営業とマーケティングの連携で成果を上げるためのポイント

営業とマーケティングの強力な連携で成果を上げるためのポイントをコンパクトにご紹介。営業責任者がマーケティングをうまく活用して成果につなげるための基本の考え方、コツをお伝えします。

更新日:2024年9月6日

営業とマーケティングによく見られる課題

営業組織とマーケティング組織は上手く連携すると事業にとってかなりの大きな成果につながりますが、一方で営業組織とマーケティング組織がいがみ合ってうまくいかないケースも存在します。

営業とマーケティングは決して背反する組織ではなく、どちらもお客様に価値を提供し、より多くの売上、ひいては利益を上げるための組織です。

ところが、営業は「目の前のお客様に価値提供する」のが役割なのに対して、マーケティングは「ターゲットとするより多くのお客様に価値提供する」のが役割なので、背反するように見えるケースがあり、その結果としてうまく連携できず、いがみ合う結果になってしまいます。

では、それをどう回避したらよいのでしょうか?

営業とマーケティングの違いと共通点

まず、営業とマーケティングは何が違うのか、あるいは何が共通点なのか、その違いと同じところを見てみましょう。

営業の目的・役割・業務

営業は、担当しているお客様に価値を提案、無形商材などのカスタマイズ性の高い商材ではお客様に合わせた企画提案も行い、顧客に納品するのが目的であり役割です。また、見積もりや請求書の作成、所属企業によっては代金回収までを追うケースもあります。そのため、業務としても、担当しているお客様に対して、アポを取り、訪問し、ニーズをヒアリングしながら、提案を作成、プレゼンテーション、クロージングすることになります。(もちろんこれだけではありませんが。)

営業の評価指標として、受注や粗利、場合によっては営業利益になるケースもありますが、多くの場合、「自分が担当しているお客様に対して最大価値を提供しご満足いただく」ことが多くの営業にとっての喜びであり目的となっています。

BtoB Saas等のBtoB向けのITソフトウェアが数多く出てきた昨今、「インサイドセールス」と「フィールドセールス」を分けるケースもあるので営業業務も細分化してきていますが、その基本は担当顧客に対する価値最大化、ひいては売上最大化を目指すことに変わりありません。

マーケティングの目的・役割・業務

「マーケティング」組織は、企業によって役割は大きく変わります。BtoC型の企業では、商品企画とコミュニケーション(広告宣伝、販促)を主業務として、マーケティング戦略と4P(Product、Price、Place、Promotion)を担うケースが多いでしょう。一方で、BtoB型の企業になると、「マーケティング」組織がリード創出部隊(展示会の企画・運営やWebサイトの構築、運営など)であったり、市場調査部隊であったり、広報組織であったり、顧客セグメントをまたいだ横ぐし部隊であるケースも多々見られます。

企業によって機能や役割は多様ですが、本来的な意味でのマーケティング組織の目的は、マーケティング戦略の構築、すなわち、「顧客は誰か」「どのような価値を提供するか」を設計し、それを4Pに展開することです。「商品企画」の方がそれを担っているケースも多いですね。

従い、マーケティング業務は、環境分析からマーケティング戦略の構築、そこから4Pへの展開と幅広い業務範囲をカバーします。現実問題としては、一人、一組織では難しいため、マーケティング業務を複数のメンバーや部署が分担するというケースが一般的です。

ちなみに、BtoB型の企業では、マーケティングコミュニケーションの大部分を営業が担っているケースもあります。

営業とマーケティングで大きく違うこと


営業とマーケティングで大きく違うのは、誰が顧客か、というベースにある考え方です。

営業は、担当しているお客様が自分の顧客です。例えば、これをA社としましょう。このA社の状況を把握し、ニーズを捉え、最大価値を提供することが営業の役割です。優秀な営業であれば、お客様が困っていることやご要望があれば、自社が提供できないことであっても、様々なつてを駆使してお客様への価値提供を成し遂げます。多くの営業は持っている担当顧客の売上最大化がミッションなので、それを目指して最大限の価値提供活動を行うことになります。

一方、マーケティングは、担当しているブランドの売上最大化が多くの場合メインのミッションになるでしょう。マーケティングでもCMO等の経営クラスになると営業利益まで求められます。ブランドの売上最大化のためには、「ターゲット顧客への価値提供」が基本になります。言い換えれば、ターゲット外の顧客に対しては「価値を提供しない」ことが基本になるのです。

