マインドセット研修を任されたものの、当日の中身が決まらないまま日程だけが近づいてはいないでしょうか。
同じ悩みを抱える人事担当者は少なくありません。
マインドセット研修は、社員が判断の前提にしている思考のクセを見直す人材育成にあたります。
目的と内容を先に決めておけば、当日のワークも配布資料も組み立てられます。
■この記事で解決できる悩み
- マインドセット研修とは何か
- マインドセット研修を実施する上でのポイント3つ
- マインドセット研修資料の作り方3つ
企業・社員研修をお探しですか??
- 研修をやったことはあるが、中々効果が現れなかった
- 自社にあった研修を実施したいが見つからない
- 実務で使える研修をして欲しい
目次
マインドセット研修・教育とは?目的5つ

マインドセット研修とマインドセット教育は、仕事への向き合い方と思考のクセを見直す人材育成です。
望ましい行動の前提を揃えるところまでを狙い、目的は次の5つに整理できます。
- 思考のクセに気づき行動の前提を揃える
- 変化に自分から向き合う
- 学び続ける土台をつくる
- 主体性を引き出す
- 管理職のかかわり方を変える
マインドセット研修は学校教育の枠組みではなく、人事・人材開発が担う取組にあたります。
法令上の用語でもないため、名称と範囲は各社が課題に合わせて決めます。
なお、研修と教育はどちらも同じ向き合い方の育成を指す言葉で、別物として切り分ける必要もありません。
ここからは、5つの目的を順に解説します。
思考のクセに気づき行動の前提を揃える
マインドセット研修の1つ目の目的は、判断の前提になっている思考のクセに本人が気づくことです。
そのうえで、チーム全体で前提を揃えるところまでを狙います。
判断の前提は普段は言葉にならず、本人も周囲も気づかないまま固定されていくものです。
例えば、指示されるまで動かない・変化を先送りする・失敗を隠す、といった行動が続く職場があります。
いずれも能力の不足ではありません。
確認せずに動くと叱られる、といった前提が働いた結果です。
前提が人によってばらつくと、同じ指示でも動き方が変わります。
研修で扱うのは、やる気を引き上げる精神論ではありません。
見えにくい前提を言葉にして、チームで揃えるところまでが範囲となります。
自社で実際に起きている場面を題材にすると、受講者は自分の前提に気づきやすくなります。
変化に自分から向き合う
マインドセット研修の2つ目の目的は、やり方や役割が変わったときに自分から向き合う状態をつくることです。
変化そのものを歓迎させる研修ではありません。
止まってしまう場面を具体的に置き、その場で働く判断の前提を扱います。
現場では、新しい手順の導入・業務ツールの入れ替え・顧客要望の変化で手が止まります。
担当者は「今のやり方で足りている」と考え、確認や相談に動きません。
ただし、抵抗そのものを責めても判断の前提は変わりません。
何を心配して止まっているのかを本人が言葉にできれば、次の一手は決まります。
研修では、直近で起きた変更を題材に、止まった理由と動くための条件を書き出してもらう形が有効です。
条件が言葉になっていれば、次に同じような変更が来たときも本人が着手を判断できます。
学び続ける土台をつくる
マインドセット研修の3つ目の目的は、学び続ける前提をつくることです。
スキル研修で得た知識が現場で使われるかどうかは、土台の有無で決まります。
例えば、能力はもう伸びないと思ったままでは、同じ研修を受けても実践が進みません。
受講者は内容を理解しても、失敗を避けて従来のやり方に戻ります。
土台が整っていれば、研修で得た手順を自分の担当業務に当てはめる動きが生まれます。
人事は、学び続ける状態が保てているかを観察できる行動で確かめましょう。
具体的には、分からない点を質問する・自分で調べる・分かったことを共有する、といった行動が指標となります。
行動が出ていない場合は、スキル研修を足す前に土台づくりから設計し直します。
主体性を引き出す
マインドセット研修の4つ目の目的は、指示待ちから自分で課題を見つけて動く状態へ寄せることです。
