マーケティングを推進するうえでお客様の声(VOC: Voice Of Customer)は様々なシーンで登場します。お客様の声は聞かなければならない、と考える方が多い一方でうまく活用できていないケースも散見されます。改めて、どう活用すればよいか、整理してみてください。
VOC(Voice of Customers)の重要性
VOC、顧客の声はマーケティング活動において極めて重要です。一方で、「顧客の声を聴きすぎると意思決定を間違える」という話も聞きます。ではどう考えればよいでしょうか。
VOCとは
VOCとは、Voice Of Customer(s)の略であり、直訳すれば「顧客の声」です。我々はこれを一歩推し進めて「お客様の声を聞いたり現状を見ることで明らかになった顧客の現状実態や本質的ニーズ」と位置付けています。
マーケティング活動では、お客様に価値を提供することが目的になりますが、そのベースにあるのが深い顧客理解です。その顧客理解を行うための一手段であり重要な手段がVOCの活用です。
当社がコンサルティングを行う際はこのVOCの重要性をお伝えしますが、クライアント企業に深く根付いていくと、VOC=「お客様の声を聞いたり現状を見ることで明らかになった顧客の現状実態や本質的ニーズ」ということだけでなく、VOCを収集・分析する活動そのものを「VOC」と呼んだり、動詞っぽい言い回しで「VOCする」(≒顧客インタビューを行い本質的ニーズを明らかにしてくる)と言ったりするケースもあります。ここまでくれば、お客様内で積極的に使える状態になったともいえましょう。
なお、コールセンター業務を行う方は、コールセンターにかけてくるお客様からの声をVOCと呼ぶことも多いです。本稿ではこれらもVOCを形作る一つとは考えますが、お客様からの電話連絡(特にクレーム)だけのことを意図しておりませんのでご注意ください。
VOCを収集・分析する目的
VOCを収集・分析する目的は多々ありますが、広義には「顧客を深く理解すること」に他なりません。より実務的な目的としては、戦略構築や商品企画、マーケティングコミュニケーションの組み立て等、多岐にわたります。ですが、概ね次のようなパターンが多いでしょう。
① 市場調査の一環として収集する
本稿で主に記載する内容はこちらになりますが、市場の状況、顧客のニーズ、競合状況、自社の特徴を把握する際に、VOCを活用するケースです。マーケティングや戦略のゴールがターゲット顧客に買っていただくことが多いと思いますが、それらを効率よく実現するうえで重要な活動です。
② 営業活動の一環として収集する
より具体的に個社の声を拾うにはパターンとして登場するのが営業活動を目的としたもの、正確には「特定個社に買っていただくことを目的としたVOCの収集」です。このお客様のニーズは何か、どのようなソリューションを期待しているのか、等を把握するために積極的にヒアリングする、これも一つのVOC活動ともいえましょう。
ただし、注意してほしいのは、本稿で描く本来的なVOC活動は単一の個社ニーズではなく、複数の顧客が持つ共通ニーズであったり、複数の顧客に標準的にみられる実態だったりを指します。たった一社の声ももちろん重要ですが、それだけに引きずられてしまうと意思決定を間違うケースもありますのでご注意ください。
③ 施策実行後のフィードバックとして収集する
施策実行後、例えば、商品導入後の感想を伺ったり、サービス提供後の満足度アンケートを実施するものがこれにあたります。また、広告や販促を実施後に事後調査を行って「狙い通りの効果ができているか」を確認することもあります。
これらは、「事前仮説通りに実施ができたか?」「今後の改善ポイントは何か?」を明らかにするために行うものです。
④ 購入後のフォロー、アフターサービス等で収集する
コールセンターなどで収集するお客様の声が主にこれにあたります。特に多数のお客様に展開する商品・サービスの場合、お客様からの問合せ窓口を設置しておくことによって、お客様のご不満やお困りごとを集め、直ちに対策を取ることによって顧客の離反を防いだり、それを社内に反映させることで商品・サービスの改善につながったりします。
VOCが注目されている理由・背景
VOCは昔から重要視されてきています。しかしながら、昔と異なり、「モノがあふれている」状態ですので、ぱっと考えて欲しいものは世の中に多数存在しており、お客様があまり困っていない、すなわちニーズが顕在化していないことがほとんどです。一方で、今は調べる手段の一つとして「インターネット検索」があります。しかし、インターネット検索は全世界に公開されているものを確認する作業なので、競合他社にはない新しいものを発見することが難しいです。
