マーケティング戦略とは
マーケティング戦略とは、マーケティングを実施するうえでの基本方針であり、お客様は誰でどんな価値を提供するかを決めるものです。
マーケティング戦略を語るうえで、「マーケティングとは何か?」の理解は欠かせません。シナプスでは、マーケティングを「顧客ニーズへの適合と競争優位を構築する活動」と定義しています。どのように顧客を獲得し、利益を上げるのか、その方針や具体的な施策を実行し、実現する一連の活動そのものがマーケティングです。
その中でも中核を占めるのが「マーケティング戦略」になります。
経営戦略、事業戦略、営業戦略とマーケティング戦略の関係
「マーケティング戦略」を考えるうえで、近しい「戦略と呼ばれるもの」たちとの違いについて整理しておきましょう。
まず、「戦略」とは、目標を達成するための基本方針、であり、「何に集中し、何はやらないのか」いわゆる、選択と集中(あるいは捨てること)を決定します。
マーケティング戦略はマーケティング目標の達成のための基本方針、ということになります。では、そのマーケティング目標は何によって決まるのか?その上位概念として事業方針、すなわち事業戦略が存在します。そして、複数事業体を持つ企業の場合は、さらにその上位概念としての経営戦略が存在します。
一方、多くの業態で「営業」が存在します。最終的にお客様に買って頂くために営業活動が欠かせないからです。その営業の基本方針、営業戦略は、一般的にマーケティング戦略の方針を受けて決定していきます。
ですので、一般的な位置付けとして、経営戦略や事業戦略はマーケティング戦略の上位概念として、営業戦略はマーケティング戦略の下位概念として存在していると考えるのが妥当でしょう。
ただし、注意しておきたいのは、各々の社内での組織の位置付けによって戦略の位置付けは変わるということです。例えば、「営業本部」の中にマーケティング部が存在しているケースは多々あります。その場合は、本来的な意味でのマーケティング戦略は「営業戦略」という名前で作られていたりします。また、例えばマクドナルドやスターバックスなど企業が単一事業で成り立っている場合は、経営戦略≒事業戦略であり、事業戦略の要がマーケティング戦略になっていることが多く、すべてがセットで語られるケースもあります。
あくまで概念としては上述通りですが、個社内での呼び方は様々あることは注意が必要です。
マーケティング戦略をたてる意味・メリット
なぜ、マーケティング戦略をたてるのか?
マーケティング戦略をたてる理由は大きく二つ、「競争に勝つため」と「社内のベクトル合わせ」です。
事業活動においては必ず競合が存在します。モノがあふれている現代においては、お客様が何かを選択する際には必ず何らかの比較対象があり、それらの中で最も良いものが選ばれます。つまり、選んで頂くためには選ばれる状態を作り出す必要があるのです。このためにマーケティング戦略が存在します。戦略を組み立てることで、継続的に選ばれる仕組みを作り出すこと、これが本来的な意味でしょう。
一方で、マーケティング戦略の実行には多くの人数が関わります。関与する人全員が同じ方向を向くことでより大きな力が生み出されます。
マーケティング戦略がないために起こる不都合とは
では、マーケティング戦略がないとどうなるのでしょうか?