主体性は性格ではなく、職場で観察できる行動として扱います。
待ちの言動には、確認しない・提案しない・期限だけを守る、といった形があります。
動く側の言動は、先に仮説を出す・困りごとを早めに共有する、といった形で表れるでしょう。
2つを対にして並べると、受講者は自分がどちら側にいるかを判断できます。
なお、主体性が何パーセント上がるといった公式の数値はありません。
数値目標を掲げる代わりに、自社で観察できる行動を3つまで決めておきましょう。
決めた行動を1on1の話題として毎回確認すると、受講後の変化が見えてきます。
管理職のかかわり方を変える
マインドセット研修の5つ目の目的は、部下の挑戦と失敗の扱いを管理職のかかわり方から変えることです。
部下の行動は、上司の返し方に強く影響されます。
失敗を能力不足として切り捨てる返しが続くと、部下は挑戦そのものを止めます。
残るのは、報告の遅れと、確認できる範囲での安全な選択だけです。
一方、一般社員向けの講義だけでは上司の声かけが以前のまま残ります。
受講直後に行動が変わっても、数週間で元の対応に戻りがちです。
管理職には、失敗の受け止め方と次につなげる問いかけを練習してもらいます。
題材には職場で実際に出た一言を使い、練習の効果を現場に残しましょう。
マインドセット研修の内容5つ
マインドセット研修の内容は、思考のクセの可視化から研修後の実践計画まで5つで構成します。
当日の流れは次の順に組み立てましょう。
- 自らの思考のクセを可視化する
- 成長マインドセットの講義と対話
- 失敗とフィードバックのワーク
- 現場のケースで次の行動を決める
- 研修後の実践計画
知識の講義だけで終わらせると、受講者の行動は変わりません。
自社の場面で気づきを得て、次の行動を決めるところまで進める構成にします。
講義と対話の枠では、伸ばせると捉える考え方を自社の行動に翻訳しましょう。
5つの内容を、当日の流れに沿って解説します。
自らの思考のクセを可視化する
マインドセット研修では、他社事例の紹介ではなく受講者自身の判断の前提を見るところから始めます。
他社の成功談から入ると、受講者は自分の話として受け取りません。
変化・失敗・評価の3つの場面を示し、自分ならどう考えるかを受講者に書いてもらいます。
書く作業を挟むと、普段は意識していない前提が言葉となります。
思考のクセを点数化する公式の規格はありません。
点数の代わりに、自社で観察できる言動を並べて現状を置きましょう。
判断を先送りする・ミスを隠す・自己弁護から入る、といった言動が手がかりになります。
書いた内容は個人が特定されない形で共有し、チームの傾向として扱います。
成長マインドセットの講義と対話
マインドセット研修では、成長と固定の対比を講義したうえで自社の言葉に翻訳する対話を組み込みます。
講義は対比の説明にとどめ、残りの時間を対話に充てます。
定義を暗記させても、翌日の仕事の進め方は変わりません。
一方、受講者が自分の担当業務に当てはめて初めて、判断の前提が動きます。
対話では、自社で求める挑戦・学習・声かけを観察できる行動に言い換えます。
挑戦を求めるなら、前例のない提案を会議に出すといった動作まで落とし込みましょう。
言い換えた行動は、部署ごとに違って構いません。
対話の時間は、そのまま自部署の行動基準づくりになります。
失敗とフィードバックのワーク
マインドセット研修では、失敗の共有と返し方の練習に時間を充てます。
失敗を扱う型が決まっていない職場ほど、報告は遅れます。
ワークでは、事実・解釈・次の行動の3つを分けて書く手順を使いましょう。
3つを分けると、原因探しが人の評価に流れません。
ロールプレイは1回を短く区切り、回数を重ねます。
また、題材には自社でありがちな一言を使います。
「向いてない」「前も同じ」といった返しと、代わりに使える返しを対で置きましょう。
対で置くと、受講者は翌日から使う言葉をひとつ選んで持ち帰れます。
現場のケースで次の行動を決める
マインドセット研修では、抽象論ではなく自部署のケースを題材にして次の行動を決めます。