これらのことから、市場調査で言う一次情報、すなわち情報の発生源からナマのリアルな情報が必要とされているわけです。
近年、新規事業やスタートアップのメソドロジーが進化してきており、特にITサービスなどに実績のある事業開発手法の一つとして「リーンスタートアップ」が活用されています。この手法は、VOCを収集し高速にPDCAを回していくことで事業を立ち上げるやり方ですが、これらの事業開発でもかなりVOCが活用されています。
シナプスの新規事業コンサルティングでもVOCは必須の活動にしていますが、これらの事業開発手法が世の中に浸透していることもVOCが注目されている背景とも言えましょう。
VOCをマーケティングに活用するメリット
VOCをマーケティングに活用するメリットは何でしょうか?マーケティング活動が深い顧客の理解が大前提となることからすると当たり前のことではありますが、代表的な4つのパターンについて解説します。
顧客ニーズを把握する(ニーズ仮説の構築・検証)
マーケティング活動において顧客のニーズは極めて重要な要素です。自分が顧客としての当事者であれば自分のニーズを分析することでも顧客のニーズが見えてくることはあります。
しかし、自分がターゲットではない場合には、顧客ニーズは聞かなければわからないことが多々あります。インターネット調査のような定量調査手法もダメではありませんが、深いニーズを明らかにできないことがほとんどです。
顧客ニーズを把握するには、お客様の生の声を聴き、実態を見る、ということがほぼ必須ともいえましょう。
市場動向を把握する(競争戦略の構築・検証)
顧客ニーズだけでなく、もう少し広く市場を見るうえでもVOCは重要な活動です。定量調査や調査機関の調査レポートでも「市場は上昇トレンドにある」というような情報は取れます。
しかしながら、戦略の意思決定、競争戦略の構築のためには、「なぜそうなっているのか?」「そのキーポイントは何か?」を知る必要があります。これらを明らかにするためにはVOCが必須になります。
特に競争戦略においては競合や自社の状況把握も必要なのでVOCだけでは情報が足りませんが、顧客の実態が分からなければお話になりません。
製品・サービスの改善に活かす(ソリューション仮説の構築・検証)
VOCが良く使われるパターンの一つとして自社製品・サービスの企画設計や改善に活かすものがあります。機能やデザインだけでなく、価格の検討などにも用いられます。
特定個社へのソリューション提案の際にも用いられますが、複数の顧客のVOCを集めて製品・サービスのバージョンアップや新規ソリューションの組み立てに使うことが多いです。
VOCを集めるポイントとして、ニーズを掘り下げるケースもありますし、できたソリューションを触って頂いてそのソリューションがお客様にフィットするのか(リーンスタートアップで言うCSF:Customer Solution Fit)にも使われます。
マーケティングコミュニケーションを組み立て(カスタマージャーニーの理解・分析)
マーケターにとって、広告宣伝、販促等を活用してお客様に購入して頂くまでの流れ、すなわちカスタマージャーニーを進めることも重要なミッションです。このカスタマージャーニーを理解するには、顧客の実態を知ること、すなわちVOCが必須です。
調査手法の一つとして、顧客に購入いただくまでの流れを観察しながら、「なぜその行動を取ったのか?」を確認するやり方もあります。これらも含めて、お客様の購買行動や態度変容の実態を把握することもVOCの一つの使い方でしょう。
VOC収集・分析のおおまかな流れ
では、VOC収集・分析を行うにはどのように進めたらよいでしょうか。一般的なマーケティング調査と同様ではありますが、下記の6つの手順で実施します。
- VOC分析の目的とゴールを明確にする
- 調査課題と仮説を設定する
- 収集方法を決める
- VOCを収集する
- VOCデータを整理する
- データからの示唆を抽出する
1.VOC分析の目的とゴールを明確にする
まず最初に行っていただきたいのは、何のために行うのか、行った後、どのような意思決定をしたいのか、すなわち、目的とゴールの設定です。
VOCに関わらず調査によくあるミスとして、「とりあえず知りたいから調査してしまう」ということがあります。わかったところで何らかの意思決定につながらなければ、調査はやるだけ無駄、工数やコストがかかる分、やらないほうが良い、ということにもなってしまいます。
マーケティング活動上、VOC分析を行わなければならない理由や、それに紐づいた意思決定項目が必ずあります。その目的とゴールを明確にしましょう。
2.調査課題と仮説を設定する