例えば、商品開発部は「シニアマーケットが拡大しているからシニア向けの商品を作ろう」と考え、広告宣伝部は「今回のプロモーションは反応が良い女子高生向けにしよう」と考えたらどうなるでしょう。誰にとっての製品・サービスかわからず、結果的に全く売上にはつながらないでしょう。
これらの不整合を防ぐことがマーケティング戦略でもあります。
マーケティング戦略立案のポイント
マーケティング戦略立案は大きく3つのステップで考えます。
- ステップ1:環境分析と戦略目標の導出
- ステップ2:基本戦略の策定
- ステップ3:具体的施策の立案
マーケティング戦略の意思決定ポイントは大きく二つ、①ターゲット(お客様は誰か?)、②ポジショニング(どのような価値を提供するか?)ですが、これを決める上では事業環境の理解・分析が欠かせません。
また、戦略を組み立てるだけでは売上・利益につながりませんので、戦略にあわせた具体的な施策も検討しておく必要があります。
マーケティング戦略の立案は、環境分析を行い(ステップ1)、その環境にあわせた基本戦略を意思決定し(ステップ2)、その戦略に合わせて具体的な施策を組み立てる(ステップ3)、この流れで考えましょう。
特に注意してほしいポイントは、この3つのステップのつながり、ロジックを明確にすることです。環境に合わせた戦略、戦略に合わせた施策の組み立てが必要です。また、環境変化は日々起こりますので、当然ながら環境が変化したら戦略・施策の見直し、修正も欠かせません。
マーケティング戦略の作り方
マーケティング戦略は上述のとおり、3ステップで考えていきます。順番に説明します。
ステップ1:環境分析と戦略目標導出
環境分析とは、事業環境を分析し、その環境下で達成すべきこと(=目標)を確認する作業です。環境分析は大きく2段階に分かれます。
最初にすべきは事実情報の収集・分析です。
マクロ環境、つまり、世の中の大きな変化はないか?お客様のニーズは何か?市場は成長しているのか?競合の動きは?自社の状況は?これらの情報を収集、整理して、「自社に重要な影響を与える要素」を抽出していきます。
そのうえで、環境分析の2つめの段階として情報の解釈をしていきます。
解釈とは、自社事業に対する意味合いを見出すことです。例えば、市場の変化が自社にとって重要な成長機会になるのか?自社の開発要素が新たな強みの獲得につながるのか、などです。
環境分析の最終ゴールは「戦略目標」の導出です。戦略目標とは、現時点で達成すべきマーケティングの目標ですが、売上目標や利益目標等の定量的なものではなく、その定量目標を達成するために「今、何に取り組むべきなのか?」を導出します。導出方法は、外部環境の事象・変化に対して、内部の要素でどう対処していくか、を整理することで行います。
つまり、マーケティング戦略立案の最初のステップ:環境分析とは、外部環境を的確に理解しその事象・変化に対して、競合と比較した自社の要素がどう適合するのか、の選択肢を抽出し、有望なものを選別することをゴールに行うものなのです。
ステップ2:基本戦略-セグメンテーションとターゲティング
戦略目標が決まったらそれに対してターゲット市場=「獲得すべきお客様」を決めます。
お客様は誰か、を考えるうえで最初にやっておきたいのが、市場にはどのようなお客様がいるか、その整理です。市場にいる様々なお客様を一塊の顧客群(セグメント)に分類、整理することをセグメンテーションと呼びます。
例えば、食品を考える場合、「カロリーなど気にせずがっつり食べたい」というお客様と「できる限りヘルシーな食事をしたい」というお客様では求めるものが違います。これらを同一に考えず、セグメントに分けましょう、ということです。
そのうえで、ターゲットにふさわしいセグメントを決定します。様々なセグメントの市場性や競合の参入状況、自社戦略方針やリソースとの親和性等の観点から自社にとって魅力的なターゲット市場を決めます。
ターゲットを設定する上での重要なポイントとして「誰が見てもわかるように」しておくことを心がけましょう。一般に、デモグラフィック属性(人口統計学的な観点で分かりやすい属性)である年齢や性別、家族構成等が採用されます。(法人をターゲットとする場合は、業種や企業規模、所在地など)
これらの属性は分かりやすい反面、セグメントが特定できないことも多いため、心理的な要素や購買行動等も併せて設定しておくことが必要になることが多いです。例えば、ライフスタイルや価値観、あるいは「ヘビーユーザ/ライトユーザ」等ですね。
ステップ2:基本戦略-ポジショニング
ターゲットが決まったら、ポジショニング、すなわち訴求ポイントを決めていきます。
ポジショニングは、「お客様の心の中にイメージを持ってもらうこと」です。
ポジショニングについては、古い話ですが、「ペプシチャレンジ」という興味深い事例があります。ペプシチャレンジは、コーラ業界2強の一角ペプシが圧倒的No.1のコカ・コーラにチャレンジする話です。ペプシチャレンジは、ブラインドテスト(銘柄を見せずにコカ・コーラとペプシコーラを飲んでもらってどちらがおいしいかを投票するもの)です。この投票では(何回もやっている印象ですが)、いつもペプシコーラの方がおいしい、という結果が出ます。つまり、単純に味だけを比較するとペプシコーラの方がおいしいのです。
私も10年以上前にこの調査を個人的に友人を集めてやったことがあるのですが(何度かやりました)、どちらがおいしいかと聞くと、毎回ペプシコーラの方がおいしい、という結論になります(何なら圧勝でした)。 ところがです。次に「どちらがコカ・コーラでどちらがペプシコーラだと思いますか?」と聞くと、毎回美味しい方がコカ・コーラ、という回答されてしまうのです。
これは、どういうことなのでしょうか?
