この事例の外資系エンタテイメント企業様は米国に本社があります。本社ではダイバーシティ&インクルージョンの取り組みも進んでおり、日本法人にも同じレベルでダイバーシティ&インクルージョン実現が求められていました。HR部門主導で米国本社作成の研修コンテンツをeラーニングとして全社員に提供。全員が受講したものの実現したい水準には至っていない、という状況でご相談を頂きました。
ダイバーシティ&インクルージョンワークショップの概要
- 時間:3時間×2回 (インターバル期間は7カ月)
- 対象:日本法人全社員(150名)
- 課題:米国本社で作成されたD&I研修コンテンツを日本法人の社員に腹落ちさせる
- 到達目標:組織から個へとつなげ、自分事としてD&Iの実現のためのアクションを考える
- 進め方:相互コミュニケーションを重視し、インタラクティブに進める
ダイバーシティ&インクルージョンワークショップのコンセプト
ダイバーシティ&インクルージョンについて概念的には理解しているけれど、実際にどう実現すればいいのか、どういう言動が求められるのか、避けるべきはどのような言動なのか、がわからない、といったことは、よくあるお悩みです。
人間は、経験したことによってつくられた価値観によって行動します。戦後の日本社会では長らく男性中心のモノカルチャーで物事が進んできました。「Japan as
NO.1」とされた時代もあり、機動力を備えた組織だったのは間違いありません。ただ、時代が変わり、女性や高齢者、障がい者、外国籍の方など、モノの見方・価値観の異なる人たちが働き手として増えてくると、彼らの言動が理解できず、対立・排除の構図ができてしまいます。
こうした事態を解決するために研修を実施するわけですが、NG行動の列挙といった付け焼刃なものでは太刀打ちできません。全てのケースを網羅した行動リストは作れませんし、作れたとしても意味がありません。
つまり、まずは、前述の人間の思考と行動のメカニズムを理解頂いたうえで、お互いの違いやインサイダー・アウトサイダー経験などを共有・環境のデザイン方法を学ぶ必要があると考えられます。
ダイバーシティ&インクルージョンワークショップのカリキュラム
Day1のカリキュラム
- アンコンシャス・バイアスとは何か
- インサイダー/アウトサイダーを考える
- インサイダー/アウトサイダーが発生する現状、原因、解決策を検討する
村上美奈子講師
Day1のメインテーマは、「アンコンシャス・バイアス」です。このワークショップの目標はダイバーシティ&インクルージョンの実現なので、ご参加のみなさんの相互コミュニケーションの活性化がとても重要です。そのため、ワールドカフェというワークショップ手法を用いて、「みんなが気兼ねなく強みを発揮できる職場を作る」をテーマに施策案を共有頂くことにしました。
冒頭では、講師から次についてレクチャーしています。強調しておきたいのは、ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みは企業・組織の業績向上に資する活動である、ことです。企業活動である以上、取り組む意義についてはしっかりと理解をしておいて欲しいと思っています。
・ダイバーシティ&インクルージョンとは何か
・なぜダイバーシティ&インクルージョンが経営戦略として必要なのか
・日本企業におけるダイバーシティ活動における市場創造の例
・ダイバーシティを妨げるものーアンコンシャスバイアスー
・アンコンシャスバイアスを取り除くには?
レクチャー後、グループに分かれて、身近なインサイダー/アウトサイダー体験、その原因、解決策について話し合います。ワールドカフェという手法では、テーマオーナーと呼ばれるプレゼンター以外は別グループで話し合われたことを聴くこともできます。こうして他者と経験を共有しお互いに理解することで、よりよい組織とはどうあるべきか、高い解像度であるべき姿を論じることが可能になります。
Day2のカリキュラム
- マイクロ・アグレッションとは何か
- マイクロ・アグレッションにあたる行動を考える
- セルフチェック・個人の行動の確認
村上美奈子講師
Day2のメインテーマは、「マイクロ・アグレッション」です。Day1では組織について考えましたが、Day2は個人のアクションを考えて頂くことにしました。個人は千差万別ですので、変えなければならない行動は個々に異なります。個々の行動がよい方向に変わることが、ダイバーシティ&インクルージョン実現へのクリティカル・パスと考えているからです。
冒頭でDay1について振返った後に、「マイクロ・アグレッション」について講師からレクチャーしました。「みんなが気兼ねなく強みを発揮できる職場」には個人個人のマイクロビヘイビア(些細な言動)が大きなインパクトを及ぼします。マイクロビヘイビアには、ポジティブなものとネガティブなものがあり、避けるべきネガティブな言動を「マイクロ・アグレッション」として、典型的な言動をご紹介しています。
Day2では、グループワークで次の2点について考えて頂きました。誰にでも「マイクロ・アグレッション」をしたり、されたり、見たりといったことは起こり得ます。その自覚をして正しく対処することが、ダイバーシティ&インクルージョン実現には殊に大切なので、Day2のテーマとして取り扱っています。
①マイクロアグレッションは日常的に発生していることに気づく
➁マイクロアグレッションへの感度を高める
ダイバーシティ&インクルージョンワークショップ 進行表(要約)
研修日 | 学習項目 | 目安時間 |
---|---|---|
Day1 | アンコンシャス・バイアスとは何か | 1時間 |
社内に存在するインサイダー/アウトサイダーを考える | 1時間 | |
インサイダー/アウトサイダーの発生要因、現状、解決策の検討 | 1時間 | |
インターバル(7カ月) | ||
Day2 | マイクロ・アグレッションを考える | 1時間 |
マイクロアグレッションにあたる行動を考える | 1時間 | |
セルフチェック/個人の行動の確認 | 1時間 |
担当講師
株式会社シナプス コンサルタント
大学卒業後、ベネッセグループに入社。大学・短期大学向けのキャリア教育事業に従事。大学等におけるキャリア教育導入・運用に関するコンサルティングを実施。
同事業の親会社への事業譲渡ののち、野村総合研究所グループ・NRIラーニングネットワークに入社。経営人材・IT人材の育成を手掛ける。その後、人材育成の経験を活かし、活躍の幅を広げるべく、監査法人トーマツグループのトーマツイノベーションに入社。大手上場企業等を対象に人材育成コンサルティングを実施。また、コンサルティング業務の傍ら年間100回程度の研修登壇も行う。
2018年よりコンサルティングの領域を組織に広げ、JTBコミュニケーションデザインでは組織開発コンサルティングに従事。
2021年4月、シナプスにジョイン。ヒト領域での20年以上のコンサルティング経験で培われた、能力開発と論理思考の知見に基づき、ビジネススキル開発の研修に多く登壇。丁寧ながらもメリハリの効いたクラス運営に顧客から厚い信頼が寄せられている。
【実績業界】 IT業|金融(銀行、保険、証券)|製造業|製薬業|商社|サービス
【研修実績】 管理職研修|次世代リーダー研修|階層別研修|キャリア研修|ビジネススキル研修|ダイバーシティ研修
【コンサルティング・調査実績】 従業員満足調査|ダイバーシティ調査|NPS-eNPS統合調査
【ハラスメント/ダイバーシティ系研修実績】
・女性活躍推進法施行(2016年)に伴う、女性社員・次期女性管理職候補者向け・及びその上司向け研修の実施(対象者5,000名)
・鉄道系HDグループ各社(約3,500名)のコンプライアンス担当者向けダイバーシティワークショップ
・同上 次期女性管理職候補及びその上司(9割男性)向けの次期女性管理職育成研修
・食品メーカー(約10,000名)の次期女性管理職候補及びその上司向け(全員男性)の次期女性管理職育成研修