読むことをお勧めしていますが、これらも発想力の強化のための一つのツールです。また、何かのキーワードから連想できる力も発想力の一つの源泉になります。

発想力には様々な要素がありますが、少なくとも、「新しいアイデアを肯定的に捉える」(新しいアイデアを思いついたときに自分自身で否定しない)ことは必須要件かもしれません。

新規事業は立ち上げ経験者にしか任せられない?は本当か

新規事業に向いている人はどういう人か。極論を言えば、一度やってみるとわかる、というのは新規事業に関わった多くの方が感じることでしょう。「新規事業ができる人はどういう人か」について、新規事業に関わっている方と定期的に議論を交わしていますが、概して「やったことのある人だよね」という結論に達することが多いです。

ただ、「立ち上げ経験者」や「新規事業成功者」でないとダメかといえば、必ずしもそんなことはありません。誤解を恐れずに言うと、新規事業への関わりは成功でも失敗でもどちらでもよく、新規事業の一連の流れを体感し、必要な行動とその結果として起こることを実感していることが重要なのです。経験学習、つまり、一連の新規事業経験からの学びによって(次の)新規事業が進めやすくなる、ということです。

そして、新規事業に向いていない人は、この一連の流れの途中でくじけてしまい、「もう、こういうことは二度とやりたくない」と思ってしまいます。新規事業に向いている人だと、「今回は失敗したけどもう一回やったら成功する」と思うわけです。

また、新規事業を立ち上げて大成功され、役員になられた方にも何人かお話をお聴きしたことがありますが、必ずしも「立ち上げ経験者」ではありませんでした。初めてのチャレンジで結果的に成功するということも十分あり得ます。

上述のとおり経験者の方が期待に応えられるケースは多いですが、だからと言って、「経験者でないと新規事業が立ち上げられない」わけではありません。ポイントは、新規事業を立ち上げられるような人材をいかに見出せるのか、に尽きるでしょう。

新規事業に向いている人の見つけ方

「新規事業に向いている人はどういう人か?」ということを本当に知りたければ、新規事業研修のような形で疑似的にでも試していただけるとよくわかります。シナプスはコンサルティングだけでなく研修サービスも提供していますが、新規事業を作る研修を実施すると如実に向き不向きが見えてきたりするわけです。

いくつかの見つけ方、選考方法がありますので、やり方別に注意点を記載します。

過去の実績や成果に着目する

よく見られるやり方の一つが職務上の過去の実績、成果を見るものです。過去の実績や成果でも参考になるものとならないものがあるので注意が必要です。

◆参考にしたい過去の実績や成果

新商品開発の実績や新たなイベント企画等、「新しいこと」にチャレンジして成果を出した実績や「何もないところから企画し実行した」実績は新規事業にも通じるところがあり重視したいところです。

また、新規事業のテーマが決まっている場合、その領域での実績は評価したいです。例えば、医療機器事業に新規参入する、とか、AIを使ったSaasビジネスを立ち上げる、等の場合、医療領域に関わったことがある、とか、AIに対する知見がある、などがそれに該当します。概ね、「産業・顧客領域」か「製品・技術領域」の知見は流用できるケースが多いです。

◆参考にしにくい過去の実績や成果

既存事業を前提として「その中でうまくやった」実績や成果は、新規事業には流用しにくいです。あくまでも既存事業の枠組みの中で成果を最大化した、ということです。例えば、既存顧客の売上を大幅に増やした、とか、製造工程を改善し歩留まりを大幅改善した、などがこれにあたります。これらの力は事業が立ち上がりスケールするタイミングでは必要になることもありますが、いわゆる0→1の状況ではあまり有効に使えないので注意が必要です。

柔軟性やチャレンジ精神を問う

新規事業では様々な変化があります。頻繁にピボットもしますし、朝令暮改は当たり前のように起こります。また、チャレンジングな目標や行動が習慣的に求められるものでもあります。従い、柔軟性やチャレンジ精神を確認することも一つのポイントです。

やり方としては、インタビュー、ヒアリングのような形式もあれば、ストレス耐性の確認のようなやり方もあるかもしれません。とはいえ、口頭では何とでも回答できてしまうので、過去に取り組んできた仕事の様子を上長に尋ねるなど、複数の方法を組み合わせて確認するとよいでしょう。

