あなたは、パンフレット、提案書など、複数の営業資料を利用シーンごとに適切に使い分けられていますか?」

一口に「営業資料」と言っても、簡単なA4パンフレットから、分厚い提案書、まで様々です。それぞれの営業資料には、利用シーンごとに、適切な営業資料の作り方・使い方があります。例えば、すばらしい営業資料でも、初回訪問で100ページの企画書を説明すれば、顧客はついていけないでしょう。

今回は、数百種類の営業資料作成をしてきたスタッフが、「あなたは使い分けできてる?利用シーン別営業資料の作り方のコツ」として営業資料の作り方、および適切な使い方について解説します。

1.営業資料の作り方 ①態度変容モデルで目的・利用シーンを整理

1-1.態度変容モデルで営業資料の位置づけを考える

営業資料を作るときは、利用シーンごとに適切な営業資料を作ることが重要です。ここでは、利用シーンを具体的にイメージして整理するため「態度変容モデル」を使います。

態度変容モデル例として、AIDMAモデルで考えてみましょう。AIDMAとは、Attention(注意),Interest(関心),Desire(欲求),Memory(記憶),Action(行動)の頭文字を取ったものです。


顧客がまた商品を認知しておらず、注意を惹きたいとき(Attention)と、ほしいと思わせるとき(Desire)、購入を促すとき(Action)は、営業プロセスが異なるため、必要な行動も異なります。必然的に、営業資料の作り方・使い方も変わります。

1-2.AIDMAモデルに合わせた営業資料整理例


AIDMA 営業資料の目的・種類・利用シーン
Attention(注意)
  • 目的:まず、商品・企業を知ってもらう
  •          
  • 資料例:自社WEBサイト、展示会
  • 利用シーン:名前を知ってもらう。または、メールアドレス・名刺などの情報を集める
Interest(関心)
  • 目的:興味を持ってもらう。訪問機会をもらう
  •          
  • 資料例:会社パンフレット、商品パンフレット
  • 利用シーン:展示会、初対面など、短い時間でポイントだけ説明する。何に興味があるか探る
Desire(欲求)
  • 目的:このような商品があったらよいなと思ってもらう。もっと検討したいと思わせる
  •          
  • 資料例:パンフレット、提案書
  • 利用シーン:営業初回訪問。商品がどんなものかを理解してもらい、顧客の関心事を知る
Memory(記憶)
  • 目的:具体的に、「他の商品ではなく、この商品が欲しい」と思ってもらう。商品の特徴や導入メリットを理解してもらう
  •          
  • 資料例:個別提案書
  • 利用シーン:商談化後の訪問。顧客担当者、または関係者に資料をプレゼンし、質疑応答する
Action(行動)
  • 目的:購買行動を起こさせる。法人顧客なら、担当者が稟議書を通すためのサポートをする。
  •          
  • 資料例:個別提案書、見積書
  • 利用シーン:担当者レベルで導入したいと思ってもらい、顧客社内を購買に向けて動かす

2.営業資料の作り方 ②種類別作成ポイント

2-1.パンフレットの作り方

パンフレットの目的は、「顧客に興味を持ってもらう。商談機会をもらうこと」です。

パンフレットは、短時間で自社または自社商品に興味を持ってもらう、印象に残ることが目標です。そのため、簡潔な言葉で、特徴や商品の顧客メリットを示すことが必要です。印象に残るキャッチコピーがあるとよいでしょう。

また、パンフレットは「顧客社内で回覧される可能性がある」ことを意識して作成します。つまり、説明者がいないと内容が伝わらない資料はNGです。「資料が社内を一人歩きする」ことが理想です。

2-2.提案書の作り方

提案書の目的は「顧客に、このような商品があったらよいなと思ってもらう。もっと検討したいと思わせること」です。なお、一口に提案書といっても、営業全員が使う標準提案書と個社別にカスタマイズした個別提案書があります。ここでは、前者の標準提案書をイメージしてください。

