~デジタルをわかってない人は経営者になるべきではない!~(前編)


2017年5月15日(月)、第2回シナプスCMOセミナーを開催しました。講演者は、オイシックス株式会社CMOの西井 敏恭氏です。

2000年の創立以来、連続過去最⾼の売上を達成し続けるオイシックス株式会社。(本セミナー告知時は16期連続成長だったが、セミナー開催の数日前の決算発表により17期連続成長が確定)
同社が、デジタルマーケティングをどのような考え方のもとに進めているのかに迫りました。

セミナー主催者のシナプス デジタルマーケティングカンパニーダイレクター 村上佳代氏のナビゲーションにより、オイシックスCMO(チーフマーケティングオフィサー)の西井敏恭氏が最新事例や成功事例を交えながら、その秘密を語ります。

本編構成は大きく以下の4つに分かれています。いまの経営者が最も気になる、デジタルマーケティング3大テーマと、マーケティングの普遍的課題のLTVです。


  • 「ビッグデータ&DMP」
  • 「アプリ」
  • 「ソーシャル」
  • 「LTV、顧客価値の最大化」

1.「ビッグデータ&DMP」

今や多くの企業の経営者が声高に叫ぶ、「データ活用」「ビッグデータ」「DMP」ですが、その先陣を切っている印象のあるオイシックス社。
西井氏の、「事実、オイシックスは、左脳的すぎるかなと思うくらいデータを大事にしている会社です。」の言葉からこのテーマのセッションは始まりました。

社内の誰もが見れる社内モニターを随所に設置

そもそもデータの量が違います。一般的なEコマースと比較して、同社の商品である野菜を毎週のように購入するということは、データの量が格段に多くなることを意味します。

例えば一般的な化粧品ECでは、サイトを訪問し気に入った商品を見つけてカートに入れて購入するのは、年に3-5回くらいで各回1.5個くらいの商品を買ってくれたというデータです。
しかし、オイシックスのデータは、1回の注文で20個くらいの野菜や商品、それがほぼ毎週です。購入頻度も購入個数も倍どころではなく、年間にすると48回、購入個数だと1,000個近くになります。
これだけのデータがあり、年間の買い物のデータを押さえているからこそ、この家族は野菜の中で根菜があまり好きではなく、葉物が好きなんだ等が見えてきます。季節に応じてどういったものが好みなのかもわかってきます。
これだけのデータがあるからこそ、数字化せずに勘で話すようなことはありません。

オイシックス社では、社内の誰もが自分の業務ミッションに関連するKPIを見ることができるよう社内にモニターを随所に設置するなど環境を整えています。
これらの環境構築は、データアナリストの専門チームによって為されています。

また、データドリブンな組織として機能させている例として、最近のスマホのEコマースサイトの事例があります。お客様の多種多様な属性に合わせて、複数パターンの表示分けがされた画面のうちどの画面のコンバージョンが実際によかったのかをABテストで評価し、画面の最適化を継続して図っています。
実はスマホのUIの改善は、PCサイト以上に同社にとっては重要で、スマホ購入にお客様の行動がシフトしているなか、スマホ購入時の客単価が低いことは売上が下がることを意味しています。1回で20個に及ぶ商品をスマホでストレス無く購入するUIの実現は、経営課題解決に直結しています。

UIなどクリエイティブ領域のものは、社長の発言力が強い会社ではよくある話ですが、社長の意見で左右されがちです。しかし、こういった検証を踏まえたデータを見せると、収まりどころが生まれます。データをベースに語ると「間違ってます」と堂々と言えるため、現場がきちんと機能するので、データは必要不可欠です。

2.「アプリ」

続いては、「アプリ」。「うちもアプリはやらないのか」など、ここ最近ある日突然、経営者やマネジメント層が言い始めることが多いデジタルマーケティングの代表的ソリューションのひとつです。

アプリは、メールとはまたちょっと違うコミュニケーション

オイシックス社がアプリを始めたのは3年ほど前。システム部がテスト的に立ち上げたのがスタートです。前出の通り、 PCからスマホへ、お客様の購入のチャネルが流れている中のアプリの立ち上げでした。PCのお客様は1回あたり約6,000円の購入、それがスマホになると急に1割以上単価が落ちてしまう。購入回数がだいたい週に1回とすると、売上減は自明的危機として認識されていました。

世の中的にはスマホでの購買層が増えてきており、オイシックス社の新規のお客様も今では8割くらいがスマホになってきています。
新規のお客様が増えているにも関わらず、単価が低いままだと、新規顧客数が伸びていても単価が1割落ちているため成長率もそこに比例したままの低成長となります。

元々の同社の大きな課題として、

  • 新規のお客様を増やすこと
  • 増えたスマホのお客様の単価を上げること

この二つがありました。
現在PCで提供できているサービスを、PCと同じレベルにてスマホアプリで提供することが急務です。

今のオイシックス社のアプリはまだβ版ですが、客単価がPCレベルになり収益性が上がってきたときが、本格的にリリースできる時期。
今の仕上がりレベルは80点くらい、ビジネスのスピードは早いので、そろそろ出したいです。
アプリだとわざわざPCやスマホのサイトを訪問しなくてもよいため、毎週・毎月など定期的に注文をする商材のオイシックスの場合、スマホアプリは確実に優位性を持っています。

また、コミュニケーション視点では、アプリ、LINE、メールの、この3つのそれぞれのコミュニケーションの切り分けをどうしたらいいのかということに悩んでいます。
自分自身がお客様になった時にどういう通知でプッシュがくれば気持ちが良くて、どういう状態でプッシュが来ると気持ちが悪いのかを考えながら、トライアンドエラーの繰り返しを行っています。

アプリは、メールとはまたちょっと違うコミュニケーション。定期会員のお客様のユーザーの3割から4割くらいがアプリからの注文です。本格版リリース時には、全ての定期会員のお客様がアプリからの注文となって欲しいと思っています。
アプリの完成度が高いとスマホサイトの重要性が薄れ、もはやスマホサイトが不要になるのでは。アプリ内で全てを完結できるように、細部をもっと詰めていきたいです。

後編につづく

講演者:オイシックス株式会社 CMO西井 敏恭(にしい としやす)氏 


オイシックス株式会社
CMO 西井敏恭氏 

2013年末まで株式会社ドクターシーラボにてデジタルマーケティングの責任者。Eコマースのマーケティングに10年以上。2014年よりオイシックス株式会社 CMOに就任。次世代のEC戦略を先導している。同年7月起業した株式会社シンクロにて、国内大手からスタートアップ企業のマーケティングアドバイザーも。
2001年から2年半世界一周の旅へ、3冊の旅行記も著名。
金沢大学大学院卒。