近年の業績は好調だったものの、新しい事業が育っていなかった精密機器メーカーB社。新規事業の開発を推進してほしい、という依頼を受け、シナプスがご提供したのが、ロジカルに新規事業を生み出す、アイデア創造ワークショップを含めたコンサルティングでした。
クライアントの新規事業開発背景
次世代の中心事業となるような、数百億円規模の新規事業を生み出したい
B社は、技術力を強みに、グローバルに事業を展開している大手精密機器メーカー。BtoBとBtoC、両方の事業を手がけています。近年の業績は好調でしたが、次世代に中心となる事業が育っていないため、新規事業の開発に着手。「人々のライフスタイルを変えるようなイノベーティブな事業を生み出し、数百億円規模の事業に育てる」ことを目標に掲げていました。
クライアントが抱える課題
BtoBビジネスの知見が少ない上に、事業アイデアが出たとしても経営に説明できない
以上の背景から、B社は、数年前から新規事業開発に乗り出していましたが、なかなか有望な事業を立ち上げることができていませんでした。 その理由の一つは、イノベーティブなアイデアが採択されない事。まして、数百億円規模の事業となると、簡単に生み出せるものではありません。 また、BtoB型の事業に可能性を感じているものの、どのように進めて良いか、BtoB型の事業開発の知見が少なかったことも課題でした。
そこで、「外部の知見を入れて、より確度の高いプロセスを踏みたい」と、シナプスに声がかかりました。新規事業は創造的なアイデアが勝負を分けることが多々あり、ロジカルであることを避けがちですが、一方で、大きな企業で新規事業開発の決裁承認を得たうえで事業を推進していくためには、決裁権者や関連部署に説明し納得してもらう必要があります。そのためにはアプローチをロジカルに説明することが欠かせません。
「弊社が選ばれたのは、BtoBビジネスの知見がある上、新規事業をロジカルに生み出すプロセスを持っているから。」(担当コンサルタント・後藤匡史)
解決策・ソリューション
巨大な新規事業を生み出す上で、3つのポイントを押さえる
「領域選択」により深掘りする場所を選び出すこと
新規事業を生み出すことは、どんな事業領域でも可能ですが、「どこまで事業を大きくできるか」「どのぐらいの確度で生み出せるか」は、領域によって大きな差があります。
「B社が目標に掲げる数百億円の事業となると、産業の裾野が広い、規模の大きな市場でしか生み出せません。効率よく事業を生み出すためには、最初から深掘りする領域を絞り込む必要があります」(担当コンサルタント・後藤匡史)
「PDCA型」で進めること
新規事業の作り方には、大きくわけて「後出しじゃんけん型」と「PDCA型」があります。「後出しじゃんけん型」とは、他社が新たに生み出した事業や商品を模倣して、より良いものを作り出す方法。「PDCA型」は、まったく新しい領域に入っていき、PDCAを何度も回して、失敗を繰り返しながら、事業を組み立てていく方法です。事業の確実性は「後出しじゃんけん型」のほうが高いですが、イノベーティブな事業や商品は、事業の確実性の低い「PDCA型」の方が向いています。
「企業の新規事業開発の現場では、往々にして、『イノベーティブな事業を生み出そうとしているのに、途中で経営陣から確実性を求められるようになる』といった矛盾が起こりがちです。それを防ぐために、最初にどちらの方法でいくか、決めていただくことが必要です」(担当コンサルタント・後藤匡史)
ただし、事業の不確実性が低いといっても、新規事業を立ち上げるにあたっては、「なぜその新規事業なのか」を、経営陣にロジカルに説明することが必要です。
「本来、イノベーションはロジカルなアプローチ以外の要素が必要になりますので、多くの方がロジックを軽視しがちです。ですが、成功確率を上げ、社内を動かすためには、ロジカルなプロセスを踏むことが大切なのです。」(担当コンサルタント・後藤匡史)
VOCによってアイデアを磨くこと
VOCとは「Voice Of Customer」。「顧客の声や顧客の実態から明らかになった、顧客の本質的ニーズ」のことです。