提案書の基本はわかりやすいこと

提案書の作り方の目標としては、「まずは、わかりやすいこと」が第一です。もちろん、印象に残るメッセージなども重要ですが、まずは相手に理解されなくては、その先はありません。

「わかりやすい提案書の基本はストーリーがわかりやすいこと」です。提案書を一読しただけで、相手の頭にスッと入ってくるストーリーを作りましょう。なお、印象を残すためか、色使いやアニメーション機能などを多用したプレゼンテーションを多く見かけますが、「過度な演出で、逆にわかりにくくなっていないか?」はチェックしましょう。

なお、提案書のストーリーの作り方は、コラム『刺さる営業提案書の書き方-コンセプトから楽に営業企画書を作るコツ』をご覧ください。

2-3.個別提案書

個別提案書の目的は、「購買行動を起こさせる。法人顧客なら、担当者が稟議書を通すためのサポートをすること」です。標準提案書のみで商談が進むこともありますが、「顧客企業にとって新規性のある提案」「高価格な商品・サービス」の場合などは、顧客社内を動かすための工夫が必要になります。

個別提案書のゴールは、キーマンを納得させること

個別提案書のゴールは、顧客企業のキーマンを納得させることです。そのためには「顧客企業の導入メリットが明確なこと」が必要です。

標準提案書でも、一般的な顧客ベネフィットは記載されていたかもしれません。しかし、個社の事情に合ったベネフィットを表現し、顧客メリットがより明確に伝わることが必要です。稟議では資料だけをみてチェックする方もいます。個別提案書だけをみて「確かに導入メリットがあると」キーマンを納得させるだけのロジックが必要です。

3.営業資料の作り方 ③受注率を高める上級テクニック

3-1. 顧客態度変容のBefore/Afterをイメージ

各営業資料の目的は、態度変容モデルのステップを次の段階に進ませることです。資料提示に当たって「顧客は、事前はどんな状態で、資料をみたあと、どのような状態になってほしいか(Before/After)」をできるだけ具体的にイメージしましょう。

提案書のBefore/After例

  • Before:自社商品を欲しいと思い始めている。しかし、まだ候補の1つで他社比較をしたい。また、比較をするための適切な情報が欲しい
  • After:資料によって、比較すべき商品の基準、メリット・デメリットが整理されている。そして、顧客にとって最適な商品が何かわかる

3-2. 個別提案書ではリスクポイントを事前に潰しておく

本質的には、企業の顧客ベネフィットが明確であれば、稟議は通るはずです。しかし、営業最終段階での稟議は、「意思決定関与者の自己保存欲求によるリスク回避志向が高い」ことを理解しておきましょう。

「この提案にストップをかけうるキーマンは誰か?」「その人がリスクと感じるポイントは何か?」を探り、予めリスク・デメリットを潰しておきます。

まとめ

営業・マーケティングは顧客理解から始まります。適切に顧客状況を理解し、タイミングにあった最適な営業資料を用意しましょう。

営業スキルコラムまとめ


営業ヒアリングスキル


営業提案力


営業資料の作り方を学ぶ企業研修

「ロジカルプレゼンテーション研修」自社課題テーマで提案書作成

「ロジカルプレゼンテーション研修」では、自社課題のリアルなプレゼン研修テーマで、プレゼンテーション作成の4ステップを実践します。

ロジカルプレゼンテーション研修では、付箋やA4用紙など紙を使った手書き紙芝居形式で、プレゼンテーション構成作成ワークを行います。あえてPCを使わないことで、刺さる提案コンセプト・説得力ある提案ストーリーを持ったプレゼン資料構成作業に集中できます。

研修プログラムの詳細は『 「ロジカルプレゼンテーション研修」自社課題テーマで提案書作成 』をご覧ください。

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「BtoB営業資料の定番『導入事例』の効果を知っていますか?」
「導入事例の書き方がわかりますか?」

BtoB実務家の間で、最も効果的とされる営業資料が「導入事例」です。BtoBでは、なぜ導入事例が効果的なのか。そして、実際の導入事例の刺さる書き方を伝授します。

新規事業企画やコンサルタントとして、20年間合計100種類以上のBtoB営業資料を作ってきました。また、導入事例をコンセプト作成から取材・記事ライティングまで、自前作成しているスタッフが、営業資料としての導入事例の書き方・使い方のコツを公開します。