つまり、営業は担当している顧客に向き合っていますが、マーケティングは「誰が顧客か」を考えるミッションも持っている、ということが大きな違いになるでしょう。

営業とマーケティングに共通するもの

営業とマーケティングは、どちらも顧客企業への価値最大化、その結果として売上や利益の最大化、という目的を同じくしています。したがって、マーケティング戦略を、営業担当者、マーケティング担当者、ともに正しく理解し、その価値提供の最大化を目指して動くということでは同じ目線を持っているはずなのです。

営業とマーケティングを連携させる理由とメリット

営業とマーケティングは、同じ目的を持ちながら、異なる業務を持ちます。だからこそ、連携させる理由やメリットが存在します。そのポイントは大きく次の5つです。

  • ① 顧客の深い理解
  • ② 市場ニーズへの的確な対応
  • ③ 競合他社との差別化
  • ④ 販売促進の効果向上・受注率向上
  • ⑤ ブランド価値の向上

① 顧客の深い理解

マーケティング戦略を構築し、顧客のカスタマージャーニーを進めるためのマーケティングコミュニケーションを進めていくうえでは顧客の深い理解は極めて重要です。顧客を理解する手段は複数ありますが、概ね顧客理解の手段として、マーケティングは顧客調査、営業は顧客ヒアリング、という行動が基本となるでしょう。

  • マーケティング:顧客調査
  • 営業:顧客ヒアリング

これらをそれぞれやっているケースも多いのですが、マーケティングにとっては、営業からの情報が顧客調査の仮説立てにもなりますし、また調査だけからは見えてこない顧客の本音を理解するひとつの手段になります。逆に営業にとっては、マーケティングが組み立てた客観的な顧客情報を知ることで、担当顧客の理解につながるケースもあるし、担当顧客のコミュニケーションの際に「他のお客様はこのようなことをやってますよ」という情報提供にもつながります。

② 市場ニーズへの的確な対応

市場のニーズは時々刻々変わっていきます。定点観測的に顧客調査をしているマーケティング部隊の場合、タイムリーにキャッチできるケースも存在します。しかし、市場の変化を一番感じるのは、「変化対応が早いお客様」を担当している営業です。日々の営業活動におけるコミュニケーションによってお客様の変化の兆しをマーケティングが受け取ることで的確な対応を組織的に取ることができます。

また、マーケティングが市場の変化に対して対応をしていれば、それを営業がキャッチアップすることでお客様のニーズに先回りして提案することも可能でしょう。

③ 競合他社との差別化

競合他社との差別化は、マーケティング戦略におけるポジショニングで実現するものであり、まさにマーケティング組織の重要ミッションと言えます。これを営業が理解していれば、提案時に「勝てる提案」が作れるでしょう。また、営業は日々の提案の中で競合他社と切磋琢磨していますので、お客様の目線から「競合との違い」を知るケースも頻繁にあるでしょう。それらをマーケティングにフィードバックすることによって、組織的に差別化を実現することも可能です。

④ 販売促進の効果向上・受注率向上

マーケティングのセオリーからすれば、「営業」という活動は、主にマーケティングコミュニケーションの中でもより顧客の購買行動を決定する一部分を大きく担っている、ことになります。例えば、態度変容モデルの代表格であるAIDMAモデルで言えば、Actionあたりはまさに人的販売(≒営業)が担いやすい部分でもあります。

近年、顧客の購買行動を精緻に理解するカスタマージャーニー(マップ)という手法も注目されていますが、このカスタマージャーニーを営業自身が理解していれば、お客様が何を期待していて、どう営業すればより刺さりやすいのか、が分かります。それを実践することによって受注率も向上するでしょう。

⑤ ブランド価値の向上

これまでの4点、①顧客の深い理解、②市場ニーズへの的確な対応、③競合他社との差別化、④販売促進の効果向上・受注率向上を行っていくことによって、最終的にブランド価値の向上が実現できます。

同じ組織、同じ目的をもとに動く、営業とマーケティングが連携するからこその効果と言えましょう。

営業部門とマーケティング部門が対立する理由



このようなメリットがありながら、なぜ営業部門とマーケティング部門は対立してしまうのでしょうか?その理由の多くは相互理解の欠如、もっと大きな課題としては、マーケティング戦略の欠如や浸透不足にあります。

お互いの役割・状況を把握していない

よくある組織的なコミュニケーション不足の課題として見受けられるのが「お互いのことをよくわかっていない」問題です。大所高所から見れば、営業部門とマーケティング部門は同じ目的に向けて活動していますが、ミクロでみれば全く違うことをやっています。

例えば、ある営業が自分のお客様からニーズを聞いてきたとします。一方でマーケティングは広告宣伝に向けての対応をしていたとしましょう。営業にとってみれば、「ようやく時間を頂戴で来たお客様から貴重なニーズを聞いた。これを実現すればお客様はとっても喜ぶし当社の売上にも大きく貢献できる」と思うでしょう。そのため、マーケティングに「このお客様に合った情報を提供したいので大至急資料をもらえないか?」と伝えます。

