インハウスマーケティングとは?内製化するメリットとデメリット、成功のポイントを解説

マーケティングのDX化に伴い外注していたマーケティング業務を社内で完結させるインハウス化の傾向が強まっています。一方で、マーケティング業務の中にはインハウス化しない方がよいものもあり、拙速な判断は禁物です。この記事では、デジタル領域でのマーケティング業務16年目のプロフェッショナルが、自社のマーケティング業務をインハウス化すべきか悩まれている企業様向けにマーケティングのインハウス化について詳説します。

更新日:2023年11月8日


橋向講師

インハウスマーケティングとは、マーケティング業務を社内で完結させることです。広告代理店や制作会社に外注するのではなく、社内のメンバーだけで内製化してマーケティングを実行します。

「マーケティング業務は制作会社や広告代理店に任せきりになっている」という企業も多いと思います。専門業者に外注していた企業でも、最近ではマーケティング業務をインハウス化していく傾向が見られるようになってきました。ただし、マーケティング業務の中にはインハウス化できない領域や、組織の状況によってインハウス化しない方がいい場合もあります。

本記事では、まずインハウス化できる領域とできない領域について確認します。そのうえで、インハウス化するメリットやデメリットについて解説します。最後までご覧いただくと、組織の状況に応じてインハウス化した方がいいか、しない方がいいのかを適切に判断できるようになります。

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「インハウスマーケティング」とは?

インハウスマーケティングとは、マーケティングの業務を社内のメンバーだけで実行することです。「インハウス(in-house)」は英語で「社内の」「組織内の」を意味します。

これまで外部の専門業者に外注していた状態から、社内だけで完結できるようにすることを「インハウス化」「内製化」ということもあります。また、社内でマーケティングの実行まで行っている担当者を「インハウスマーケター」と呼ぶこともあります。

マーケティング業務にはインハウス化できない領域もある

マーケティングにはインハウス化しやすい領域と、そもそもインハウス化できない領域があります。両者を理解したうえで、どのような業務をインハウス化していくか判断する必要があります。

そもそもインハウス化できない領域

マーケティング施策の中でも特にオフラインの広告は、広告代理店に発注しないと出稿できないことが多くなっています。オフラインの広告は、例えばテレビCM、ラジオCM、新聞広告、雑誌広告、交通広告などです。これらの広告は、広告代理店へ発注する必要があり、インハウス化できない領域となっています。

また、オンラインの広告であっても、有名なWebサイトのトップページ上部に表示される純広告(純広)は、広告代理店(メディアレップ)に発注しないと出稿できないものもあります。純広告として有名なものは、Yahoo! JAPANやYouTubeのトップページ上部に表示される広告枠です。

社内に経験者がいればインハウス化しやすい領域

マーケティング業務の中でインハウス化しやすい領域は、純広告以外のデジタルマーケティング施策です。例えば、次の4つが挙げられます。

  • ・運用型広告
  • ・SEO
  • ・LPO
  • ・EFO

運用型広告

オンラインのWeb広告は、純広告と運用型広告の2種類に分けられます。このうち運用型広告は、広告代理店に依頼しなくても、比較的社内で実行しやすい施策です。社内で広告管理画面を用意し、出稿することができます。広告費も小額から実施できるため、コスト面でもインハウスで実行しやすい施策といえます。

ただし、運用型広告の中でも広告クリエイティブの制作については注意が必要です。リスティング広告はテキストの入力だけで広告クリエイティブが作成できるため、マーケティング担当者だけで出稿できます。一方、画像や動画を用いた広告クリエイティブを配信するためには、これらを制作するWebデザイナーが必要になります。

SEO

SEOは、検索エンジンで検索したユーザーを自社サイトへ誘導しやすくする施策です。Search Engine Optimizationの略で、「検索エンジン最適化」と訳されます。SEOもインハウス化しやすいマーケティング施策のひとつです。

社内にSEO経験者がいれば、SEO施策もインハウスで進めやすくなります。ただし、SEOの施策は幅広く、成果を出すために必要な専門性も高いため、気をつけたいところです。例えば、昔は効果のあった施策が現在は通用しなくなっていることもあります。また、コンテンツを大量に作成することを「SEO」と認識している人もいれば、Webサイトのリンク構造やHTMLの記述をGoogleのアルゴリズムに合わせて修正することを「SEO」と捉える人もいます。どちらもSEO施策の一部にすぎないため、成果や社内のリソースに応じて各施策の優先順位を判断していくのが理想的です。社内に担当者を確保してインハウス化する際は、担当者のスキルセットがSEO全体のどの領域に対応しているのか見極めておくことが重要です。

