ネットリサーチを行うマーケティングビジネスカンパニー「株式会社マクロミル(以下、マクロミル)」様では、インターネットリサーチや会場型グループインタビュー調査などを行っています。
マクロミル様では、会議効率向上目的として、2015年よりシナプスの「ミーティングファシリテーション研修」を導入しています。さらに、会議効率を上げ、創造的な会議を実現できるよう、ファシリテータースキルを全社員の3 割に習得させることを⽬標としました。
今回は、マクロミル様で人材育成を担当する人事部の遠藤 忍さんに、ファシリテーション研修の導入効果をお伺いしていきます。
ファシリテーション研修検討のきっかけは非効率な会議
会議効率化と意思を持った合意形成が行いたい
インタビュアー
ファシリテーション研修を導入する前は、会議においてどのような課題があったのか教えてください。
遠藤様
マクロミルでは、情報共有ための会議が多く、しかも会議時間が長いことが課題でした。非効率な会議が多かったのです。その理由の一つは、「会議をどのように進めたらいいのか」を社内で共通言語として共有していなかったことです。
また、マクロミルではフラットで風通しが良い分、お互いの主張や想いがぶつかり合うことは多くありません。よって、会議での合意形成はスムーズにいきます。しかし、「意思を持って合意形成をしにいくこと」は、ファシリテーションに今一歩の部分があることも課題でした。会議での意思決定は、みんなの意識がこもった生きた意思決定でなくてはいけません。
講師のファシリテータースキルと実績を重視してシナプスを選定
インタビュアー
そのような会議ファシリテーションの課題解決のために、どのようなポイントを重視して研修会社を探していましたか。
遠藤様
研修会社を探すときは、研修会社と講師の実績を重視しています。シナプスさんの代表取締役である家弓さんのご経歴を拝見すると、豊富なコンサルティン経験や様々な業界での講師経験があります。あらゆる業界を理解され、ファシリテーション経験豊富な家弓さんであれば安心して、ファシリテーション研修をお願いできると考えました。
最終的に、シナプスさんにファシリテーション研修をお願いし、研修のファシリテーションを拝見しました。研修では、あらゆる人が様々な角度から発言しますよね。家弓さんのファシリテーションは、各々の発言を取りまとめ、受講生の気づきに必要な問いかけを投げ返してくれます。
議論を活性化させるための講師としてのファシリテータースキルも抜群だ、と感じました。しかも、受講生の問いかけに簡潔にロジカルな説明をしてくれるところも、ファシリテーション研修受講者にとって信頼できるポイントです。
ファシリテーション研修の受講者
インタビュアー
ファシリテーション研修には、どのような方が受講されているのでしょうか。
遠藤様
ファシリテーション研修には、幅広い役職の社員が受講しています。
はじめに受講したのは、社内の多様な働き方を推進する「エバンジェリスト」と呼ばれる人たちです。エバンジェリストは、基本的にファシリテーション研修の受講メンバーから選抜されています。
それ以降の研修開催時は、「ファシリテータースキルは必須ビジネススキルの一つ」と定義して受講メンバーを募集しました。上司層からメンバー層まで、様々な役職者がファシリテーション研修を受講しています。
意義ある会議のためにファシリテータースキルが不可欠と実感
ファシリテータースキルの認知の広がり、活用は懸念点だった
インタビュアー
ファシリテーション研修を導入するときに懸念していた点はありますか。
遠藤様
ファシリテータースキルが、社内でどこまで認知されるのかが気になりました。また、研修を受講する人だけではなく、企画する側としても、ファシリテータースキルが実務の中でどのように活きてくるのか、どこまで実感を持ってイメージできるのか、は懸念点でした。
ファシリテーション研修後は会議アジェンダが精密になった
インタビュアー
ファシリテーション研修を実施して、非効率な会議などの課題は解決されましたか。
遠藤様
当初持っていた会議ファシリテーションに対する課題は、徐々に解決されはじめています。まずは、社内の文化を変えようとしているため、ファシリテーション文化浸透もしながら、解決に向かっている最中です。
ファシリテーション研修導入後に明らかに変わったと感じるのが、会議実施前に提出されるアジェンダが精緻になっていることです。
ファシリテーション研修前は、会議アジェンダが発行されても「〜について」など漠然としていた項目が多かった。ファシリテーション研修後は、もう一歩踏み込んだ項目のアジェンダが発行されています。
