チャネル戦略(流通戦略)とは、マーケティングミックス:4Pのひとつ「Place」のことです。流通チャネル政策群に関わる戦略を指します。プレイス戦略、流通戦略、チャネル戦略と同義です。
チャネル戦略は、戦略を具体的施策に落とし込むマーケティングミックス(4P)での検討項目の一つです。
マーケティングミックス:4Pとは
- Product:製品戦略(プロダクト戦略)
- Price:価格戦略
- Place:チャネル戦略(流通戦略)
- Promotion:コミュニケーション戦略
流通チャネルの役割
チャネル戦略(流通戦略)のおける流通チャネルの役割には、以下の7つがあります。
- 調査
製品に対する意識や意見などの情報収集する。 - プロモーション
チャネルを巻き込んだ、販売促進活動 - 接触
予想される顧客を掘り起こし、これと接触していく - 交渉
価格やその他の取引条件における最終合意をとること - 適合
より細かな顧客のニーズに対応する - 物流
製品の輸送とその保管 - 金融
流通に必要とされる資金の確保とその配分
チャネル戦略(流通戦略)では、これらの役割を顧客の受取価値が高めるように最適なチャネル設計をする必要があります。
チャネル戦略(流通戦略)の目的:顧客価値の最大化
チャネル戦略(流通戦略)設計において、製品特性、顧客ニーズによって最適なチャネル構造は異なります。ターゲット顧客にとっての受取価値が最大限に高まるチャネル設計を行いましょう。
流通チャネル戦略設計の事例
「清涼飲料水」の流通チャネル戦略設計事例
- 顧客のメリット
飲みたい時に飲める=利便性 - チャネルの役割
顧客との高い接触頻度=接触 - チャネル形態
「コンビニエンスストア」「自動販売機」
注文住宅の流通チャネル戦略設計事例
- 顧客のメリット
理想の住まいを実現する=個別対応 - チャネルの役割
手続き・工期・価格の交渉=交渉
顧客・土地に合った設計=適合 - チャネル形態
住宅メーカー直販
チャネル戦略(流通戦略)では流通チャネルの長さと幅を選択
流通チャネルの長さとは
チャネルには、自社から顧客(消費者)に届くまでの「長さ」の選択があります。
ゼロ段階チャネル(直販)
- 自社→顧客(直販)
自社が直接顧客に販売する、直接販売(直販)です。高額な商品、説明が難しい商品で多い形態です。近年のインターネットの発達により、これまで直販では難しかった製品が自社サイトで販売されることも多くなってきました。例えば、「パソコン」を直販しているのは、以前はDELLなどごく一部のメーカーのみでしたが、今ではどの会社でもメーカーの自社サイトから購入できるのが当然になっています。
1段階チャネル
- 自社→小売→顧客
実店舗(リアル店舗)が必要な商品で、最もシンプルなチャネル形態です。以前は、小売業界では、卸売業者を介した「2段階チャネル」だったものが、「中抜き」により、メーカーから直接購入ことが増えています。
2段階チャネル
- 自社→卸売→小売→顧客
スーパー、量販店など、商品点数が多く、商品単価が低い商品販売では、小売と自社の間に卸売業者が入ることが、一般的です。例えば、食料品などは、卸売業者が仲介をおこなって小売業者に製品を販売します(卸す)。
なお、卸売業者には、当然マージンが発生します。このマージンを減らすこと、および自社のコントロール範囲を増加させるため、「コンビニエンスストア(セブンイレブン、ローソンなど)」や「大手家電量販店(ヨドバシカメラ、ビックカメラなど)」大規模チェーン店では、直接メーカーと取引することが当然になってきています。いわゆる「中抜き」です。
「中抜き」により、卸売業者から購入している小規模店舗は、価格劣位になるため、小規模店舗、小規模チェーン業者に対して、淘汰圧力が働きます。
3段階チャネル
- 自社→卸売→二次卸→小売→顧客
小規模小売店などが多い場合に、とられる流通形態です。例えば、文具業界などでは、地方ごとに二次卸業者が存在します。しかし、物流網が発展した近年では、中抜きが発生し二次卸業者は淘汰される傾向にあります。
流通チャネルの幅とは
流通チャネルには、長さ以外に「幅」の選択があります。要は「チャネルを広くとるか、狭くとるか」の違いですね。
広ければ広いほど顧客へのリーチ可能性が多くなりますが、各チャネルのコントロールは難しくなします。対して、チャネルが狭い、例えば流通が1社(独占契約)であれば、コントロールは比較的容易で、ブランドも維持しやすいでしょう。一方、1社選択した企業だよりになるので、その企業の販売力がなければ、うまくいかない可能性が高いでしょう。
流通政策の種類 | 顧客リーチ(幅) | ブランドコントロール |
---|---|---|
開放的流通政策 | ○(最大) | ×(コントロールが効かない) |
選択的流通政策 | △(中) | △(ある程度のブランドコントロールが可能) |
排他的流通政策 | ×(小) | ○(ブランドコントロールしやすい) |
開放的流通政策
「開放的流通政策」とは、自社製品の販売先を限定せずに、広範囲にわたって開放的に製品を流通させる政策です。
一気にシェア拡大できるというメリットがある一方で、チャネルコントロールが難しく、販売管理が複雑になるなどのデメリットがあります。また、同じ製品を流通業者間で販売競争させることとなり、価格の下落や、ブランド力の低下・製品のイメージダウンにつながる可能性が高くなります。そのため、高級ブランド品よりも、消耗品のような薄利多売型商品に向いている政策です。