一般消費者にとっては(少なくとも多くの日本人にとっては)、「コーラといえばコカ・コーラ」であり、コカ・コーラの方が当然おいしいと思っている、ということなのです。ペプシチャレンジも結局シェアをひっくり返すことはできず、頭の中のイメージを超えることはできなかった、ということでしょう。
ポジショニングとはまさに、「頭の中にそのイメージを植え付ける」ことにあり、それができていると選ばれる確率がとても高くなるということなのです。
具体的施策の立案
戦略ができたら次は具体的施策の検討に入ります。改めて注意したいのは、具体的施策を考えるうえでは、ターゲット、ポジションを正しく理解している必要があるということです。これを誤認していると戦略として成果が出ないと思ってください。
マーケティング施策(マーケティング・ミックス:4P)の設計
マーケティング戦略の実行には具体的施策が欠かせません。
マーケティング施策には大きく4Pといわれる4つのP、すなわち、Product(商品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(コミュニケーション)があります。これらを総称してマーケティング・ミックス、といいますが、なぜミックスなのでしょうか?その理由は、ターゲットやポジショニングに対して、ミックスして戦略を実行するからなのです。
例としてトヨタ自動車がレクサスを作ったときのことを考えてみます。レクサスは今のブランドの形になったのは2003-2004年頃のことです。ざっと当時のトヨタの戦略目標について記しておくと、トヨタにとってはハイクラス市場を獲得するのはとても重要でした。というのは、バブル期を境に、このハイクラス市場を欧州車(主にドイツ車)に奪われてしまったため、昭和の時代に謳われた「いつかはクラウン」というキーワードが、その当時「いつかはベンツ」に代わってしまっていたからなのです。
その対策として、「レクサス」というブランドを立て戦略的にブランド育成を行いました。その当時の彼らの4Pは極めて戦略に整合をとったものでした。ざっくり言えば、「ハイクラスのお客様に対してレクサスはいい車だ」というイメージをさせたい、ということです。4つのPをハイクラスのお客様に展開することで大成功しました、ということなのですが、具体的に見ていきましょう。
プロダクト戦略
プロダクト(製品)の戦略を考えるには、基本戦略に対して価値をどのように構成するか、がポイントになります。
価値構造の評価のフレームワークとして、プロダクト3層モデルがあります。これは価値を3つの層に分けて整理しましょう、というものです。
- 製品の中核:顧客が実質的に購入している基本的、中核的ベネフィットのこと。自動車の例では、「走る、曲がる、止まる」がそれにあたります。
- 製品の実体:製品の実体、製品の特性を構成する価値です。自動車でいえば、その車の内装や外装、スペック、ブランドなどです。
- 製品の付随機能:製品の中核を提供するのに直接的な影響はないが、その存在によって顧客にとっての価値が高まる要素です。「配達」「据え付け」「アフターサービス」「品質保証」「信用供与(クレジット)」などがそれにあたり、自動車で例えると販売店のサービスやアフターフォローなどが相当します。
レクサスは、トヨタのハイクラスカーであったセルシオがリニューアルされ「LSレクサス」として2005年国内市場に再投入されました。この当時のレクサスはトヨタの中で最上級のラインナップの一つでしたが、内装や外装により高級感を前面に押し出して再発売しました。つまり、ハイクラスなお客様にはより上質な車が必要、という判断だったのでしょう。
価格戦略
価格は4Pの中でも最も利益インパクトが大きいといわれます。例えば、利益率10%の商品の価格を1割上げたら、販売数が落ちなければ利益率は倍になります(100円の商品で利益率10%(=コストが90円)なら10円が利益、価格を1割上げると110円になるので、コストが90円なら利益額は20になる)。逆に値引きすればその分利益額にインパクトを与えるわけです。
では価格はどうやって決めるのでしょうか?