続いて、調査課題を設定します。調査課題とはすなわち、「何が分かれば、意思決定ができるのか?」を明確にすることです。目的に対して、ニーズを知りたいのか、ターゲットの具体的な状況を知りたいのか、等、「何が分かると意思決定ができるのか?」を明確にします。
そのうえで仮説を作っていきます。仮説には大きく次の3パターンがあり、これらから最終的に質問を組み立てることになります。
- 顧客の実態はどうなっていることが想像されるのか?現状実態仮説やニーズ仮説
- 知りたいことをどう聞けば明らかにできるのか、論点のブレイクダウン仮説
- 各論点における質問に対する回答仮説
3.収集方法を決める
調査課題が決まったら、その情報はどうやると収集できるのか、を踏まえて収集方法を決めます。VOCを選択するということは多くの場合、次の3パターンであることが多いです。
①解像度が粗い場合
新商品などによくあるケースですが、お客様のことが良くわかっていない状況の場合には初期仮説構築も含めてまずはVOCによって解像度を上げていきます。その際にはかなり有効なツールになるでしょう。
②より深く知りたい場合
ニーズ把握やソリューションの使い方など、アンケートではわからない現状実態を深く知りたい場合にはVOCが効果的です。
③アンケート調査が使いにくい場合
特殊セグメントでアンケートパネルが存在しなかったり(BtoBによくあるパターンです)、ごく少数のターゲットについて知りたい等、量的な調査そのものに意味がない場合にもVOCを活用します。
VOCという手法が良いとわかったら、具体的にどうやってVOCを行うかを決めます。決めるポイントは大きく次の2つです。
- どのように対象者リーチするか
- 誰がやるか
対象者へのリーチは調査パネルを利用したり「機縁法」(後述)を活用するケースもあるでしょう。また、担当者が自分でやるケースもあれば、営業を介して行うケースや、重要な局面ではプロの調査員やインタビュアーをアサインするケースもあります。
4.VOCを収集する
VOCの収集は、ヒアリング、インタビューが基本になります。事前に質問したいことを整理し、お客様の回答や状況から「なぜ」を聞き出していき、その結果をインタビュー録としてまとめていきます。
5.VOCデータを整理する
集まったVOCデータを対象者分類ごとなどに分析・整理していきます。特に複数人でVOCを行った場合、質問の流れや言い回し、場合によっては対象者とインタビュアーの関係性によってインタビュー録に記載された文字通りの意味になっていないケースもありますので、本来の意味合いを整理していきます。(例えば、仲良しのお客様が笑いながら「君はもう来なくていいぞ笑」、というのと、関係性の良くないお客様が厳しいトーンで「君はもう来なくていいぞ怒」というのでは同じ言葉でも意味は反対になるでしょう。)
6.データからの示唆を抽出する
最初に仮説立てしたものが検証できたのか、検証結果を整理するとともに、新たに何が言えるのか、その仮説を組み立てていきます。そこからの示唆、すなわち、「意思決定したいことに対してどういうことが言えるのか」をまとめていく作業になります。
VOC候補者の効果的な選定方法
VOCを実践する際にボトルネックになりやすいのが「聞く相手をどうやって見つけるか」問題です。一般的に5つの手法を組み合わせて行うことが多いのですが、状況や自社の状況に合わせて活用してください。
自社顧客へのVOC
まず、ベーシックなやり方は自社顧客へのVOCです。多くの場合、営業の支援が必要になりますが、特に自社のロイヤルカスタマーの場合は喜んでインタビューを受けてくれることも多いです。自社製品やサービスの満足度評価などでは必須の対象者選びでしょう。
機縁法
新規事業などでよく使われる手法で、「知り合いに聞く」やり方です。幅広い業種にネットワークをお持ちの方がいるとかなり効率的にできるほか、友人・知人に「こういう知り合いいませんか?」と紹介して頂くケースもあります。当社でも新規事業支援の場合に、良く活用しています。
調査パネルの活用
有料の調査パネルを活用することで、効率的にリーチしたい対象者にインタビューを行うことができます。BtoCの場合には、インターネット調査会社が持っているパネルを利用するのが一般的ですし、BtoBの場合にはインターネット調査会社だけでなく特定領域に特化したパネル(例えば、医師専門パネル等)やスポットコンサルを活用するケースもあります。
アンケートによる対象者選定
アンケートによる対象者選定は、機縁法と調査パネル活用の派生的なやり方になりますが、「アンケートを収集し、対象条件に合った方にインタビューを依頼する」というやり方です。アンケートを活用することで聞きたい属性を絞ることができる他、アンケート内に「インタビューを受けて頂けますか? Yes / No」を入れておくことでインタビュー依頼ハードルを下げることもできます。