題材が自分の担当から離れるほど、決めた行動は研修後に実行されにくくなります。
自部署で起きていない場面では、いつ・誰に対して試すのかが決まらないためです。
進行中の案件・定例会議・顧客対応の3つから、受講者にひとつ選んでもらいましょう。
選んだ場面で、止まっている判断と変えられる行動を書き出します。
ケースは個人が特定されない形に整えてから共有します。
特定できる形のまま扱うと、受講者は率直な例を出しません。
あわせて、他社の成功談を視聴するだけの構成は避けます。
視聴で終わると、自社の制約に合わせた行動まで届かないためです。
研修後の実践計画
マインドセット研修は当日で完結させず、翌週以降に試す行動と振り返りの日を決めて終わります。
計画まで書いて初めて、研修は現場の行動につながります。
試す行動は、複数を並べるとどれも中途半端なまま終わるため、1人ひとつまでに絞りましょう。
計画用紙には、上司と共有する欄をひとつ置きます。
上司が内容を知っていれば、実行を後押しする声かけも生まれるでしょう。
なお、実践期間の長さに公式の規格はありません。
自社の1on1や会議のサイクルに合わせ、次の定例までを目安にする形が扱いやすくなります。
マインドセット研修で扱うグロースマインドセットとは?
マインドセット研修で扱うグロースマインドセットは、能力は固定ではなく伸ばせると捉える考え方です。
研修では次の4つの側面から扱います。
- 能力は伸ばせると捉える(成長マインドセット)
- 失敗を学習材料として扱う
- フィードバックを成長の手がかりにする
- 他者の成功から学ぶ
グロースマインドセットは、独立した別研修の名称ではなく、マインドセット研修の講義と対話の枠で扱う考え方にあたります。
成長マインドセットとグロースマインドセットは同じ概念を指します。
しなやかマインドセット・硬直マインドセットは書籍での訳語にすぎません。
社内資料の用語を成長と固定に揃えておけば、受講者は混乱しません。
概念を提唱したのは、スタンフォード大学心理学部のキャロル・S・ドゥエック教授です。
同大学のStanford Teaching Commonsは、2つの用語を次のように定義しています。
「Growth mindset, simply stated, is a learner’s belief that their intelligence can expand and develop.」
「In contrast, fixed mindset is a learner’s belief that their intelligence is a fixed, immutable trait.」
※引用:「Growth Mindset and Enhanced Learning」Stanford Teaching Commons
知能は伸ばせると捉えるのが成長、変わらない特性だと捉えるのが固定です。
どちらか一方の人間に分かれるのではなく、誰もが場面によって両方を持ちます。
なお、学校場面の介入研究で報告された成績の向上は、企業研修の効果を示す公式値ではありません。
4つの側面を1つずつ見ていきます。
能力は伸ばせると捉える(成長マインドセット)
マインドセット研修で扱う成長マインドセットは、知能や能力を努力・戦略・他者の助けで伸ばせると捉える考え方です。
対になる固定マインドセットは、知能や能力を変わらない特性だと捉えます。
キャロル・S・ドゥエック教授は、成長の側を次のように説明しています。
「This growth mindset is based on the belief that your basic qualities are things you can cultivate through your efforts, your strategies, and help from others.」
※引用:「Mindset: The New Psychology of Success」キャロル・S・ドゥエック著(抜粋・Stanford Distinguished Careers Institute 掲載)