価格の決め方は大きく3C、すなわち、顧客の視点、自社の視点、競合の視点で決めます。顧客の視点はすなわち、「お客様にとっていかほどの価値があるのか?」を考えるということです。顧客価値以上には価格をつけられないのでこれが上限になります。逆に下限は自社の視点です。赤字で売るわけにはいかないので、コストより高い価格で値付けしないといけないわけです。最終的には競争価格で決まります。
レクサスの例では、セルシオをLSにリニューアルした段階で価格を上げます。内装や外装をリニューアルしたこともありますが、それ以上に「ハイクラスのお客様によい車をお届けする」には価格を上げたほうが良いわけです。お客様の心理として、「良いものは高い、安いものは悪い」という認識があります。この観点からすると、価格を上げる方がその分「良いもの」と認識されやすいわけです。
もっとも、背景にはトヨタ自動車というブランド価値もあるでしょう。トヨタは様々な自動車を展開していますが、どれも「安いけれども品質は高い車」です。そのイメージを持っている方からすると、価格が安い=「レクサスってやっぱりトヨタだよね」と思ってしまうわけです。だからこそ価格はあげるのが戦略に基づいた正しい意思決定でしょう。
チャネル戦略
チャネル=流通は「流して通す」と書きます。では、何を流して通すのでしょうか?
それは「モノ」と「お金」と「情報」です。多くの業態で中間流通が中抜きされていく昨今、中間流通プレイヤーとしての価値を提供できなければ存在し得なくなってきています。
流通はもともと生産地と消費地が異なることから生まれました。例えば、皆さんが山に住んでいたとしましょう。山に住んでいても魚は食べたい。でも、漁師が山に持っていくには大変ですよね。そこで「私が運びます」という人が生まれたのが流通の起源です。
ところが今は、モノは宅配業者が運びますし、金はVISA等のクレジットカード会社や電子マネーが対応しますし、情報はインターネットによって展開されます。従って、間の価値を展開しないと存在価値がなくなってしまうのです。
トヨタには様々な販売店がありました。ところが、レクサスは既存の販売店では販売されませんでした。なぜならカローラのとなりにレクサスが並んでいるとお客様は「やっぱりトヨタでしょ」と思ってしまうからです。ですので、レクサスの独自店舗を作り店舗展開していきました(レクサス店舗には、ユーザしか入れない特別な部屋があるといいますね)。
レクサスの独自店舗でレクサスの価値(プロダクトにおける不随機能))提供しているので、お客様にとっても納得感のある流通であるともいえるでしょう。
プロモーション戦略
プロモーションはマーケティングコミュニケーション(略してマーコム)とも言われます。それは、お客様がお買い上げになるまで多くのコミュニケーションをとる必要があるからです。
お客様はある日突然思いついて製品・サービスを購入するわけではなく、全く知らない状態から、気付き、理解し、欲しくなり、買おうと思い立ち、ようやく購入に至ります。そのため、お客様に買っていただくためにはお客様とのコミュニケーションが欠かせません。
コミュニケーションの手段は、店頭や訪問での人的な対話のみならず、アナログ/デジタルな広告や販促、広報等様々です。これらの手段を組み合わせて活用してお客様に購入して頂くのがマーケティングコミュニケーションです。
マーケティング戦略立案の実務で使えるフレームワーク
コンサルタント・後藤匡史
マーケティング戦略立案では様々なフレームワークが活用できます。
フレームワークは、「考える枠組み」であり、分析者の考えを整理し、より良い戦略立案を支援します。
注意点として、フレームワークをただ埋めただけで良い戦略ができるわけではありませんので、埋めることで満足しないようにしてください。
とはいえ、必要な視点が網羅されますので、何も考えずに進めるよりは良い成果につながりやすいでしょう。
PEST分析
PEST分析は環境分析の中でもマクロ環境を分析するときに利用するフレームワークです。
