DMUとは、Decision Making Unitの頭文字を取ったもので、顧客の意思決定単位=顧客の意思決定関与者のことです。

顧客はその課題を解決するために、ソリューション(商品)の購買検討を始めます。顧客の「DMU(意思決定関与者)」の構造と「購買プロセス」を明らかにすることが営業活動の第一歩です。

「BtoBマーケティング」の特徴として「DMUと購買プロセスの複雑性」が上げられます。そのため、「BtoBマーケティング」「法人営業」では、顧客企業の「DMU」と「購買プロセス」を把握することがとても重要です。

参考:DMUの解釈

DMUは、最終判断をする意思決定者、最重要キーパーソン1名のことを指す場合もあります。単に「DMU」という記述があった場合、どちらの意味で使われているのかは注意が必要です。ここでは、DMU=意思決定関与者の全体像と考えます。
また、DMUは、用語の使い方として、最終判断をする意思決定者、最重要キーパーソン1名のことを指す方もいます。単に「DMU」という記述があった場合、どちらの意味で使われているのかは注意が必要です。ここでは、英語の語源に合わせてDMU=意思決定関与者の全体像とします。(Unit=単位、集合体)

1.DMU(顧客の意思決定関与者)の分析が必要な理由

「マーケティングにおいて重要なのは、顧客理解である。」

しかし、ここで一口に「顧客」といっても、顧客とは誰のことでしょうか?ターゲティングにおいて、顧客像を具体化することは重要です。しかし、「誰を顧客とするか?」は深く考えると複雑です。

例え、ターゲットを定めたとしても、具体的な個々の「顧客」をどこまで描けばよいのかは、意外と複雑です。そこで、必要なのが「DMU=Decision Making Unit」です。

1-1.BtoBにおいて、意思決定関与者(DMU)は複数人いるのが普通

法人向けのBtoBビジネスにおいて、「顧客」とはなんでしょうか?

「顧客企業?」「窓口担当者?」
通常、法人顧客において購入意思決定に関わる人(関与者)は複数います。これら意思決定関与者(DMU)を把握することが重要です。

1-2.決裁権限で意思決定関与者(DMU)は縦に増加


比較的単純な意思決定構造、例えば、「1万円の備品購入」であれば、直属上司に「これ買ってよいですか?」と頼むだけでしょう。つまり、「DMUは、自分以外に1名の関与者、合計2名」です。
しかし、金額が大きいものを購入する場合は、「上司の上司」を説得しなければいけません。例えば、決裁権限が「課長:10万円まで」「部長;100万円まで」「本部長:1,000万円まで」となっていたとしましょう。金額が上がるたびに関与者が増えていきます。50万円の決裁稟議であれば、担当者→課長→部長とDMUの構造は3階層になります。500万円の決裁稟議なら、本部長まで含めて4段階のDMU構造です。


1-3.意思決定関与者(DMU)は横にも増加


また、この場合、「縦方向」だけでなく横方向にもDMUが増える場合が多いです。部長決裁であれば、自部門の課長だけでなく、稟議書を上げる前に影響がありそうな部門の課長にも確認を取っておく必要がある場合も多いでしょう。

図では、最低でもDMUに4人います。B課長が、部下に意見を求めれば、さらにDMU(意思決定関与者)は増加することになります。


1-4.エンドユーザーも重要な意思決定関与者(DMU)


顧客側の窓口担当者は「選ぶ」だけで、使う人(ユーザー)は、また別かもしれません。

例えば、「ITシステム」の場合は、窓口担当者は情報システム部となることが多いでしょう。情報システム部が選定し、他部門の社員がユーザーとなります。「営業管理システム(ユーザー=営業部門)」「会計システム(ユーザー=経理部門)」などが代表的です。

