プロダクト3層モデル(製品3層モデル)とは
プロダクト3層モデルとは、製品(product)の価値構造のを3層に分けることで整理するマーケティングフレームワークです。
「製品3層モデル」「コトラーの3層モデル」とも呼ばれます。
プロダクト3層モデル ①製品の中核
プロダクト3層モデルの第1層は、製品の中核、コアとなる要素です。
顧客が実質的に購入している基本的、中核的なベネフィットです。
携帯電話の例:製品の中核
例えば、携帯電話では、電話機能の主要価値、つまり「話す」「コミュニケーションする」が中核です。
プロダクト3層モデル ②製品の実体
プロダクト3層モデルの第2層は、製品の実体、製品の特性を構成する価値です。
具体的には、実際に顧客が入手する製品を特徴づけている要素。「機能」「品質」「スタイル」「ブランド」「パッケージ」などです。
携帯電話の例:製品の実体
例えば、携帯電話の場合は、ブランドとしては、テレビやデジタルカメラのブランドを冠した携帯電話や、「デザインケータイ」があります。機能としては、「ワンセグ機能」「バッテリーの長さ」「通話の品質(エリア)」「カメラの性能」等、様々な要素から構成されています。
プロダクト3層モデル ③製品の付随機能
製品の中核を提供するのに直接的な影響はないが、その存在によって顧客にとっての価値が高まる要素です。
「配達」「据え付け」「アフターサービス」「品質保証」「信用供与(クレジット)」などです。
最近では、機械が苦手な高齢者へも浸透しているため、設定サービスなどのアフターサービスを充実化させている企業もあるようです。
携帯電話の例:製品の付随機能
例えば、顧客は、携帯電話端末とその機能だけでなく、例えば、困ったときのアフターサービスや、壊れた時の保証等も気にしています。例えば、電池の寿命切れのときの無償交換や、クレジットカードによる支払いなども顧客にとっては重要な付随機能と位置づけられます。
プロダクト3層モデル事例:自動車
プロダクト3層モデルの具体例を、「自動車」プロダクト(製品)とした事例で考えてみましょう。
プロダクト3層モデルの第1層 ①製品の中核
自動車において、製品の中核、コアとなる要素はなんでしょう
自動車の製品の中核
- 移動
- 輸送
20世紀初頭、自動車は、「馬車の代替手段」として急速に普及していきました。
大量生産され大ヒットした自動車として「T型フォード」が有名です。しかし、「車種は1車種だけ」「ボディーの色も黒のみ」でした。当時は、自動車の中核機能である「移動」「輸送」さえできれば顧客は満足していたのです。
プロダクト3層モデルの第2層 ②製品の実体
あなたが自動車を購入したいとしましょう。
製品の中核、コアである「『移動』『輸送』さえできれば、どの自動車でもよい」と考える人は少数派でしょう。
自動車の製品の実体
- 走行性能
- 居住性
- 燃費性能
- 内装、デザイン
- 安全装備
たとえば、
- 「走りはこだわりたい。楽しく運転したい。」
- 「私は燃費重視。環境にも優しくしたい。」
- 「子供がいるから安全は最重要。」
顧客によって重視するポイントは違ってきますが、このように製品特性を選択基準とすることは多いでしょう。
また、「ブランド」という要素も入ってきます。「BMW」「ベンツ」などは、高額でも、所有する価値がある、と思わせる高いブランド力を持っています。一種のステータスシンボルでもあるでしょう。
また、「安全性ならボルボ」「燃費ならプリウス」といったように、機能とブランドを結びつけブランド戦略を展開していくブランドもあります。
プロダクト3層モデルの第3層 ③製品の付随機能
プロダクト3層モデルの第3層は付随機能です。
例えば、あなたがプリウスを購入すると決めたとします。しかし、プリウスを購入できる場所はおそらく複数箇所あるはずです。
製品の実体が同じとき、あなたは何を基準に購入する店舗を選択するでしょうか。
自動車の製品の付随機能