- Political:政治や法規制に関連する事実情報と今後のトレンド
- Economical:経済的な視点における事実情報と今後のトレンド
- Social:社会的な視点での事実情報と今後のトレンド
- Technological:技術発展に関連する事実情報と今後のトレンド
この4つの視点の頭文字をとったものがPEST分析で、最低限この4つの視点でマクロの動きを捉えておきましょう。PEST分析にご興味のある方は次のページでもう少し詳しく説明していますのでご覧ください。
PEST分析のやり方とコツを事例で学ぶ | 英数字 | マーケティング用語集 | 研修・人材育成・コンサルティングの株式会社シナプス
研修・人材育成・コンサルティングの株式会社シナプス
PEST分析とは PEST分析とは、マクロ環境分析をおこなうマーケティングフレームワークです。 PEST分析のPESTとは、「Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術…
3C分析
3C分析は環境分析の中でも事業上名の分析をするときに利用するフレームワークです。主に事実情報の抽出、整理、分析を行います。
- Customer・市場:市場や顧客に関連する重要事実情報を収集、整理する
- Competitor・競合:業界プレイヤーや競合に関連する重要事実情報を収集、整理する
- Company・自社:自社に関する重要事実情報を収集、整理する
3C分析は、コンサルティング会社マッキンゼーで活躍されていた大前研一さんが提唱したフレームワークです。
その著書「ストラテジック・マインド」ではKSF(Key Success Factor:業界の重要成功要因)を抽出することが目的、とされています。単に事実情報を抽出、整理するだけでなく、そこから言えること・意味合いを分析する必要があります。
ただ、3C分析だけだと意味合いの抽出が難しいため、後述するSWOT分析と組み合わせて活用するとより分析がしやすくなります。
3C分析についてもう少し知りたい方は次のページの解説をお読みください。
3C分析のやり方-マーケティング環境分析 | 英数字 | マーケティング用語集 | 研修・人材育成・コンサルティングの株式会社シナプス
研修・人材育成・コンサルティングの株式会社シナプス
3C分析とは 3C分析フレームワーク概要 3C分析とは、マーケティング環境分析のフレームワークです。3Cとは、「Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)」の3つの頭文字…
SWOT分析
SWOT分析は、PEST分析や3C分析などの枠組みで整理した事実情報から、自社ビジネスに対する意味合いを抽出・整理するものです。
- Strength・強み:様々な事実情報から内部環境のプラス要素となりうるものを見出す
- Weakness・弱み:様々な事実情報から内部環境のマイナス要素となりうるものを見出す
- Opportunity・機会:様々な事実情報から外部環境のプラス要素となりうるものを見出す
- Threat・脅威:様々な事実情報から外部環境のマイナス要素となりうるものを見出す
自社ビジネスに対する意味合い、とは、事実から分析者が解釈をするものです。例えば、「『市場が伸びている』ということは我々のビジネスにとっても成長のチャンス」とか、「『競合と比較して営業人数が少ない』ということは単純な営業力は弱み」というように考えます。
つまり、S、W、O、Tの四つの視点を組み合わせて、自社にとってその事実がどういう意味合いをもつのかを抽出していきます。
最終的には外部環境の変化や重要要素に対して内部要素でどのように対応していくか、を明確にします。これを「戦略目標」と呼び、戦略目標を導き出すのがSWOT分析のゴールであり環境分析のゴールでもあります。
セグメント分析