つまり、営業パーソンにとっての直接の窓口担当者以外の人が、DMUとして意思決定に影響します。

このとき、DMU全体を把握して、情報システム部門と利用部門の両者のニーズを考慮する必要があるでしょう。

2.BtoBマーケティングにおけるDMUタイプと購買プロセスの複雑性

消費財のBtoCマーケティングと異なる、BtoBマーケティングの特徴の一つとして「DMUと購買プロセスの複雑性」が挙げられます。

2-1.BtoB企業でDMUと購買プロセスが複雑になる理由

一般に、企業の購買は、様々なルールのもとに行われています。 「誰が稟議を起案して、どのようにそれが承認されていくのか?」購買プロセスは長くて、多くの人が関与し、起案から稟議承認、さらに執行までは時間がかかります。それが企業購買の特徴といえます。

BtoBマーケティング攻略には、その意思決定のルール=DMUと購買プロセスを明らかにしておくことが不可欠です。

2-2.BtoBマーケティングのDMUタイプ具体例

DMUには、タイプがあります。BtoBの例として、工場の生産設備の購買プロセスを例に取り上げてみます。

【DMUタイプ:使用者】ユーザー(User)

生産設備の利用者(ユーザー)は、工場の製造部門です。もっと具体的にいえば、生産ラインの作業者一人ひとりです。
基本的には、実際に利用する人のニーズが購入動機の原点となっているはずです。

【DMUタイプ:起案者】

しかしながら、実際に起案をするのは生産技術部門が担当します。
その担当者が製造部門の現場ニーズをくみ取って、さらには経営全体のあるべき姿を実現するための提案を考えます。

【DMUタイプ:関与者、影響者】インフルエンサー(Influencer)

そして、実際には多くの関与者、意見具申者が存在します。
例えば、製品の設計部門や情報システム部門です。
どの程度の関与が起こるかは会社によって異なると思いますが、製品選定などに様々な意見や情報を提供する役割を果たすことが多いです。

【DMUタイプ:意思決定権者、承認者】ディサイダー(Decider)

購買プロセスの最終意思決定者です。
実質的には「Go/NoGo」を判断するだけということもあります。
また、決済額によって、承認者の階層は異なることがほとんどです。金額が大きな決済稟議は取締役会で承認ということもあるでしょう。

【DMUタイプ:購買者】バイヤー(Buyer)

そして、最終的に取引サイトの窓口の役割を果たすのが購買部門です。
価格など取引条件を交渉する相手となります。

様々な意思決定関与者が購買プロセスごとに影響を与える

これだけ多くの意思決定関与者DMUがいます。

DMUが何段階かにわたる購買プロセスのステップを押し進めて、最後に購入となります。この購買プロセスとDMUの存在をしっかり把握していないと、適切な営業対応をすることはできません。

2-3.購買プロセスの複雑性:プロセスによる関心事の変化

さらに営業を難しいものにしているのは、顧客の関心対象が「プロセスによって異なる」こと。そして、「相手によっても異なる」ことです。

最初は、「課題を解決することができる機能を持った商品を選定すること」が担当者にとって、最も関心のあることかもしれません。
しかし、その次には、「どの企業が最も信頼できるか?」に関心が移ったりします。
そのためには「その企業の導入実績」などが重要な情報になるかもしれません。

さらに、最終プロセスでは、価格や納期など具体的な取引条件が最も重要な関心事となるはずです。

このように、顧客の関心事は購買プロセスのステージごとに変化します。
これは、購買取引に関わる「狭義のニーズ」と言っても良いかもしれません。

2-4.DMU(購買意思決定関与者)による関心事の違い

2-4-1.DMU内の各関与者によって異なる関心事

一方で、DMUによっても関心事は異なるはずです。
営業パーソンにしてみれば「あの会社はヒトによって、言うことがバラバラだ」と、グチをこぼしたくなるかもしれません。

しかし、それは仕方ないことです。
部門が違うということは、当然会社の中での役割が違います。
DMUの中で、役割が違えば、ニーズも異なるのは当然のことでしょう。

2-4-2.DMU内の役割によって関心事が変化する例:工場生産設備

先ほどの工場生産設備の例で言えば、DMUの役割ごとの関心事は以下のようになるでしょう。

  • 生産技術 = 全体の生産性が気になる
  • 製造 = 使い勝手や歩留まりが気になる
  • 設計 = 生産品質が気になる
  • 情報システム = 他システムとの相性が気になる
  • 購買 = 納入価格が気になる

