「なぜシナプスを立ち上げたのか?」「なぜマーケティングコンサルティング会社が企業研修を行うのか?」など、家弓正彦の「マーケティング」と「企業研修」に対する想いについて語ってもらいました。
家弓正彦 (かゆみ まさひこ) 株式会社シナプス 創業者
1982年松下電器産業入社。FA機器マーケティング実務現場を経験。三和総合研究所にてコンサルティングに従事後、1997年シナプス設立。
マーケティング中心に400社以上の企業へ対するコンサルティング経験有り。
また、企業研修を中心に、中央大学非常勤講師、グロービス経営大学院教授、SMBCコンサルティング講師、日経ビジネススクール講師、など延べ約4万人の受講生に対する豊富な講師経験を有する。
「日本の企業をマーケィングに強い会社にしたい」
インタビュアー
早速ですが、まずはじめにシナプスを立ち上げた経緯を教えてください。
家弓正彦
シナプスを立ち上げたのは1997年。当時は一部の先進企業を除くと、ようやくマーケティングの考え方が日本に普及してきたところでした。 マーケティングの可能性や必要性を感じ始めているものの、多くの企業はその実践するためのスキルが不足していました。
たまたま私は最初に入社したパナソニックにてマーケティングの仕事を経験し、その後のコンサルティングの仕事でもマーケティングを中心に活動していました。 今思うと、まだまだ私も学習途上ではありましたが、このマーケティングのノウハウを世の企業に提供していくことで多くの企業が変われると確信したのです。
「日本の企業をマーケティングに強い会社にしたい」 今振り返ると、そんな想いがあったんですね。
インタビュアー
なるほど。 そこで以前から気になっていたことがあるのですが、本来マーケティングコンサルティング会社であるシナプスが、なぜ企業研修も行っているのでしょうか?
家弓正彦
創業当初はコンサルティングに特化していました。 しかし、そのうちマーケティングにかかわる「社員育成」についてもご相談をいただけるようになってきました。
私たちが提言したマーケティング戦略や施策を実行に移すのは、社員の皆さんです。当然、マーケティングスキルを持った強い組織が実行していくことが成果につながることは言うまでもありません。
私たちは、マーケティングに強い組織を作ることがミッションです。その手段としてコンサルティングと企業研修という2つの手段を用いて支援していくことが真にマーケティングに強い組織を作っていくことになるわけです。 現在ではコンサルティングと企業研修の2つの事業を柱としてマーケティングに強い会社創りに取り組んでいます。
インタビュアー
なるほど。「戦略を作るだけ」であればコンサルティングのみの提供で事足ります。 しかし、「最終的にマーケティング戦略を実行するのは、それぞれの企業の皆さん自身。」そのため単に戦略を作っただけででは「絵に描いた餅」「仏作って魂入れず」になりかねないので、現場の実行力を高めるために企業研修によって、組織的にマーケティング力の強化が必要ということですね。
また、最近のマーケティングプロセスの潮流としては、まずは小さく実行してみて、高速PDCAを回すというやり方にどんどんシフトしていますね。 この観点からも、「自分自身がプランを立てて、実行し、修正していく」という能力を身につけることが重要ですね。
家弓正彦
その通りです。 企業を持続的に発展させていくには、付け焼き刃の短期的対応だけでは不十分です。 人材育成などを通じた長期的な組織力としてのマーケティング力強化が必要になってきます。
伝えたいのは「ロジックとパッション」。20年間で4万人を指導
インタビュアー
1996年の中央大学非常勤講師からスタートし約20年講師を続けているそうですね。
家弓正彦
幸運なことに、私は教鞭をとる機会には恵まれました。 1996年以降、大学、ビジネススクールなどから講師の仕事をはじめ、株式会社シナプスを設立してからは、自社開催のマーケティングカレッジ、企業研修などを数多くこなしてきました。
ざっと計算すると、年間100日程度の講師登壇の機会をいただいています。延べ人数にすると約4万人の受講生の方と接してきたことになりますね。
インタビュアー
4万人!それはすごい数字ですね。文字通り「桁違い」です(笑)。
ところで、研修講師をされるときは、一貫して徹底的にロジックにこだわる姿勢を貫いてらっしゃいますよね。それは、なぜなんでしょうか?
