「スイッチングコスト」とは、継続して利用している製品やサービスから、代替性のある製品やサービスに乗り換える際に発生するコストのことです。

1.顧客の購買行動はどのような場合に発生するか(価値>コスト)

顧客の購買行為は、一般的に「価値」が「コスト」を上回る場合に発生します。

顧客の価値 > 購買に関わるコスト

顧客の価値と購買に関わるコストの2つについてみていきましょう。

1-1.顧客の価値とは(機能的価値と情緒的価値)

顧客の価値とは製品やサービスの持つ、以下の2つの価値です。

機能的価値(機能的ベネフィット

機能的価値とは、消費者に機能面の効用を提供する製品属性にもとづく価値のことです。

具体的には、機能・性能、原材料、安全性、サポート、付帯サービスなどで、商品本来の機能によって得られる価値、成果、効用のことです。例えば、「普通のシャツに比べて暖かいのでユニクロのヒートテックシャツを買う」などは、機能的価値で判断しているといえるでしょう。

情緒的価値(情緒的ベネフィット)

情緒的価値(情緒的ベネフィット)とは、その製品の購入や所有、使用によって顧客が感じる心理的な満足や効用です。

具体的には、デザイン、質感や触感、原産地、物語性、ブランドなどが含まれ、自己表現や社会的評価に結びつく価値、成果、効用が、情緒的価値です。例えば、「ブランド物のバッグを持っている自分に優越感を感じる」などは、情緒的価値を感じているといえるでしょう。

1-2.購買に関わるコストとは(金銭的コスト、物理的コスト、心理的コスト)

顧客の購買に関するコストには、大きく以下の3つのコストがあります。


金銭的コスト


金銭的コストとは、購買に要するお金のことです。購入金額の数字として直接表すことができます。


物理的コスト


物理的コストとは、購買に関わる手間や時間などです。広義のコストです。

例えば、あなたは、のどが渇いたときに、近くの自動販売機と遠くのスーパーのどちらで飲み物を購入するでしょうか?高くでも自動販売機を選んだ場合は、スーパーまで移動して購入するための手間、物理的コストが高かったといえます。


心理的コスト


心理的コストとは、金額換算が難しい心理的ハードルです。広義のコストでます。

例えば、「普段購入しているブランドから乗り換えるのに抵抗がある」というのは、心理的コストを感じているといえるでしょう。一方、「他社商品より10円安いので、いつもと異なるトイレットペーパーを購入した」などは、心理的コストをあまり感じなかった、といえるでしょう。

2.スイッチングコストとは

2-1.スイッチングコストとは

スイッチングコストとは、現在顧客が使っている商品・サービスを他の商品・サービスに切り替える(スイッチする)場合のコストのことをいいます。

直接的な支払金額以外にも、新たな操作方法を覚え直す手間、新しいものに対する心理的抵抗などがあります。また、既存で利用している商品を破棄するための金銭コストなども、スイッチングコストの一つです。

3.スイッチングコストを下げるやり方

3-1.スイッチングコストを下げる=受取価値を上げる

「スイッチングコストを下げる」とは、顧客が代替性のある製品やサービスに乗り換える際の顧客の総受取価値を増やすことです。

3-2.スイッチングコストの下げ方:「総価値をあげる」か「総コストを下げる」

顧客にとって「乗り換える手間を下げる」ことにより、「価値」に対する「購買に関するコスト」を相対的に下げることになる「受取り価値」が向上します。

受取り価値=総価値(機能的価値+情緒的価値) - 総コスト(金銭的コスト+物理的コスト+心理的コスト)



4.スイッチングコストを下げるやり方事例


4-1.Windowsに対するMacのスイッチングコストを下げる

Windowsに対するMacのスイッチングコスト

WindowsのユーザーがMacに乗り換える場合のコスト

  • ソフトや周辺機器も買い換える金銭的負担がある(金銭的コスト)
  • 操作性が変わることに慣れなければならない心理的負担(心理的コスト)
  • データを移し変えるために必要な手間や時間などの負担(物理的コスト)

Windowsに対するMacのスイッチングコストを下げる施策

これらのスイッチングコストを下げるため、Mac側ではWindowsとの互換性を持たせるなどの施策を実行し、顧客の負担(総コスト)を下げています。


金銭的コストは減らないが、物理的コスト、心理的コストを下げることにより総コストを下げ、Windowsからのスイッチングコストを下げている。


4-2.携帯電話会社のスイッチングコストを下げる


携帯電話会社のスイッチングコスト:MNP前

携帯電話では、かつて「電話番号が変わる」ことがキャリアを変更することに対する大きなスイッチングコストとなっていました。

ここでは、電話番号が人脈をつなぐための貴重な資産と考えられ、電話番号の変更により負担しなければならない「通知の手間(物理的コスト)」や、連絡が途絶える人が出来てしまう「機会損失(心理的コスト)」がスイッチングコストです。

  • 電話番号を知人に通知する手間がかかる(物理的コスト)
  • 連絡が途絶える人ができてしまう心理的負担(心理的コスト)

携帯電話会社のスイッチングコストを下げる政府施策の導入:MNP

現在は、政府政策による法律改正により、キャリア間を、またいで電話番号を維持できるようになり、このスイッチングコストが取り払われました。
(MNP=Mobile Number Portability、番号ポータビリティ)

スイッチングコストが下がることは、各キャリアからみれば「他社から顧客を奪うチャンス」でもあり、「自社の顧客を奪われる脅威」です。そのため、継続割引(金銭的コストを下げる)や、動画、音楽などの機能向上(機能的価値を高める)などで、新規顧客の獲得と顧客の囲い込み策での攻防が繰り広げられています。

また、近年問題になっている「2年縛り」などの契約期間の制限は、逆に、「スイッチングコストを上げる施策」と考えられるでしょう。


参考情報

1.「スイッチングコスト」に関連する企業研修

マーケティングと人材育成のプロ集団の企業研修

マーケティングと人材育成に通じたプロ集団、シナプスの企業研修のご紹介です。シナプスの企業研修では、ワークショップ形式での自社課題解決など実務を通して、ビジネススキルを体感しながら身につけ、企業の組織力を高めます。

企業研修プログラムの詳細は『マーケティングと人材育成のプロ集団の企業研修』をご覧ください。

マーケティング基礎研修

1万人が受講したマーケティングのエッセンスを学ぶ基礎トレーニングプログラムです。マーケティング思考を組織浸透させるための研修として最適です。

研修プログラムの詳細は 『【マーケティング基礎研修】活用できる論理的思考プロセス』をご覧ください。

BtoBマーケティング基礎研修

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研修プログラムの詳細は『 【BtoBマーケティング基礎研修】BtoBのプロが教える基本スキル』をご覧ください。


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