シナプス海老原です。

私は10年以上「新規事業立ち上げ期」や「社内初プロジェクト」など、不確実な事業のプロジェクトマネジャーばかりしてきました。不確実な事業では、事前予測のブレが大きく、PDCAサイクル回すのも困難です。プロジェクト完了予定時期や事業売上予想が2倍、3倍ブレることは当たり前です。

しかし、不確実なプロジェクトでも高速PDCAサイクルを回してプロジェクトを成功に導く7つのコツを身につけましょう。すると、どんなプロジェクトでもPDCAサイクルを回し成果を出せるようになります。

1.プロジェクトを回すのに必要なPDCAサイクル

1-1.PDCAサイクルとは


PDCAサイクル(PDCA cycle、plan-do-check-act cycle)は、事業活動における生産管理や品質管理などで、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の 4 段階を繰り返すことによって、業務を継続的に改善する手法です。
※Wikipediaより
  1. Plan(計画):従来の実績や将来の予測などをもとにして業務計画を作成する。
  2. Do(実行):計画に沿って業務を行う。
  3. Check(評価):業務の実施が計画に沿っているかどうかを評価する。
  4. Act(改善):実施が計画に沿っていない部分を調べて改善をする。

1-2.なぜPDCAサイクルが必要か

なぜ「PDCAサイクルを回す」ことが必要なのでしょう。。どんなに労力をかけても事前に完璧なプランを作ることは不可能です。そのため「仮説的にプランを立て、実行しながら改善する」というPDCAサイクルを回すことがプロジェクトマネジメントの基本です。

2.PDCAサイクルを回すコツ

2-1.PDCAサイクルの落とし穴:目的・目標は明確に

PDCAサイクルを回すことの必要性は知られていますが、実際のプロジェクトとなると、PDCAサイクルが効果的に使われ、日々継続的に改善しているプロジェクトは少ないものです。

PDCAサイクルの成果がでない原因はなんでしょうか。最大の要因は「PDCAサイクルの目的が明確でない」ことでしょう。

あなたは、何のためにPDCAサイクルを回すのでしょうか?PDCAサイクルの基本は「改善」です。しかし、例えば、「業務の改善」のような曖昧な目的・目標を置くと、各メンバーの意思統一ができません。「業務Aの時間当たり処理速度を上げる」「製品Bの納期を3ヶ月から2ヶ月に短縮する」といった、具体的、かつ「数字で図れる目標」を設定するとよいでしょう。

2-2.PDCAサイクルの目的・目標設定難易度は異なる

採算管理・品質管理では、比較的PDCAサイクルの目的・目標が明確

PDCAの定義でみたように、PDCAサイクルは元々は生産管理や品質管理の業務改善手法です。生産管理や品質管理では、目的・目標が明確な場合が多いでしょう。例えば、「不良品率を5%下げる」「作業時間を10%短縮する」などです。PDCAサイクルを回す目的と業務改善の結果が数字で出やすく、改善効果も明確です。

ホワイトカラーのPDCAサイクルは、目的・目標が曖昧になりやすい

あるプロジェクトにおいて、「PDCAサイクルで何を改善するか」「目的」は常に明確でしょうか?「メールの返信スピード?」「資料の品質?」「営業のやり方?」。特にホワイトカラー業務では、生産管理と違い、改善の大方針レベルでも、たくさんの方針が考えられます。

目的・目標が明確に定められていないと、そもそもPDCAサイクルで業務改善することはできません。しかし、特に、ホワイトカラー業務については、目的・目標が不明確なまま、PDCAサイクルに失敗することは多いのです。

2-3. PDCAサイクルを回すコツ 実行計画は日単位でチェック

プロジェクトの規模にもよりますが、戦術・実行レベルの行動プラン、スケジュールは、「日単位で状況をチェックしてPDCAサイクルを回す」のが基本です。

例えば、遅れているタスクがあれば、リカバリできる単純な遅れか。構造的な要因で、解決策を打つ必要があるかを、すぐに判断します。

大きなプロジェクトになると、日単位の遅れの積み重ねが最後には、2倍、3倍の遅れに繋がることも、ざらです。

2-4. PDCAサイクルを回すコツ スケジュールには2割のバッファ


プロジェクトで、PDCAサイクルを前提としてプランを作るときは「全体スケジュールで、2割のバッファを残す」のが、PDCAサイクルを回すコツです。

プロジェクトが進むと予想外の状況に必ず出会います。バッファがゼロのプランでスケジュールをギリギリに設計して、いると、そもそもPDCAサイクルでトライ・アンド・エラーをする余裕がありません。