家弓正彦
マーケティング理論を徹底活用しても、現実のビジネスでは外部環境の変化などは完璧に読み切れるものではありません。したがって100%の成功を約束することはできないのです。
しかし、ビジネスは長いペナントレースのようのものです。着実に打率を上げ、勝率を高めて、最終的に成果につなげることが重要です。 ロジックにこだわるのは、ビジネスの成功確率を上げるための努力です。50:50の成功確率を、60%、70%と高める、最終的には1%でも成功確率を上げ続けたものがビジネスの勝者となるものだと思います。
一人ひとりのビジネスパーソン、あるいは組織が徹底的にロジックにこだわり、思考し続ける習慣を身につけていくことを目指して企業研修に取り組んでいます。
インタビュアー
ロジックで思い出しましたが、「ロジックとパッションの狭間から」というBlogを書かれていますね。
『ロジックとパッションの狭間から。。。』家弓正彦Blog
株式会社シナプスの代表取締役 家弓正彦が、 マーケティング、ビジネス、プライベートを気ままに綴ります。
家弓正彦
ビジネスの成功のためにロジックは不可欠です。しかし、現実にはロジックだけで人や組織は動きません。 最後に人の心を揺さぶり、本気になって行動を起こさせるものは「パッション」、つまり燃えたぎるような情熱だと思うのです。
強い組織はロジックとパッションを持ち合わせています。しかし、現実にはそれらを両立している組織は稀で、どちらかに偏っていることが多いようです。
そこで、私の思いとしては、このロジックとパッションの狭間でうまく両面を見据え、バランス感覚を持ってその両立を目指してほしい、いや私自身がそんな姿を目指したいという想いをこめてネーミングしました。
インタビュアー
話をちょっと変えまして、これまでの講師人生で、特に印象に残った受講生を教えてください。
家弓正彦
もう10年以上も前にご受講いただいた方の記憶が強く残っています。 その方は、某メーカーのエンジニアの方でした。技術畑ではありましたが、マーケティングの重要性を感じ、私の講座をご受講いただいていました。 とても熱心、かつ優秀な方でした。約3ヶ月のご受講を終え、その数か月後にお会いした時の言葉が今でも忘れられません。
『私はこれまで技術系一本で仕事をし、それなりの成果を出してきたつもりです。しかし、今回マーケティングを学び、自分の視野の狭さを痛感しました。 もっとマーケティングを勉強したい。それを仕事に活かしたい。今はそんな気持ちでいっぱいで、マーケティングの勉強を続けています。
マーケティングに、そして家弓先生に出会えて本当によかった。』 大げさに言えば、彼の仕事に、そして人生にちょっとでもプラスの「何か」を提供できたかなという気持ちで、とてもうれしくなりました。 その時、これからも講師の仕事にエネルギーを注いでいきたいと決意したことを覚えています。
25年のコンサルティング経験で初見の自社課題でもファシれる
インタビュアー
シナプスの研修では、あらかじめ準備された「ケース」だけでなく、BtoBからBtoCまで全く異なる業界で、それぞれ事情が異なる会社の自社課題をよく扱います。 研修を何度か見学させていただくと驚くのですが、初見での自社課題でも、まるであらかじめ準備されていたケース課題のようによどみなくファシリテーションされていますね。 どうしてそのようなことができるのでしょうか?
家弓正彦
これまでの25年間のコンサルタント経験を通じて、様々な業界と接してきた知見が大きいと思います。多くの業界地図は、概ね頭の中に入っています。 しかし、すべての業界に精通しているわけではありません。もちろん、業界によって市場環境や競争のルールは異なります。しかし、私たちコンサルタントはそれを瞬時に判別し、本質的なカギとなる要因を見出すスキルを鍛え続けています。
しかし何よりもビジネスの原理原則、マーケティング理論の本質を習得し、その応用力を培ってきたことが大きいでしょう。 マーケティング理論といっても書籍などに書かれている表面的な部分にとどまらず、その本質的な基本原理や考え方を理解、習得しているからこそ、様々な業界や企業の事例に対して問題提起やアドバイスができるのではないかと思います。
マーケティングスキル強化で強い企業を生み出し社会へ価値提供を
インタビュアー
最後に、これまでの話に加えて、受講生に対して伝えたいことがあればお願いします。
家弓正彦
現代社会におけるビジネスは複雑化、高度化を極めていることは言うまでもありません。常にビジネスを取り巻く環境は、猛烈なスピードで変化を遂げています。 また、技術力やアイデア発想だけで持続的なビジネスの成功をもたらすことはできません。
そんな環境だからこそ、これからのビジネスにはロジカルなマーケティング思考力が必要不可欠となっています。ぜひマーケティングを学んでください。そして、それをご自身のお仕事に活用してみてください。
少しずつでも地道にそれを続けていけば、ビジネススキルは鍛えられ、成果につながり、価値あるビジネスパーソンへと進化を遂げることができるはずです。 学び続ける皆さんは、強い企業を生み出し、社会に向けて価値を提供しうる存在となってくれるものと確信しています。
私たちは、少しでもそのお手伝いができればこの上ない喜びです。