2-5.DMU全体像を把握し、各意思決定関与者の関心事まで掴んでくるのが営業の役割

「DMUの関与者それぞれの立場を考えて、何が求められるのか」
「それらDMUをどう説得、納得してもらい、自社製品の魅力を理解してもらうか」
これら、DMU全体像を把握し、各DMUの関心事に気を配り、最適な提案をするのが、重要な営業の役割と言えるでしょう。

3.DMUマップで意思決定関与者を構造的に分析

3-1.DMUマップとは


工場生産設備のDMUマップ

DMUマップによるDMU分析例を記載します。こちらは、工場の生産設備購入におけるDMUマップの例です。

このように、DMUの全体像を把握したうえで、「各意思決定関与者の関心事はなにか?」「どのように意思決定に影響を及ぼすか?」「意思決定に及び素影響力はどのくらいか?自社に対する態度は?」などを把握しましょう。


3-2.DMUマップ作成プロセス


DMUマップ作成プロセスは、図のように大きく「マップの枠を作る」「マップ詳細化」「仮説検証」の3ステップとなります。

DMUマップは、最初から完璧なマップができるわけではありません。、まずは、仮説でDMUを作っていくことが重要です。仮説検証のPDCAを回して、DMUマップをバージョンアップしましょう。


4.BtoCにおけるDMU


BtoC(消費財)では、基本的には、「ある1人の顧客像」を思い浮かべて「顧客=20名意思決定者」と考えることが多いでしょう。例えば、「首都圏在住の20代独身男性」といった具合です。実際に、低価格品、日用品などでは、1人の顧客像を具体的にイメージすれば、済む商品も多いと思います。

しかし、「BtoCマーケティングなら、すべてDMU=1人」と考えてしまうと、間違ったマーケティング戦略を立ててしまう可能性があります。

BtoCのDMU例:家族の意向が重要になる商材


例えば、「家」や「車」を購入するときをイメージしてみましょう。

私(40歳男性、賃貸アパート、既婚、子供1人)は、私だけでマンション購入の意思決定が可能でしょうか?

妻の意向はもちろん入ってきますね。むしろ私より妻の意向の方が強いかもしれません。「中学は名門中学に入れたい」という教育ママも多いでしょう。

また、子供は、小学生か中学生か、あるいは幼児かで、直接・間接的に影響を与えそうです。ある程度の年齢になったら、「(今はないが)自分の部屋がほしい」と言い出したりするでしょう。

つまり、顧客を1人ではなく、家族構成まで含め「意思決定関与者(DMU)」として思い描く必要があります。


参考情報


1.「DMU(顧客の意思決定関与者)と購買プロセス」関連用語集

2.「DMUと購買プロセス」を学ぶ企業研修

「BtoBマーケティング研修基礎」BtoBプロの基本ノウハウ

BtoB企業向けにマーケティング思考の基礎を共通言語化する企業研修です。マーケティング戦略プロセスのエッセンスを抑えつつ、BtoBに精通したコンサルタントが「DMU」「購買プロセス」「経済合理性」など、BtoBマーケティングの基本ポイントも解説します。

研修プログラムの詳細は『 「BtoBマーケティング研修基礎」BtoBプロの基本ノウハウ』をご覧ください。

「顧客ニーズヒアリング研修」仮説思考で潜在ニーズを掴むコツ

BtoB企業攻略のキモ、顧客ニーズヒアリング力を高める企業研修です。仮説思考の論理的ニーズヒアリングプロセスを身につけます。実在の顧客を題材にワークショップ形式でコンサルタントの仮説検証ノウハウを伝授します。

研修プログラムの詳細は『 「顧客ニーズヒアリング研修」仮説思考で潜在ニーズを掴むコツ』をご覧ください。


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