セグメントとは、同じようなニーズを持った顧客群であり、そのセグメントごとの分析を行うのがセグメント分析です。セグメント分析は個々のセグメントの魅力度評価を行うもので、前述の3つの「C」の観点での評価が一般的です。
具体的な評価項目としては、市場規模や成長性、そのセグメントのニーズやKBF、各社シェアなどを押さえておきたいところです。この分析の結果、自社にとって魅力的なターゲットを設定するのが基本的な流れとなります。
ポジショニング分析
ポジショニングはお客様の心の中に製品やサービスをイメージづける活動です。ポジショニングマップを作ることが一般的ですが、単に二次元マップを作ればよいというのではなく、次のとおり、正しい手順があります。
① 顧客のKBFを洗い出す
② ターゲットの重点評価KBFを確認する
③ 自社と競合をKBFの観点で評価する
④ 競合に比して勝てるポジションとなるKBFを2軸選び出す
たまに参入プレイヤーの位置付けを表す分析用のマップを「ポジショニングマップ」と称しているのを見かけますが、ここでのポジショニングはあくまでも「自社が有利になるポジションを作る」ためのものです。
ペルソナ分析
ペルソナとは、ターゲットを代表する「いかにも実在しそうな架空のユーザー」の設定です。ペルソナを定義する目的は顧客中心に議論を進めることであり、具体化された顧客イメージがあると戦略理解が極めてブレにくくなります。
ペルソナの作成は徹底した顧客調査から始めます。できるだけ多くの事実情報を集め、お客様を理解した後に、そのお客様の具体像を描くために、次の手順で行われます。
- ① 名前や属性、写真等のイメージの設定
- ② 詳細なプロファイルの記
- ③ 顧客としての自社ブランド(製品、サービス)との関わりとして物語を作成
ペルソナは単に分析するだけでなく、社内で活用(同じ顧客像を共有)する必要があるので、社内関与者と共有し理解してもらうことも重要です。
4P分析
4P:Product、Price、Place、Promotionはマーケティングの具体的施策を表したものです。戦略にあわせた具体的施策ですが、あえて「分析」を行うこともあります。例えば、成果が思ったように出ていないケースや、競合分析の際などです。
特に競合がとっている戦略を分析したい場合、4Pから逆算するやり方がまさに4P分析です。具体的には、Product、Price、Place、Promotionの観点でどういう打ち手を実施しているかを情報収集します。これらを総合的に考えると、どういうターゲットに対してどういう訴求をしているかが明確になってきます。
同様に自社の成果が思ったように出ていない場合は、戦略との整合性が取れているのか、をチェックすると良いでしょう。
マーケティング戦略立案で注意しておきたいこと
マーケティング戦略は、一連の流れの整合性をとることが極めて重要です。
戦略立案時にみられがちなのは、役割分担して各作業がぶつ切りに行われた結果、全体がつながらない、ちぐはぐな戦略となってしまっている、というケースです。例えば、「とりあえずPEST分析してみた」「ターゲットを決めてみた」「ポジショニングは競合と差のある所に設定してみた」「ある技術から製品が出来上がった」等、担当が個別作業に終始してしまうパターンです。
マーケティング戦略立案では、①環境分析②基本戦略③具体的施策の3ステップの整合性が極めて重要です。また、各ステップ内の整合性も重要です。例えば、ポジショニングは「ターゲットが重要視している軸を訴求」しなければ、お客様に響くものにはなりません。
また、マーケティング戦略の立案に有用なフレームワークをご紹介しましたが、個々のフレームワークをただ使うのではなく、全体整合を常に考える、これがマーケティング戦略立案上最も注意しておきたいことでしょう。
以上、マーケティング戦略の基本的な組み立て方を記載しました。今まで我流でやっていらっしゃった方は、一度全体の流れをチェック頂くことをお勧めします。また、これから戦略を立てる方も一つの参考としてご覧頂けると幸いです。