伸ばせると捉えることは、誰もが同じ速さで同じ結果に届くという意味ではありません。
固定の側は、職場では自分の有能さを証明しようとする動きとして表れます。
例えば、会議で自分の担当範囲だけを報告する・経験のある案件だけを引き受ける、といった選び方が典型です。
ほかにも、失敗を能力不足のしるしと読む・難しい役割を避ける、といった形で出ます。
固定の側に寄ること自体は、悪い性格を示すラベルではありません。
難しい仕事を任されたときや役割が変わったときに、誰もが一時的に寄ります。
そして、場面ごとにどちらへ寄りやすいかを本人が把握するところまで進めましょう。
失敗を学習材料として扱う
マインドセット研修では、失敗を能力不足の証明ではなく次の打ち手の材料として扱います。
扱い方が変われば、報告の速さと改善の質も変わります。
振り返りは、何が起きたか・次に変える行動、の順で進めましょう。
順序を固定すると、犯人探しに時間を使いません。
失敗の共有が何パーセント増えるといった公式の数値はありません。
数値を掲げるよりも、既存の場に載せられる粒度に整える方が続きます。
例えば、週次のミス共有や定例会議の終わり5分への組み込みが現実的です。
新しい場を設けずに済む分、運用は続けやすくなります。
フィードバックを成長の手がかりにする
マインドセット研修では、フィードバックを評価への攻撃ではなく伸ばす手がかりとして受け取る練習をします。
受け取り方が変われば、指摘の頻度そのものが増えます。
返す側も、相手が防御的にならないと分かれば具体的な指摘を出しやすくなるためです。
返す側は、努力したことだけをほめて終わらせません。
努力は学習の第一歩にすぎず、戦略と具体の指摘がなければ次の行動は決まらないためです。
ほめ言葉の公式な文例は存在しません。
自社の1on1でそのまま使える返しを、研修中にひとつ決めておきましょう。
例えば、「どの手順を変えたら結果が動きそうか」といった問いは多くの職場で使えます。
決めた返しを管理職が共通で使うと、部下の受け取り方も揃っていきます。
他者の成功から学ぶ
マインドセット研修では、他者の成功を脅威ではなく学びの材料として扱います。
同僚の成果を自分の不足の証明として読むと、学習の機会を逃します。
比較が続く職場では、情報共有そのものが進みません。
成果を出した同僚がいれば、何を真似るかを言葉にするところから始めましょう。
準備の順番・顧客への確認の仕方・資料の組み立て方は、要素として分解できます。
そのうえで、自社の制約に合わせてどこを変えるかまで決めます。
人員や予算の条件が違えば、同じ手順がそのまま使えるとは限りません。
真似る要素と変える要素を分けて書き出す作業を、研修のワークに組み込みます。
マインドセット研修を実施する上でのポイント3つ
マインドセット研修を実施する上では、求める考え方を先に定義し、環境が変わるタイミングで実施します。
当日は講義より気づきのワークを厚く取り、企画で押さえる点は次の3つです。
- 求める考え方を先に定義する
- 環境が変わるタイミングで実施する
- 講義より気づきのワークを厚くする
3つは、定義・実施時期・ワークの配分の順で決めていきます。
定義が決まらないまま日程を押さえると、当日の内容が精神論に寄ります。
順番を守れば、講師への依頼内容も具体的に書けるでしょう。
3つのポイントを、決める順に説明します。
求める考え方を先に定義する
マインドセット研修の企画では、自社で求める思考と行動を研修の前に言語化します。
定義が先にあると、講師選定も当日のワークも判断しやすくなります。
求める要素は、必須・持っていてほしい・不要の3つに分けて優先を決めましょう。
すべてを必須に置くと、半日の研修では扱い切れません。
主体性・変化対応・顧客志向といった言葉は、単語のままにしません。
観察できる行動まで落とし込むと、受講後の変化を確かめられます。
例えば顧客志向なら、訪問前に相手の直近の変化をひとつ調べる動作まで書きます。
定義がないまま当日を迎えると、内容は心構えの話から抜け出せません。
