AIの進化が著しく、2026年1月現在においては、少なくとも生成AI(ChatGPTやCopilot、Gemini、Perplexity等)は「使うことを前提として」業務を組み立てているケースが増えてきています。
新規事業でもAIが登場するケースが増えてきていますが、よく使われる使い方をご紹介します。
1.AIを新規事業開発プロセスで活用する
2.新規事業の中にAIを組み込む
1.AIを新規事業開発プロセスで活用する
新規事業開発のそれぞれの段階でAIを推奨するケースが増えてきました。
新規事業開発プロセスの特に初期段階では大きな投資がしにくく、安価で活用できる生成AIが頻繁に使われます。
それぞれの段階に応じて使いやすい使い方についてご説明します。
①アイデア創出
②事業企画・計画作成
③ローンチ前後
①アイデア創出では、アイデアの数を担保したい
アイデア創出の段階では、「できるだけ多くのアイデア」を出す必要があります。体感値ですが、最低100個ほどの事業アイデア(誰に、どんな価値を、どんな方法で)を出しておかないと、良いものが出てこない印象があります。
生成AI以前は様々なアイデア創出手法を用いて行っていましたが、ここ数年は生成AIをディスカッションパートナーとして数多くのアイデアが出せるようになってきました。
生成AIを「仮想メンバー」や「異なる視点・知見を持つ専門家」として使ったり、あるいは、強制的に視点をずらす(顧客、業界、地域、将来、等)ことでもアイデアを出すことができます。
例えば、次のようなプロンプトが役に立つでしょう。
「◯◯業界×AIで考えられる新規事業を、VC目線/現場目線/失敗事例目線で出してください」
「既存事業のアセットを5つ挙げ、それぞれから派生する事業案を出してください」
もう少し踏み込むと、例えば、マクロ環境の変化を抽出したうえで、事業案を出させるやり方もあります。
自社は〇〇株式会社です。
自社に大きく影響するマクロ環境変化のうち、5-10年後に大きなインパクトがある項目を10個出したうえで、今後大きく成長できる新規事業のアイデアを各項目ごとに3つずつ提示してください。
ここからさらに、各事業案の市場性評価をしておくと、「使えるアイデア」が抽出されていきます。
アイデア創出の段階で生成AIを使う、というのは、よく見かける手法でもあり、近年多くの方が推奨しています。それだけ使える、ということでもありますが、一方で、生成AIだけに頼ったやり方だとよい新規事業が出にくいという側面もあります。なぜなら、生成AIは、誰もが使える手法であり、「真に新しいもの」を生み出そうと思ったら、自分たちの独自の何かが必要になるからです。
お勧めは、「人間によるアイデアだし」と「生成AIによるアイデアだし」を組み合わせて魅力的な事業案を作ることです。
なお、生成AI以外でもAIの登場余地はもちろんあります。例えば、ビッグデータを保有する企業においては「データ分析」によって新たな事業アイデアを抽出することもできるでしょう。
②事業企画・計画作成は、仮説検証に力を発揮する
事業企画や計画の作成段階では、仮説検証の支援ツールとして使うことをお勧めします。
例えば、ターゲットペルソナイメージの作成は、画像描画も含めて利用すると具体的なイメージが作れます。事業開発にかかわるメンバーが複数いる場合は特に、ターゲットのイメージがぶれます。そのため、ターゲットのイメージを生成AIの画像描画で明らかにすると「そのイメージに近い!」「ちょっと違うかも、、、」という意見交換ができるので、ターゲット仮説を作る上で力を発揮します。また、メンバーの知見がない領域の新規事業案の場合は、初期仮説を生成AIに作ってもらうこともできます。
顧客インタビューにおいても、よく使うのは、実際に顧客を訪問する前に「質問と想定される回答」を生成AIで壁打ちすることにより、インタビューフローを作成できます。
PoCの段階に入ると、プロトタイプを作る必要がありますが、特にアプリを作るようなケースの場合、生成AIにプログラミング支援をしてもらうこともできます。
また、計画書作成においても、デスクリサーチは生成AIの得意領域でもありますので、積極的に活用したいものです。
③ローンチ前後は、事業開発の手足として使う