しかし、バッファのないプランはリカバリしようとして、品質が落ちたり、新たなリスクが増えるので、オススメしません。予想外のことが発生する前提でPDCAサイクルを回せる余地を残しておくのです。

不確実なプロジェクトでは、バッファ確保が生命線

不確実なプロジェクトでは、定義からして、未知のトラブルに見舞われることが多いものです。そのため、PDCAサイクルを回すには、必ずバッファが必要です。

しかし、大抵上司はバッファを削りにきます。ここで、PDCAを回せる適切なバッファ期間を守ることも、プロジェクトマネジャーの仕事です。

トラブルゼロの前提でスケジュールを組んだ不確実プロジェクトは、ほぼ確実に炎上します。

3.不確実なプロジェクトでは「高速PDCAサイクルを回す」

3-1.不確実なプロジェクトでは、高速PDCAサイクルを回す

不確実性の高いプロジェクトでは、事前に緻密なプランを立てる意味があまりありません。時には緻密なプランが逆に仇となります。プロジェクトは「ざっくり戦略プランを作って高速PDCAサイクルを回す」しかありません。

しかし、不確実なプロジェクト、例えば新規事業プロジェクトにおいて「高速PDCAサイクルを回す」ことが、できているプロジェクトは、非常に少ないものです。

3-2.「普通のPDCAサイクル」と「高速PDCAサイクル」は何が違うか

「高速PDCAサイクルを回すコツ」を考える前に、そもそも「PDCAサイクル」と「高速PDCAサイクル」の違いを確認しておきましょう。

「『普通の速さか高速かの違い』に決まっているだろう。」と思うかもしれません。もちろん、「速いか遅いか」は一つの要素です。

しかし、もっと大きな違いは、「普通のPDCAサイクル」と「高速PDCAサイクル」の2つは、「PDCAサイクルの目的」が大きく異なることが多いです。この違いを、抑えておきましょう。

  • 普通のPDCAサイクル:いわゆる業務改善に使う。図れる。定型業務の効率化、品質向上
  • 高速PDCAサイクル:新規事業・ベンチャーなどの事業推進の文脈で使われる。この文脈では、目的・目標は「効率化」や「品質向上」ではなく、「戦略の方向性の特定、勝てる戦術特定」など

4.不確実なプロジェクトで高速PDCAサイクルを回す5つのコツ

私が新規事業のプロジェクトマネジャー現場で磨いた、「不確実なプロジェクトで高速PDCAサイクルを回す5つのコツ」について解説します。

4-1.高速PDCAサイクルを回すコツ ①最初のプランは上位の戦略基本方針だけ


高速PDCAサイクルで最初に立てるプランは、上位のざっくりした「戦略基本針しか立てない」ようにしましょう。

不確実性の高いプロジェクトで、細かい計画を立てるのはナンセンスです。まず動いてみてみて、1,2回高速PDCAサイクルを回し自分の読みの精度が上がってきてから、PDCAサイクルを回すプランの範囲を徐々に下位のプランに広げていきます。

4-2.高速PDCAサイクルを回すコツ ②戦略基本方針と戦術レベルのプランは区別


事業計画やプロジェクトの戦略プランを立て「高速PDCAサイクルを回す」とき、「すべての階層のプランを、同じスパン高速でPDCAサイクルを回してしまう間違い」をよく見かけます。

「上位レベルの戦略基本方針のPDCA」と「日々の行動の戦術レベルのPDCA」は、PDCAサイクルの期間感覚が異なります。

日々高速PDCAサイクルを回すといっても、上位方針は短期間に変わるものではありません。一方、日々の戦術レベルの行動は、行動した結果を反映し、PDCAサイクルでどんどん改善していきます。

「高速PDCAサイクル」といっても「『高速』の感覚は階層によって異なる」のです。

プランのレベル PDCAサイクルの回し方
戦略の基本方針
  • 【PDCAサイクル】半年から1年単位
  • ターゲット方針、発揮する強みなど戦略の基本部分
    PDCAサイクルで変更されることもあるが「より戦略の精度が上がる」のが目指す姿
個別戦略レベル
  • 【PDCAサイクル】1ヶ月(月単位)
  • 基本方針を実現するための方策(今月は、このリストを集中的に攻略というレベル)
戦術・アクションレベル
  • 【PDCAサイクル】1日から1週間単位
  • 営業活動でどこを回るか、資料の改善など、日々の具体的行動

