1.ポジショニングとは

1-1.マーケティング基本戦略で決めること

マーケティングにおいて「基本戦略を決める」とは、STPすなわち「ターゲティング」と「ポジショニング」を決めることです。

誰を狙うかの顧客像を明確にするのがターゲティングです。

一方、ポジショニングでは、ターゲティングで狙った顧客に対して、「競合製品に比べて、自社製品がどう見られたいか」を定めます。

1-2.ポジショニングの定義

ポジショニングとは、「ターゲット顧客にとっての競合と比較した時の自社製品の差別化ポイント、あるいは訴求ポイントを明確化すること」です。

ポジショニングにより、自社のビジネスや特定のブランドを顧客ニーズに合わせると同時に、競合(競合ブランド)と十分に差別化を行い、顧客の記憶の中にユニークな位置づけを行います。

ポジショニングは、一般に縦軸×横軸から成る二次元マップ「ポジショニングマップ」で表現されます。

1-3.ポジショニング成功の条件

「ポジショニング」が成功するためには、以下の条件を満たしている必要があります。

  • ポジショニングのターゲットサイズが適切であること
  • 売り手の考えるポジショニングが、顧客に正確に伝わること
  • 売り手の考えるポジショニングに、顧客が共感すること
  • 売り手である企業自体のポジショニング(企業理念、ポリシーなど)と、製品のポジショニングに整合性があること

2.ポジショニングマップの作り方

ポジショニングマップ作り方を、「仕事でもプライベートでもPCを使う機会が多い女性をターゲットにしたモバイルPC」を販売しようとしているY社のケースを事例として説明します。ポジショニングマップ例を実際に書いてみましょう。

2-1.顧客のKBFの抽出

ポジショニング分析では、まず最初に、製品に対する顧客の一般的なKBF(購買決定要因)を抽出します。KBF(Key Buying Factor)とは、顧客が購入製品を選ぶ決め手となる要素です。

モバイルPCのKBFとしては、「価格」「速さ(高速CPU)」「バッテリー駆動時間」「小型軽量」「デザインのよさ」「ブランドイメージ」などが考えられます。

マーケティング用語集『購買決定要因(KBF)』

2-2.ターゲット顧客の重点評価KBFの抽出

ポジショニング分析の次のステップでは、KBF(購買決定要因)のうち、自社のターゲットが特に重視する項目を抽出します。

Y社がターゲットとする女性が特に重視するKBF(購買決定要因)としては、「持ち運びに負担が少ない軽さであること」「外出先でも仕事ができるよう内蔵バッテリーで長時間使用できること」次いで「デザインが良い」などが考えられます。

2-2.KBFを競合製品と比較

ポジショニング分析の3ステップ目として、KBFごとに自社製品と競合製品の比較評価を行います。

Y社の製品は、競合製品に比べて、速さ・軽さ・デザインのよさなどの点で高い優位性がありますが、価格の安さ・ブランドイメージでは劣っています。


モバイルPCのKBF

2-4.ポジショニング軸を選定

ポジショニング分析の最後のステップです。ポジショニング軸を2つ選定して、ポジショニングマップを作成します。競合製品に勝てるポジションを獲得できる2つの軸を選定します。


ポジショニングマップの例

  • ターゲットセグメント顧客にとって重要な価値のあるKBF(購買決定要因)か
  • 競合製品に対して自社のポジショニングが明確な差異があるか

3.ポジショニングマップの使い方

3-1.ポジショニングマップの有効性

ポジショニングマップ作成のステップを説明しました。ポジショニングマップからは、様々な事を発見することができます。

ポジショニングマップで、軸をはさんで対極にいる企業や製品とは、明確な差別化ができていることが明らかになります。またポジショニングマップ上で近くに位置する企業や製品とは、直接競合の度合いが高いことがわかります。

ポジショニングマップからわかること:女性向けモバイルPCの例

例えば、Y社製品の場合、「デザイン性」においてはA社製品と競合している状態ですが、「軽さ」で優位に立つことができます。一方、B社やC社と比較した場合には「軽さ」では同等評価ですが、「デザイン性」で優れていると認識してもらえます。

また、「デザイン性」と「軽さ」の2軸で評価した場合、顧客にとってはB社とC社の製品が類似のものに見えるでしょう。

ポジショニングマップ作成で競合差別化

このように、ポジショニングマップを描くことによって、差別性を強調できるポジションを狙い、他社との正面対決を避けることも可能です。

また、仮に正面対決することになったとしても、ポジショニングマップで、どこが競合相手なのかを明確に把握することにより、自社の強みを活かして勝てるポジションを取り、競合からシェアを奪うこともできます。

4.ポジショニングマップの作り方の注意点

ポジショニングマップは、シンプルな概念ですが、実務では「間違ったポジショニングマップの使い方」をしている場合も多いです。

4-1.顧客のKBFでない軸を使わないこと

ポジショニングでよくある間違いの一つが、ターゲット顧客のKBF(購買決定要因)ではない軸を使ってポジショニングマップを描いてしまうことです。

例えば、モバイルPCでは、「CPU速度」をポジショニングの軸として使ったらどうでしょう?これまで、パソコンでは「CPU速度」の差は、大きな購買決定要因=KBFでした。しかし、近年では、CPUの高速化が十分進んだため、顧客は「CPU速度」をあまり気にしなくなっています。
(近年、CPUでは、「速度向上」より「消費電力低下」が重視されています。)

4-2.ターゲット顧客にあわない軸を使わないこと

もう一つのよくある間違いの一つが、「ターゲット顧客にあっていない軸」を使ってしまうことです。

例えば、モバイルPCでは、「外出が多い営業パーソン」「WEBデザイナー」では、KBFは異なるでしょう(厳密にいうとKBFの重みが異なるはずです)。

さらにいえば、同じ「外出が多い営業パーソン」でも、「都心部」と「地方」では、ニーズ=KBFが異なります。地方では「顧客先を車で回る営業パーソン」が多いため、「電車で移動する都心の営業パーソン」に比べて、「重さ」や「大きさ」をKBFとして重視しない傾向にあります。


4-3.似た軸、相関の高い軸を使わないこと


ポジショニング分析のよくある間違いの最後は、似た軸、相関性のあるKBFの軸を使って、ポジショニングマップを書いてしまうことです。

典型的例は、KBFとして「価格と品質」を使うことですね。通常「価格」と「品質」は相関関係にあり、ポジショニングマップには右肩上がりの直線が描かれます。これでは、2軸を選択しながら1軸しか使っていないのと同じです。

自社が他社に比べて、圧倒的に優れた技術力やビジネスモデルを持って、高品質・低価格を実現できていない限りは、相関性のある軸でのポジショニング分析で、ターゲット顧客に訴求することは難しいでしょう。

まとめ

「ターゲティング」と「ポジショニング」。この2つの言葉有名でマーケティングの基本として知っている方も多いでしょう。しかし、ポジショニングマップの作り方をきちんと理解して、正しいポジショニングマップを書いている方は少ないものです。

この機会に、既存の自社商品のポジショニングを、改めてこの記事で説明したステップや注意事項を利用して、見直してみたらいかがでしょうか。

よいポジショニングの条件

  • 顧客への提供価値が明確 (どのニーズに対して、どの価値を提供?)
  • 他社(他商品)との違いが明確である
  • 差別化は、売上(売価)に紐付くこと。 「差別化とは割高な価格を要求できる能力のこと」


参考情報

1.「ポジショニングマップ」関連の用語集

2.「ポジショニングマップ」を学ぶ企業研修

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