LPO・EFO

Web広告やSEOで自社サイトへ訪問するユーザー数を増やすことができても、すぐに離脱されてしまうと成果につながりません。そのため、LPOやEFOといった施策が必要になります。

LPOは、自社サイトに訪問したユーザーを、「問い合わせ」や「申し込み」等へ誘導しやすくする施策です。Landing Page Optimizationの略で、「ランディングページ最適化」と訳されます。EFOは、「問い合わせ」や「申し込み」等をしようとしたユーザーを、入力フォーム内で離脱させず、着実に問い合わせや申し込みに繋げる施策です。Entry Form Optimizationの略で、「エントリーフォーム最適化」と訳されます。

LPOもEFOも、どちらも原理原則を理解していればインハウス化しやすい施策です。SEOのように、必要な知識が時期によって変わることもありません。ただ、改善に必要なデータはGoogleアナリティクス(GA4)では確認できないため、専門ツールを使えるようにする必要があります。またLPOについては、ビジネスのポジショニングやコンセプト、広告の訴求ポイントとも関連性が高いため、マーケティングの戦略からオペレーションまで理解できる方が担当すると成果を上げやすい施策です。

その他、マーケティング業務からは少し外れますが、WebデザインやWebサイト制作についても、経験者が社内にいればインハウス化は可能ですし、マーケティング成果の改善スピードを上げることもできるでしょう。

インハウスマーケティングのメリット

インハウスマーケティングのメリットは何でしょうか?ここではメリットについて3つ解説します。

①ナレッジを社内に蓄積しやすい

インハウスでマーケティングを行うと、ナレッジを社内に蓄積しやすくなります。社内のメンバーだけで業務を行うと、仮説、実行内容、結果について細かく把握できるようになります。うまくいった施策は、そのまま次の施策に活かすことができます。うまくいかなかった施策は、ローデータを確認しながら原因を分析し、新たな仮説を立てて次の施策に活かすことができます。施策についての細かい情報を社内で確認しながら実行できるため、成果を改善するための施策の精度も上げやすくなります。

②施策をスピーディーに実行しやすい

インハウスマーケティングでは、自社の商品・サービスについて十分理解しているメンバーだけでマーケティングを実行できるため、施策をスピーディーに実行しやすくなります。また、過去に実施した施策の結果を基に、同じやり方で実行すればいいか、違うやり方を模索しながら実行しなければいけないかについてもスピーディーに判断しやすくなります。

③運用コストの削減につなげやすい

マーケティングをインハウスで行う場合、広告代理店に支払っている広告の運用手数料や、制作会社に支払っているメンテナンス料等が発生しません。インハウス化すると、こうした手数料分のコストを削減できます。

インハウスマーケティングのデメリット

インハウスマーケティングにはデメリットもあります。ここではデメリットについて3つ解説します。

①専門性の高い人材の確保が必要になる

社内でマーケティングを遂行するためには、専門性の高いマーケティングスキルを持った人材を担当者として確保する必要があります。ただ、こうした人材をすぐに確保するのは非常に難しいと思われます。まずは社内のメンバーでマーケティングに関心を持っている人や、デジタル分野に苦手意識のない人に担当をお願いし、インハウス支援が得意な外部の専門業者にサポートしてもらう進め方もあります。

②業界の最新情報を収集するのが難しくなる

社内メンバーだけでマーケティング業務を行っていると、業界の最新情報を迅速に収集することが難しくなります。社内の担当者が少人数で、多岐にわたるマーケティング分野の情報を集めるのは限界があるからです。一方で広告代理店では、それぞれの専門部署に担当者が数十名いる場合もあります。媒体社やツール提供企業と定期的に会議を行っている広告代理店もあります。こうして一般的に広告代理店は、業界内で新たに発表された情報をすぐに確認できる体制が整っているといえます。

そのためマーケティング業務をインハウス化した後も、セカンドオピニオン的に広告代理店やインハウス化支援会社に意見を求めたり、定期的に研修を行ったりしている企業もあります。

③ナレッジが特定の担当者に集中し、業務が属人化してしまう

インハウスマーケティングでは社内にナレッジを蓄積しやすいため、特定の担当者にナレッジが集中するようになります。すると業務が属人化する傾向があり、担当者が退職してしまった場合には、会社のマーケティング活動が滞るリスクもあります。