環境が変わるタイミングで実施する
マインドセット研修は、入社直後・昇進前・役割や仕事の進め方が変わる前に実施します。
学んだ向き合い方を、新しい環境ですぐ使ってもらうためです。
環境が変わる時期ほど、判断の前提は揺れやすくなるでしょう。
従来のやり方が通じない場面が増え、受講者は内容を自分の課題として受け取ります。
一方、閑散期の年1回にまとめて実施する形だけでは効果が薄まります。
受講から実践までの間隔が空くと、研修で決めた行動は残りません。
実施時期に公式の規格はありません。
自社の異動・配属のサイクルを先に並べ、前月にあたる週へ日程を置きましょう。
講義より気づきのワークを厚くする
マインドセット研修の当日は、知識のインプットより本人が気づく時間を厚く取ります。
自己評価・対話・ケース検討の3つには、講義より長い時間を充てましょう。
変わりたいと本人が思わない限り、行動は動きません。
講義の時間を増やしても、理解した状態で止まります。
厚くする枠は、研修の目的に合わせて選びましょう。
特に、自分の前提に気づかせたい場合は体感ワークを長めに取ります。
部署の課題を動かしたいなら自社課題の議論、翌週の実践を確実にしたいなら計画づくりを厚くします。
配分を先に決めておけば、当日に講義が延びて計画づくりが削られる事態も起きません。
新入社員から管理職までのマインドセット研修の例5つ
マインドセット研修の例は、新入社員の意識転換から変化対応まで5つに整理できます。
代表的な実施例は次のとおりです。
- 新入社員の意識転換
- 中堅社員のキャリア自律
- 管理職の育成のかかわり方
- 営業の顧客志向
- DXなど変化対応
階層と職種が変われば、求める向き合い方も変わります。
新入社員に必要な切り替えと、管理職に必要なかかわり方は同じではありません。
対象を混ぜて1回で済ませると、どちらにも当てはまりません。
5つの例を、対象別に紹介します。
新入社員の意識転換
新入社員向けのマインドセット研修は、働く目的・指示待ちからの転換・失敗の受け止めに絞って組み立てます。
学生から社会人への切り替えでつまずく場面を、そのまま題材にします。
よくあるのは、分からない点を確認しないまま作業を進める場面です。
上司からの注意を人格の否定として読み、報告そのものを避ける例も少なくありません。
研修では、確認しても評価は下がらないと分かる形で伝えます。
実施時期は入社直後に置き、知識付与型のビジネスマナー研修とは分けましょう。
マナーと向き合い方を同じ回に詰め込むと、どちらも覚えるだけで終わります。
特に、向き合い方を先に扱えば、その後のマナー研修も自分の課題として受け取られます。
中堅社員のキャリア自律
中堅社員向けのマインドセット研修は、次の役割に向けて自分で学ぶ向き合い方に焦点を当てます。
同じ仕事の繰り返しで積極性が落ちた時期が、実施の適期です。
現場では、業務に慣れてマンネリを感じる場面が増えるでしょう。
新人時代に解消したはずの指示待ちが再発する例も見られます。
昇進の打診に対して、自分には務まらないと遠慮する場面も起きます。
研修では、遠慮の背景にある判断の前提を扱いましょう。
さらに、より高い目標の設定やリーダー候補向けの学習機会とセットで設計します。
学ぶ機会が用意されていなければ、向き合い方の変化は次の行動につながりません。
管理職の育成のかかわり方
管理職向けのマインドセット研修は、結果だけでなく育成のプロセスを見るかかわり方に焦点を当てます。
部下の挑戦を止めるかどうかは、上司の日常の返し方で決まります。
ミスの責任を部下だけに置く対応では、報告は早くなりません。
自分のやり方を押し通す指導も、部下の工夫を止めます。
研修では、承認の言葉・改善の返し・失敗の扱いを1on1の一言まで落とし込みましょう。
抽象的な指導論のままでは、翌日の面談は変わりません。
さらに、実際に使った一言を持ち寄り、代わりの返しを考える形が有効です。
管理職同士で言葉を共有すると、部署ごとのばらつきも小さくなります。
営業の顧客志向