正面からインタビュー依頼
ほかの手段がない場合に利用するのが「正面突破」的な方法です。BtoCであれば、街頭インタビューがこれにあたります(一般に警察や施設管理者の許可が必要です)し、BtoBでは代表電話番号や問合せサイトから依頼を行うものです。内容が面白ければそれなりに集まることもありますが、不慣れな方には心理的なストレスがたまりやすいです。場合によっては、テレアポ会社や営業代行会社に依頼するのも一つの選択肢です。
VOCを効果的に収集する方法
VOCは一人一人の声を聴くため、手間がかかる割にその効果にかなりばらつきが出やすいです。そのための対策として4つご紹介します。
仮説立て:聞きたいことを明確にする
最初に必ずやってほしいのは「仮説立て」です。上述しました三つの仮説、すなわち①現状実態仮説やニーズ仮説、②論点のブレイクダウン仮説③質問に対する回答仮説、です。この仮説立てと検証を行うことによってより精度の高いVOC収集ができるでしょう。
特に初期仮説が粗い場合には、一つ一つの声毎に仮説が磨かれ、場合によっては大きく変わる可能性があります。この仮説と検証をVOC活動内でしっかり回していくこともポイントです。
アンケート調査の実施:ライトパーソンに聞く
VOCの結果を導出する際にミスしやすいのは「印象的な望ましい声」に引きずられることです。あくまでもターゲットの声が重要であり、VOCもライトパーソンの声を聴かなければ意思決定を間違えます。VOCの作業は時間も手間もかかることですので、ライトパーソンのVOCを集める(≒ライトパーソン以外はアプローチしない)ということも重要です。
インタビューの実施:掘り下げることで実態を知る
VOCはインタビューのスタイルをとることが必須です。その際に心がけたいのが、「具体的にどうなのか?」「なぜそうなのか?」を確認することです。表面的なことであれば、それこそアンケートでも確認できますが、本当に知りたいのは「実際どうしているのか」「なぜそうしているのか」というようなことでしょう。これをインタビューで実践したいところです。
ソーシャルメディアの監視:表に出にくい情報を探る
少し亜流なやり方ですが、近年X(旧Twitter)やInstagram等のSNSの投稿が活用されると、ふとした時に出てくる本音や公式には出にくい裏の顔が見えるケースがあります。ソーシャルメディアを監視し、分析することで表にはぱっと出にくい情報を探り、それも仮説立てやインタビューに活用することも新たな視点を引き出すうえで重要なポイントになるでしょう。
BtoCマーケティングにおけるVOC活用例
BtoCマーケティングでは様々なケースでVOCを収集し活用するケースがあります。
活用事例①:ECにおけるVOC
DtoC型のECを展開するA社は、自社の顧客が自社商材をどのように活用しているか、またカスタマージャーニーが分かっていませんでした。そこで、自社顧客に対してアンケートを収集し、「インタビュー可」の方にインタビューをお願いしました。
オンライン(Zoom)でのインタビューでA社商品の使い方や満足点・不満点、日々の暮らし、商材の購入フローなど詳細を伺い、自社顧客に対する解像度が大きく上がり、戦略を再構築した結果、売上拡大に大きく寄与しました。
活用事例②:店頭調査によるVOC
飲食店を展開するB社は、自社商品に対するお客様の反応を評価するため、自社店舗での店頭インタビューを実施することにしました。店舗繁忙期を外してお客様も店舗側も余裕のある時に店内で食事をされていらっしゃる方に5-10分ほどのインタビューをお願いし、召し上がっているものの感想を中心に満足点・不満点をそのニーズ、意向を明らかにしました。その結果として、自社商品やサービスの改善につなげました。
活用事例③:新規事業開発によるVOC
製造業C社は、新規事業開発プロジェクトにおいて、起案者が提案する際にはVOCを必須としていました。起案者は自分で考えた事業アイデアに対して、ターゲットとなりそうな消費者複数人(数十人)に対して、インタビューをしまくり、結果として良い事業提案につなげることができました。
BtoBマーケティングにおけるVOC活用例
活用事例④:アカウント攻略のためのVOC
BtoB型の製造業D社は、既存顧客の深耕のためにVOCを実施することにしました。担当の営業を中心に改めて、顧客の課題についての仮説を立て、今までの顧客担当者だけでなく、他の窓口を探ることも含めてVOC活動を実施しました。