ローンチ前後は、具体的に手を動かす必要があります。製品販売型のビジネスでもサービス提供型のビジネスでも、物理的なモノや、人間が行う作業が主体になりますが、生成AIの支援を入れることにより、短時間で立ち上げや、PDCAを回すことができます。
具体的には、例えば、サービスのWebサイトを作る支援に使ったり、BtoB型の場合は、AIエージェントを用いて提案書作成を行うこともできます。
また、様々なA/Bテストを行う場合に、AIを使ったテストツールも存在していますので、様々なベンダーが提供するツール内のAIを使う、ということもあるでしょう。
上記はどれも「フィットしやすい使い方」をご紹介しましたが、上記以外にも様々な使い方ができます。
2.新規事業の中にAIを組み込む
新規事業開発のツールとして使うだけでなく、自社の新規事業のコアな価値にAIを組み込む、ということも一つのAI活用です。
AIは様々な分野で活用されていますが、いくつか成功事例をご紹介します。
①NTT株式会社 LLM(大規模言語モデル)「Tsuzumi」シリーズの提供
生成AIが多くの企業で活用される中、気になるのは「セキュリティ」です。多くが米国や中国で作られているため、日本企業にとっては機密保持がきになるところです。
TsuzumiシリーズはNTT株式会社が2024年にスタートし、2025年10月には「Tsuzumi2」がリリースされました。これによって日本語対応の強化や低コスト・高セキュア等が実現しているようです。
このようなAIそのものを提供する新規事業は分かりやすい事業例ですね。
②SREホールディングス AI査定CLOUDの提供
SREホールディングス株式会社はソニーグループのソニー不動産株式会社から2019年に社名変更した企業で、AI技術を活用した不動産テック企業です。
AI査定CLOUDは、不動産売買価格の査定とともに、地図などを含めた査定書を作るSaasサービスで、査定時間が180分から最短10分と大幅短縮できると謡っています。
この事業もサービスの中核に「AI」を活用している事例です。使い方としては、おそらくディープラーニングをベースとした機械学習アルゴリズムで不動産情報が含まれるデータベースから売買価格の推計をしているものと思われます。
これは、AIなしでは実現できないサービス価値です。
③トランスコスモス ハイブリッドチャットサービス
トランスコスモス株式会社は、BPOとデジタルマーケティングを軸に、コンタクトセンターやEC運営などを提供する企業です。
コンタクトセンターサービスを提供するうえで、生成AIチャットBotを併用することで「コンタクトセンターにつながらないときはチャットBotで対応」「チャットBotでの対応が不十分な場合、人間が対応する」形をとっています。最後は人間が対応することで柔軟で確実なサービスを提供できますが、そこにAIチャットBotを付加することで効率的に幅広くサービス提供することが可能になりました。これもAIだからこそのサービスといえましょう。
以上は、わかりやすくAIを活用した事業例ですが、他にも「物流や製造工程の分析にAIを使うことで劇的にコストを下げて低コストで事業を運営する」というような使い方も想定されます。
ゴールドラッシュで金を掘って成功した人は少ない
AIは、生成AIも様々なAIツールも進化の過程にあります。1年前にできなかったことができるようになった、1年前と比べて急速に精度が上がった、等が頻繁に起こっている領域ですので、「とにかく使っておく」ということが必要でしょう。
一方で、このような新たなムーブメントができると、1849年ごろにアメリカ西海岸で起こったゴールドラッシュが比喩的に思い出されます。ゴールドラッシュの際、金を見つけて成功した人もいなくはないですが、その多くは十分な金を見つけられませんでした。代わりに儲けたのは、破れにくい服(ジーンズ)を提供したリーバイスや、お金を運ぶサービスを提供したウェルズ・ファーゴ銀行、鉄道事業の成功から大学を生み出したスタンフォード大学等、周辺事業者でした。
「AIで一儲け」というだけでなく、AIを使う世の中を前提としたビジネスモデルを探す、というのもAI時代の一つの新規事業の考え方かもしれませんね。