「顧客の反応を見ながらアイデアを磨いていかないと、今までにない事業は生み出せません。だから、VOCを聞く機会を増やすことも必要だと考えました」(担当コンサルタント・後藤匡史)
コンサルティングの具体的な内容
「アイデア創出」と「アイデア研磨」、2つのフェーズによって、ロジカルに新規事業を生み出す
以上の3つのポイントを踏まえて、シナプスは、アイデア創造ワークショップを含むコンサルティングを提案。具体的には、以下の2つのフェーズによって、ロジカルに新規事業を生み出していきました。
フェーズ1:「アイデア創出プロセス」
約3カ月で複数回のワークショップを実施。以下の順序でアイデアを生み出し、絞り込みました。
領域選択
プロジェクトのコアメンバーが集まり、「市場規模」と「有望度」の2つの軸で、事業領域を10テーマに絞り込みました。「市場規模」は、数百億円の事業を生み出せるほど市場が大きいかどうか。一方、「有望度」は、お客様が取り組める事業領域かどうかです。
「たとえば、食品メーカーだと『健康』は取り組みやすいけど、『金融』はうちでは手が出ないと評価されます。ですので、最初から定量的な軸と定性的な軸の両面から絞り込みました」(担当コンサルタント・後藤匡史)
アイデア創造
20人のプロジェクトメンバーを5グループに分けて、2テーマずつ担当。5回のワークショップで、アイデアを創出しました。シナプスからはコンサルタントが3人参加し、1人は全体進行、残り2人は各グループの議論に加わりながら、支援をしました。
アイデア出しでは、
第1回「10年後の世の中の姿」
第2回「その10年後の世の中に、どんなニーズがあるか」
第3回「そのニーズを満たす、具体的な事業アイデア」
というように、段階を踏んでおこないました。
出来たアイデアはアイデアシートに記載し、50以上のアイデアを作り出しました。
アイデアの絞り込み
3回のワークショップで出てきたアイデアを、さまざまな角度から絞り込みました。
一つは、市場性と先行可能性。市場性とは「顧客がどのぐらいいるのか」、先行可能性とは「その事業を始めた場合、本当にB社がNO.1になれるか」です。
また、ターゲットのペルソナと、その商品が使われるシーンをイメージし、現実的にニーズがあるのかどうかを検討しました。
フェーズ2:「アイデア研磨プロセス」
フェーズ1では、最終的に6つのアイデアが残りました。それらのアイデアを、フェーズ2で3カ月間、磨き上げ、事業として可能性のあるアイデアを絞り込みました。
具体的には、多様な見込み客の元に足を運び、VOCを集めました。ヒアリング数の目標は、BtoBの場合、10~20社、BtoCの場合、50~100人です。
「兼任メンバーを中心とした体制で3カ月で聞く量としてはかなり多いかもしれませんが、それぐらいヒアリングしないと、真のニーズはわかりません。VOCを集める過程で、『これは可能性が低い』というアイデアを減らしていき、有望なアイデアは着実に50~100人に聞くようにしました」(担当コンサルタント・後藤匡史)
新規事業開発に慣れていないと、誰に何を聞きに行っていいかわかりませんし、売るものがない状態でお客様にアポを取るのは気が引けるものです。その点も、シナプスがサポート。誰に何を聞くのかという設計をおこない、アポイントに関しても、シナプスが持つネットワークも活用しました。
こうして集めたVOCを元に、どのようなマネタイズモデルがあるかを議論し、最終報告に至りました。
成果・導入効果
有望な事業アイデアが2つ残り、継続検討に
以上の2つのフェーズを回したことで、最終的には2つの事業アイデアが「有望な事業に育つ可能性がある」とされ、継続検討になりました。
「今回のB社の事例だけがとりたてて大成功というわけではありません。他のクライアントでも、同じようなプロジェクトを回すと、有望なアイデアが複数個残ります。ロジカルなプロセスを踏んでいるからこそ、安定した成果が出るというわけです」(担当コンサルタント・後藤匡史)