一方でマーケティングにしてみれば「今は個別の一顧客の要望に対応している時間はない。広告宣伝対応を優先して複数の顧客へのリーチを急がなければならない」と思うでしょう。その結果「忙しいから待ってくれ」という回答になります。

その結果、営業は「こっちは頑張って売っているのにマーケティングはサボっているのか!」と思いますし、マーケティングは「営業は細かい仕事ばっかりやって大きな視点で事業をみていない」となってしまいます。

別のケースとしては、例えば、マーケティングがターゲット顧客の最大公約数を取った戦略を組み立てたとしましょう。一方で営業担当者は少しニッチな顧客を担当しているとします。

マーケティングは、「お客様はこのニーズを持っているのでこの価値を訴求すればお客様は喜んで購入いただける」と説明します。それを聞いた営業担当者は「私の担当顧客はそんなニーズは持っていない。マーケティングは現場が全くわかっていない」と思うでしょう。

これらはお互いの業務の理解不足がゆえに起きてしまう不幸ともいえましょう。

自部門のKPIを優先してしまう

お互いの業務を理解していたとしても自分自身の業績を評価するKPIが異なるため、対立が促されてしまうケースもあります。

営業担当者は自分の売上最大化がメインのミッションで、それによって自分の業績評価やボーナスも決まってくることでしょう。それは、「目の前のお客様に全力投球したい」ということでもありますし、周囲、ひいては会社に対しても「このお客様に全力投球する私を支援してほしい」と思うのはごく自然なことでしょう。

一方、マーケティングはターゲットの最大公約数を追うのが仕事であり、個々の営業の細かい案件に対応するより、もっと大きな顧客群への対応の方が結果的に「担当商品の売上最大化」につながります。その結果として、営業のリクエストを無視するのが正解、というケースもあるわけです。

戦略と戦術がすり合っていない

営業もマーケティングも、ベースとなる戦略は「マーケティング戦略」であり、ターゲットやポジショニングを形作ります。ところが一方で、営業戦略、すなわち、「どの顧客の優先順位を上げるのか」ということについては、特に複数商品を持つ企業の場合には結論が変わるケースがあります。

すなわち、商品上の重要顧客と営業上の重要顧客は違う、ということです。マーケティング戦略において営業戦略は施策の一部分となりますので、ここが決定的に違えば、結果的に営業とマーケティングのすれ違いにつながるでしょう。

営業とマーケティングの連携強化のポイント

では、どうやって営業とマーケティングが連携していけばよいのでしょうか?その連携ポイントは大きく3つ、すなわち、組織的には共通言語を持ち、KPIを共有し、さらに現場同士で会話することです。

共通言語をもつ

まず、重要なのは、営業もマーケティングも「マーケティングの考え方」を理解し、それを共通言語とすることでしょう。マーケティングの考え方が難しいのであれば、少なくとも「お客様のニーズ」を共通言語としておきたいものです。

基本的な考え方が理解できればお互いの考えも理解しやすくなり、結果として連携がやりやすくなるでしょう。

定量指標(KPI)を共有する

定量指標(KPI)の共有も重要な要素です。特に、営業が持っているKPIの意味と現状、マーケティングが持っているKPIの意味と現状を共有しておくことで、それぞれの組織的な課題、興味関心事が理解しやすくなりますので、結果的に相手を理解した仕事の進め方ができるでしょう。

現場同士で定期的に会話をする

これらを実現するためにも、営業とマーケティングが現場同士で会話することがとても重要です。

良い組織というのは、例えば、マーケティングが営業に戦略を落とし込んだときに、営業が自顧客の実態に合わなければ「この戦略では私は売れない」という忌憚のない意見を正しくフィードバックできることだと思うのです。正しく、というのは言いっぱなしでけんかをするのではなく、そのフィードバックを忌憚なく言う(面従腹背ではなく)、そしてマーケティングがその言葉に対してしっかりと説明責任を持つ。逆に営業は「お客様はこんなことに困っている」という情報をマーケティングに届けることによってマーケティングは直ちに戦略を修正する。こういった細かい連携こそが強い組織へとつながります。

BtoCビジネスで気をつけたいこと

BtoC型のビジネスでよくあるのは、製品企画と広告宣伝、販促をマーケティングが担当し、営業は流通チャネル(コンビニやスーパーなど)への商品紹介、棚どりを行う、という形態です。これらの連携では、マーケティングは一般消費者を理解し、営業はチャネルを理解することがベースになります。最終的には一般消費者に購入いただくことが中心になりますので、一般消費者のカスタマージャーニーを小売の視点も絡めて営業とマーケティングが協力してくみ上げる、という必要があるでしょう。