営業向けのマインドセット研修は、失注やクレームを顧客の課題の捉え直しにつなげます。
数字が落ちた時期ほど、判断の前提は固定の側に寄ります。
現場では、確実に決まる案件だけを追い、新規の提案に手を出しません。
市場環境や価格を理由に挙げて、振り返りが終わる場面も起きます。
研修では、失注した案件を1件選び、顧客が何を優先していたかを書き直しましょう。
書き直した内容から、次の仮説と確認行動まで決めます。
次に、次回訪問で確かめる質問をひとつ用意する粒度まで落とし込みましょう。
行動が決まっていれば、上司も同行時に何を見ればよいかが分かります。
DXなど変化対応
変化対応をテーマにしたマインドセット研修は、新しいやり方やツールに対する現状維持の止まり方を扱います。
止まり方を具体的に置かないと、議論は必要性の確認だけで終わります。
現場では、自分の担当には関係ないと判断して情報を追いません。
今のやり方で足りていると考え、新しい手順の習得を後回しにする例も見られます。
なお、経済産業省のDXレポートで示された「2025年の崖」は、情報システムの老朽化をめぐる議論です。
※参考:「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」経済産業省
研修の効果を示す公式値ではないため、根拠として引く使い方は避けます。
題材には、自社で止まっている業務と顧客対応の場面を選びましょう。
手作業のまま残っている集計や、紙でのやり取りが続く手続きが扱いやすい題材となります。
マインドセット研修資料の作り方3つ
マインドセット研修の資料は、目的とゴールを1枚に書き、自社の行動例とNG思考を入れ、ワークの手順と時間配分まで書いて作ります。
作成の手順は次の3つです。
- 目的とゴールを1枚に書く
- 自社の行動例とNG思考を入れる
- ワークの手順と時間配分を書く
配布資料は、スライドの全文コピーにしません。
当日に見るスライドと、現場に持ち帰るメモでは必要な情報が違うためです。
持ち帰る側には、自社の行動例と決めた計画を残します。
3つの手順を、資料の並び順に解説します。
目的とゴールを1枚に書く
マインドセット研修資料の1枚目には、何のために実施し、何ができるようになればよいかを書きます。
冒頭で目的が共有されていないと、受講者はワークの意図をつかめません。
同じ1枚に、対象階層・所要時間・事後に見る行動も並べます。
3つが揃っていれば、受講者は自分に何が期待されているかを判断できます。
事後に見る行動は、研修の翌週から観察できる粒度で書きましょう。
会議で1回は自分の意見を出す、といった形にすると上司も確認しやすくなります。
目的の記述は、精神論ではなく職場の課題から始めましょう。
会議で意見が出ない状態を変えると書けば、当日のワークの方向も定まります。
自社の行動例とNG思考を入れる
マインドセット研修資料には、自社でありがちなNG思考と望ましい次の行動を入れます。
一般論の例だけでは、受講者は自分の職場と結びつけられません。
例を書くときは、実在の個人名を出さず場面で記述します。
個人が特定できる形にすると、受講者は率直な議論を避けます。
NG思考の例は、失敗を隠す・「向いてない」で切る・変化を先送りする、と中黒で並べましょう。
並べた各項目には、代わりに取る行動をひとつずつ添えます。
そして、書籍や他社の事例を借りる場合も、主役は自社の場面から動かしません。
自社の場面が中心にあれば、資料は研修後も現場で参照されます。
ワークの手順と時間配分を書く
マインドセット研修資料には、ワークの手順・所要時間・役割を書きます。
手順が書かれていれば、講師が代わっても同じ進行を再現できます。
進行は、個人記入・ペア・全体共有の順で並べましょう。
順番を明示すると、いきなり全体発表を求める進行になりません。
各グループのファシリテーター役・記録役も資料に明示しましょう。
役割が決まっていないグループでは、沈黙のまま時間が過ぎます。
役割の欄に氏名を書き込める形にしておけば、当日の割り振りをすぐ決められます。