選択的流通政策
「選択的流通政策」とは、販売力や資金力や協力度や競合製品の取り扱い状況などに応じて、流通チャネルを選定する政策です。
適度にコントロールができるメリットがありますが、開放的流通政策に比べるとシェア拡大のスピードは遅くなります。適切な流通パートナー選択が重要です。
排他的流通政策
「排他的流通政策」とは、特定の地域や製品の販売先に独占販売権を与える政策です。このような販売先は、代理店・特約店と呼ばれます。
排他的流通政策では、チャネルをコントロールしやすく、販売管理が容易になるメリットがあります。一方、チャネル維持のコストが大きくなりがちで、チャネル間競争が働かないため各流通チャネルが主体的に販売をしなくなるデメリットがあります。
チャネル戦略(流通戦略)設計時の注意点
チャネル戦略(流通戦略)を検討する際には、以下の2つの整合性に注意して戦略構築しましょう。
チャネル戦略(流通戦略)とSTPの整合性
チャネル戦略は、マーケティングの基本戦略である、ターゲティング・ポジショニングと整合している必要があります。
例えば、説明が難しい高額商品では、直販(自社による直接販売)が選択肢になるでしょう。BtoB商品(生産財)では、営業がチャネルとして重要です。一方、清涼飲料水であれば、「飲みたいときにすぐ買えるチャネル」=自動販売機が重要な販売チャネルです。
ターゲットに合わせて、ターゲットが入手しやすい・価値を感じやすい感じる価値に合わせたチャネル戦略(Place)を考えましょう。
チャネル戦略(流通戦略)と他の4Pとの整合性
4Pは、「マーケティングミックス」と呼ばれるように、単体ではなく、あくまで「4つのPの組合せ」で決まります。そのため、チャネル戦略(流通戦略:Place)は、他の3つのPである、プロダクト戦略(Product)価格戦略(Price)、プロモーション戦略(Promotion)と整合性がとれている必要があります。
直接販売と間接販売の選択
- 直接販売(直販)の特徴
自社の販売網に制限されるため、かなりの大企業でない限りはカバー範囲が限られます。一方、流通マージンはゼロで、ブランドコントロールも容易です。 - 間接販売(流通チャネル)の特徴
直販に比べ広い範囲に流通させることができます。一方、流通マージンが発生します。また、説明が複雑な製品は、流通チャネルでは十分な説明ができない可能性があります。
現在のマーケティングではインターネットもチャネル戦略に活用
現在のマーケティングにおいて、インターネットはもはや欠かせないツールになっています。
しかし、インターネットのマーケティング戦略における位置づけが明確になっていない場合も多いようです。特に4Pにおける位置づけを明確にしましょう。
インターネットはプロモーション媒体かつ流通チャネル
チャネル戦略を検討するうえで、複雑なのはインターネットが、流通チャネルともプロモーションチャネルとも考えられることでしょう。
インターネットは、あくまでプロモーション媒体、つまり、広告や販売促進のためのツールなのか、それともインターネットを流通チャネルと考えて販売しようとしているかは明確に意識しておきましょう。
インターネットを流通チャネルとしてとらえるということは、一般に直販を選択するということです。特に既存商品の場合は、既存のチャネルとの整合性を十分考慮しないと、既存外部パートナー企業から反発がおこるでしょう。
4Pにおけるチャネル戦略(流通戦略)の特徴
流通チャネルは構築に時間がかかる
チャネル戦略(流通戦略)の4Pの中での特徴は、「チャネル構築に時間がかかること」です。他のマーケティングミックスに比べ、流通チャネル構築には時間がかかります。
各流通チャネルに対して、「契約」「商品教育」「理念・コンセプト浸透」など、長い時間をかけてパートナーシップを構築していくことが必要です。
チャネル戦略浸透に時間がかかる理由
「チャネル構築に時間がかかる」「流通チャネルは、自社でコントロールがしにくい」のは、4Pの中で、チャネル戦略(流通戦略)が、直販形態を除き、唯一自社だけで完結しないマーケティング施策であることも要因です。
世の中の多くの商品は流通チャネルという外部のパートナーをとおって、消費者の元に届きます。マーケティング施策の整合性を保ちつつ外部パートナーと長期的な関係を築きましょう。
「チャネル戦略(流通戦略)」を学ぶ企業研修
「マーケティング研修基礎」は、1万人が受講したマーケティング基礎プログラムです。「マーケティング戦略基本プロセスの流れ」「論理的思考法」「顧客ニーズの本質」を学びます。単なる知識に終わらずマーケティングの実務応用に使える論理的マーケティング思考法を身につけます。「マーケティング戦略思考」を共通言語として組織浸透させるための社員集合研修として最適です。
お客様の声:東京電力エナジーパートナー様
冨山様
元々、商品開発室は多様性のあるメンバーなので、プロジェクトを進めるときに共通言語を持つことが狙いでした。
複数のプロジェクトが並行して動いているのですが、共通言語としてマーケティングのフレームワークを使うことが当然になってきていますね。半年間で、すでにサービスをローンチさせた人もいます。
株式会社シナプス
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