さらに、会議アジェンダの項目出しに関しても、この会議で議論すべき内容なのか、それともあらかじめ宿題をこなした上で議論すべき内容なのか、などを会議内での位置づけをしっかり分けて記載されることが多くなりました。
また、「2時間以上かかる会議はナンセンスである」などファシリテーション文化の意識醸成が、社内に生まれている感覚があります。
会議は意識を持って合意形成する
インタビュアー
もう一つの課題であった、「意思を持った合意形成」についての課題は解決されましたか。
遠藤様
ファシリテーション研修を受けたメンバーは、「ファシリテーターとして、自分にはどのような役回りが期待されているのか」「この会議は何の目的で行っているのか」「決めないといけないことは何か」などを考えること自体が大事である、と気づけたようです。
ファシリテーション研修を企画する人材育成ユニットの我々としても、ファシリテータースキルは各メンバーに意識して欲しい必須スキルである、と改めて確認できました。
インタビュアー
ファシリテーション研修導入前に懸念されていた点について、導入後はどのように感じましたか。
遠藤様
「ファシリテーションとは何か」を言葉として、どのように他のメンバーに伝達するのか、といった課題は残っています。
しかし、私が実際に参加者としてファシリテーション研修に参加したところ、「ファシリテータースキルは必須のスキルである」と体感することができました。また、「ファシリテーターは、ファシリテーターとしての役回りに徹するだけではなく、参加者の一員である」と気づけたことも大きな学びです。
さらに、「メンバー全員がファシリテーターになる」と考えて会議に出席すれば、会議はより活性化することを学びました。
今後は社内に「ファシリテーション文化」を浸透させる
ファシリテーション研修振り返りと社内ツールで文化を浸透
インタビュアー
社内にファシリテーション文化を浸透させるために、どのような取り組みをされていますか。
遠藤様
マクロミルでは、「ファシリテーション振り返り研修」を実施しています。振り返りは、シナプスさんにファシリテーション研修の一つのセットとして組み込んでいただきました。実際に、振り返り研修を行ってみて、たとえば「ファシリテーションでの、アジェンダを配布することの重要性」に気づけるなどの効果を得ています。
また、「社内ツール」によって会議ルールを告知しています。マクロミルでは、多様な働き方を推進していくための「ダイバーシティ委員会」があります。この枠の中で、まずは自社内でチャレンジできるBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)施策の一つとして、会議の改善を試みています。そのためファシリテーション研修の枠組みの中で、シナプスさんの研修を活用しながら、社内告知用にポスターを作りました。
たとえば、『会議質を変えよう』とキャッチコピーを掲げ、「会議室」の「室」という字の部分に、品質の「質」の字を当てています。そして、「会議をする上でのいくつかのルール」をポスターに表記しているのです。
このように、ファシリテーション研修の中で扱われた内容を踏まえて社内ツールを作成し、社員の目につく場所に掲示することで、ファシリテーション文化浸透を目指しています。
社内ファシリテーター認定制度で社内にファシリテーション文化を共有
インタビュアー
ファシリテータースキルを指導するために、何か取り組みを考えていますか。
遠藤様
「社内ファシリテーター認定制度」を考えています。この制度でファシリテーターとして認定を受けた人が、今度は講師となり、「ファシリテーターにはどのようなスキルが求められるのか」を社内に共有していくことが目的です。ダイバーシティ委員会のエバンジェリストも、同じような役割が求められます。
人材育成計画にファシリテータースキルも組み込みたい
インタビュアー
最後に、人材育成で今後実現したいことを教えてください。
遠藤様
マクロミルで働く社員に必要となる要素の中に、ファシリテータースキルの定義を入れたいです。
人材育成を計画する上で大事なのは、社員を育成する部署がどのような人間を育てたいのか、の指針を持つことです。それは、会社の利益に貢献するために個人が成長する、といったことに基づいて設計されるべきだと考えます。
ファシリテーション研修に参加し、「ファシリテーションとは何か」を実際に体感して理解ができること。そして、会議で意思決定をする、合意形成をする。それから、問題解決のためのミーティングファシリテーションというツールや、コミュニケーションツールを扱っていくことを、ファシリテーターに必要なスキルの中に含めていきたいです。今後も、それらを体現していけるような人材を育て、売上をさらに向上させることを目指していきます。