あわせて、時間は分単位で書き、合計が当日の枠に収まるかを確認しましょう。
公式の必須配分はないため、半日なら講義とワークの比を先に決めておきましょう。
マインドセット研修を成果につなげるポイント5選
マインドセット研修を成果につなげるには、スキル研修の前に置き、管理職から先に受けます。
さらに、育成計画への位置づけ・評価の見直し・社内と外部の使い分けまで含めた5つが要点です。
- スキル研修の前に置く
- 管理職から先に受ける
- 育成計画に位置づけて継続する
- 上司の声かけと評価を揃える
- 社内実施と外部を使い分ける
当日の設計だけでは、現場の行動は変わりません。
スキル研修との前後・受講対象の順・研修後の声かけまで含めて設計します。
成果は理解度テストではなく、現場の行動で確かめましょう。
5つのポイントを、実施の前後に分けて説明します。
スキル研修の前に置く
マインドセット研修は、知識・スキルの研修より先に置いて向き合い方の前提を揃えます。
前提が揃っていない状態では、スキル研修の内容が現場で使われません。
能力は伸びないと思ったままの受講者は、学んだ手順を試さずに終わります。
失敗する可能性のある新しい手順より、慣れたやり方を選ぶためです。
入社時と昇進時は、向き合い方を先に、業務知識を後に置きましょう。
年間計画を作る段階で順番を決めておくと、後からの入れ替えも起きません。
既存のスキル研修がある場合は、その直前の回に組み込みましょう。
間隔が近ければ、前提を揃えた状態のままスキル研修に入れます。
管理職から先に受ける
マインドセット研修は、メンバーより先に管理職が受け、かかわり方を変えてからチームへ広げます。
順番を逆にすると、研修の効果は短期間で失われます。
部下だけが挑戦を求められ、上司の返しが変わらない状態では行動は定着しません。
挑戦した部下が以前と同じ叱責を受ければ、次からは安全な選択に戻ります。
人数が限られる組織では、リーダー層だけを対象に始めましょう。
人数が取れる組織なら、管理職と一般社員で回を分けて実施します。
このように、回を分けると管理職は率直に自分の返し方を振り返れます。
部下が同席する場では、扱いにくい事例が出ません。
育成計画に位置づけて継続する
マインドセット研修は半日の講義で完結させず、声かけと振り返りまで続けます。
継続の仕組みがなければ、決めた行動は数週間で元に戻ります。
年間の育成計画には、実施回とフォローの回をあらかじめ載せましょう。
計画に載っていない回は、繁忙期に真っ先に削られます。
半年後と1年後には、同じ対象へ短い振り返りの回を置きましょう。
振り返りは短い枠でも成り立ち、決めた行動の継続状況を確かめられます。
なお、実施回数に公式の規格はありません。
自社の評価サイクルと人事イベントに合わせ、面談月の前に置く形が扱いやすくなります。
上司の声かけと評価を揃える
マインドセット研修で扱った挑戦と学習は、上司の声かけと評価の見方まで揃えます。
評価の基準が変わらなければ、受講者は従来の行動を選び続けます。
失敗を減点だけで扱う運用では、判断の前提は固定の側から動きません。
挑戦した結果の失敗と、準備不足による失敗は分けて扱いましょう。
1on1で聞く問いと、評価で見るプロセスは同じ言葉で書きます。
仮説を立てたか・早めに共有したか・次の打ち手を決めたか、の3点が扱いやすい項目です。
同じ言葉で揃えれば、部下は何を見られているかを把握できます。
評価シートの文言まで手を入れておけば、運用は年度をまたいでも保てます。
社内実施と外部を使い分ける
マインドセット研修は、自社のファシリテーターで回す範囲と外部講師に頼む範囲を目的と人数で分けます。
どちらか一方に寄せると、費用か具体性のどちらかを失います。
少人数のケース対話は、現場の事情を知らない講師には任せられません。
初回の共通言語化や管理職のかかわり方は、外部講師に任せる方が率直な指摘が出ます。
外部に依頼する場合、助成金を検討できるかは訓練の内容しだいです。
厚生労働省は、人材開発支援助成金を次のように説明しています。