BtoB営業資料の中でも導入事例が刺さる3つの理由


営業資料として、導入事例はBtoCのプロモーションでも利用されています。しかし、BtoB営業資料として最も効果を発揮するとされるのが導入事例です。

BtoB営業では試用が難しいため導入事例で代替

BtoB営業では、消費財のように気軽に顧客にトライアルさせることが難しいことが多いです。

そこで有効なBtoB営業資料が、導入事例です。よい導入事例は、製品トライアルと同等か、それ以上の効果があります。

消費財であれば、例えば、清涼飲料・化粧品など、気軽にトライアルできる商品が多いでしょう。一方、BtoB企業は、組織が複雑なため、本番環境でのトライアルが難しいことが多いです。デモ環境で機能確認程度はできますが、本番環境で実際に使ってみるのは、リスクが大きくいやがられるものです。

なお、ITサービスでは、「期間限定無料トライアル」が、よくおこなわれます。しかし、BtoB企業では、実際の本番環境でトライアルできることはまれです。そのためIT業界でも、導入事例は有効です。

BtoB顧客は同業他社の導入事例に関心がある

BtoB営業の法人顧客は、他の顧客の動向、同業他社を気にする担当者が多いです。特に、業界トップ企業など、ベンチマークとなる同業他社が、どんな製品をどのように使っているかは、興味を持っています。

顧客企業にぴったり合った導入事例を示せれば、顧客担当者は身を乗り出して質問をしてきます。

BtoB営業では導入事例がEvidenceとなりリスク回避志向低減

BtoB営業の特徴の一つとして、購買意思決定プロセスが組織的になり、DMU(Decision Making Unit:意思決定関与者)が複雑であることがあげられます。DMUの複雑性にともない、BtoB営業では、「独特のリスク回避志向」「製品切り替えへのプレッシャー」が働きます。

新製品の導入検討時に、社内承認過程で必ずチェックされるのが導入実績・導入事例です。新製品を導入して失敗した場合、導入を主導した担当者は必ず叩かれます。この組織的リスク回避志向に対抗できるBtoB営業資料が導入事例です。

BtoB営業では、特に顧客と業界が同じでベンチマークとするトップ企業・有名企業の導入実績があると、強力なEvidenceとなり、社内承認が通りやすくなります。

BtoB営業資料導入事例の書き方:書く前の準備

FABE分析とは:コンセプト作成基本フレームワーク

効果的導入事例を作るのに使える基本フレームワークが、FABE分析です。

  • Feature (特徴):本提案の特徴、概要説明
  • Advantage (優位性):優位性
  • Benefit (顧客便益):顧客の得られるメリット
  • Evidence(証拠):提案を裏付けるデータ、実績等
マーケティング用語集:FABE分析

FABE分析のEvidenceは顧客の納得感を高める

FABE分析の、FABまでをしっかり描けば、特徴、競合優位性、自社にとってのベネフィットを顧客に理解はしてもらえるでしょう。

しかし、理解のあとの最後の一押し、顧客の納得・共感を得るのに必要なのが、FABE分析のEvidence(証拠)です。


導入事例は、具体的イメージがわかりやすいEvidence


FABE分析のEvidenceには、実験結果の提示、業界権威者の発言などがあります。

Evicenceの一つが、導入事例、つまり顧客が自社のイメージを重ねることが可能な、先行利用イメージです。よい導入事例は、ストーリ-性を持ち、顧客に具体的利用イメージを描かせます。

BtoB営業資料-導入事例の書き方ノウハウ

導入事例が効果的なBtoB営業資料であることが理解いただけましたでしょうか?