- 自宅まで納車(アフターサービス)
- 1年点検無料(アフターサービス)
- 分割払いOK
価格はもちろん気にするでしょうが、価格が同じだとすれば、アフターサービスの質を基準に選ぶかもしれません。
例えば、「この店は腕のいい整備士がいるから安心なんだよね。」といったアフターサービスの品質は、当然製品の「中核」「実体」ではありませんが、製品選びのポイントとして気にする顧客もいるでしょう。
プロダクト3層モデルと製品ライフサイクル
製品ライフサイクルによって注力する層が異なる
プロダクトライフサイクル(PLC)には、「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」があります。プロダクトライフサイクルとプロダクト3層モデルの関係を知っておくとマーケティング戦略を考えるときに有用です。
製品導入期は、中核
導入期は、「製品の中核」が顧客価値のフォーカスするポイントです。
車であれば、「まず走って人や荷物を運べればよい」ということですね。T型フォードは、「製品の中核」にフォーカスし、大量生産の・低コストでの製造に注力して成功しました。
成長期は、実体
成長期は、「製品の実体」が顧客価値のフォーカスポイントです。
自動車であれば、「年日がよい」「運転しやすい」などですね。製品の実体になってくると、各企業は独自の顧客価値を出すようになってきます。「燃費性能のプリウス」「安全のボルボ」などですね。
製品成熟期は、付随機能
成熟期は、「付随機能」が顧客価値のフォーカスポイントです。
もし、自動車の性能がどの企業から購入してもでも変わらないとすれば、「修理サービス対応の良さ」「分割払いのしやすさ」などが、選定のポイントになってきます。自動車は、成熟期に入ってきており、「どの車でもよいので、サービスが良くて、価格が安ければよい」という人もいるでしょう。一方、国別、車種別など個別のセグメントをみていくと、成長期のセグメントもあり、性能やブランドなどを気にしています。
製品ライフサイクルに合わせたプロモーション戦略
プロダクトライフサイクルの「導入期」「成長期」「成熟期」によって、顧客価値のフォーカスポイントが変わります。
最も変化の影響を受けるのは、プロダクト戦略ですが、同時にプロモーション戦略もプロダクライフサイクルに合わせていく必要があります。
- 導入期:製品の中核をアピールするプロモーション戦略
- 成長期:製品の実体をアピールするプロモーション戦略
- 成熟期:製品の付随機能をアピールするプロモーション戦略
まとめ
プロダクト3層モデルで示されるように、一口に「プロダクト」「製品」といってもいろいろな要素の集合体です。
プロダクトを考えるときは、このプロダクト3層モデルを使って、多面的な視点から考えましょう。
また、プロダクトライフサイクル(PLC:Product Life
Cycle)とプロダクト3層モデルの関係を頭に入れておくこともオススメです。一般に、プロダクトの導入期は、製品の中核が重視され、プロダクトが成長期、成熟期になると段々2層、3層と競争の中心が移ってきます。
「プロダクト3層モデル」を学ぶ企業研修
「マーケティング研修基礎」は、1万人が受講したマーケティング基礎プログラムです。「マーケティング戦略基本プロセスの流れ」「論理的思考法」「顧客ニーズの本質」を学びます。単なる知識に終わらずマーケティングの実務応用に使える論理的マーケティング思考法を身につけます。「マーケティング戦略思考」を共通言語として組織浸透させるための社員集合研修として最適です。
お客様の声:東京電力エナジーパートナー様
冨山様
元々、商品開発室は多様性のあるメンバーなので、プロジェクトを進めるときに共通言語を持つことが狙いでした。
複数のプロジェクトが並行して動いているのですが、共通言語としてマーケティングのフレームワークを使うことが当然になってきていますね。半年間で、すでにサービスをローンチさせた人もいます。