いくつかのお客様で新しい機会を発見できた他、営業の基本行動としても根付いていきました。
活用事例⑤:サービス改善のためのVOC
BtoB型のサービス業E社は、顧客満足度向上のためにVOCを実施することにしました。経営企画で項目を設定し、営業を通じて顧客にインタビュー、場合によってはアンケートも行うことによって、お客様の自社に対する不満点を確認し、それを改善することで顧客満足度が全体的に改善していきました。
活用事例⑥:新規事業開発のためのVOC
BtoC、toB両方を事業展開するF社は、新たな産業分野への参入を検討し、その領域に対するVOCを行いました。新規事業になりますので、機縁法も含めて様々な企業、団体にアプローチし、そのVOC収集を通じて、事業プランを組み立て、結果的に良い事業提案につながりました。
VOCマーケティングの仕組みづくりのポイント
VOCを活用したマーケティングをどう継続的に進めていくのか?継続的に進めていくための仕組みづくりのポイントを示します。
トップから意識する
まず組織的に行うことが必要であり、会社全体であれば経営トップ、マーケティング部門であればCMOなど、マーケティングのトップが強く意識する必要があります。
例えば、ASKULはコールセンターに入ってくるVOCを積極的に活用することで知られていましたが、おおもとは創業者でもあった岩田氏が重要であると認識し、日々の業務の中で常に意識していたといわれています。
トップがVOCを常に気にしているからこそ、社内に浸透していく、ということです。
予算計上しておく
VOCの実践には収集活動が欠かせません。外部調査をする場合の予算はもちろん、社内工数ですべて対応するとしてもインタビュー対応社への謝礼や様々なITツール活用の費用、顧客訪問する場合の交通費等細かい予算も含めてそれなりにかかるものです。これらの予算をあらかじめ確保しておくことで、やることのインセンティブになるほか、いざ始めたときに途中でストップしにくくなります。
定量調査と同期させる
多くのマーケティング組織でインターネット調査を中心とした定量調査を行っているものと思います。この結果と同期させることでよりリアリティのある分析になり使いやすい結果を得ることができます。
VOC分析結果を共有する
VOCは実際に声を聴いた人は鮮烈に印象付けられますが、担当していない方にとっては、「ふーん」という程度の情報に見えてしまうことが多々あります。直接顧客の声を聴くことがそれだけ強力である、ということでもありますが、聞いていない方にも意識してもらうために、分析結果は常に共有し、できれば、「共有会によるプレゼンテーション」を必須にすると良いでしょう。
VOCマーケティングを実践する際の課題・注意点
VOCを活用したマーケティングを実践するうえで課題になりやすい点もご説明します。
社内の協力体制
VOCマーケティングには、社内の協力が不可欠です。特に、顧客接点部門(多くの場合は営業)の支援がないとお客様にインタビューできない、ということにもなりかねません。そのため、VOCマーケティングの意義や意味、それぞれの部署にとっての必然などを伝え、確実に協力体制を作っておきたいものです。逆に営業を勝手に飛び越えてインタビューをすると、営業活動にマイナスの影響を与えるケースもあり、ひいては営業からのクレームが出かねません。
手段の目的化
OCのような作業が関わるものは手段が目的化しやすいです。去年も聞いたので今年もVOC活動をしよう、わからないからとりあえずVOCで聞いてみよう、等が目的化しているパターンでしょうか。目的とゴールの設定を毎回再確認し、明確にすることで無駄な活動を避けることができます。
偏ったデータの排除
VOCで取れた情報は個々のお客様からの声なのでそれなりにパワーがあります。ところが偏った内容から結論を出してしまうと意思決定を間違えることもあります。例えば、「自社の不満点からサービス改善したい」というようなケースの場合に、自社顧客にインタビューをして組み立てると、「不満で離反した」顧客の声を聴くことができません。結果として間違った結論を導いてしまうことでしょう。ターゲットが適切なのか、あるいは適切な量が収集できているのかを再チェックしましょう。
顧客プライバシー保護の重要性
VOCは、特にBtoCの場合顧客の個人情報にあたるケースが多々あります。顧客のプライバシー保護は企業の責務でもありますので、得られた情報は厳重に管理して、安易に外に出ないように気を付けたいものです。
以上、VOCを活用したマーケティング、VOCマーケティングについて説明しました。顧客の深い理解はマーケティングの原点といっても過言ではありませんので、よりよいVOC収集ができるよう、進めてみてください。