インハウスマーケティングの成功に必要なポイント

マーケティングを社内でインハウス化することが決まったら、インハウス化を成功させるためのポイントは何でしょうか?ここでは5つ紹介します。

①インハウス化する領域としない領域を判断する

冒頭で述べたとおり、マーケティング業務がすべてインハウス化できるわけではありません。社内のマーケティング業務のうち、インハウス化しやすい業務がどれかを選別しておきます。インハウス化しやすい業務も、すぐにインハウス化できる業務と、徐々にインハウス化を進める業務に分けます。また、専門性の高い担当者をすぐに確保できない場合には、採用活動も踏まえて中長期的にインハウス化を進める必要があります。

②広告代理店や制作会社との連携範囲を見直す

これまで広告代理店や制作会社などの専門業者に外注していても、すぐインハウス化できる業務は、そのままインハウス化を進めることができます。担当者が確保できないなどの問題ですぐインハウス化できない業務については、しばらく広告代理店や制作会社との業務を続けながら、担当者の採用活動を続けていきます。または社内でマーケティング業務に興味のあるメンバーを担当に就けて、インハウス化支援会社の研修を利用し、専門性を高めていくという方法もあります。

③担当者の選任と育成

マーケティング経験者を確保できれば、そのままマーケティング業務をインハウス化していくことができます。経験者を採用する場合には、インハウス化したい業務と、経験者のスキルセットがマッチしているかを十分に確認しておくことが重要です。「マーケティング」といっても領域が広いため、持っているスキルがインハウス化したい業務と食い違うと、当然ながらインハウス化はうまくいきません。

経験者でもインハウス化したいマーケティング業務と専門性が違っていたり、未経験のメンバーに担当をお願いしたりする場合には、必要な業務の専門性を高めていくための育成が重要になります。育成には、インハウス化支援や研修を行っている専門業者にトレーニングしてもらう方法もあります。

④インハウス化を実行

すぐにインハウス化できる業務から社内で業務を完結させていきます。時間をかけて育成する必要があると判断した場合には、専門業者の研修を活用しつつ、徐々に内製化していきます。

一度社内の担当者だけでPDCAサイクルを1~2周分を完結できたら、その業務におけるインハウス化は完了と考えてよいでしょう。あとは必要に応じて定期的にインハウス化支援企業にセカンドオピニオンを求めたりしていくと安心できます。

⑤社内に情報・ナレッジ共有の仕組みを用意しておく

インハウスでマーケティングを遂行していると、情報やナレッジが特定の担当者に集中し、属人化する傾向があります。担当者が急に退職した場合には、会社のマーケティング業務が滞るリスクもあります。

こうしたリスクを回避するために、情報やナレッジは社内でできるだけ共有したり、業務を標準化したりしておくことで代わりのメンバーがすぐに対応できるようにしておくことも重要になります。

まとめ:インハウスマーケティングで成果を伸ばすために

マーケティングには、インハウス化できる領域とインハウス化できない領域があります。インハウス化できる領域でも、社内のリソースによってはすぐにインハウス化できない場合もあります。インハウス化のメリット・デメリットについて確認したうえで、インハウス化することが決まった業務は、担当者を就けて内製化を進めます。必要に応じて、担当者の専門性を高めるための研修を用意することも検討しましょう。

一連の判断を適切に行い、育成まで進めるためには、インハウス化支援や研修を行っている専門業者に依頼するとスムーズです。研修会社には、現場で必要なスキルを選別して研修カリキュラムをカスタマイズしてくれる会社と、あらかじめ用意された汎用コンテンツを提供するだけの会社がありますので、見極めが必要です。

株式会社シナプスでは、マーケティングのインハウス化支援や、現場で必要な業務に合わせてカスタマイズした研修を提供しています。少しでも気になる方は、お気軽にご相談ください。

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この記事のライター


橋向隆広(株式会社アガルート マーケティング統括)

デジタル領域を中心にマーケティング業務16年目。広告代理店と事業会社の両面で、スタートアップから中小企業、ナショナルクライアント、多国籍企業まで幅広くマーケティング業務を行う。多角的なマーケティング手法の中から、ビジネスモデルや事業規模、予算規模に応じて適切な打ち手を組み合わせて考案し、実行までできることが強み。

<略歴>
2008年 株式会社アイレップ入社、SEOグループディレクター
2012年 株式会社CyberZ(サイバーエージェントグループ)入社、運用型広告コンサルタント、動画サービス新規事業立ち上げ参画
2015年 グループエム・ジャパン株式会社(WPPグループ)入社、シニアプランナー、ソーシャルメディアリード
2018年~ 事業会社2社でマーケティング責任者
2022年 株式会社アガルート入社


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