4-3. 高速PDCAサイクルを回すコツ ③上位の戦略基本方針は頻繁に変えない

「とにかくやってみることだ。高速PDCAサイクルを回して、どんどん変えていけばいいんだ。」。日々の戦術レベルは、毎日どんどん変えていってもかまいません。

しかし、上位レベルのプラン戦略基本方針レベルを頻繁に変更することは、高速PDCAサイクルの回し方としてNGです。

「戦略基本方針が変わる」と、その下位の個別戦略レベル、戦術レベルでやるべきことがすべて変わります。つまり、今まで、PDCAサイクルで、積み上げてきた改善がゼロに戻ります。「高速PDCAサイクルだ」といって、戦略の上位方針まで短い期間でコロコロ変えるプロジェクトマネジャーも多いです。しかし、あまりに短期で基本方針が変わり、今までのPDCAサイクルで積み上げたの成果がゼロリセットになり、改善が進まないプロジェクトは多いです。

このようなプロジェクトにアサインされたメンバーは、「PDCAをやっても無駄」という意識が芽生え、PDCAサイクルを回さなくなります。

4-4. 高速PDCAサイクルを回すコツ ④プロジェクトスタート前から始める


高速PDCAサイクルを回す場合、事業計画やプロジェクトがスタートする日には、すでに「PDCAサイクルが何周かしている」のが理想です。

例えば、「4月からの事業計画では、4月までにプランを作って、そこからPDCAサイクルを回しましょう。」と考えるのが普通のプロジェクトマネジャーでしょう。

しかし、不確実性の高い事業のプロジェクトは、プランがスタートしてから、PDCAを回したらプランのブレが大きいのは当然です。

例えば、私がプロジェクトマネジャーをするときは、「これは、プロジェクトのキーだ。大きなボトルネックとなり得る」、と思う戦略仮説・活動手法・実行ツールなどは、プロジェクトスタート時点で、すでにヒアリングや自分で実行して、小さなPDCAサイクルを回し「これはいける」と有効性を判断し終えています。キー事項の仮説検証が終わり、PDCAサイクルの2周目に入っているわけです。よって、プロジェクトの成果がでる確率やプロジェクト期間の予想精度もあまりブレません。

4-5. 高速PDCAサイクルを回すコツ ⑤選択肢をつぶしていく感覚


不確実な事業で、高速PDCAサイクルを回す意義はなんでしょうか。何を目指してPDCAサイクルを回すべきでしょうか。

「普通のPDCAサイクルの目的」は、「ある決まった業務数値の改善」です。

「不確実事業での高速PDCAサイクルの目的」は、たくさんの戦略オプション、戦術オプション、を試して「いける/いけない」を切り分けることでしょう。

とりあえず手探りで歩いてみる。落とし穴があるかもしれませんが、「不確実なプロジェクトでは、この戦略オプションには落とし穴があるらしい」とわかること自体も重要です。複数の戦略オプション、戦術オプションを試し、少しずつノウハウをためていきます。

まとめ

「PDCAサイクルを回せ」。いや「高速PDCAサイクルだ」。

最近安易に使われるPDCAサイクルですが、実際には、PDCAサイクルをうまく回せる方は少数です。特に、不確実性の高い新規事業で、高速PDCAサイクル回して、適切に改善しているプロジェクトマネジャーはほとんどいません。

しかし、高速PDCAサイクルを回しプロジェクトを成功に導くコツは存在します。コツを掴んで、不確実なプロジェクトを成功に導きましょう。

参考情報

1.海老原一司のシナプスビジネスナレッジコラム

1974年生まれ。早稲田大学理工学部修士課程をへて1999年日本テレコム株式会社入社。IT業界を中心に大企業・ベンチャーなどの事業会社で クラウドサービスなどの10年間以上のプロダクトマネジャー経験を持つ、BtoB事業の新規事業立ち上げ、事業成長のスペシャリスト。プロマネとして新サービスを3年で100倍の売上にした経験を持つ。

2014年シナプス入社。BtoBマーケティングプログラム責任者。

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