キャズム Ver.2 増補改訂版 新商品をブレイクさせる「超」マーケティング理論

「キャズム理論」とは、導入期で成功した製品が、成長期において様々な制約条件に負けて溝(キャズム)に落ちで消えていくという現象を捉え、キャズムを乗り越えるためのマーケティングアプローチを示した理論です。著書「キャズム」(原題 Crossing the Chasm)の中で、「ジェフリー・ムーア」が提唱しています。

なお、キャズム理論は、主に製品の技術進化の激しい「ハイテクマーケティング」で適用できる理論です。


1.キャズムとはイノベーション普及の溝


1-1.キャズム理論の大前提:イノベーター理論


キャズム理論の前提となるのがイノベーター理論です。イノベーター理論とは、「エベレット・M・ロジャース」によって提唱された、新商品や新サービスの市場浸透に関する理論です。

ロジャースは、著書「イノベーションの普及」の中で、「イノベーション=新しい概念・モノ」がどのように伝搬していくか(普及していくか)について実証的な研究に基づき、共通するイノベーションの普及パターンを解説しています。

1-1-1.イノベーター理論の5分類

  1. イノベーター(Innovators:革新者、革新的採用者)
  2. アーリーアダプター(Early Adopters:初期採用者、初期少数採用者)
  3. アーリーマジョリティ(Early Majority:前期追随者、初期少数採用者)
  4. レイトマジョリティ(Late Majority:後期追随者、後期多数採用者)
  5. ラガード(Laggards:採用遅滞者、伝統主義者)
マーケティング用語集『イノベータ理論

1-2.キャズム理論は、イノベーション普及のボトルネックを指摘した


  • イノベーター
  • アーリーアダプター
  • アーリーマジョリティ
  • レイトマジョリティ
  • ラガード

イノベーション理論では、上記の5つの段階でイノベーションが普及します。この5つの顧客群は、それぞれ、特有の思考・傾向を持っています。いいかえれば、「異なる顧客ニーズを持っています。」

この5段階の中で「アーリーアダプター」から「アーリーマジョリティ」に進む上でのハードルが最も高い(キャズム)とされています。

「キャズム理論」は、この大きな溝=キャズムを超えるための方法論をまとめたものです。

2.キャズム理論における各市場の特徴

2-1.キャズム理論における、イノベーター理論の別名

2-1-1.キャズム理論別名「テクノロジーマニア」イノベーター

テクノロジーマニアは、新しいテクノロジーを習得することに強い関心をもち、技術に対する造詣も深い人たちです。新製品を真っ先に手に入れようとします。

新しいテクノロジーの普及における最初の橋頭堡となるカテゴリーの人・企業です。

2-1-2.キャズム理論別名「ビジョナリー」アーリーアダプター

ビジョナリーは、新たなテクノロジーをいち早く採用する人であり、新しいテクノロジーが自社の企業戦略に合っているかどうかを洞察し、自らのリスクでプロジェクト化・現実化してそのテクノロジーを使用します。

技術に対する造詣もあり、イノベーターよりも現実的ですが、新しいテクノロジーを使ったブレークスルーを求める傾向があります。

ビジョナリーは、先進的でリスクを取ることができ、単なる改善ではなくブレークスルーを求める顧客グループです。イノベーターがテクノロジーマニアであることに対し、ビジョナリーであるアーリーアダプターは、このイノベーションの導入によりどんな夢が実現できるかを考えます。

また、ビジョナリーの特徴として、「先進事例として紹介されることを好むこと」「価格に対して他の顧客グループに対して寛容であること」があげられます。

2-1-3.キャズム理論別名「実利主義者」アーリーマジョリティ

ビジョナリーが、新しいテクノロジーを使って飛躍的な進歩を期待するのに対し、実利主義者は,着実な、成果測定のできる進歩を求めます。

また他の人間がどのように新しいテクノロジーを使用しているのかを知りたがります。同種の集団の中での情報交換をすることが多く、(新しいテクノロジーに対する)先行事例と(その提供者との)信頼関係が重要です。マーケットリーダーの製品・サービスを購入します。また、提供者同士を競争させたがる傾向があります。

ムーアによる各カテゴリーの属性は、ロジャースのものをベースとした上で、よりハイテク製品・サービスに合わせた形で具体化をしています。そしてビジョナリー(アーリーアダプターと実利主義者(アーリー・マジョリティー)の差異がはっきりとわかる形になっている点が特徴です。

2-1-4.キャズム理論別名「保守派」レイトマジョリティ

保守派は、本質的に非連続なイノベーションを受け入れない人たちです。進歩よりこれまでの慣習を重んじ、自分たちに役に立つ物があれば、それをずっと使い続けます。

2-1-5.キャズム理論別名「懐疑派」ラガード

懐疑派は、通常ハイテクマーケティング市場に参加してこない人たちです。

懐疑派の人たちは、「不連続なイノベーションが、自分達の期待に応えてくれることは少なく、往々にして予期せぬ結果になる」と考えています。

3.キャズム=アーリーアダプターを超える戦略

3-1.ボーリングレーン


実利主義者=アリーマジョリティをボーリングのピンにたとえています。市場を細分化して、まず1番ピンに相当する市場を攻略し圧倒的シェアを獲得する。その後、隣のセグメントに波及していくという戦略です。


3-2.キャズムを超える製品戦略:ホールプロダクト


キャズムを超えるには「ホールプロダクト」が必要と言われています。
ホールプロダクト戦略については、マーケティング用語集『製品戦略(プロダクト戦略)』をご覧ください。


参考情報

1.「キャズム理論」の原書

2.「キャズム理論」に関連するマーケティング用語集




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