コラボレーションやリーダーシップ能力

新規事業では、社内外の様々な方と連携し、とりまとめ、推進していくことが求められます。その意味で、コラボレーションやリーダーシップが求められます。リーダーシップ能力の評価、測定には様々なツールが出ていますが、それらを活用することも選択肢でしょう。

新規事業に求められるスキル

新規事業では様々なスキルが求められ、その多くは新規事業立ち上げのプロセスの中で、すなわち、OJT(On the Job Training)で鍛えられます。しかしながら、すべてをOJTで賄うのは効率が悪く、OffJT、すなわち研修などのINPUTを含む学習方式でカバーできる領域も多々あります。

「新規事業」といっても、事業内容によって必要な進め方は変わりますので、それに合わせて覚えておきたいこともあります。一般的には、事業計画書として伝えるべき、次の項目について考え方や思考手順を理解し、関連知識を得ておくとよいでしょう。

  • 新規事業プロセス(StageGateやデザインシンキング、リーンスタートアップ、等事業内容にあった進め方)
  • 戦略フレームワーク、マーケティングフレームワーク
  • 顧客ニーズ把握の方法
  • ソリューションの考え方
  • マーケティング手法(営業含む)
  • 競争戦略、競争優位性の考え方
  • ビジネスモデル、マネタイズモデルの組み立て方
  • 財務計画(特にPLの作成と損益分岐点の考え方)

新規事業人材の育て方

新規事業人材を育てるには新規事業に関わらせる、これに勝るものはありませんが、単に関わるだけでなく次の3つのポイントを意識したいところです。

継続的な学習意欲と情報収集能力の養成

新規事業は活動そのものが学びにつながります。当事者が学習し、成長しなければ、新規事業は成功しないと言っても過言ではないでしょう。(その意味で、担当者が途中で変更すると急に失速する、というケースも見られます。)

その中でも情報収集、特に顧客のニーズを収集する力は必須です。これらは、顧客ニーズをヒアリングするスキルを学び、それを実践的に使っていくことによってその方の血肉になります。シナプスではこれらの活動をVOCと呼んでいますが、VOC活動の考え方を適切に学び、適切に実行することで担当者本人の顧客理解が進むとともに、「顧客のニーズを理解する方法」の理解も進んでいきます。

※VOCについてもっと知りたい場合は、「新規事業の立ち上げで必要になるVOC」をご覧ください。

チームワークやコミュニケーション能力の強化

新規事業では新規事業内のチームワークや社内外のコミュニケーションが極めて重要になります。マネジャーのコミュニケーションは「コーチング」が良く取り上げられますが、新規事業ではコーチング的なアプローチよりは一緒に考えるための「ファシリテーション」力が必要になるでしょう。相手が何を求めていて、自分が何を提供できるのか、を意識しながらファシリテーションによって多くの方を巻き込んでいく、このスキルの獲得を意識しておきたいところです。

失敗から学ぶマインドセットの醸成

新規事業には失敗がつきものです。正確には、「うまくいかないやり方」をどれだけたくさん見つけられるか、が最終的な成功につながります。その意味で、大事なのは、一発でうまくいこうとするのではなく、多くの失敗をしながら学んでいく、そのマインドセットを醸成していくというスタンスです。そのためには、アクションは必ず振り返り学びを言語化する、ことを習慣づけるとよいでしょう。

新規事業の責任者に求められるリーダーシップ

新規事業担当役員や新規事業開発室の室長というような新規事業の責任者には担当者と少し異なる要素が求められます。

新規事業の難しいところは、「新しいことをやっている」ことに尽きます。その難しさは、①失敗する可能性が多々ある、②自分が分からないことをやっている、③既存事業側からよくわからない人たちとみなされてしまう、という3点に集約されます。新規事業の責任者にはこのタフな状況をクリアするため、①失敗を許容する文化を醸成する、②任せて応援し邪魔が入らないようにする、③既存事業の人たちの理解が得られるように努める、ことが求められます。

そのためにも、なぜ新規事業が必要なのか(Why)、新規事業には何が必要なのか(What)、新規事業の成果は何か(So What)をメンバーだけでなく既存事業の人たちに向けても発信し、とにかく新規事業担当者のモチベーションを下げないように心がけたいところです。また、多くの横やりに対する防波堤になり、将来の大きな事業の柱を信じて上からつぶされないようにしたいものです。


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