「人材開発支援助成金は、事業主等が雇用する労働者に対して、職務に関連した専門的な知識及び技能を習得させるための職業訓練等を計画に沿って実施した場合等に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。」
※引用:「人材開発支援助成金」厚生労働省
ただし厚生労働省は、知識・技能の習得を目的としない意識改革研修・モラール向上研修を助成の対象外として例示しています。
※出典:「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内」(令和8年度版・令和8年8月3日版)厚生労働省
マインドセット研修を外部に依頼する場合は、知識・技能の習得にあたる内容が含まれるかを窓口で確認しましょう。
また、助成の対象は訓練経費の一部であり、訓練経費が無料になる制度ではありません。
コース名と支給要件は改定されるため、申請前に最新の案内を確認します。
そして、研修会社の案内にある助成率の上限が自社にそのまま当てはまるとは限りません。
マインドセット研修に関するよくある質問
マインドセット研修については、法令上の位置づけ・オンライン実施の可否・効果の測り方に関する質問が多く寄せられます。
3つの質問に順に回答します。
マインドセット研修は法令で必須か
マインドセット研修という名称の実施を義務づけた法令はありません。
法令で義務づけられている教育の代表例は、労働安全衛生法にもとづく安全衛生教育です。
同法第五十九条第一項と第二項は次のように定めています。
「事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。」
「前項の規定は、労働者の作業内容を変更したときについて準用する。」
※引用:「労働安全衛生法」e-Gov法令検索
厚生労働省は、対象の範囲を次のように示しています。
「業種・職種・雇用形態などにかかわらず、事業者は、労働者を新たに雇い入れたり、その作業内容を変更したときは、遅滞なく、安全衛生教育を実施しなければなりません」
※引用:「労働安全衛生関係の免許・資格・技能講習・特別教育など」厚生労働省
つまり、マインドセット研修は安全衛生教育の別名ではありません。
計画的な人材育成の一環として、任意で位置づける取組にあたります。
オンラインでも実施できるか
マインドセット研修は、知識の共有と短いペアワークであればオンラインでも実施できます。
自己評価と対話を扱う場合は、ブレイクアウトルームの設計が前提となります。
人数・時間・戻る合図を決めずに部屋を分けると、受講者から発言が出ません。
特に、拠点が分かれている企業では講義をオンライン、ケースの合意を対面とする分け方が向いています。
オンラインと対面のどちらが効果が高いかを示す公式の比較はありません。
自社の人数と拠点の条件で選ぶ判断が現実的です。
初回だけ対面で実施し、2回目以降をオンラインに切り替える運用も選べます。
効果はどう測るか
マインドセット研修の効果を測る公式の必須指標はありません。
自社で観察できる項目を3つまでに絞り、定点で見る方法が扱いやすくなります。
項目には、挑戦した回数・失敗の当日共有・学びを続ける行動を置きましょう。
3つを超えると、記録の手間が増えて定点観測そのものが止まります。
いずれも会議と1on1の記録から確認できます。
なお、学校での介入研究が示した成績の伸びは、企業研修の成果を保証する数値ではありません。
定点の間隔は四半期など、自社の評価サイクルに合わせて決めましょう。
まとめ
マインドセット研修は、思考のクセを見直して望ましい行動の前提を揃える取組です。
企画では求める考え方を先に定義し、環境が変わるタイミングで実施します。
あわせて、当日は講義より気づきのワークを厚く取りましょう。
資料は、目的とゴール・自社の行動例とNG思考・ワークの手順と時間配分の3点で組み立てます。
当日で終わらせず、管理職から先に受けて育成計画に位置づければ、現場の行動として残ります。
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