では、実際にどのように導入事例を書けばよいのでしょうか? 実際に複数の導入事例の書いたスタッフが導入事例の書き方のノウハウとプロセスをまとめます。

導入事例の書き方Step1:コンセプト立案

まずは、BtoB営業資料を作りたい対象商品のコンセプトをFABE分析で考えます。実際に、導入事例で営業資料を作ろうと思っても、このコンセプト立案ステップを飛ばしてしまう場合が多いようです。コンセプト立案をしっかり行ってから導入事例を作りましょう。

導入事例を書くためのFABE分析の手順

  • Featureを考える
  • AdvantageとBenefitを考える
  • AdvantageとBenefitを支えるEvicenceを考える

上記は、FABE分析では、ごく当たり前のプロセスですね。すでにコンセプトが固まっている場合でも、あらためてフレームワークでもれなくチェックするようにしましょう。

導入事例を書くためのFABE分析のポイント

一番のポイントは、導入事例で示したいFABEの各要素の整理、特にAdvantageとEvidence、BenefitとEvidenceの関係をあらかじめ整理しておくことです。

導入事例は、主張したいことの根拠(Evidence)です。つまり、主張したいこと(Advantage、Benefit)にあった根拠を示す導入事例がベストです。顧客に理解してほしい、Advantage、Benefitにあわせた導入事例をEvidenceとして作成しましょう。


導入事の書き方Step2:顧客取材


導入事例を作成する取材対象を選ぶ

FABE分析で、自分たちが示したいAdvantageとBenefitに適したEvidenceを示しやすい企業に取材を依頼します。ターゲット業界に親和性がある、著名でベンチマークとなりやすい企業がベターです。

導入事例の取材依頼をする

取材依頼をします。事例取材は、担当者や企業の事情により、断られる場合もありますので、いったん候補企業を複数あげましょう。

導入事例取材準備をする:FABE分析を質問票に落とし込む

あらかじめ、FABE分析で示したいAdvantage (優位性)とBenefit (顧客便益)を意識したうえで、その事例で表現したいAdvantage (優位性)とBenefit (顧客便益)を決めます。整理した内容をもとに、事例取材時の質問票をつくります。

導入事例取材をする

FABE分析をもとに、その事例で表現したいAdvantage (優位性)とBenefit (顧客便益)にあったEvidence(証拠)を引き出します。

参考:導入事例の書き方TIPS

  • 取材者の基本は、自社営業担当者、ライター、カメラマンの3人(プラスでマーケティング担当者)
  • 導入事例の公開には、顧客の広報、IR部門のチェックが必要が場合が多い
  • 導入事例には写真を載せる(カメラマンを付けるのがベスト)
  • 導入事例取材時は、ICレコーダーで音声をとる
  • 導入事例の取材は、最低2人でする

導入事例の具体例:シナプス企業研修事例

法人営業のBtoB導入事例の具体例として、「シナプスの企業研修事例」を掲載します。記事の書き方、質問の仕方など、参考にしてみてください。

事例集の実例を見たい方は『シナプス企業研修事例集』をご覧ください。


営業スキルコラムまとめ

営業ヒアリングスキル

営業提案力


BtoBマーケティング/法人営業力を学ぶ企業研修

「BtoBマーケティング研修基礎」BtoBプロの基本ノウハウ

「BtoBマーケティング研修基礎」は、BtoB企業向けにマーケティング思考の基礎を共通言語化する企業研修です。マーケティング戦略プロセスのエッセンスを抑えつつ、BtoBに精通したコンサルタントが「DMU」「購買プロセス」「経済合理性」など、BtoBマーケティングの基本ポイントも解説します。

研修プログラムの詳細は『「BtoBマーケティング研修基礎」BtoBプロの基本ノウハウ』をご覧ください。

「営業研修実践」ニーズ把握から提案まで個別商談コンサルサポート

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『「営業研修実践」ニーズ把握から提案まで個別商談コンサルサポート』では、実顧客の研修テーマで、講師兼マーケティングコンサルタントとワークショップ形式で顧客攻略を実践する営業研修です。仮説思考ニーズヒアリングからソリューション提案・プレゼンテーション資料作成まで、コンサルタントが個別指導します。

プログラム詳細は『「営業研修実践」ニーズ把握から提案まで個別商談コンサルサポート』をご覧ください。


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