PEST分析のやり方とコツを事例で学ぶ

PEST分析とは

PEST分析とは、マクロ環境分析をおこなうマーケティングフレームワークです。
PEST分析のPESTとは、「Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)」の4つの頭文字を取ったものです。

PEST分析のマクロ環境要因


PEST分析


  • P:Politics/Political(政治面)
  • E:Economy/Economical(経済面)
  • S:Society/Social/Cultural(社会/文化/ライフスタイル面)
  • T:Technology/Technological(技術面)

PEST分析の必要性

マーケティング戦略策定において、PEST分析は、なぜ行う必要があるのでしょうか。

自社業界のビジネスは常に世の中全体の変化、つまり「マクロ環境」に大きく影響を受けます。まず、マーケティング環境把握として中長期的に自社業界を取り囲むマクロ環境を把握、洞察することから始めましょう。

PEST分析は、マクロ環境要因を網羅的に洗い出せるマーケティングフレームワークです。




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PEST分析のやり方とコツ


仮説思考で中長期視点を得る

PEST分析でのポイントは、「中長期的な将来、概ね3~5年後の世の中のマクロトレンドついて仮説を立てること」にあります。
将来予測は不確実です。しかし、積極的に仮説を立て、組織で共有し、3~5年後の世の中に対し、現在取り組むべき戦略を構築しましょう。仮説を立てシミュレーションすることで、業界に及ぼす影響、環境変化を考える視点が得られます。

マクロ環境トレンド4つの関連性

PEST分析では、PESTの各項目ごとに将来動向をチェックします。
個々のPEST分析項目に加えて、「政治」「経済」「社会」「技術、のPEST分析の4項目の関連性を見るとでマクロ環境の全体構造が分かりやすくなります。
PEST分析をクロスして解釈することで、新たな洞察を得るのです。

PEST分析の、それぞれの項目の関連性を、携帯電話を例に取ってみます。

携帯電話業界のPEST分析事例


技術

Technology(技術):もともとは、通信技術や携帯電話端末を小さくする技術、バッテリー技術など、様々な技術が影響し携帯電話が今の形になりました。これは、携帯電話市場の拡大とともに、より洗練されていきます。

政治と技術

Politics(政治)とTechnology(技術):携帯電話市場は、総務省によって、通信法が定められ、取り扱う通信キャリア(NTTドコモ、au、ソフトバンク、など)は認可制です。通信業界では、NTTがかなりのシェアを押さえていました。また、認可制のため海外企業の参入も遅く、日本の独自技術色の強い仕様が出来上がりました。

社会と政治

Society(社会)とPolitics(政治):日本は、経済水準が高いため、市場規模として成り立ちやすい、とはよく言われます。政治的に通信などを開放しない、というスタンスがあるだけでなく、十分な市場規模を確保できるため、キャリアが生き残れる、という側面もあります。

社会

Society(社会):一方で、携帯電話は、社会的価値観が核家族化、さらには、個人化していく中で支持を受けていきました。携帯電話の拡大が、それを増長させた、という側面もあります。

まとめ

PEST分析では、マクロ環境の様々な事柄が関連し、業界に影響を与えますので、P、E、S、Tの各項目だけでなく、各項目のつながりもみて、今後の業界動向を予測します。

「変わったこと」と「変わってないこと」

PEST分析のマクロ環境トレンドでは、「変わるもの」「変わらないもの」があります。 「何が変わったか、また将来変わっていくか」また逆に「何が変わっていないか、将来も変わらなそうか」PEST分析では、このトレンドを見極めましょう。

以下、「東日本大震災」を事例としてPEST分析の各項目で、「変わったこと」「変わっていないこと」を具体的に考えます。

東日本大震災のPEST分析事例

経済面

例えば、E(経済)の観点では、東日本大震災後直後、東日本を中心に日本全体の経済が停滞しました。これが変わった点です。
しかし、世界全体でみると、新興国需要によりリーマンショックから立ち直り、好景気傾向にありました。

政治

P(政治)では、復興向けの特別法案などができ、その後も特にエネルギーと耐震に関しての法整備が進められました。
一方で、東日本大震災前にも話題だった「医療費抑制」や「年金問題」などは、変わらない課題であり、東日本大震災によって、議論の方向性が大きく変わることはなさそうです。

一時的トレンド

東日本大震災直後は、様々な情報が飛び交い、消費者心理(S:社会)も不安定だったため、、例えば、米や保存食、水、電池、ガソリンの買い占めが起こりました。これは明らかに一時的な需要変化であり、「供給が安定的である」ことが分かった途端に買占めがなくなりました。

もう少し長い期間でみると、極端な節電策が、しばらくは続きましたが、電力供給が追いついてから、話題ににならなくなりました。

中長期構造的な変化

PEST分析での一時的トレンドを記載しましたが、一方で、中長期的なマクロ環境として、自然エネルギーの研究開発など、技術(T:Technology)の方向性が変わったり、あるいは、社会的な変化として、耐震性や災害対策が強いニーズとして出てきたり(S:Social)、します。

マクロ環境トレンド変化の期間を意識してPEST分析

PEST分析はマクロ環境の分析なので、長期視点で考えるフレームワークです。
しかし、今は変化が激しい時代です。特に「東日本大震災」「リーマンショック」のような大きな環境変化のトリガーがあった場合、トレンド変化の期間の長さを意識しながら、PEST分析をすると良いでしょう。