BtoBビジネスで気をつけたいこと

BtoB型のビジネスでは、営業の力が相対的に強くなることが多いです。そのため、マーケティング戦略に営業自身がコミットすることと、マーケターは状況によって「自ら売ってみせる」ことが必要になります。BtoB型のビジネスで成果を上げているマーケターによくあるケースですが、「営業が積極的に売ってくれるようになったのは、一回私自身で売ってみせたことですよ」という話はよく聞くパターンです。

連携の実現に向けた具体的施策

では、連携に向けてどのような対策が取れるのでしょうか?ここでは、次の5つをご紹介いたします。

  1. 戦略会議
  2. 研修やワークショップの実施
  3. 異動や業務ローテーション等組織的対応
  4. webマーケティング
  5. インサイドセールス

1.戦略会議

最初に実行したいのは戦略会議の会議体、またはそのチームを作ることです。企業によっては、マーケティング部、営業部、開発部等の人事考課上の組織とは別に、部門をまたいだ(クロスファンクショナルな)「ブランドチーム」を形成することもあります。

通常、マーケティング戦略の策定はマーケティングの役割です。これらを構築する際にも営業が関わり、また、策定直後にマーケティングと営業で会議体を持つことによって、この戦略でいけるのか、営業が成果を発揮するためにはこれだけで良いのか、を議論する場を作るのです。ここでお互いが忌憚のない意見を言い合えれば結果的に組織的な意味のある連携が実現するでしょう。

2.研修やワークショップの実施

戦略会議は重要ですが、それをスタートする際に良くとられる手法が「研修」や「ワークショップ」のような集合型の取り組みです。テーマをマーケティングにすることによって、関与者全員がマーケティングの考え方を理解し、自分自身の役割を知ることができます。また、ワークショップ、すなわち自部門でのマーケティングをどのように推進するかを関与者全員で議論することによってより組織的な取り組みにつながるでしょう。

3.異動や業務ローテーション等組織的対応

いくつかの企業にみられるケースとして、営業からマーケティングに異動したり、マーケターとして採用しながら一度営業を経験させる、ということがあります。これは両方の仕事を経験することによって連携を強化することにもつながりますし、営業にとってもマーケティングにとってもそれぞれの仕事を経験することによってより高いレベルでの職務を実践できることにもつながります。

4.webマーケティング

特にBtoB型組織においては、Webマーケティングの強化が営業とマーケティングの連携につながるケースも見られます。理由は、特に新規開拓営業にとって良質なリードは常に必要だからです。マーケティングが良質なリードを営業につなぐことができれば、営業も協力的になりますし、逆に、営業の受注率を上げるためのリード、というようにマーケティングが考えることによってより良いリード獲得につながるでしょう。

5.インサイドセールス

インサイドセールスは、電話やメールなどを用いて、事務所にいながら(インサイド)営業活動を行うミッションを持った営業です。対義語としては顧客に訪問して営業活動を行うフィールドセールスがあります。リード創出~営業~クロージングの流れを機能分化する際、多くは次のように分解されますが、その中に登場する役割の一つです。

  • リード創出
  • インサイドセールス
  • フィールドセールス
  • (カスタマーサクセス)

リード創出はWebマーケティングチームが担うことが多く、組織が小さい場合や、ABM(アカウントベースドマネジメント)により少数の大企業を相手にする場合には登場しないケースも多いですが、中小企業向けの営業など、「たくさんのリードを効率的にこなす」にはよく用いられる役割です。

インサイドセールをマーケティングと営業の間に置くことによって、マーケティング(とくにリード創出活動)と営業(フィールドセールス)のつなぎの部分を担うことになります。うまく機能すると間をつなぐ潤滑油になり、組織が機能的に動いていくでしょう。

ただし、機能分化すると逆にマーケティングと営業の距離が離れてしまうため、その結果としてより溝が深くなるケースがありますので注意が必要です。

営業とマーケティングを有機的に連携させよう

以上、営業とマーケティングの連携によって成果を上げるポイントについて説明しました。営業とマーケティングが悪い意味で対立してしまうケースも見られますが、本来はどちらの立場も重要ですし、良い意味での対立(一顧客視点と全社視点と)は企業活動において極めて重要です。

強い組織では、かならず良い意味での対立と、それ以上の連携が見られますので、もし自社の組織が何かうまく連携できていないようであれば参考にして頂けると嬉しいです。