  • 短期の環境変化トレンド(一時的なトレンド)
  • 中期の環境変化トレンド
  • 長期の環境変化トレンド


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PEST分析による市場機会発見のやり方

「マーケティングとは、顧客ニーズへの適合と競争優位を構築し、環境適合する活動。」 マーケティングを「環境適合」と考えると、PEST分析のマクロ環境トレンドの変化は「脅威」であると同時に「チャンス=市場機会」である、といえます。

マーケティング戦略に、PEST分析を活用し、自社をマクロ環境変化に適合させ、競争優位を築きましょう。

PEST分析でマクロ環境トレンドに乗ると業界支配も可能

「マイクロソフト」「インテル」「Google」「楽天」「Facebook」。これらの企業は、もちろんすばらしい企業文化や戦略をもっています。

しかし、急成長した、これらの企業は、PEST分析の「大きなマクロ環境トレンドにうまくのった」面がかなり大きいです。



PEST分析大きなトレンドに乗った成功事例

  • 「マイクロソフト」「インテル」:パソコンの消費者への普及(社会)、技術進化による急速なパソコンの高性能化・低価格化(技術)
  • 「Google」「楽天」「Facebook」「Amazon」:インターネットの消費者への普及(社会)、インターネットの低価格化・大容量化(技術)

※マーケティング用語集「ムーアの法則」参照

PEST分析での市場機会:マクロ環境トレンドに乗れなかった失敗事例

一方、PEST分析のマクロ環境トレンドにのれないと、たとえ大企業でも破綻の可能性があります。

フィルム業界事例: アナログからデジタル化へ乗り遅れたコダック

PEST分析のトレンドに乗れなかった企業事例としては、写真フィルムメーカー「コダック」の経営破綻が有名です。コダックは、「フィルムの巨人」といわれ、業界1位の座を占めていました。しかし、PEST分析のTechnologyの変化「写真のデジタル化への移行」という技術トレンドについて行けず経営破綻となりました。

デジタルカメラ業界事例: スマートフォンというトレンドにより市場縮小

また、銀塩フィルムカメラに取って代わった、デジタルカメラでは日本企業が高いシェアで高利益を出していましたが、スマートフォンの普及に押され、デジタルカメラ業界自体が衰退しています。

PEST分析でいえば、「カメラ部品の小型化」「低価格化」などの技術トレンドの変化、加えて、「スマートフォンの普及」や「携帯で写真を撮る文化の普及」という「社会の変化」もあります。




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PEST分析の詳細項目

※コトラー「マーケティング原理」より

P:政治

政治的環境とは、所定の社会のさまざまな組織や個人に影響を与え、その行動を制限する、法律、政府組織、圧力団体からなります。

産業界を規制する法律

適切な規制は、製品やサービスの提供において競争を促し、公正な市場を保証します。そのため、政府は、商取引を正しく行うための社会政策、社会全体のために企業活動を制限する規制や法律を策定します。
たとえば、企業の自由な競争を促進する「独禁法」などが代表的です。

E:経済

市場は人口だけで形成されるのではなく「購買力」も必要です。消費者の購買力や支出パターンに影響を与える要因を「経済的環境」といいます。

所得による変化

世帯収入が上がると、多くの消費者が高品質製品や、より良いサービスを求めるようになります。逆に、景気が悪くなると、慎重にお金を使うようになり、製品やサービスを購入するときは、より高い価値を持つモノを探すようになります。

所得格差

所得層の最上位に位置する上流階級の消費者は、経済状況の影響を受けない支出パターンを持ちます。中流階級の消費者は支出に関して、慎重さはありますが、時にはよい生活を追求する余裕を持っています。労働者階級では、支出は衣食住レベルでの必需品に限られ、倹約的な生活をします。

S:社会

人口動態的環境

アメリカ合衆国の人口は、1999年に2億73000万人以上に達し、2020年までには3億人に達すると予想されています。
人口動態で重要なのが「人口の年齢分布」です。アメリカの年齢分布は「砂時計型」になりつつあります。

  • ベビー・ブーム世代:1946年~1964年に生まれた7800万
  • ジェネレーションX:1965年~1976年に生まれた4500万人
  • エコー・ブーム世代:1977年~1994年に生まれた7200万人

文化的環境

文化的環境とは、社会の基本的な価値観、知覚、選好、態度に影響を与える制度などの要因によって構成されています。人々は、ある社会で成長し基本的な信念や価値観が形成されます。そして、自他のリレーションシップを規定する一つの世界観を共有します。

T:技術

技術環境は急速に進化しています。今日当たり前となった商品でも、100年前、あるいは30年前にですら手に入らなかったものがたくさんあります。

新しい技術は、新しい市場と機会をもたらします。しかし、新しい技術はすべて古い技術に取って代わります。

  • 音楽:蓄音機→レコード→CD→データ(iPodなど)
  • 電子部品:真空管→トランジスタ

まとめ

PEST分析は、マーケティングマクロ環境分析で、最も有名なフレームワークです。

PEST分析は、3年から5年程度の長期トレンドをみていくのが基本で、日常的に頻繁に分析が必要なものではありません。

しかし、新規事業や新しいサービスをリリースするとき、既存の業界で大きな変化があったときなど、タイミングごとに分析すると、大きなチャンスがつかめるかもしれません。

長期トレンドなので予測を正確にするのは難しいですが、仮説でもよいのでPEST分析の各項目に対して、予測を立てていくことにより、マクロ環境変化があったときに、より積極的な行動がとれる可能性が高まります。



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元々、商品開発室は多様性のあるメンバーなので、プロジェクトを進めるときに共通言語を持つことが狙いでした。
複数のプロジェクトが並行して動いているのですが、共通言語としてマーケティングのフレームワークを使うことが当然になってきていますね。半年間で、すでにサービスをローンチさせた人もいます。



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